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用語集

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Ra(平均演色評価数)
[よみがな] あーるえい
[英訳] average color rendering index
平均演色評価数。照明で物体を照らすときに、自然光が当たったときの色をどの程度再現しているかを示す指標。 Ra100は、自然光が当たったときと同様の色を再現していることを意味する。

RD20
[よみがな] あーるでぃーとうぇんてぃ
[英訳] Research and Development 20(RD20)
RD20とは、「クリーンエネルギー技術に関するG20各国の国立研究所等のリーダーによる国際会議」のこと。RD20はクリーンエネルギー技術と国際連携に焦点を当てたG20各国の主要研究機関による国際会議で、それぞれの国におけるクリーンエネルギー技術に関連した現在及び新たな問題に関連する研究開発の活動や経験、ベストプラクティス、アイディアを交換する機会や、主要な研究機関間での共同研究開発プロジェクト等の国際共同研究の可能性を探るための機会を参加者に提供ている。

IEA(国際エネルギー機関)
[よみがな] あいいーえい
[英訳] International Energy Agency(IEA)
IEAは International Energy Agency(国際エネルギー機関)の略称。石油危機を契機に創設された石油消費国の国際機関で、経済協力開発機構(OECD)に属する機関として1974年設立。本部パリ、加盟国24(1999年)。当初は石油輸出国機構(OPEC)に対抗する傾向が強かったが、世界的な石油需要の緩和により1990年代にはエネルギーの安全保障、地球環境、経済成長などについて各国政府の施策に対し長期的な提言を行う活動が重点になってきた。技術開発分野の活動として、再生可能エネルギー、化石燃料、核融合など多くのプロジェクトが進行中。

IoT機器
[よみがな] あいおーてぃーきき
[英訳] IoT device
インターネットに接続されたあらゆるモノのこと。 特にパソコン・スマートフォンなどのIT機器以外で、インターネットにつながれたあらゆるモノ(テレビ・デジタルカメラ・DVDプレーヤー・給湯器・センサー類・照明機器など)のこと。IoTは「Internet of Things(モノのインターネット)」の略で、あらゆるモノがインターネットを介してつながり情報をやりとりし相互に制御を行うことを表す。

ICT
[よみがな] あいしーてぃー
[英訳] Information and Communication Technology(ICT)
ICTとは「Information and Communication Technology」の略称で、日本語では「情報通信技術」と訳されている。スマートフォンでのコミュニケーションや外出先での書類作成と送付などにICTは使われている。ICTは、デジタル化された情報の通信技術であり、インターネットなどを経由して人と人とをつなぐ役割を果たしている。

ITO
[よみがな] あいてぃーおー
[英訳] ITO(Indium-Tin-Oxide)
ITOとは、酸化インジウムにスズを添加した化合物のことで、導電性を持ちながら高い透明度を有し、その光透過率は約90%に上る。このため、電子で表示を制御する液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの電極として理想的であるとされている。

ITO電極
[よみがな] あいてぃーおーでんきょく
[英訳] ITO electrode
ITOとは、酸化インジウムにスズを添加した化合物のことで、ITO電極とはこの化合物を電極として用いたものである。一般に透明性と導電性両方に優れる特長がある。

アクセプター
[よみがな] あくせぷたー
[英訳] acceptor
シリコン半導体においては、半導体中で価電子帯から電子を受けとる(正孔を供給する)不純物元素をいう。シリコン( 14族半導体)に13族元素のホウ素などを不純物として添加すると、これらの不純物元素の3個の最外核電子はシリコンとの共有結合できるが、シリコンの1つの電子は孤立電子となって余り、電子をもう一つ受け取ることができる。バンドモデルにおいて禁止帯内で価電子帯の上端付近にアクセプター準位をつくる。浅いアクセプター準位は室温程度の熱エネルギーでイオン化し、価電子帯に自由正孔を供給する。有機半導体の分野においては、電子を受け取りやすい分子のことを一般にアクセプターと呼び、例えばTCNQやフラーレン類などは、LUMOのエネルギー準位が深く、別分子から電子を受け入れやすい。

アクセプター準位
[よみがな] あくせぷたーじゅんい
[英訳] acceptor level
電子アクセプターを半導体に混合させたときに出現するエネルギー準位を指す。シリコン半導体においては、4価の元素半導体シリコン(Si)に不純物として3価の元素ホウ素(B)を微量添加すると、BはSiと共有結合して負の電荷をもつ。この負の電荷によって生じる遮蔽されたクーロンポテンシャルにより、電子は斥力を、正孔は引力を受けるため、正孔はB周辺に束縛される。この時、BはSiの価電子帯から電子を容易に受け取ることができるためアクセプターと呼ばれ、そのエネルギー準位がアクセプター準位である。アクセプター準位は価電子帯のすぐ上に存在し、0.045eV程度の小さな値である。価電子帯にあった電子がアクセプターに移ると、価電子帯に正孔が生じて自由に動くことができるキャリアとなる。この場合は、正孔がキャリア―となりp形半導体になる。一方、有機半導体の分野でドナー準位というと、電子ドナー性の分子を混合あるいは接合させた場合に、その分子のHOMO準位で代表させることが多い。

アクチュエータ
[よみがな] あくちゅえーた
[英訳] actuator
アクチュエータは、入力されたエネルギーを物理的運動に変換する機械要素である。機械・電気回路で構成される。アクチュエータは電動機やエンジンのように物を動かす駆動装置と、その動作により制御を行うための機械、油・空圧、熱、電磁などの物理的な装置を指す。アクチュエータには、電気モータ・電磁ソレノイド・油圧シリンダ・空気圧シリンダなどがある。

アクティブマトリクス駆動
[よみがな] あくてぃぶまとりくすくどう
[英訳] active matrix driving
アクティブマトリックス方式とは、液晶や有機ELディスプレイなどの駆動方式の1つで、ディスプレイ上の各画素にアクティブ素子(スイッチング素子)を配置することで、選択した画素ごとに信号のオン、オフ制御を可能にする方式で、アクティブ素子にはTFT(薄膜トランジスタ)などが用いられる。

アグリゲーションビジネス
[よみがな] あぐりげーしょんびじねす
[英訳] aggregation business
IoT技術を活用し、分散型電源を仮想的に集めて大規模電源として運用するモデルである。これらの電源は「需給調整市場」を通じて送配電事業者が必要としている調整力として使用したり、再生可能エネルギー電源を必要としている小売電気事業者や需要家への販売が見込まれる 。

アグリゲーター
[よみがな] あぐりげーたー
[英訳] aggregator
電力・電気業界では「電気の需要と供給をとりまとめる業者」を意味する。アグリゲーターの役割は「電力・需要のバランスを最適化し、安定供給を実現すること」である。

アシストドーパント
[よみがな] あしすとどーぱんと
[英訳] assist dopant
通常、有機ELの発光層はホスト材料と発光ドーパント材料から形成され、発光ドーパントからのEL発光が得られる。アシストドーパントと呼ばれる第3の材料を発光層中に添加することで、ホストと発光ドーパントの間のエネルギー移動が助けられ、高効率有機ELを実現できることがある。

アセン系化合物
[よみがな] あせんけいかごうぶつ
[英訳] acene compounds
アセン (acene) またはポリアセン (polyacene) とは、有機化合物のうち、複数のベンゼン環が直線状に縮合した構造を持つ炭化水素の総称。有機半導体、蛍光色素などの性質が研究される化合物群である。

アップコンバージョン
[よみがな] あっぷこんばーじょん
[英訳] up-conversion
低いエネルギーの光が高いエネルギーに変換される現象。古くから、非線形光学現象による光学素子として、研究が進んでいるが、レーザーなどの強い光を必要とする。希土類元素を用いた場合、多段階励起によりアップコンバージョン発光が促されるが、こちらも、太陽光の数十から数千倍の強い光(レーザー励起)が必要であり、エネルギー的な損失は大きい(変換効率1%以下)。近年、弱い光でもアップコンバージョンを可能とする三重項-三重項消滅(TTA)機構を利用した系の開発に高い注目が集められている。

ab initio(アブイニシオ)分子軌道法
[よみがな] あぶいにしおぶんしきどうほう
[英訳] ab initio molecular orbital method
非経験的分子軌道法ともいう。ab initioとはラテン語でfrom the beginningを意味する。分子中の電子の運動に関するシュレーディンガーの波動方程式を、経験的なパラメーターを使わずに近似的に解く理論的方法を総称してab initio分子軌道法とよぶ。ab initio分子軌道法でもっとも基本となるのが、分子中の電子がそれぞれ独立に運動しているモデルにもとづくハートリー・フォック法である。ハートリー・フォック法は全電子エネルギーの99.5% 以上を算出するため、安定分子の構造や性質を計算するには多くの場合十分なことが多い。しかし、化学反応をはじめとする化学の動的な問題を定量的に取り扱うには、ハートリー-フォック法では不十分で、電子相関とよばれる電子間の相互作用をあらわに取り入れる必要がある。

アモルファス
[よみがな] あもるふぁす
[英訳] amorphous
アモルファス (amorphous)、あるいは 非晶質(ひしょうしつ)とは、結晶のような長距離秩序はないが、短距離秩序はある物質の状態。これは熱力学的には、非平衡な準安定状態である。amorphous は、morphous(形を持つ)に「非」の意味の接頭辞 a‐ が付いた語源である。アモルファスの特徴として、均質で等方性であることが挙げられる。結晶状態とアモルファス状態では、同じ物質でも物性が大幅に変わることがある。

アモルファス高分子
[よみがな] あもるふぁすこうぶんし
[英訳] amorphous polymer
特定の構造を取らない、ランダムな鎖状態の高分子。 非晶性高分子とも呼ばれ、液体状態あるいはガラス状態を取る。

アモルファスシリコン太陽電池
[よみがな] あもるふぁすしりこんたいようでんち
[英訳] amorphous silicon solar cell
アモルファスシリコンとは規則正しい結晶構造を持たないシリコンのことで、アモルファスシリコン太陽電池はこのアモルファスシリコンから作られた太陽電池。シリコンの結晶構造だけでなく、太陽電池としての構造も結晶系シリコン太陽電池と異なり、結晶系シリコン太陽電池がpn接合型であるのに対して、アモルファスシリコン太陽電池はpin接合型である。アモルファスシリコンは結晶系シリコンと原子の並び方が違う為、エネルギーバンドギャップが異なる(結晶系シリコン:1.1ev、アモルファスシリコン:1.7eV)。また、光吸収係数も異なるため、結晶系シリコン太陽電池が太陽光を吸収するために数百μmの厚さが必要なのに対して、アモルファスシリコン太陽電池では数μmで十分光を吸収できる。このため、アモルファスシリコン太陽電池は結晶系シリコン太陽と比較して1/10〜1/100の厚さで良い。

アルカリ金属
[よみがな] あるかりきんぞく
[英訳] alkali metals
周期表第I族元素のうち、性質のきわめてよく似た、リチウム Li、ナトリウム Na、カリウム K、ルビジウム Rb、セシウム Cs、フランシウム Fr の6金属元素の総称。いずれも元素中最も電気的に陽性で、1価の陽イオンとなりやすい。一般に融点が低く、柔らかく、軽く、金属光沢がある。きわめて反応性に富み、石油中にたくわえる。常温で水を分解して水素を発生し水酸化物となるが、この水酸化物は最も強い塩基である。

アルカリ土類金属
[よみがな] あるかりどるいきんぞく
[英訳] alkaline earth metals
周期表第II族元素のうち、カルシウム Ca、ストロンチウム Sr、バリウム Ba、ラジウム Ra の総称。ベリリウム Be、マグネシウム Mg をこれに加えることもある。いずれも光沢ある銀白色の金属で Ra を除き軽金属。アルカリ金属より硬く融点も高い。電気的に陽性で2価の化合物をつくるのが普通。水酸化物はアルカリ金属に次いで強い塩基性である。

アレニウスの式
[よみがな] あれにうすのしき
[英訳] Arrhenius' equation
化学反応の速度は、一般に温度によって大きく変化し、速度定数kと絶対温度Tとの間に近似的に次の関係式が成り立つ。k=A exp(−E/RT) ここで、Rは気体定数、Eは反応が起るためにこえるべきエネルギー壁の高さ(活性化エネルギーに相当)、Aは頻度因子である。この式は幅広く適用されており、有機ELの劣化にもこのモデルが適用した場合、温度を変化させたときの劣化の速度定数の変化をプロットすることにより、活性化エネルギーE等を求めることができる。

アレニウスプロット
[よみがな] あれにうすぷろっと
[英訳] Arrhenius plot
アレニウスの式 k=A exp(−E/RT) の対数をとると、ln k=-E/RT+ln A となり、次のように変数をとれば、y=ln k,、m=-E/R、x=1/T、b=ln A、一次式 y=mx+b とみなすことができる。この形式で描いたグラフはアレニウスプロットと呼ばれる。この形式を用いて実測された反応速度とそのときの温度の逆数を片対数グラフにプロットすれば、回帰分析の手法を用いて係数 m, b を求めて活性化エネルギーなどを実験的に求めることができる。

アンダーソン局在
[よみがな] あんだーそんきょくざい
[英訳] Anderson localization
結晶の乱れにより、電子が空間的に局在して結晶全体を動けなくなる現象のこと。金属など結晶の電気伝導は、不純物や格子欠陥の濃度などの乱れに強く影響を受け、乱れが小さい場合には、電気伝導率は乱れの大きさにほぼ反比例する。アンダーソンは、結晶の乱れが大きくなるにつれて伝導率がしだいにゼロに近づくのではなく、乱れがある大きさになると伝導率がゼロになる。つまり金属から絶縁体へ転移すると考えた。この転移の原因となるのがアンダーソン局在である。半導体表面の準2次元系や高濃度不純物半導体で長年解明されずにいた負の磁気抵抗効果の現象が、アンダーソン局在に基づいて解明され、固体内の電子のふるまいについて多くの新たな知見が得られた。

アンダーソンの法則
[よみがな] あんだーそんのほうそく
[英訳] Anderson's rule
アンダーソンの法則は、2つの半導体材料をヘテロ構造にした場合にそれぞれのバンド構造がどのように接続されるか計算するためのモデルで、1960年にR.L. Andersonにより発表された。このモデルでは、ヘテロ構造を構成する2つの半導体の真空レベルが同一のエネルギーになると仮定している。

暗注入法
[よみがな] あんちゅうにゅうほう
[英訳] dark injection
キャリアのドリフト移動度を計測する方法の一つで、試料としてオーミックな電極と対向電極からなるサンドイッチ状のものを用い、試料にステップ電圧を印加して過渡電流を測定する方法である。走行時間を測定する点ではTOF法と同様である。ステップ電圧の代わりに、三角波電圧を印加する方法もある。

暗電流
[よみがな] あんでんりゅう
[英訳] dark current
光電効果を示す半導体などの電気素子に電圧を加えた時に、熱的原因、絶縁不良、結晶欠陥などによって光を当てない時でも流れる電流のこと。光を当てた時は IL+I0 の電流が流れるが、このうち I0 が暗電流で、IL は光を当てることによって生じた電流の増分で光電流という。光電素子においては、暗電流が光検出感度の下限を決める大きな要因である。

アンビエントデバイス
[よみがな] あんびえんとでばいす
[英訳] ambient device
電子デバイスの進化は、ICの発明以来ムーアの法則に従った情報の処理能力と蓄積能力の進歩に沿って様々な機器やシステムの高度化に大きな貢献をしてきたが、一方で、今後の環境、エネルギー、高齢化社会、医療や介護等の社会的課題を解決するためには、実情報をそのまま大量に取り込む新たな仕組みが求められる。身の回りで通常目にする普通の機器に、多様且つ大量の入出力素子の機能を作りこんだデバイスをアンビエント・デバイスと呼んでいる。アンビエント・デバイスは、環境やエネルギー問題、更に将来の情報機器、家電、通信システム、流通、医療等の産業に大きく寄与することが期待されている。

アンビポーラ型有機発光トランジスタ
[よみがな] あんびぽーらがたゆうきはっこうとらんじすた
[英訳] ambipolar organic light emitting transistor
有機発光トランジスタは有機半導体の発光特性と電荷輸送特性を融合した新しいデバイスである。p型トランジスタ駆動の電圧条件を考えた場合、ソース電極から有機半導体層中に正孔が注入・輸送され、有機半導体層/絶縁膜界面に蓄積される。一方、有機半導体が両極性であれば、ドレイン電極からは電子が有機半導体層中に注入され、有機半導体層/ 絶縁膜界面を伝導することになる。その結果、単一の有機半導体層中に両キャリアが蓄積し、理想的には擬似的なpn接合界面がトランジスタチャネル中のピンチオフ点近傍に形成される。チャネルとして用いる有機半導体材料が発光性能もあわせ持つ場合、この擬似的なpn接合界面においてキャリア再結合に基づくエレクトロルミネッセンスが観測される。

アンビポーラトランジスタ
[よみがな] あんびぽーらとらんじすた
[英訳] ambipolar transistor
薄膜トランジスタは、印加されたゲート電圧によって蓄積層を形成してコンダクタンスを制御する。これは通常の MOSFET が反転層を形成してコンダクタンスを制御するのとは大きく異なる。すなわちn型のキャリアは電子、p型のキャリアはホールであることも特徴であり、同時にソース電極およびドレイン電極付近でpn接合を形成しない為、チャネル層の物質如何によってはpおよびn型両方の特徴を兼ね備えるアンバイポーラとして機能する。

ESG
[よみがな] いーえすじー
[英訳] ESG
ESGとは、環境(E:Environment)、社会(S:Social)、ガバナンス(G:Governance)の英語の頭文字を合わせた語。企業の長期的な成長には、経営においてESGの観点が必要という考え方が世界中で広まっている。温暖化や水不足などの環境問題、人権問題や差別などの社会問題など、人類はさまざまな課題に直面している。こうした中、2006年のPRI(責任投資原則)発足を機にESGは注目され出した。持続可能で豊かな社会の実現に向けてESGの取り組みは今後も拡大していくと考えられる。

E型遅延蛍光
[よみがな] いーがたちえんけいこう
[英訳] E type delayed fluorescence
有機分子における熱活性化遅延蛍光は1961年にエオシン(eosin)を使って発見され、その発光はE型遅延蛍光と命名された。その時点では、発光機構は完全には理解されていなかった。

イオン化エネルギー
[よみがな] いおんかえねるぎー
[英訳] ionization energy
イオン化エネルギーとは、原子、イオンなどから電子を取り去ってイオン化するために要するエネルギーのことを指す。ある原子あるいは分子がその電子をどれだけ強く結び付けているのかの目安である。有機半導体では基底状態のHOMOの電子を真空順位に取り出すのに要するエネルギーがイオン化エネルギーに相当する。通常、有機半導体材料では、イオン化エネルギーは4〜7eV 程度であり、キャリアの輸送特性の簡便な評価の目安として用いられる。バンドギャップが概ね一定の値である場合には、イオン化エネルギーが小さいほどHOMO準位が浅くなり(正孔を受け入れやすくなり)、イオン化エネルギーが大きいほどLUMO準位が深くなる(電子を受け入れやすくなる)。

イオン伝導
[よみがな] いおんでんどう
[英訳] ionic conduction
イオン結晶、電解質溶液、溶融塩などにおいては、イオンの運動によって電流が流れる。こうしたイオン伝導では、電流に伴って物質の移動が生じ、電極における化学変化がおきる。イオン結晶の格子間原子や空格子点の拡散による電気伝導度は、欠陥濃度をn、拡散係数をD、ボルツマン定数をkB、絶対温度をTとしてσ=ne2D/kBTで与えられ、欠陥濃度nと拡散係数Dの積に比例する。

イオン伝導体(イオン導電体)
[よみがな] いおんでんどうたい
[英訳] ion conductor
キャリヤーがイオンである伝導体。イオン伝導を示す物質とはその電気伝導が電子で はなくイオンの拡散に起因する物質を云う。このような物性をもつ物質に関しては、その物性・構造上の基礎的な研究から固体電解質としての応用研究まで幅広く研究されている。

位相弁別第二次高調波ボルタンメトリー(PSSH)
[よみがな] いそうべんべつだいにじこうちょうはぼるたんめとりー
[英訳] phase selective second harmonic voltammetry (PSSH)
直流電圧に交流電圧を印加し、交流電圧の2倍の周波数で電流値を観測する。電流電圧曲線は直流ポーラログラフィーの場合の微分形となり、横軸と交わる点が標準酸化(還元)電位を与える。電極反応が不可逆で直流法では正確な電位が求められない場合は、不可逆の原因となる電極反応の後続反応が追随できない高い周波数を用いて後続反応の影響を断ち切ることができる。

位置規則性(ポリマー)
[よみがな] いちきそくせい
[英訳] regio-regularity
高分子の位置規則性とは、高分子鎖において各モノマーがどのような向きで結合しているかを示す用語である。例えば、ポリチオフェン誘導体のpoly(3-hexylthiophene) (P3HT)においては、1つのヘキシル基がチオフェンに結合しており、これを重合させたときには、ヘキシル基同士が込み合う2-2'結合とヘキシル基同士が離れる4-2'結合が生じうる。この結合がランダムに形成される重合と規則性を持って形成される場合とでは、膜にしたときの高分子鎖の配列が大きく異なり、その電荷輸送性などに影響が大きい。高分子鎖の位置規則性を高めることはデバイス特性の向上に向けて重要である。

一光子吸収
[よみがな] いちこうしきゅうしゅう
[英訳] single-photon sbsorption
通常の光吸収のことで、光の照射により、分子はある瞬間に1個の光子を吸収する。一光子吸収では、基底状態の分子(対称性g)が直接吸収する光(振動数ν)を照射されると最低励起一重項状態の分子(基底状態と異なる対称性u)が生成し、発光する。

一重項
[よみがな] いちじゅうこう
[英訳] singlet
量子化学における多重度は、全スピン角運動量をSとしたとき、2S+1 で定義される。 多重度は、スピン角運動量の向きのみが異なる複数の縮退した量子状態(波動関数)を区別するために使われている。多重度は不対電子スピンの量の定量化で、フントの規則の結果である。全スピン角運動量Sは、単純には不対電子の数を2で割ったものである。全ての電子が対になっている場合は S=0 で、多重度は1である。この場合は一重項(singlet)と呼ばれる。分子が1個の不対電子を有している場合は S=1/2 で、多重度は 2S+1=2(二重項、doublet)である。不対電子が2個の場合は同様に三重項(triplet)と呼ばれる。偶数個の電子からなる分子の基底状態は、組立て原理とパウリの原理にもとづいて、電子は低いエネルギー準位の軌道から順に帰属していくが、同じ空間軌道に入る電子は互いに反平行スピンをもつようになるため、S=0 で、一重項状態になる場合が多い。最高被占軌道(HOMO)が縮退している場合や、奇数個の電子からなる分子の基底状態は多重度が大きくなる。

一重項 - 一重項エネルギー移動
[よみがな] いちじゅうこういちじゅうこうえねるぎーいどう
[英訳] singlet-singlet energy transfer
一重項励起状態にある分子A(1A*)が基底状態(一重項)にある別の分子B(1B)にエネルギーを移動して、Bの一重項励起子を生成するエネルギー移動過程(1A*+1B → 1A+1B*)。フェルスター(Forester)機構によるエネルギー移動が支配的である。有機ELにおいては、ホスト分子の発光スペクトルとゲスト分子の吸収スペクトルの重なりが大きいときに効率的に起こる。

一重項酸素
[よみがな] いちじゅうこうさんそ
[英訳] siglet oxygen
一重項酸素は、酸素分子の分子軌道のπ*軌道(反結合性のπ軌道)に入った2個の電子のスピンの向きが異なる一重項状態、すなわち、全スピン量子数が0である励起状態で、1O2で表される。このような励起状態には、2つ存在するπ*軌道のそれぞれに1つずつ異なる向きの電子が占有しているΣ1状態と、π*軌道の一方のみを2つの電子が占有しているΔ1状態が存在する。Δ1状態よりΣ1状態の方がエネルギーが高いため、Σ1状態は速やかにΔ1状態に遷移する。このため一重項酸素といえば通常Δ1状態のものを指す。一重項酸素(Δ1)は活性酸素の一種ではあるが、軌道上に単独の電子を持たず、フリーラジカルではない。

一重項励起状態/励起一重項状態
[よみがな] いちじゅうこうれいきじょうたい
[英訳] singlet excited state
一重項基底状態にある分子中の電子が光吸収などによってより高いエネルギー状態へ励起したとき、励起一重項状態または励起三重項状態となる。一重項状態は、すべての電子スピンが対になった分子状態である。一重項状態では、励起電子のスピンは基底状態電子のスピンと対(逆向き)となる。三重項状態では励起電子は基底状態の電子と対ではなくなり、平行スピン(同じ向きのスピン)となる。三重項状態への励起は、禁制遷移であるスピンの反転を含むため、分子が光吸収によって直接的に三重項状態を作る確率は低い。一方、一重項励起状態から系間交差により三重項励起状態に遷移しやすい化合物が知られている。

一重項励起子
[よみがな] いちじゅうこうれいきし
[英訳] singlet exciton
一重項励起状態にある分子のことを一重項励起子と呼ぶ。有機ELの内部において、電子とホールの再結合で分子が励起状態になる場合に、1:3の割合で一重項励起子と三重項励起子が生じる。一重項励起子と三重項励起子の違いは励起準位にある電子のスピンの向きが基底状態と違うか同じかということに起因している。再結合により分子が励起状態になったとき、励起準位にあるスピンの向きが打ち消し合っていれば、励起一重項状態である。スピンの向きが同じであれば、励起三重項状態である。

一重項励起子生成効率
[よみがな] いちじゅうこうれいきしせいせいこうりつ
[英訳] singlet exciton production efficiency
有機分子の励起状態には、一重項励起状態(S1)と三重項励起状態(T1)の二つのスピン多重度の異なる状態が存在する。通常の蛍光型素子において、生成された励起子のうちEL 発光として利用されうる一重項励起子の生成割合を、一重項励起子生成効率と定義している。電子と正孔の再結合による励起子生成過程では、スピン統計則に従って、一重項励起子が 25%の確率で、三重項励起子が 75%の確率で生成すると考えられている。

一重項励起子分裂
[よみがな] いちじゅうこうれいきしぶんれつ
[英訳] singlet fission
有機結晶やπ共役高分子などの分子集合体中で、一重項励起子が二つの三重項励起子へ分裂する現象は一重項励起子分裂(Singlet Fission)と呼ばれ、一つの光子から二つの電子・正孔対を生成できることから有機太陽電池への応用も期待されている。

移動度
[よみがな] いどうど
[英訳] mobility
キャリア移動度参照

移動度端
[よみがな] いどうどたん
[英訳] mobility edge
物質中のポテンシャルが無秩序な場合に、電子の波動関数は空間的に局在するが(アンダーソン局在)、局在状態とそうでない状態はエネルギー的にはっきりと分かれており、その境界のエネルギーのことを移動度端と呼ぶ。 フェルミ準位が移動度端の上か下かで電気的性質が大きく変わる。

異方性(移動度の異方性)
[よみがな] いほうせい(いどうどのいほうせい)
[英訳] anisotropy
異方性は物体の物理的性質が方向によって異なること。移動度異方性はキャリアの移動する方向によって移動度が異なること。

異方的、異方性
[よみがな] いほうてき、いほうせい
[英訳] anisotropic
ある対象の性質や分布が方向に依存しないときそれは等方的であるという。また、方向に依存するとき異方的であるという。水やガラスは光学的性質に関して向きによらないので等方的であるが、液晶や結晶は向きによって異なる偏光応答をするので異方的である。等方的な性質、異方的な性質をそれぞれ等方性、異方性と呼ぶ。

色温度
[よみがな] いろおんど
[英訳] color temperature
色温度とは、ある光源が発している光の色を定量的な数値で表現する尺度である。単位には熱力学的温度の K(ケルビン)を用いる。色温度は、表現しようとする光の色をある温度(高熱)の黒体から放射される光の色と対応させ、その時の黒体の温度をもって色温度とする。青い(短波長光)ほど高エネルギーであり、したがって色温度は高い。逆に、赤い(長波長光)ほど低エネルギーであり、色温度は低い。朝日や夕日の色温度はおおむね 2000 K であり、普通の太陽光線は 5000 - 6000 K である。

色空間
[よみがな] いろくうかん
[英訳] color space
自然界には色が無限に存在するが、例えば、ディスプレイが表現できる色の範囲は有限であり、色はデータで表す必要がある。物の位置を座標を用いて複数の数値を組み合わせて表すのと同様に、色も複数の数値を組み合わせて表しており、このような色の表し方は色空間、またはカラースペースと呼ばれる。代表的な色空間には RGB があるが、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3つの数値を組み合わせて色を表す。例えば、全ての数値が0の場合は黒色を表す。色空間が表せる色の範囲は色域と呼ばれ、色域は色空間の規格によって決まる。主な色空間の規格には、sRGB と Adobe RGB などがある。sRGB規格では、赤色は(0.64、0.33)、緑色は(0.30、0.60)、青色は(0.15、0.06)の3つの色度座標を三角形の頂点とした領域の色が表わされる。

色再現性
[よみがな] いろさいげんせい
[英訳] color reproducibility
ディスプレイがどの程度現実の色を再現しているかを表す指標である。色再現性は、色度座標において、ディスプレイの3源色である赤(R)、緑(G)、青(B)の3点が形成する三角形の大きさで評価され、三角形の面積が大きいほど、色再現性は良い。例えば、NTSC(National Television Standards Committee)規格では、R(0.67, 0.33)、G(0.21, 0.71)、B(0.14, 0.08)であり、白色はW(0.310, 0.316)と定義されており、NTSC比で100%や90%、110%などと表現される。

色変換方式
[よみがな] いろへんかんほうしき
[英訳] color conversion method
元となる発光体の色を変換する方式のことを指す。有機ELディスプレイにおいては、白色有機ELをカラーフィルタを通すことにより青、緑、赤の3色に変換することができる。また、青色有機ELを蛍光体を通して緑と赤色を得ることによって青、緑、赤の3色に変換する方式もある。

陰極(カソード)
[よみがな] いんきょく
[英訳] cathode
ダイオードでは、陰極(カソード)は外部回路へ電流が流れ出す電極のこと。外部回路から電子が流れ込む電極とも言える。電気分解や電池においては、カソードは電気化学的に還元が起こる電極である。有機EL素子の場合、陰極から有機物のLUMO準位に電子を注入する。

陰極材料
[よみがな] いんきょくざいりょう
[英訳] cathode material
有機EL素子では、陰極材料は効率よく電子注入を行う必要があるため、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの仕事関数が小さい金属が選択される。また、高反射性を考慮して、マグネシウムー銀(Mg:Ag)やリチウムーアルミニウム(Li:Al)などの合金やアルミニウムそのものがよく用いられる。

インク
[よみがな] いんく
[英訳] ink
インク とは顔料・染料を含んだ液体、ジェル、固体で、文字を書いたり表面に色付けするために用いられるものを指す。有機半導体の分野において、有機半導体を溶液あるいは分散液として、スピンコートやディップコートなどの塗布形成方法によって成膜できるようにした液体をインクと呼ぶことがある。

インク化
[よみがな] いんくか
[英訳] ink formulation
インク状態にすること。有機半導体を湿式法によって所望の基板上に形成するために、非常に重要度が高い技術である。例えば、導電性高分子をインク化して印刷法でパターンを描画する場合、目的とするデバイスの種類によって要求される解像度や線間距離は異なるが、高次構造制御、膜厚の均一性および基材との密着性はいずれのデバイスも重要である。また、インク化においては、インクの粘度および粘性挙動は用いる印刷法に合致しなけらばならないが、さらに、均一な薄膜を作るには、基材に対する濡れ性がポイントとなる。濡れ性が良ければ膜厚の均一性も良くなる。導電性高分子の印刷法としては、インクジェット法が使用される場合が多いが、インクの基材に対する濡れ性が悪いとドーナツ状にポリマーが析出するいわゆるコーヒーステイン現象が起こる。

インクジェット法
[よみがな] いんくじぇっとほう
[英訳] ink-jet technology
インクジェット法は、微小液滴を指定位置に滴下していく技術で、滴下した液同士を接するように配置することで、薄膜面を作製することができる。各箇所に滴下される液滴量のバラツキが小さく、滴下範囲は任意に大きくできるため、厚みの均一な大型薄膜面が作製可能である。薄膜面の厚みは、滴下する液滴サイズ、着滴間隔に依存する。

InGaAs太陽電池
[よみがな] いんじうむがりうむひそたいようでんち
[英訳] InGaAs solar cell
InGaAs(インジウムガリウムヒ素)を用いた太陽電池で、3層の結晶構造がほぼ一致するように原材料の元素を掛け合わせ、さらに層の間に緩衝材を入れて、層のひずみを解消した。2009年10月現在、世界最高の変換効率(35.8%)である。毒性のあるヒ素を使い、コストが高いので、用途は宇宙用に限られている。

インターレイヤー
[よみがな] いんたーれいやー
[英訳] Interlayer(IL)
インターレイヤーは、一般的な高分子塗布型の有機EL素子において、正孔注入層と発光層の間に挿入される層で、素子の発光効率を向上させる効果があることが知られている。インターレイヤーは、正孔輸送特性を有するだけでなく、電子及び励起子のブロック層としての機能も果たしており、正孔注入層による発光励起子の消光が抑制可能であることが観測されている。

インバータ
[よみがな] いんばーた
[英訳] inverter
直流電力を交流電力に変換する装置。インバータは逆変換という意味であることから、逆変換装置などとも呼ばれる。独立型太陽光発電におけるインバータとは、バッテリーから100V交流電源を生成する装置のことをいう。

インバランス
[よみがな] いんばらんす
[英訳] imbalance
インバランスとは、電力の需要量(使われる分)と供給量の差分のこと。発電量の計画値と実発電量が一致すればインバランス調整は発生しないため、発電量予測の高度化が求められる。中長期的には蓄エネとの連携により、天候の変化等があっても蓄エネで調整し、計画値と実発電量を一致させることも可能となり得る。

インピーダンス分光(IS)法
[よみがな] いんぴーだんすぶんこうほう
[英訳] impedance spectroscopy
インピーダンス分光(IS)法は、有機エレクトロデバイスに微小正弦波電圧を印加し、その応答電流の振幅と位相からインピーダンスを算出し、印加電圧の周波数の関数としてインピーダンススペクトルを得る測定法である。有機半導体層および電極/半導体層界面等のインピーダンスを時定数の違いにより分離することができる。インピーダンスには、有機エレクトロンデバイスの等価回路やキャリア移動度、再結合時間、局在状態分布などの情報が含まれており、簡便な測定でありながら種々の物理量を得ることができる。有機EL素子では、発光閾値電圧以下では発光が観測されないため、電子、ホールのいずれか一方のみが注入されている。このため、測定結果は単一キャリア注入モデルにより記述できる。

ウェアラブルデバイス
[よみがな] うぇあらぶるでばいす
[英訳] wearable device
ウェアラブルデバイスとは、手首や腕、頭などに装着するコンピューターデバイスで、代表例として、腕時計のように手首に装着するスマートウォッチ、メガネのように装着するスマートグラスが挙げられる。CPUやメモリなど、コンピューターを構成する部品の小型化が進んだことが背景にあり、新たなコンピューターデバイスとして開発が進められている。ウェアラブルデバイスの用途は幅広く、受信したメールを読む、あるいはSNSに投稿されたメッセージをチェックするなどスマートフォンと同様の使い方のほか、ジョギングやスイミングなどの運動を記録する、心拍や脈拍、睡眠時間などを捕捉して健康維持に役立てる、現実世界のモノに仮想空間の情報を重ね合わせて表示するなど、さまざまな領域での利用が考えられている。

エアマス(AM)
[よみがな] えあます
[英訳] Air Mass (AM)
エアマス(AM)は太陽光スペクトルを扱う時の、大気の条件を表わすもので、AMの後の数字が太陽光が地表に到達するまでに通過する大気の量(エアマス)を表す。AM0は大気を通過しない、つまり大気圏外での太陽光スペクトルを示す。AM1は地表に垂直に入射した場合の太陽光スペクトルで、大気は地球表面をほぼ一定の厚さで覆っているため、太陽光は最短距離で地表に到達し、通過する大気の量がもっとも少なくなる。いつもAM1のような状態であるのは赤道直下のような場所だけ、日本のような緯度が高い場所では太陽光が通過する大気の量はこれより多くなり、通常は1.5倍のAM1.5(太陽の高度が41.8°の状態)を標準的な地表の太陽光スペクトルとして使っている。AM1.5Gは、AM1.5について直接光と散乱光の補正を行ったものである。

永久双極子
[よみがな] えいきゅうそうきょくし
[英訳] permanent dipole
外部電場または外部磁場に関係なく自然の状態で存在する双極子。微小な電気双極子には永久双極子と誘起双極子があり、誘起双極子は電場によって誘起される。水や塩化水素などの分子は永久双極子をもち,有極性分子と呼ばれる。有極性分子は電場がないとき,いろいろな向きをもち,その和はゼロとなるが,電場が加わると電場に平行な向きをもつ永久双極子が多くなり,誘電分極が現れる。これを配向分極と呼ぶ。これに対し誘起双極子による分極は電荷の変位によるもので変位分極と呼ぶ。磁気双極子が外部磁場に関係しないときも永久双極子と呼ばれる。

エキサイプレックス(エキシプレックス)
[よみがな] えきさいぷれっくす
[英訳] exciplex
励起錯体ともいう。分子Aが電子的に励起されて A*になり、近傍にあるほかの分子Bと錯体を形成するとき、この錯体をエキシプレックスという。

エキサイプレックス(エキシプレックス)発光
[よみがな] えきさいぷれっくすはっこう
[英訳] exciplex emission
エキサイプレックス励起状態が基底状態へと遷移する際に発する光をエキサイプレックス発光と呼ぶ。

エキサイマー(エキシマー)
[よみがな] えきさいまー
[英訳] excimer
分子Aが電子的に励起されてA*になり、近傍にある同種の分子Aと二量体を形成するとき、エキシマーあるいは励起二量体という。

液晶
[よみがな] えきしょう
[英訳] liquid crystal
液晶は、液体と結晶の間に出現する中間相の一種である。細長い分子や円盤状の分子が、分子の方向はある規則に従って並んでいるが、重心位置には結晶のような3次元秩序を持たない状態の総称である。液晶は分子の重心の規則性の程度において、重心位置の秩序が普通の液体と同様に存在しないネマチック液晶、1次元の重心位置秩序を持つスメクチック液晶、2次元の重心位置秩序を持つカラムナー液晶に分類される。

液晶高分子
[よみがな] えきしょうこうぶんし
[英訳] liquid crystal polymer
液晶高分子は液晶相を形成しうる高分子である。高分子液晶、液晶性高分子などとも呼ばれる。

液晶性
[よみがな] えきしょうせい
[英訳] liquid crystallinity
一般の物質は、融点において、3次元的な長距離の秩序性をもつ結晶から、ランダムな分子凝集形態をとる液体へと転移する。有機物の中には、結晶から温度を上げると、結晶にみられる分子配向や分子位置に関する秩序性の一部が失われ、ランダムな凝集形態をとる液体に比べて秩序性をもつ凝集状態(液晶相)が自発的に形成されるものがある。このような凝集状態(液晶相)を発現する特性を液晶性という。液晶性は、芳香環などからなる棒状、あるいは、円盤状の分子構造に柔軟な炭化水素鎖を置換した構造を持つ分子にしばしば現れる。液晶相は多様で、液晶表示に用いられる配向秩序性のみを残し、液体性の強いネマチック相から、結晶にきわめて近い秩序性を持つスメクチックE相など、多数の液晶相が知られている。

液晶性有機半導体
[よみがな] えきしょうせいゆうきはんどうたい
[英訳] liquid crystalline organic semiconductors
ある温度領域で液晶相を示す有機半導体物質が液晶性有機半導体である。液晶性有機半導体は、液晶相を発現する温度領域では、分子が自己組織的に配向した液晶相と呼ばれる結晶よりもやわらかい分子凝集相を形成する。液晶性半導体では分子間を電荷がホップして移動する(電子的伝導)ことにより高速の電荷移動が起こり、シリコン半導体とは電荷移動のプロセスが異なる。液晶性半導体は、液晶特有の自発的配向性によって比較的容易に液晶分子の方位を制御でき、また、化学構造的特徴から多様な有機溶媒に高い溶解性を示すなどの特長をもつ。

液晶半導体
[よみがな] えきしょうはんどうたい
[英訳] liquid crystal semiconductor
液晶材料は、主な用途であるディスプレイへの応用や、それ以外にも、半導体としての応用も期待されている。液晶性を有する半導体は液晶半導体と呼ばれ、液晶分子の持つ自己組織化能によって自発的に分子配向を実現できる系として研究が行われている

液体有機EL素子
[よみがな] えきたいゆうきいーえるそし
[英訳] liquid organic EL device
有機溶媒を必要とせず、常温で液体の有機半導体を発光材料として用いる有機EL素子。

エスカ(ESCA)
[よみがな] えすか
[英訳] Electron Spectroscopy for Chemical Analysis(ESCA)
X線光電子分光法参照

ST吸収
[よみがな] えすてぃきゅうしゅう
[英訳] ST absorption
基底状態から最低励起三重項状態への光学的遷移のこと。禁制遷移のため、一般に吸収確率は小さい。

SDGs
[よみがな] えすでぃじーず
[英訳] Sustainable Development Goals(SDGs)
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本としても積極的に取り組んでいる。

ST分裂
[よみがな] えすてぃぶんれつ
[英訳] ST split
ある物質を電子的に励起した際の最低励起状態において、そのエネルギー準位が励起一重項状態(電子対のスピン向きが逆)と励起三重項状態(電子対のスピンの向き同じ)に分かれること。そのエネルギー差(ΔEst)は、一重項励起状態のエネルギーから三重項励起子のエネルギーを差し引いたものである。有機半導体では、励起子の結合エネルギーが大きく、ΔEstは一般に大きい。有機分子のST分裂は、遷移した電子と残された電子の交換訴力に由来するので、HOMOとLUMOの軌道の重なりが大きいほど大きくなる。

X線回折
[よみがな] えっくすせんかいせつ
[英訳] X-ray diffraction(XRD)
X線回折は、X線が結晶格子で回折を示す現象である。1912年にドイツのマックス・フォン・ラウエがこの現象を発見し、X線の正体が波長の短い電磁波であることを明らかにした。この現象を利用して物質の結晶構造を調べることが可能である。このようにX線の回折の結果を解析して結晶内部で原子がどのように配列しているかを決定する手法をX線結晶構造解析あるいはX線回折法という。略してX線回折とも言われる。

]線結晶構造解析
[よみがな] えっくすせんけっしょうこうぞうかいせき
[英訳] X-ray crystallography( XRC)
X線を物質に照射すると、その一部は原子核の周囲にある電子によって散乱される。とくに原子や分子が3次元的に並んだ結晶に照射すると、特定の方向のみに散乱されたX線が干渉し強め合う回折が起きる。この回折の起きる方向とその強さには、結晶中の電子の分布についての情報が含まれている。すなわち回折X線を測定しコンピューターで解析することで、結晶中の電子の分布、さらには原子の配置を決定することができる。このようにして分子の三次元構造を決定する方法がX線結晶構造解析法である。

X線光電子分光法
[よみがな] えっくすせんこうでんしぶんこうほう
[英訳] X-ray Photoelectron Spectroscopy (XPS) / Electron Spectroscopy for Chemical Analysis (ESCA)
X線光電子分光法(XPS)は、ESCAとも呼ばれる表面分析手法のひとつで、試料表面から数nm程度の元素組成及び化学状態(価数や結合状態)に関する情報を得ることができる。超高真空状態で、固体試料表面に軟X線(MgKα線やAlKα線)を当てると、光電効果により、表面物質中の原子に束縛されている電子は、X線のエネルギーによって真空中に飛び出す(光電子)。電子の結合(束縛)エネルギーは、元素固有のエネルギーを持つため元素の定性ができる。また、化学状態の違いが、結合エネルギーのシフト(化学シフト)として現れるため、元素の価数や結合状態がわかる。

XPS
[よみがな] えっくすぴーえす
[英訳] X-ray Photoelectron Spectroscopy(XPS)
X線光電子分光法参照

edge-on 配向
[よみがな] えっじおんはいこう
[英訳] edge-on orientation
edge-on 配向とは、ある平面に対して芳香環が垂直に立って配列する構造を指す。例えば、 有機トランジスタにおいて、poly(3-hexylthiophene)(P3HT)をゲート絶縁層に対してedge-on配向させると、ソースードレインのチャネル方向に対して並行にチオフェン環が並ぶため、キャリア移動度が向上することが知られている。

edge-to-face
[よみがな] えっじつーふぇいす
[英訳] edge-to-face
分子配列において、分子の端(edge)が隣の分子の面(face)と接するような配列。

n型半導体
[よみがな] えぬがたはんどうたい
[英訳] n-type semiconductor
n型半導体とは、電子が多数キャリアとして電荷を運ぶ半導体である。負の電荷を持つ自由電子がキャリアとして移動することで電流が生じる。 例えば、シリコンなど4価元素の真性半導体に、微量の5価元素(リン、ヒ素など)を不純物として添加することでつくられる。5価の元素の添加により生じる余剰電子は、伝導帯のすぐ下にあるドナー準位に収容される。このドナー準位と伝導体のバンドギャップは小さいため、ドナー準位の電子は熱や光エネルギーを受けて伝導帯に励起され、自由電子となって電気伝導性を与える。n型半導体をつくる為の不純物をドナーといい、この不純物より形成された準位をドナー準位という。負( negative)の電荷を持つ自由電子が多数キャリアであることから、英語の頭文字をとってn型半導体と呼ばれる。有機半導体におけるn型半導体は、一般に電子アクセプター性のπ電子系有機化合物のことを指し、LUMOが真空準位に対して深いエネルギー準位に位置し、電子を他の分子から受け取りやすい性質を特徴とする。n型有機半導体は、電子を与えた後にラジカルアニオン(負の荷電体)となり、これが有機半導体の電子として機能する。

n型有機半導体
[よみがな] えぬがたゆうきはんどうたい
[英訳] n-type organic semiconductor
n型半導体参照

n型有機半導体材料
[よみがな] えぬがたゆうきはんどうたいざいりょう
[英訳] n-type organic semiconductor material
電子を受け入れやすく(注入されやすく)、電子をメインキャリアとして輸送する性質をもつ有機半導体材料を指す。

nチャネルトランジスタ
[よみがな] えぬちゃねるとらんじすた
[英訳] n-channel transistor
電界効果トランジスタのドレイン・ソース間の電流が流れる領域をチャネルという。n型チャネルでは負電荷を帯びた電子がキャリアとなる。これに対し、p型チャネルではホール(正孔)がキャリアとなる。

NTSC比
[よみがな] えぬてぃえすしーひ
[英訳] NTSC ratio
色再現性を表現する方法で、NTSC色座標の三角形の面積と比較する方法。例えば、「色再現範囲はNTSC比70%」のように表現する。

N-1電制
[よみがな] えぬわんでんせい
[英訳] N-1 generation control
N-1電制とは、送変電設備で故障が発生した場合、リレーシステムで送電線への接続を瞬時に制限することで、緊急時用に空けておいた容量の一部を活用し、運用容量を拡大する手法をいう。再エネの導入拡大に向け、既設送電線を有効活用し流通設備効率の向上を目指す「日本版コネクト&マネージ(C&M)」での取り組みのひとつとして採用されている。これまでの送電線の運用方法は、太陽光発電や風力発電、火力発電などの接続電源が最大出力となった場合でも送電できる容量を確保するとともに、送電線1回線が故障した場合などの緊急時でも、他の送電線で電気を供給できるよう、原則として1回線分(50%)の容量を緊急時用として確保するものだった。これに対しN−1電制は、送電線の最大容量(2回線分)を上限に送電線への電源接続を認める一方、送電線の事故が発生した場合には、1回線分の容量まで電源を制限することで、既設の送電設備を最大限活用しながら電源の接続可能量を拡大するしくみをいう。

エネルギー・アズ・ア・サービス(EaaS)モデル
[よみがな] えねるぎーあずあさーびすもでる
[英訳] Energy as a Service model(EaaS model)
事業者が太陽光発電や蓄電池を需要家の屋根等に無償で設置し、その電力を需要家に自家消費してもらうことで、需要家から実質電気料金として太陽光発電や蓄電池の費用を回収するモデル。分散型電源が事業者の所有、管理となることで、それらの電源を活用してアグリゲーションビジネスへ展開することも想定される。

エネルギー移動
[よみがな] えねるぎーいどう
[英訳] energy transfer
異なる分子や原子、イオンの間でエネルギーを交換する現象。一般に、エネルギーは高いエネルギーを持つものから、低いエネルギーを持つものへ移動する。主な機構として、共鳴エネルギー移動(フェルスター機構)と電荷移動(デクスター機構)が知られている。

エネルギー基本計画
[よみがな] えねるぎーきほんけいかく
[英訳] basic energy plan
エネルギー基本計画は、エネルギー政策の基本的な方向性を示すもので、エネルギー政策基本法に基づき政府が策定する。脱炭素化に向けた世界的な潮流、国際的なエネルギー安全保障における緊張感の高まりなどを背景とした2018年の第5次エネルギー基本計画策定時から、エネルギーをめぐる情勢変化や日本のエネルギー需給構造が抱える様々な課題を踏まえ、総合資源エネルギー調査会において検討を深めて、第6次エネルギー基本計画が2021年10月22日に閣議決定された。

エネルギーギャップ
[よみがな] えねるぎーぎゃっぷ
[英訳] energy gap
固体物理学においてエネルギーギャップとは、固体中の電子状態(状態密度)が存在しないエネルギー範囲、エネルギーの大きさを指す。物質のバンド構造にエネルギーギャップ(バンドとバンドの間の隙間)が存在するとき、それをバンドギャップと呼ぶ。 有機半導体においては、多くの場合、HOMOとLUMOのエネルギー差を指すことが多い。

エネルギー供給構造高度化法
[よみがな] えねるぎーきょうきゅうこうぞうこうどかほう
[英訳] Sophisticated Methods of Energy Supply Structures
エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用、及び化石エネルギー原料の有効利用の促進に関する法律で、「再生可能エネルギー源」について、 「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの」と定義されており、政令において、太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存在する熱・バイオマスが定められている。

エネルギ ー(ポ テ ンシ ャル)障壁
[よみがな] えねるぎーしょうへき
[英訳] energy barrier
何らかの物理的な移動を阻害するように働く障壁全般を指す。有機半導体分野においては、電荷移動を阻む障壁を指すことが多い。電極から有機半導体への電荷注入の障壁とある有機半導体から別の有機半導体への電荷注入の障壁の両方を含む。電子の注入障壁には、電極の仕事関数と有機半導体のLUMO準位が関係しており、正孔の注入障壁には電極の仕事関数と有機半導体のHOMO準位が関係している。

エネルギーバンド
[よみがな] えねるぎーばんど
[英訳] energy band
原子は原子核とその周りの軌道上の電子で構成され、それぞれの軌道は不連続的な飛び飛びの値をもつ。電子が取ることのできるエネルギーをエネルギー準位と呼び、原子が多数集まって結晶を構成すると、このエネルギー準位は連続的に分布し、バンド(帯)状の準位を作る。これがエネルギーバンドである。金属では、エネルギーバンド中にフェルミ準位があり、価電子を含むバンド内に空き準位があるため、価電子がそのまま伝導電子(自由電子)となる。一方、半導体や絶縁体では、伝導体と価電子帯の間の禁制帯(バンドギャップ)中にフェルミ準位があるため、価電子にバンドギャップを超えるエネルギーを与え、価電子帯から伝導帯へ励起することで、初めて伝導電子が得られる。半導体は、常温で、熱等の運動エネルギーにより価電子帯の電子の一部が伝導帯に励起されて若干の電気伝導を示す。また、価電子帯から励起した電子の抜け殻にホール(正孔)が発生し、正の荷電粒子の様に振る舞って電気伝導に寄与する。

エネルギー分散
[よみがな] えねるぎーぶんさん
[英訳] energy dispersion
多くの結晶性有機半導体において、電子は分子内に局在していると考えられているが、一部の材料の結晶においては、無機半導体と同様に波動関数がバンドを形成する。バンド構造においては、波動関数は結晶全体に広がったブロッホ(Bloch)波となっており、エネルギー準位が電子の運動量の関数として変化する。この関係はエネルギー分散と呼ばれ、移動度などのキャリア輸送特性を決める重要な要因となっている。

エネルギー分散型X線分析(EDX、EDS)
[よみがな] えねるぎーぶんさんがたえっくすせんぶんせき
[英訳] Energy Dispersive X-ray Spectroscopy(EDX、EDS)
エネルギー分散型X線分析(EDX、EDS)は、広義の意味として、電子線やX線などの一次線を物体に照射した際に発生する特性X線(蛍光X線)を半導体検出器に導入し、発生した電子-正孔対のエネルギーと個数から、物体を構成する元素と濃度を調べる元素分析手法である。一般的に、電子線を一次線として用いた場合を指すことが多く、X線を一次線として用いる場合をエネルギー分散型蛍光X線分析 (ED-XRF) と呼ぶ。有機ELなどの有機エレクトロニクスデバイスにおいては、深さ方向の元素濃度を測定することで、層間の侵入長や元素の拡散長などを評価することができる。

Energy Pay Back Time
[よみがな] えねるぎーぺいばっくたいむ
[英訳] Energy Pay Back Time
シリコン系太陽電池モジュールにおいて、温室効果ガスの排出は、製造時に 600 ~ 1,400kg-CO2/kW とされ(みずほ情報総研、太陽光発電のライフサイ クル評価に関する調査研究、2008年3月)、運転時はほぼゼロである。製造時に使用するエネルギーと発電電力を比べ、消費電力分の発電を行う期間を評価する Energy Pay Back Time は 0.7 ~ 2.0年とされる(Fraunhofer ISE Photovoltaic Report 2019年11月)。

エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)
[よみがな] えねるぎーりそーすあぐりげーしょんびじねす
[英訳] Energy Resource Aggregation Businesses(ERAB)
ERABは、VPP(バーチャルパワープラント)やDR(デマンドレスポンス)を用いて、一般送配電事業者、小売電気事業者、需要家、再生可能エネルギー発電事業者などの取引先に対し、調整力、インバランス回避、電力料金削減、出力抑制回避等の各種サービスを提供する事業のことをいう。

エピタキシャル技術
[よみがな] えぴたきしゃるぎじゅつ
[英訳] epitaxial technique
単結晶基板上にその結晶と同一方位をもつ単結晶を成長させる技術のこと。成長層が基板結晶と同一材料の場合をホモエピタキシャル成長(homo-epitaxial growth) 、異種材料の場合をヘテロエピタキシャル成長(hetero-epitaxial growth)と呼び区別している。エピタキシャル成長技術は特に半導体デバイス製作にとって不可欠の重要な技術である。成長方法には多くの種類があるが、目的とする結晶ならびにデバイス製作に最適の方法がとられる。このなかで応用上特に重要な方法は、気相エピタキシャル法における化学的熱分解法や化学蒸着法 (chemical vapor deposition法,CVD法)、あるいは液相エピタキシャル法における溶液再結晶化法 (solution regrowth法) である。

エピタキシャル成長
[よみがな] えぴたきしゃるせいちょう
[英訳] epitaxial growth
エピタキシャル成長とは、薄膜結晶成長技術のひとつである。基板となる結晶の上に結晶成長を行い、下地の基板の結晶面にそろえて配列する成長の様式である。基板と薄膜が同じ物質である場合をホモエピタキシャル、異なる物質である場合をヘテロエピタキシャルと呼ぶ。結晶成長の方法として分子線エピタキシー法や有機金属気相成長法、液相エピタキシー法などがある。エピタキシャル成長が起こるには格子定数のほぼ等しい結晶を選ぶ必要があり、温度による膨張係数の近い物でなくてはならない。なお、現在窒化ガリウム(GaN)はサファイア基板上に結晶成長をする方法が広く採られているが、両者の格子定数は大きく違うこと等があり、通常の方法ではエピタキシャル成長できない。これを解決するために赤崎勇が低温バッファー層を導入したことによりサファイア基板上にGaNをエピタキシャル成長することに成功した。GaNのエピタキシャル成長が成功したことにより窒化物系半導体を用いた発光ダイオード、レーザーダイオード、電子デバイス、受光素子の発展へとつながった。

FET(電界効果トランジスタ)
[よみがな] えふいいてぃ
[英訳] Field Effect Transistor (FET)
電界効果トランジスタを参照。

MIS構造キャパシタ
[よみがな] えむあいえすこうぞうきゃぱした
[英訳] MIS structure capacitor
MIS構造とは、金属電極(Metal)/ 絶縁層 (Insulator) /半導体層 (Semiconductor) 積層構造のことであり、一般にキャパシタ(コンデンサ)として動作する。

MLCT遷移
[よみがな] えむえるしーてぃせんい
[英訳] metal‐ligand charge transfer transition
電荷移動遷移参照

MOCVD(有機金属気相成長法)
[よみがな] えむおーしーぶいでぃー
[英訳] Metal Organic Chemical Vapor Deposition
有機金属原料を用いた気相成長法で、GaAs (ガリウムヒ素) や AlGaAs (アルミニウムガリウムヒ素) などのエピタキシャル結晶を成長させる量産性に優れた方法である。通常、Al (アルミニウム)、Ga (ガリウム)、In (インジウム) などの III族元素のアルキル化合物は常温で液体であり、キャリアガスによってバブリングさせ、反応チャンバに送る。V族の元素である As (ヒ素)、P (リン) などは水素化物原料を利用する。比較的低温度で結晶成長が可能であり、不純物プロファイルを急峻にできる。異種基板へのヘテロエピタクシーが可能であり、ハロゲン化物を使う CVDと比べて基板や石英反応管のエッチングがない特長がある反面、成長層に炭素が混入するなどの問題がある。ガスの流量や、温度、圧力、基板温度などを制御することで、他の方法に比べて大面積に、効率よく、均質な薄膜結晶を作成でき、単一原子層での制御も可能である。化合物半導体や、半導体レーザー、紫外・青色・白色LEDなどの量産に使用されている。

エレクトロルミネッセンス
[よみがな] えれくとろるみねっせんす
[英訳] electroluminescence (EL)
エレクトロルミネセンス(EL)とは、主に半導体中において、電界を印加することによって得られる発光を指す。注入型と真性に分類される。 注入型ELは電界によって電子と正孔を注入し、その再結合によって発光をさせるものである。一方真性ELは電界によって加速した電子が何らかの発光中心に衝突し、その発光中心が励起されて発光するものである。なお発光物が有機物か無機物かで区別され、前者は有機EL、後者は無機ELと呼ばれる。一般的には、有機ELといえば注入型、無機ELといえば真性ELを指す。なお、無機半導体の注入型のELは発光ダイオードと呼ばれる。

演色性
[よみがな] えんしょくせい
[英訳] color rendering
演色性とは、照明で物体を照らすときに、自然光が当たったときの色をどの程度再現しているかを示す指標で、平均演色評価数(Ra)を使って表すのが一般的。 Ra100は、自然光が当たったときと同様の色を再現していることを意味する。

エンタルピー
[よみがな] えんたるぴー
[英訳] enthalpy
熱含量ともいう。熱力学的関数の一つで、記号H。H=U+pV で定義される。Uは内部エネルギー、pは圧力、Vは体積である。定圧下における有限の変化に対するエンタルピー変化は、僣=儷+p(儼)。化学の問題で重要なのはHの絶対値ではなく、その変化僣である。エンタルピーはエネルギーの次元をもち、物質の発熱・吸熱挙動にかかわる状態量である。等圧条件下にある系が発熱して外部に熱を出すとエンタルピーが下がり、吸熱して外部より熱を受け取るとエンタルピーが上がる。

エントロピー
[よみがな] えんとろぴー
[英訳] entropy
熱現象に特有な不可逆性(非可逆性ともいう)を数量的に表現するために導入された量。絶対温度Tの物体が熱量Qを受けたとき、物体のエントロピーはQ/Tだけ増し、熱量Q'を放出するときエントロピーはQ'/Tだけ減少すると定める。物体が熱平衡状態にあるということは、温度や圧力や体積が指定できるということであるが、一つの熱平衡状態Aから別の熱平衡状態Bへ変わったときの物体のエントロピー変化は、AからBへきわめてゆっくり変化させていく過程を考えて、その途中で出入する熱量をそのときどきの温度で割ったものの代数和として計算する。変化がゆっくりでないと、場所によって不均一を生じ、物体の温度が定められないからである。

円盤状分子液晶
[よみがな] えんばんじょうぶんしえきしょう
[英訳] discotic molecular liquid crystal
円盤状分子も棒状分子と同様に液晶状態となることが確認されている。盤状分子が形成するディスコチック液晶には、分子が積み重なって円柱(カラム)を形成しているディスコチックカラムナー(D)相と、柱状構造が失われて円盤の配向秩序のみが維持されているディスコチックネマチック(ND)相がある。

O&M
[よみがな] おーあんどえむ
[英訳] Operation & Maintenance
O&Mとは、Operation(オペレーション)と Maintenance(メンテナンス)の略で、太陽光発電においては、太陽光発電所の【運用管理】と【保守点検】をさす。

OFET
[よみがな] おーえふいーてぃ
[英訳] Organic Field Effect Transistor(OFET)
有機電界効果トランジスタ参照

OLED
[よみがな] おーえるいーでー / おーれっど
[英訳] OLED(Organic Light Emitting Diode)
OLEDとは Organic Light Emitting Diode の略で、発光材料に有機物質(Organic)を使ったLED(発光ダイオード)という意味。OLED は電流を流すと自ら発光する素子で、電流による発光はエレクトロルミネッセンス(Electroluminescence(EL))と呼ばれる。有機ELと同義語と考えてよい。海外ではOLEDの方がよく使われるが、日本では一般的に有機ELと呼ばれることが多い。

オーミック接触
[よみがな] おーみっくせっしょく
[英訳] ohmic contact
オーミック接触とは、オームの法則に従って線型の電流-電圧 (I-V) 曲線を持つ2つの導体の間の電気的接合で、整流作用の無い接合である。抵抗の小さいオーミック接触は、電荷が2つの導体間のどちらの方向へも流れやすくし、整流による遮断や電圧しきい値による余剰電力損失を無くすために用いられる。一般的に「オーミック接触」という言葉は、オーミックな振る舞いの達成に技術を要する半導体と金属のオーミック接触を暗に指している。

オーミック電流
[よみがな] おーみっくでんりゅう
[英訳] ohmic current
オームの法則に従って流れる電流。

オーム則
[よみがな] おーむそく
[英訳] Ohm's law
オームの法則とは、導電現象において、電気回路の部分に流れる電流とその両端の電位差の関係を主張する法則である。有機EL素子においては、その伝導電流(オーミック電流)Jは、次のオーム則によって表わされる。J=en(V/L)μ ここで、e:電気素量、n:キャリア密度、V:印加電圧、L:薄膜の膜厚、μ:キャリア移動度。

オフグリッド
[よみがな] おふぐりっど
[英訳] off-grid
オフグリッドとは、電力会社の送電網につながっていない状態、あるいは電力会社に頼らず電力を自給自足している状態を指す。グリッドとは送電系統(電線を伝って電力会社から家などに送られる電力網)を指し、その送電系統と繋がっていない(オフ)状態のことをオフグリッドという。オフグリッドシステムは電力会社の電力に頼らず、身近にある太陽光や風力などの自然エネルギーを電力に変え使用する事ができる。環境に負担をかけない自然エネルギーを主電源とし、電気の自給自足を可能にするため、どんな場所でも安定した電源を確保できる画期的なシステムである。現在では、平時は送電系統に繋いで系統電力と自家発電を共存しつつ、緊急時には完全にオフグリッドの状態で自給自足できるシステムが普及してきた。

オプティカルデバイス(光デバイス)
[よみがな] おぷてぃかるでばいす
[英訳] optical device
光を用いた素子の総称。半導体レーザー・光導波路・光フィルター・光スイッチ・光変調器・光アイソレーターなどの素子を含み、これらの機能を集積化した光集積回路(OIC)や装置を意味することもある。

オリゴマー
[よみがな] おりごまー
[英訳] oligomer
オリゴマーは一般に、比較的少数のモノマーが結合した重合体のこと。モノマーの数に応じて、ダイマー(二量体)、トリマー(三量体)、テトラマー(四量体)・・・ などと呼ぶこともある。化学分野では、有限個(一般的には10個から100個)のモノマーが結合した比較的分子量が低い重合体を指す。オリゴマーに対してポリマーは非常に多数(数100個以上)のモノマーが結合した状態のことをいう。しかし、それほど明確な境界線を持つわけではなく、主観的な側面もある。

ON/OFF比
[よみがな] おんおふひ
[英訳] on/off ratio
電界効果トランジスタのON/OFFは、ゲート電極への電圧印加の有無(ON/OFF)に対するソース電極・ドレイン電極間の電流値の比である。

オンサーガーの相反定理
[よみがな] おんさーがーのそうはんていり
[英訳] Onsager reciprocal relations
オンサーガーの相反定理とは、熱力学において、平衡から外れているが局所的に平衡状態にあるとみなせる系での、流れと熱力学的な力との関係に関する定理である。熱力学的な力とは、たとえば系の温度や圧力の勾配のことである。系内に温度差があれば高温部から低温部へ熱の流れが生じ、圧力差があれば高圧部から低圧部へ物質の流れが生じる。そして温度と圧力の両方に差がある場合には、圧力差が熱の流れを生み出し温度差が物質の流れを生み出すという「交差関係」が実験的に明らかにされている。 ここで、圧力差当りの熱の流れと温度差当りの密度(物質)の流れが等しい、というのが相反定理である。同じような相反関係は他の様々な力と流れの間にも成り立つ(たとえばゼーベック効果とペルティエ効果など)。

オンサイト発電
[よみがな] おんさいとはつでん
[英訳] on-site power generation
敷地内(オンサイト)に再エネ電源を設置し、自家消費するモデル。

オンサイト発電事業
[よみがな] おんさいとはつでんじぎょう
[英訳] on-site power generation business
顧客の敷地の一部を借り受け、事業を行う業者が発電設備を設置・所有し、エネルギー・サービスを行う事業のこと。通常は、発電だけでなく、効率的な排熱利用を目的としたコ・ジェネレーションシステム等の導入も進めていく。

温度依存性性試験
[よみがな] おんどいぞんせいしけん
[英訳] temperature dependence test
有機EL素子は、他の素子と同様、素子温度が高くなればなるほど素子寿命が短くなる。寿命の温度依存性評価からは、単に温度依存性がわかるだけでなく、活性化エネルギーなどの熱力学的な知見が得られる。温度依存性試験は、素子の特性を知るうえで重要な評価項目の1つである。

カーフロス
[よみがな] かーふろす
[英訳] kerf loss
太陽電池用材料のシリコン基板はインゴットと呼ばれる結晶体の塊からマルチスライス(多数枚切断)して製造されている。カーフロスは切断溝幅(切り代)のことで、カーフロスは材料のロスとなるため、太陽電池パネルの製造コスト低減のためにはできるだけ小さくする必要がある。

カーボンナノチューブ
[よみがな] かーぼんなのちゅーぶ
[英訳] carbon nanotube
カーボンナノチューブ(CNT)は炭素のみで構成されている直径がナノメートルサイズの円筒(チューブ)状の物質。CNTは炭素原子が六角形に配置されたベンゼン環を平面上にすべて隣り合うように並べたシートを円筒状に丸めた構造をしている。この筒が1層のものが単層CNT、直径の異なる二本の筒が入れ子のように重なったものが二層CNT、さらに直径の異なる複数の筒が層状に重なったものが多層CNTである。CNTは強固な化学結合によって形作られているため、化学的にも、熱的にも非常に安定している。CNTは密度がアルミニウムの半分程度と非常に軽いにもかかわらず、強度が鋼の約20倍、また、銅の1000倍以上という高い電流密度耐性があり、さらに銅よりも高い熱伝導性を備えている。単層のCNTはシートの丸め方によって、電気を通す金属的な性質のものだけでなく半導体的な性質を持つものができる。単層CNTを作るとこの両者が混ざったものができるので、半導体的な性質のものだけを取り出し、半導体材料とすることができる。現時点では単層CNTを半導体型と金属型に作り分ける技術は確立されていない。

会合体
[よみがな] かいごうたい
[英訳] aggregate
同種の分子が2個以上比較的弱い分子間力によって集合し、一つの単位として行動している状態を会合と言い、このような単位を会合体という。会合体を構成している分子の数(会合度)が少ないとき、その数によって二量体、三量体などと呼ぶ。色素の会合体では、単量体に比べて光吸収スペクトルが長波長側にシフトするJ会合体と短波長側にシフトするH会合体がある。

開口率
[よみがな] かいこうりつ
[英訳] aperture ratio
開口率とは、画素面積に対する発光面積の割合である。発光面積が大きいほど、個別の画素の輝度は低くて済む。アクティブマトリックス型有機ELディスプレイにおいては、ボトムエミッション型に対して、トップエミッション型は開口率を大きくするために有効である。

外部量子効率
[よみがな] がいぶりょうしこうりつ
[英訳] external quantum efficiency
外部量子効率(η(ext))は、有機ELにおいては、発光性能を示す重要な指標であり、η(ext) = (素子から取出したフォトン数) / (素子に注入したキャリア数)で定義される。また、次式で表わすことができる。η(ext) = γ x β x φ x η(p) ここで、γ:キャリアバランス因子、β:キャリア再結合による励起子の生成確率、φ:発光材料の発光量子収率、η(p):光取出し効率。この関係より、発光層に蛍光発光材料を用いた場合の外部量子効率の理論限界値は、η(p)の最大値を20%とすると、η(ext) = γ(100%) x β(25%) x φ(100%) x η(p)(25%)=5% となる。太陽電池では、電流密度(単位時間、単位面積を流れる電荷量)を単位時間、単位面積に素子に照射された光の量(透過光、散乱光も含めた)で割った値である。

外部量子収率
[よみがな] がいぶりょうししゅうりつ
[英訳] external quantum yield
量子収率参照

開放電圧
[よみがな] かいほうでんあつ
[英訳] open circuit voltage
太陽電池の外部に流す電流が0Aの時の電圧を開放電圧と呼ぶ。太陽電池の性能の一つの指標となる。有機薄膜太陽電では、開放電圧は、正極と負極との仕事関数の差、およびドナーのHOMOとアクセプターのLUMOのエネルギー差で制御できることが知られている。また、HOMOとLUMOのエネルギー差が開放電圧の最大値であると考えられている。

界面
[よみがな] かいめん
[英訳] interface
有機 EL 素子の基本構造は発光層を陰極と陽極で挟んだ単純な単層であるが、実用的な素子においては、高い発光効率と信頼性の確保の観点から多層構造がとられている。例として陽極上に、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)が重ねられ、最後に金属電極が形成された5層構成などが挙げられる。そのため、酸化物電極と有機薄膜、有機薄膜と有機薄膜、有機薄膜と金属電極といった多数の界面が含まれ、これらの界面状態の理解が重要である。

界面エネルギー障壁(界面ポテンシャルバリア)
[よみがな] かいめんえねるぎーしょうへき
[英訳] Interface energy barrier / interface potential barrier
ショットキー障壁参照

界面準位
[よみがな] かいめんじゅんい
[英訳] Interface state
界面の存在(あるいは形成)によって生じる電子の準位(電子状態)のことを界面準位と呼び、界面準位はその物質のバルクの準位とは一般に異なっている。その原因として、共有結合性の物質の場合は界面におけるダングリングボンドの存在、分子性の物質の場合はバルクと界面における環境の差(隣り合う分子の種類あるいは数が異なる)に起因すると考えられる。

界面制御
[よみがな] かいめんせいぎょ
[英訳] interface control
半導体と絶縁体、金属、あるいは別の半導体との界面においては、半導体結晶の周期性が損なわれるため、バルク半導体と異なり、ダングリングボンドや歪みによるボンド長の変化、点欠陥、格子間原子、置換原子等によってバルクとは異なるエネルギー状態をとる。界面制御とはこれらを制御することで、デバイスの特性向上のために重要である。

界面制限電流
[よみがな] かいめんせいげんでんりゅう
[英訳] interface limited current
有機EL素子のようなキャリア注入を伴うデバイスの特性向上には、電極と有機半導体の界面の接触抵抗を下げること、つまりオーミック接触をとることが重要である。有機ELを流れる電流は、界面特性に依存する界面制限電流と有機半導体層の特性に依存するバルク制限電流で決まる。そして、界面の接触が悪ければ界面制限電流で制限され、界面の接触が良ければバルク制限電流で制限されて有機半導体層での空間電荷制限電流となる。

界面双極子
[よみがな] かいめんそうきょくし
[英訳] interface dipole
金属電極と有機半導体層の接触する界面に生じる双極子で、界面での真空準位シフトをもたらし、電極から有機半導体層へのキャリア注入障壁に影響を与える。

界面電気二重層
[よみがな] かいめんでんきにじゅうそう
[英訳] electric double layer of interface
電気二重層参照

化学気相成長法(化学気相蒸着法、化学蒸着法、CVD法)
[よみがな] かがくきそうせいちょうほう
[英訳] Chemical Vapor Deposition, CVD
化学気相成長、化学気相蒸着または化学蒸着は、さまざまな物質の薄膜を形成する蒸着法のひとつで、石英などで出来た反応管内で加熱した基板物質上に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基板表面あるいは気相での化学反応により膜を堆積する方法である。切削工具の表面処理や半導体素子の製造工程において一般的に使用される。

化学量論
[よみがな] かがくりょうろん
[英訳] stoichiometry
化合物の化学変化における物質間の数量的関係を取り扱う化学の一領域をさす。従来、質量保存則、定比例の法則、倍数比例の法則、気体反応の法則などがおもな対象であったが、その後、複雑な反応の構成を明らかにする研究や、化合物の化学組成や構造と物性の関係を調べる研究などを漠然とさすようになってきた。

架橋(クロス・リンク)
[よみがな] かきょう
[英訳] cross-link
化学反応における架橋(クロス・リンク)とは、主に高分子化学においてポリマー同士を連結し、物理的、化学的性質を変化させる反応のことである。IUPACの定義では、少なくとも4つの鎖が発生し、既存の高分子上の部位またはグループが関与する反応によって、または既存の高分子間の相互作用によって形成される高分子内の小さな領域のこと。 柔らかく弾力性の小さいイソプレンポリマーが硫黄による架橋でタイヤなどに成型できるようになり、さらに架橋を進めることで硬いエボナイトとなるのはその好例である。硫黄による架橋は加硫とよばれている。 また、エポキシ樹脂接着剤の硬化はエピクロロヒドリンによる架橋を利用している。

拡散係数(拡散定数)
[よみがな] かくさんけいすう
[英訳] diffusion coefficient
媒質中での粒子の拡散の速さを表す比例定数。ある濃度勾配のもと、単位時間当たりに単位面積を通過する物質の量として定義する。なお、励起子の拡散距離は拡散定数と励起子の寿命の積の平方根に比例する。拡散定数はキャリアの飛程に依存し、フェルスター型で共鳴に基づく移動の一重項励起子は飛程が長く、デクスター型で電子移動(交換)に基づく移動の三重項励起子は飛程が短い。ただし、一重項励起子は基底状態への遷移が許容で寿命が短く、三重項励起子は基底状態への遷移が禁制で寿命が長いため、両者の拡散距離は同程度となることもある。

拡散電位
[よみがな] かくさんでんい
[英訳] diffusion potential
p型半導体とn型半導体を接触 (p-n接合) させると、正孔がp型よりn型へ、電子がn型からp型の半導体へ拡散していくことによりフェルミ準位が一致する。このため接合付近にn型とp型の仕事関数の差に相当する電位の段差ができる。これを拡散電位という。拡散電位の大きさは半導体の種類やキャリアの濃度によって異なる。半導体と金属の接触であるショットキー接触においても、半導体の仕事関数と金属の仕事関数の差に相当する電位差が接触部に現れ、同様に拡散電位という。

拡散電流
[よみがな] かくさんでんりゅう
[英訳] diffusion current
拡散電流とは、半導体中の電荷キャリア(ホールや電子)の拡散による電流のこと。拡散電流は、半導体中の荷電粒子の濃度の不均一性のために起こる電荷の移動による電流である。これとは対照的に、ドリフト電流は、電場によって電荷キャリアに働いた力による電荷キャリアの動きによるものである。

拡張π電子系
[よみがな] かくちょうぱいでんしけい
[英訳] extended π electron system
有機半導体分子のπ電子系に関する用語で、リファレンスとなる分子(あるいは高分子)のπ電子系の広がりを基準とした場合、それよりもπ電子の広がりが大きい別の分子を指して、拡張π電子系と呼ぶことがある。

角度分解光電子分光
[よみがな] かくどぶんかいこうでんしぶんこう
[英訳] Angle-Resolved PhotoElectron Spectroscopy(ARPES)
角度分解光電子分光は物質のバンド構造を直接測定する手法である。通常、光電効果により光電子は物質表面から広い立体角で放出する。このとき光電子の放出方向が物質内部での電子の波数に、運動エネルギーが束縛エネルギーに対応する。物質の超伝導、電荷密度波などの特性の研究に利用されている。

化合物半導体
[よみがな] かごうぶつはんどうたい
[英訳] compound semiconductor
化合物半導体とは、2種類以上の元素が結合してできる半導体である。 こうした半導体は基本的に共有結合結晶であり、結晶構造は閃亜鉛鉱型構造やウルツ鉱型構造が多い。 またアモルファス半導体となるものもある。化合物半導体となる元素の組み合わせは、代表的なものにIII族とV族元素、II族とVI族元素があり、それぞれIII-V族半導体、II-VI族半導体と呼ばれている。

化合物半導体系太陽電池(化合物系太陽電池)
[よみがな] かごうぶつはんどうたいけいたいようでんち
[英訳] compound semiconductor solar cell
化合物半導体系太陽電池は、シリコンやゲルマニウムのような単一元素ではなく、複数元素からなる様々な化合物を太陽電池材料として用いる太陽電池を指す。現在、量産化されている化合物半導体系太陽電池には、CIS太陽電池、CIGS太陽電池、CdTe太陽電池、GaAs太陽電池、InGaAsなどがある。

可視光線
[よみがな] かしこうせん
[英訳] visible light
人間の目に光として感じる波長範囲の電磁波で、波長範囲の下限は360-400 nm、上限は760-830 nmである。 可視光線の波長は nm(ナノメートル)単位で表されることが多い。

カシャ(Kasha)の法則
[よみがな] かしゃのほうそく
[英訳] Kasha's rule
カシャの法則は、電子励起した分子の光化学に関する法則である。その意味するところは、発光(蛍光もしくは燐光)のほとんどは、与えられた多重度の最低励起状態から起こる、というものである。1950年にアメリカの分光学者マイケル・カシャにより提唱された。この法則は、励起分子の発光スペクトルに関連する。光子を吸収すると、基底状態(S0と記し、一重項状態であるとする)にある分子は、光子の波長に応じて、いかなる電子励起状態(Sn(n>0)と記す)にも励起しうる。しかしながら、カシャの法則により、発光(S状態の場合は蛍光)のほとんどは、最低励起状態であるS1状態から起こると考えられる。S1状態からのみ発光が起こると考えられるので、この法則は、発光波長は励起波長に依存しない、と言い換えることができる。

ガスフロー蒸着
[よみがな] がすふろーじょうちゃく
[英訳] Gas Flow Deposition( GFD)
ガスフロー蒸着(GFD)は、キャリアガスを用いた有機薄膜の成膜法で、Ar 等の不活性ガスをキャリアガスとして用い、基板上に有機材料蒸気を輸送して蒸着する成膜法である。効率良く安定に材料蒸気を輸送でき、且つ、キャリアガス流量の調整により成膜速度を高精度に制御することができる。

画素
[よみがな] がそ
[英訳] pixel
画像情報の最小単位。コンピュータのディスプレーやテレビの画面は、画面を細分した微小な素片をぎっしり敷きつめた状態で構成されている。ジグソー・パズルの絵が細かなピースを並べてつくられるのに似ている。この画面を細分した素片を画素、またはピクセルとよぶ。画素は画像を構成する最小単位で、各画素はそれぞれが占める位置での色情報をもっている。

加速係数
[よみがな] かそくけいすう
[英訳] acceleration factor
加速試験を参照

加速試験
[よみがな] かそくしけん
[英訳] acceleration test / accelerated test
製品を過酷な条件の下において劣化を促進し、長期間に起こる劣化が短期間に進むとみなして、現実的な時間における試験で長期の試験に代える方法である。有機EL素子では、実際に使う輝度よりも高輝度の条件で、複数のサンプルを使って加速試験を行うことで、所定輝度の素子寿命を見積る方法がとられている。素子の輝度と寿命の間には次の関係があることが経験的に分かっている。t2=t1(L1/L2)↑A ここで、t1は輝度L1での素子寿命、t2は輝度L2での素子寿命(L2<L1)、Aは加速係数である(一般的には1.0〜2.0の値をとることが多い)。たとえば、L1とt1は測定により既知であるので、輝度を変えた何点かのL1とt1の測定から、低輝度L2における素子寿命t2を求めることができる。素子によっては、初期輝度の大小により発光スペクトルが異なる場合や、試験の途中で発光スペクトル変化する場合もあるので注意を要する。また、駆動電流が大きい場合や発光面積が大きい場合など、ジュール熱による素子の発熱にも注意が費用である。

画素ピッチ
[よみがな] がそぴっち
[英訳] pixel pitch
画素ピッチは画素(ピクセル)の繰り返し単位の長さのことである。たとえば、160ppi (pixel per inch)の精細度のディスプレイの場合、画素ピッチは、25.4 mm / 160 = 159 マイクロメートルである。

画素密度
[よみがな] がそみつど
[英訳] pixel density
画素密度とは、1インチあたりのドット数を示した数値で、一般にppi(pixel per inch)やdpi(dot per inch)という単位で表される。

活性化エネルギー
[よみがな] かっせいかえねるぎー
[英訳] activation energy
物質がある状態から他の状態に変化する場合、途中の段階でポテンシャルエネルギーの高い状態(エネルギー障壁)をこえなければならない。このポテンシャルエネルギーの山と、最初の状態の最低ポテンシャルエネルギーとの差を活性化エネルギーという。化学反応だけでなく、固体、液体中の粒子の移動、すなわち拡散現象などにも重要である。一般に活性化エネルギーが大きいほど、変化の速度は小さい。

活性層
[よみがな] かっせいそう
[英訳] active layer
光・電子デバイスにおける活性層とは、デバイスの性能を発現するための層を意味すると考えられる。有機トランジスタでは有機半導体層が活性層である。

価電子
[よみがな] かでんし
[英訳] valence electron
原子核の周囲に束縛されている電子のうち、最外殻に存在する電子のことである。価電子は、原子間の化学結合などにおいて重要な役割を果たすことが多く、物質の性質を特徴づける主要な要素である。原子価電子ともいう。基本的に、価電子数は最外殻電子数と等しい。

価電子準位
[よみがな] かでんしじゅんい
[英訳] valence level
固体中で電子の詰まっている準位。正の電荷を担うホールの通り道。

価電子帯
[よみがな] かでんしたい
[英訳] valence band
価電子帯とは、絶縁体や半導体において、価電子によって満たされたエネルギーバンドのことである。 価電子帯の頂上から伝導帯の底までのギャップが、バンドギャップである。半導体や絶縁体においては、バンドギャップ中にフェルミ準位が存在する。

CdTe系太陽電池
[よみがな] かどみうむてるるたいようでんち
[英訳] CdTe-based solar cell
テルル化カドミウム(CdTe)薄膜を用いた太陽電池で、2枚のガラスに太陽電池を挟み込んだ形態のモジュールが代表的である。毒物であるカドミウムを用いるが、少量でしかも安定した化合物がモジュールに閉じこめられているため、環境負荷の低い太陽電池とされている。日本では販売されていないが、性能が良くかつ安価であることから米国や欧州で実用化されている。

画面解像度/HD/Full-HD
[よみがな] がめんかいぞうど
[英訳] display resolution
画面解像度とは、映像のきめ細かさを表す数値。表示される画面に何個の点(ピクセル)を並べるかで表現される。例えば、「HD」「フルHD」「4K」の順できめ細かさが増し、それぞれの値は、HD:1440×1080ピクセル、フルHD:1920×1080ピクセル、4K:3840×2160ピクセルである。

ガラス転移点(ガラス転移温度)
[よみがな] がらすてんいてん(がらすてんいおんど)
[英訳] glass transition point(glass transition temperature)
液体をある有限の速さで冷却していくと結晶化せずに過冷却液体になる。さらに冷却を続けると結晶化することもあるが、多くの場合は準安定なアモルファスな固体、すなわちガラスになる。この過冷却液体からガラスに移り変わることをガラス転移という。固体の結晶を加熱してゆくと融点で液体に変わり始め、固体と液体が共存する間は温度が融点に維持され、固体が全て液体に変わると、またその温度が上昇してゆく。一方、非晶質の固体を加熱した場合は、低温では結晶なみに堅く(剛性率が大きく)流動性がなかった(粘度が測定不可能なほど大きかった)固体が、ある狭い温度範囲で急速に剛性と粘度が低下し流動性が増す。このような温度がガラス転移点である。ガラス転移点より低温の非晶質状態をガラス状態といい、ガラス転移点より高温では物質は液体またはゴム状態となる。ガラス転移点をしめす代表的な物質には、合成樹脂や天然ゴムなどの高分子、昔から知られたケイ酸塩のガラスがある。

カラミティック液晶
[よみがな] からみてぃっくえきしょう
[英訳] calamitic liquid crystal
液晶状態を形成する液晶材料は、その性質を示す材料の分子は概ね円盤状と棒状の形状を取る。前者をディスコチック液晶、後者をカラミティック液晶と呼ぶ。カラミティック液晶は、分子が一軸配向しただけの液体的なネマティック相と、層状構造を有するより結晶に近い構造を持ったスメクティック相に分かれる。スメクティック液晶は、分子が相互に近接して並んでいるため、分子間の電荷移動が円滑に進行し、電子伝導が進行する。それに対して、ネマティック相は分子の配列がよりルーズであるため、分子間の電荷移動が円滑に進まない。それに加えて、流動性が大きく、液晶分子自身やイオン性の不純物が動くことによって生じるイオン伝導が起こりやすい。コレステリック相は、ネマティック相がねじれた構造をしており、ネマティック相を示す液晶材料にキラリティーを導入すると出現する。電気伝導という点では、ネマティック相と同じく、分子の配列がルーズなため電子伝導は起こりにくい。

カラムクロマトグラフィー
[よみがな] からむくろまとぐらふぃー
[英訳] column chromatography
カラムクロマトグラフィーとは、化合物の精製法のひとつで、筒状の容器に充填剤をつめ、そこに溶媒に溶かした化合物を流し、化合物によって充填剤との親和性が異なることや分子の大きさが異なることを利用して分離精製を行う方法のこと。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)や高効率液体クロマトグラフィー(HPLC)もカラムクロマトグラフィーの一種だが、通常カラムクロマトグラフィーと言う場合、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを指すことが多い。一般に、低分子系の有機半導体材料の精製はカラムクロマトグラフィーにより行われる。原料や触媒はこの段階でほぼ分離されるが、さらなる純度向上のため、再結晶法や昇華精製法などを組み合わせる。

カラムナー液晶相
[よみがな] からむなーえきしょうそう
[英訳] columnner liquid crystal phase
重心位置に2次元周期構造(カラム構造)を持つ液晶相。多くの場合、円盤状分子または会合により円盤状になる分子がカラムを構成して、カラムが2次元配列した構造をとっている。カラム内の分子の重心位置には規則性がなく、この点で完全な結晶と異なっている。格子により次のような分類がされている。ヘキサチックカラムナー相:カラムが2次元的には六方格子を組んだ液晶相。レクタンギュラーカラムナー相:カラムが形成する格子が長方形となったもの。カラムナーオブリーク相:カラムが形成する格子が平行四辺形となったもの。

GaAs系太陽電池
[よみがな] がりうむひそたいようでんち
[英訳] GaAs-based solar cell
単結晶のGaAs(ガリウムヒ素)を用いた太陽電池で、禁制帯幅 1.4 eV で太陽光のスペクトルに良くマッチし、単接合セルでは最も高い変換効率を出せる(2005年末の世界記録は25.1%)。毒性のあるヒ素を使い、コストが高いため、宇宙用など、特に高い変換効率が必要な用途に用いられている。

還元電位
[よみがな] かんげんでんい
[英訳] reduction potential
電気化学的には、有機半導体分子のLUMOと電極との間で、電子のやり取りが平衡になる点の電極電位である。還元電位VrとLUMOの電子エネルギー準位Eluとの関係は、−Vr=Elu+C(Cは溶媒和エネルギーを含む定数であり、Vrが与えるのはEluの相対値である。)有機半導体の還元電位の決定方法としては、例えば、有機溶媒に有機半導体と支持電解質を溶解させてサイクリックボルタンメトリーを行うなどの手法がある。

間接遷移
[よみがな] かんせつせんい
[英訳] indirect bandgap
間接遷移とは、価電子帯の頂上Evと伝導帯の底Ecが一致しない、すなわち、波数空間(k空間)において、EvとEcが異なる波数ベクトル点に存在している場合をいう。伝導帯に励起された電子は、フォトンによるエネルギーの放出だけではなく、運動量保存の法則から運動量も放出する必要がある。ところが、フォトンは質量が小さく、ほとんど運動量がないめ、格子振動(フォノン)によって運動量を変化させた後に、フォトンとの相互作用で価電子帯に遷移する。間接遷移型半導体では、フォトンの放出よりもフォノンの放出が多いため、発光効率が低い。

顔料
[よみがな] がんりょう
[英訳] pigment
可視光を吸収して、色を与える物質(色素)のうち、水や有機溶剤に不溶なものを顔料と呼ぶ。特定の波長の光を選択的に吸収することで、反射または透過する色を変化させる。有機化合物を成分とする顔料を有機顔料と呼称する。有機顔料の例として、アゾ顔料や多環顔料などがある。色相によっても区分することもあり、不溶性色素とレーキ顔料といった分類もある。

緩和
[よみがな] かんわ
[英訳] relaxation
緩和とは、物理学においては、定常状態や平衡状態、基底状態など安定な状態へと系の状態が変化 (relax) することを指す。有機半導体単結晶での電荷輸送では、一つの分子から隣接分子への電子移動ごとに周囲の分極による緩和が行われる。

緩和エネルギー
[よみがな] かんわえねるぎー
[英訳] relaxation energy
荷電状態や励起状態にある分子における緩和によって失われるエネルギー。電荷状態の例では、荷電担体が同一分子上あるいはホッピングなどで別分子上に移動する過程において、電子分極あるいは分子分極による安定化によって緩和し、エネルギーが失われる。励起状態の例では、励起子が同一分子上あるいはエネルギー移動で別分子上に移動する過程において、より低い電子準位、振動準位、回転準位に落ち込むことで緩和される。

緩和時間
[よみがな] かんわじかん
[英訳] relaxation time
緩和時間とは、系が非平衡から平衡に向かって変化するとき、変化に要する時間の目安である。ここでいう平衡とは熱力学的平衡に限らず、注目する量が一定となる定常状態を指す。

幾何容量
[よみがな] きかようりょう
[英訳] geometric capacity
平行板コンデンサの極板間を真空にして、その静電容量を測定するとCoになったとする。この極板間を誘電率がεである理想誘電体で満たすと、その静電容量CはεCoで与えられる(実在の誘電体は多少とも誘電損失を示す)。Coは電極面積A(cm2) と電極間隔隔d(cm) のみで決定されるので幾何容量とよばれる。Co=εo・A/d= 0.0885×10↑-12×(A/d) (ただし、εoは真空の誘電率)。

基準状態
[よみがな] きじゅんじょうたい
[英訳] standard condition
基準状態は、太陽電池セルや太陽電池モジュールの特性測定の際に基準として使用される状態で、次のように規定されている。太陽電池の温度:25℃、分光分布:基準太陽光、放射照度:1000 W/u

基準太陽光
[よみがな] きじゅんたいようこう
[英訳] reference solar radiation (standard sunlight)
基準太陽光は、太陽電池セルや太陽電池モジュールの出力特性を共通の条件で表すために用いられる仮想的太陽光で、次のように規定されている。基準太陽光の分光放射分布は、大気状態が、可降水分量:1.42 cm、大気オゾン含有量:0.34 cm、混濁係数(0.5μmの場合):0.27、エアマス:1.5。測定条件は、アルベド:0.2、測定面(水平に対して):37°であるときの、1000 W/uの全天日射(直達日射と散乱日射を含む)を表す。

基準太陽電池セル
[よみがな] きじゅんたいようでんちせる
[英訳] reference solar cell
一次基準太陽電池セルは、JIS C 8910に規定のもので、かつ、安定性が確認されたものである。

気相堆積法
[よみがな] きそうたいせきほう
[英訳] vapor phase deposition
化学気相成長法参照

気体定数
[よみがな] きたいていすう
[英訳] gas constant
1モルの理想気体の状態方程式 pV=RT(pは圧力、Vは1モルの容積、Tは絶対温度)の定数Rを気体定数という。ガス定数あるいは普遍気体定数ともいう。アボガドロの法則から、理想気体とみなせる気体は、その種類いかんによらず、同温・同圧下の容積は同じ一定値(0℃、1気圧下で 22.4136リットル)をとるため、Rは気体の種類によらない定数となる。その値は、R=(8.31441±0.00026)J/mol・K となる。また気体定数は、ボルツマン定数kとアボガドロ定数NAとの間に、R=NA・k の関係がある

気体分子運動論
[よみがな] きたいぶんしうんどうろん
[英訳] kinetic theory of gases
気体の圧力などの熱力学的な性質を、気体分子の平均的な運動状態から統計力学的に説明する理論体系。気体を空間のあらゆる方向に、独立に、自由に運動する多くの分子から成るものとして統計的に扱い、力学的、熱力学的な物理的諸量を統一的に説明する。

基底状態
[よみがな] きていじょうたい
[英訳] ground state
基底状態とは、系の固有状態のうち最もエネルギーの低い状態をいう。 一方、基底状態よりも高いエネルギーの固有状態は励起状態と呼ぶ。

輝度(cd/m2)
[よみがな] きど
[英訳] luminance
ディスプレイなどの平面状の光源における発光の大きさを表す指標であり、単位はcd/m2で現わされる。

輝度換算法
[よみがな] きどかんさんほう
[英訳] luminance conversion method
輝度換算法はスポット輝度計により測定した輝度から、発光輝度が方向によらず均一であるという仮定(完全拡散面の仮定)を用いて、全発光エネルギーを求める方法である。この方法は、実際の素子の空間的な発光パターンが完全拡散面から多少ずれていることや、輝度計の測定精度に限界があることなどの問題点もあるが、直接法に比べて非常に簡単に測定できることから広く用いられている。

希土類(レアアース)
[よみがな] きどるい
[英訳] rare earth
原子番号58番から71番の元素(Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)はランタニド元素と呼ばれ、ランタニド元素にランラン(La)を加えたものは一般にランタノイド元素と呼ばれる。希土類とはスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド元素の総称である。

希土類錯体
[よみがな] きどるいさくたい
[英訳] rare earth complex
希土類錯体は、希土類イオン(通常+3価の酸化状態が安定)と有機配位子で構成され、その特徴して、鮮やかな発光を示す点がある。たとえば、Eu(V)錯体は赤色、Tb(V)錯体は緑色に発光する。希土類錯体は4f軌道間遷移(4f-4f遷移)に基づく発光を可視領域から近赤外領域に示す。4f軌道は外殻に位置する完全に充填された5s軌道、5p軌道によって遮断されており、基底状態と励起状態の電子構造変化に対する有機配位子の影響が小さく(内部遮蔽効果)、イオン固有の発光位置は有機配位子が変わっても大きく変化しない。この内部遮蔽効果により、希土類錯体は発光ピークの半値幅が狭く非常に色純度の高い発光を示す。しかしながら、4f-4f遷移は Laporte 禁制であるため、希土類イオンの直接励起により十分な発光強度を得ることは困難である。このため、希土類錯体では配位子から希土類イオンへのエネルギー移動(アンテナ効果)がしばしば利用される。

輝度劣化
[よみがな] きどれっか
[英訳] luminance degradation / luminance deterioration
有機EL素子の輝度劣化とは、発光面全体の輝度が徐々に低下する現象で、要因としては、有機EL素子の膜内で生じる分子の動的変化(環境温度や素子の駆動により発生したジュール熱による結晶化およびモルフォロジー変化、電気入力による分子双極子もしくは双極層の再配向)、不純物が原因で起こる劣化(膜内の不純物、電極からの不純物、素子作成中に取り込まれた酸素や水などの不純物など)、駆動の際に生じる光化学または電気化学エネルギーによる有機材料の真性劣化、すなわち有機材料の分解などが考えられる。

キノイド(キノノイド)構造
[よみがな] きのいどこうぞう
[英訳] quinoid structure
o-およびp-ベンゾキノンに類似した構造の総称。単にキノイドといえばp-キノイドをさす場合が多い。環外二重結合を構成する末端原子の違いにより、キノンジイミン(窒素)、キノジメタン(炭素)など種々のキノイドがある。キノイド構造を有する化学種は、高い電子受容性・電子供与性や光学的特性から興味が持たれてきた。π拡張したキノイド構造は、対応するジラジカル種との共鳴の寄与が考えられ、それに基づく物性発現が期待される。キノイド構造に電子供与基もしくは電子受容基を導入することで、酸化還元によるキノイド構造の形成・消失に基づく物性の外部刺激制御が可能になる。

機能性色素
[よみがな] きのうせいしきそ
[英訳] functional dye
一般的に、光・電子機能性を有する色素のことを指す。色素とは染料・顔料といった着色用途で用いられる材料を意味したが、近年は、光を吸収したり、発光したり、電気伝導性をもつなどの特徴を有する材料を指す。電子感光体や有機EL、有機太陽電池などに用いることができる。より広義には、着色以外の何らかの機能性を有する材料も含むと考えられる。

基板
[よみがな] きばん
[英訳] substrate
基板とは、何らかの機能を実現するための部品を配置するための板、あるいは、その板と部品群をひとまとまりのものとして指すための呼称である。有機半導体、有機エレクトロニクス分野では、有機ELなどの有機薄膜デバイスを形成する下地となる板のことを指す。単純にガラス材質の板を指すこともあるし、ITOなどの薄膜電極が形成された機能性を持つ板のことを指すこともある。アクティブマトリックスの有機ELディスプレイを形成する下地の基板は薄膜トランジスタ(TFT)基板と呼ばれる。

逆エネルギー移動
[よみがな] ぎゃくえねるぎーいどう
[英訳] reverse energy transfer
通常みられるエネルギーの移動ルートと逆側のルートで起こるエネルギー移動や遷移を指す。有機半導体において有名な逆エネルギー遷移過程として、三重項励起状態(T1)から一重項励起状態(S1)への逆エネルギー移動が挙げられ、reverse intersystem crossing (RISC)と呼ばれる。一重項励起状態と三重項励起状態のエネルギー差を小さくすることで、三重項準位から一重項準位への逆エネルギー移動が生じやすくなり、この際、熱エネルギーの助けを借りて(Thermal assist)逆エネルギー移動が促進される。

逆項間交差
[よみがな] ぎゃくこうかんこうさ
[英訳] reverse intersystem crossing(RISC)
正孔と電子がペアになったものを励起子と呼ぶ。励起子には一重項励起子と三重項励起子の2種があり、三重項から一重項への遷移を逆項間交差(RISC)と呼ぶ。一重項励起子からは蛍光が得られる(この過程を輻射緩和あるいは輻射失活と呼ぶ)。一方、三重項励起子は特殊な状況を除けば、通常、熱として失活する。しかし、RISCと一重項からの輻射緩和を組み合わせると、三重項励起子を一重項励起子経由で光に変換することが可能となる。この場合、通常、RISCが遅く律速過程になる。有機ELにおいてRISC+蛍光の発光を得るためには、RISCの高速化が重要である。

逆光電子分光法(IPES)
[よみがな] ぎゃくこうでんしぶんこうほう
[英訳] Inverse Photoemission Spectroscopy (IPES)
逆光電子分光法(IPES)は、エネルギーのそろった電子Ekを試料に照射し、この電子が空準位に緩和する際の発光hνを観測することで、空準位のエネルギーEbを求める。これにより、空準位の状態密度がわかる。逆光電子分光法(IPES)は光電子分光(PES)の逆過程とみなすことができる。ただし、PESでは電子を取り出すことで試料にプラスの電荷を注入するが、IPESでは試料にマイナス電荷をもつ電子を注入するという違いがある。IPESで観測される空準位の下端が電子輸送にかかわることで重要である。真空準位を基準とする空準位の下端のエネルギーが電子親和力である。

逆コープレーナー構造
[よみがな] ぎゃくこーぷれーなーこうぞう
[英訳] inverted coplanar structure
ボトムコンタクト−ボトムゲート型の有機トランジスタ構造。

逆スターガ構造
[よみがな] ぎゃくすたーがこうぞう
[英訳] inverted staggered structure
トップコンタクト−ボトムゲート型の有機トランジスタ構造。

逆電圧降伏
[よみがな] ぎゃくでんあつこうふく
[英訳] breakdown
半導体のpn 接合では逆方向に大きな電圧を印加すると急激に大 きな電流が流れる。この現象を逆電圧降伏といい、降伏が始まる電圧を降伏電圧(breakdown voltage)という。

キャリア
[よみがな] きゃりあ
[英訳] carrier
電荷を担うもの。有機半導体の一般的なキャリアはホールや電子である。広い共役系を持つ分子の場合、電子が電子雲を経由して移動することが可能である。また、電荷移動錯体では、不対電子が長時間安定状態にあり、それがキャリアとなる。このタイプの有機半導体は電子供与性分子と電子受容性分子がペアになることで得られる。

キャリア移動過程
[よみがな] きゃりあいどうかてい
[英訳] carrier transfer process
ホールと電子の移動は、中性分子とそれぞれアニオンラジカルやカチオンラジカルをやりとりすることで、分子間をホッピングによって移動していると考えられている。有機半導体薄膜はキャリアを薄膜中に持たず、移動度が小さいため、そのキャリア移動は、空間電荷制限電流によって記述されると考えられている。

キャリア移動度
[よみがな] きゃりあいどうど
[英訳] carrier mobility
キャリア移動度とは、固体の物質中でのキャリアの移動のしやすさを示す指標であり、半導体の場合、キャリアとは、電子および正孔のことである。[定義] 物質に電場E をかけたとき、電場によって電子(もしくは正孔)が平均速度v で移動したとき、次式で定義される v=μE (μ: 移動度)。移動度は単位電場当たりのキャリアの速度であり、ホール(Hall) 移動度とドリフト移動度がある。

キャリア外部取り出し効率
[よみがな] きゃりあがいぶとりだしこうりつ
[英訳] carrier extraction efficiency
有機薄膜太陽電池の量子収率、すなわち、照射された光子数に対する生成したキャリアの外部取り出し効率ηは次の式で表わされる。η=ηa・ηed・ηct・ηcc ここで、ηa:光活性層での光吸収効率、ηed:励起子のドナー/アクセプター界面への拡散効率、ηct:ドナー/アクセプター界面でのキャリア分離効率、ηcc:フリーキャリアの電極への輸送効率。

キャリア拡散
[よみがな] きゃりあかくさん
[英訳] carrier diffusion
物質中のキャリアに濃度分布があるとき、均一な濃度分布になろうとしてキャリアが濃度の高いところから低いところへ拡散して移動すること。このキャリア拡散により流れる電流を拡散電流という。半導体中の全電流は電子と正孔のドリフト電流と拡散電流の和で表される。

キャリア再結合
[よみがな] きゃりあさいけつごう
[英訳] carrier recombination
再結合参照

キャリア散乱
[よみがな] きゃりあさんらん
[英訳] carrier scattering
半導体中でキャリア(電子や正孔)が散乱されるメカニズムは、フォノン散乱、イオン化不純物散乱、衝突イオン化散乱の3種類が主要なものである。これらが伝導率σを決める要素の移動度μを決めている。フォノンとは、結晶格子の熱振動を量子化したもので、つまり格子振動による散乱である。この格子振動による散乱は熱エネルギーによる原子の振動による散乱であるため、低温ではその影響は小さく高温ほど影響が大きい。キャリア移動度への影響は、温度 T の 3/2 乗に比例して大きくなる。イオン化不純物散乱は、ドナーやアクセプターのように、不純物がイオン化したものによる散乱である。これは、電子がイオン化した不純物によるクーロンポテンシャルによって散乱を受けるもので、ラザフォード散乱の問題と同じメカニズムである。温度による影響は、低温では電子は熱エネルギーが小さく移動速度も小さい。速度が小さな電子に対するクーロン力は大きいため大きく散乱される。一方、高温では電子の熱速度は大きいので、クーロンポテンシャル散乱の影響は小さい。イオン化不純物散乱は低温で主要であり高温では影響が少ない。移動度に対するイオン化不純物散乱の温度依存性は T の 3/2 乗に比例して、低温で主要な散乱メカニズムとなる。衝突イオン化による散乱は、電子が電界によって高速に加速され、そのエネルギーが結晶を構成している結合電子のエネルギーを超える場合、結合電子を破りイオン化してしまう現象である。インパクトイオン化という。電子が一個衝突すると、多数の電子とホールのペアを作り出すため増幅効果がある。

キャリア生成
[よみがな] きゃりあせいせい
[英訳] carrier generation
半導体において、キャリア生成とは、電荷キャリア(電子と正孔)が生成する過程のこと。電子-正孔ペアの生成は価電子帯から伝導帯への電子遷移である。

キャリア注入
[よみがな] きゃりあちゅうにゅう
[英訳] carrier injection
電極から半導体層へキャリア(電子または正孔)を注入すること。

キャリア注入型EL
[よみがな] きゃりあちゅうにゅうがたいーえる
[英訳] carrier injection type EL
有機ELは有機薄膜内にキャリアを注入し、蛍光色素上で再結合させて励起状態を形成し、発光を取り出すことからキャリア注入型EL と呼ばれる。

キャリア注入効率
[よみがな] きゃりあちゅうにゅうこうりつ
[英訳] carrier injection efficiency
電荷注入効率を参照

キャリア注入障壁
[よみがな] ちゅうにゅうしょうへき
[英訳] Carrier injection barrier
有機ELデバイスや有機薄膜太陽電池などの有機半導体デバイスにおいて、金属電極から有機分子層へキャリアが注入される際のエネルギー的な障壁を指す。金属電極の仕事関数と有機分子の最高占有軌道(HOMO)や最低非占有軌道(LUMO)とのエネルギー差がその指標となる。キャリア注入障壁が大きいと電極から電子やホールといったキャリアが有機分子層へ効率的に注入されにくいため、デバイスの効率が低下する。注入障壁を低減するためには、電極の仕事関数と有機材料の注入準位の中間的なエネルギー準位を持つ注入材料を間に挿入するなどの手法が知られている。

キャリア注入モデル
[よみがな] きゃりあちゅうにゅうもでる
[英訳] carrier injection model
電極から有機半導体へのキャリア注入のモデルは、まだ十分に確立されてなく、いろいろなものが散在する。代表的なものとしては、熱電子放出モデルとトンネルモデルがある。前者はLUMOの極大値より上に熱励起した電子が有機半導体に流れ込むというモデルであり、後者は金属電極のフェルミ準位近傍の電子がトンネル効果で有機半導体に移動するというモデルである。

キャリアトラップ
[よみがな] きゃりあとらっぷ
[英訳] carrier trap
半導体内でキャリアが一時的に捕えられて動けなること。不純物原子や格子欠陥が原因で起こる。半導体内でドナー準位やアクセプタ準位以外で,伝導帯や価電子帯からかなり離れた禁制帯中の局在したエネルギー準位をもつものによる。半導体中のキャリアがトラップされる時は、もっているエネルギーを光や熱として放出して捕えられる。電子が捕えられることを電子トラップ,正孔が捕えられることを正孔トラップという。この場合,捕えられた電子や正孔は外部から適当なエネルギーをもらうと,また元の伝導帯や価電子帯に戻ってキャリアになる。

キャリアドリフト
[よみがな] きゃりあどりふと
[英訳] carrier drift
電場が与えられることで生じる電荷キャリアの移動のこと。半導体材料に電場が与えられると、電荷キャリアの流れにより電流が生じる。

キャリアバランス
[よみがな] きゃりあばらんす
[英訳] carrier balance
エレクトロニクスデバイス内における電子とホールの発生バランスのことを指す。電子とホールが発光層内で再結合して発光する有機ELデバイスや、光が入射するとp型半導体とn型半導体の界面からホールと電子が分離して電流が発生する太陽電池で重要な特性で、これらキャリアの注入または分離バランスがとれていると効率が向上する。例えば、ホールが過剰である有機ELデバイスにおいて、キャリアバランスを改善するためには、電子注入層や陰極材料を変更することによって、電子の注入量を増加させることでキャリアバランスが向上できる。逆にホールの注入量を抑えることによってもキャリアバランスが向上できる。考慮すべき指標として、キャリア注入効率、キャリア移動度、積層構造の各層の膜厚などがある。

キャリアバランス因子
[よみがな] きゃりあばらんすいんし
[英訳] carrier balance factor
キャリアバランス因子は、有機EL素子内部でのホールと電子のバランス、すなわち、ホールと電子の量の等価/非等価の状態を示す指標となる。陽極と陰極それぞれからのキャリア注入効率や薄膜内のキャリア移動度によって影響を受ける。キャリア注入効率は、材料のHOMOやLUMOのエネルギー準位に依存するほか、積層構造の各層の膜厚や総膜厚にも依存する。

キャリアブロック層
[よみがな] きゃりあぶろっくそう
[英訳] carrier block layer
電子ブロック層参照(またはホールブロック層参照)

キャリア分離
[よみがな] きゃりあぶんり
[英訳] carrier separation
有機薄膜太陽電池において、キャリア分離の過程は次のように説明される。p型半導体が光吸収性の場合は、光照射によってp型半導体内に励起子が生じる。有機薄膜内では、励起子のクーロン力に基づく大きな結合エネルギーにより、すぐにはフリーキャリアとならずに励起子のまま層内を拡散移動する。pn接合面に到達した励起子はn型半導体へ電荷を渡し、これにより電荷分離が生じる。電荷分離によって生成したキャリア(ホールと電子)は、内部電界によるドリフトあるいは拡散による移動により電極へ到達する。

キャリア分離効率
[よみがな] きゃりあぶんりこうりつ
[英訳] carrier separation efficiency
有機薄膜太陽電池におけるキャリア分離効率とは、光照射により有機薄膜内に生じた励起子のうち、電荷分離によって生成するフリーキャリアの割合を指す。

キャリア密度(キャリア濃度)
[よみがな] きゃりあみつど
[英訳] carrier density
電荷キャリア密度またはキャリア濃度とは、体積あたりの電荷キャリアの個数である。国際単位系での単位は m?3 となる。他の密度と同じように、位置に依存する。キャリア密度は、電荷が持つことができるエネルギー範囲で電荷密度を積分することで得られる。電荷キャリア密度は粒子密度であり、体積 Vで積分するとその体積中の電荷キャリアの個数 Nとなる。電荷キャリアの密度は多くの場合ホール効果を用いて決定でき、電圧は密度の逆数に比例する。

キャリア輸送
[よみがな] きゃりあゆそう
[英訳] carrier transport
半導体中を移動するキャリアの輸送機構には、電界によってキャリアが運ばれるドリフト現象と濃度勾配によってキャリアが移動する拡散現象の二つの機構がある。半導体中の電気伝導機構はドリフト電流と拡散電流である。 ドリフト電流は電界が存在することによりキャリアがドリフトすることであり、拡散電流はキャリアの濃度勾配によって流れる電流である。

キャリア輸送効率
[よみがな] きゃりあゆそうこうりつ
[英訳] carrier transport efficiency
有機薄膜太陽電池におけるキャリア輸送効率とは、光照射により有機薄膜内に生成したフリーキャリアが電荷輸送過程を経て電極まで届く割合を指す。

吸収係数(吸光係数)
[よみがな] きゅうしゅうけいすう
[英訳] absorption coefficient
吸収係数または吸光係数とは、光がある媒質に入射したとき、その媒質がどれくらいの光を吸収するのかを示す定数。長さの逆数の次元を持つ。ランベルト・ベールの法則に従えば、媒質をある距離通過した光の強度と入射した光の強度の比の対数(吸光度)は、通過距離と比例関係にあり、その比例係数を吸収係数と呼ぶ。

吸収スペクトル/光吸収スペクトル
[よみがな] きゅうしゅうすぺくとる
[英訳] absorption spectrum
標準の光源に対し、対象物が吸収する光のスペクトルを吸収スペクトルという。無機半導体の光吸収はバンド間の電子遷移で吸収端から短波長側に連続的な吸収となる。有機半導体の光吸収は電子エネルギー準位間のヤブロンスキー(Jablonski)ダイアグラムに基づいて説明される。(分光スぺクトルも参照)

吸着質
[よみがな] きゅうちゃくしつ
[英訳] adsorbate
吸着される物質を吸着剤(adsorbent)、吸着する物質を吸着質(adsorbate)と呼ぶ。 例えば、吸湿剤を考えた場合、吸湿剤がadsorbentであり、水がadorbateである。吸着質の量は、モノレイヤ又はラングミュア等の単位を用いるか、表面への吸着が無視できる高温低圧状態での吸着剤質量を基準とした質量比(wt%)で表される。

吸着熱
[よみがな] きゅうちゃくねつ
[英訳] adsorption energy
吸着に際して生じるエンタルピー変化。吸着分子1mol 当たりの量として表されるが、与えられた圧および温度のもとでの部分モル量である微分吸着熱と、全エンタルピー変化を吸着分子の全モル量に割りつけた積分吸着熱の2種類がある。吸着熱は一般に発熱であり、吸着量あるいは表面被覆率につれてかわるため、両者は一致しない。吸着結合の性質によって吸着熱の大きさは異なり、物理吸着では 10 kJ/mol 程度であるが、化学吸着では 50〜500 kJ/mol に達する。

吸収帯
[よみがな] きゅうしゅうたい
[英訳] absorption band
吸収帯とは、吸収スペクトルのある範囲が連続した吸収を示す部分をいう。吸収帯は幅の狭いいくつかの吸収が連続的に重なったもので、一般に分子の吸収スペクトルに現れる。可視および紫外領域の吸収スペクトルは、分子の電子状態に関する基底状態から励起状態への遷移によるものであることから電子スペクトルともよばれる。基底状態や励起状態には、分子の振動や回転にもとづく多数の状態が付随しているため、少しずつエネルギーの違ういろいろな振動状態や回転状態への電子遷移が可能であり、これらの遷移に相当して、わずかずつ波長の異なる光が吸収されることになる。このようにして吸収帯が現れる。

共重合体
[よみがな] きょうじゅうごうたい
[英訳] copolymer
高分子化合物を合成するには、その構成単位に相当する低分子化合物の原料(単量体、モノマー)を多数結合させて巨大な分子とするのが一般的で、このような反応を重合反応という。重合反応をしうる低分子化合物を2種類以上混合し、同時に重合させることを共重合といい、生成物をコポリマー(共重合体)という。たとえば付加重合反応において、2種のモノマー(AとB)を共重合させることにより、Aからの構造単位とBからの構造単位が同じ分子に含まれた高分子化合物が生成される。

共蒸着
[よみがな] きょうじょうちゃく
[英訳] codeposition
真空蒸着において、2種類の材料を同時に蒸着させ、基板上で混合膜を形成する方法。

鏡像効果
[よみがな] きょうぞうこうか
[英訳] image effect
鏡像効果とは、電極と有機半導体の界面において、界面近くにキャリアが存在すると、電極にそのキャリアの鏡像が発生し、両者の間に引力(鏡像ポテンシャル)が働くというものである。鏡像ポテンシャルが存在するとイオン化エネルギーは減少し、電子親和力は増大する。このため、界面付近でHOMOやLUMOの位置が変化する。

鏡像ポテンシャル
[よみがな] きょうぞうぽてんしゃる
[英訳] image potential
電極と有機半導体の界面において、界面近くにキャリアが存在すると、電極にそのキャリアの鏡像が発生し、両者の間に引力が働く。これを鏡像ポテンシャルという。鏡像ポテンシャルが存在するとイオン化エネルギーは減少し、電子親和力は増大する。このため、界面付近でHOMOやLUMOの位置が変化する。

共平面性
[よみがな] きょうへいめんせい
[英訳] coplanarity
分子構造において、全ての寄与原子が同一平面にあること。

共鳴吸収
[よみがな] きょうめいきゅうしゅう
[英訳] resonance absorption
振動子系がその固有振動数に近い振動数をもつ外力を受けると、エネルギーを強く吸収する現象。また量子系では、原子などの物質系がとびとびのエネルギー準位をもっているとき、それら準位間の差に相当するエネルギーを外部から与えると、それを吸収して、その物質系がより高いエネルギー準位に移る現象をいう。吸収スペクトルは共鳴吸収の一例である。物質系に吸収されたエネルギーは、熱エネルギーに変ったり、再び光として放出されたりする。このとき放出される光を共鳴放射、そのスペクトル線を共鳴線という。共鳴線というときは、物質系が直接基底状態に移るときのスペクトル線をさすことが多い。

共役
[よみがな] きょうやく
[英訳] conjugation
有機化合物で、2個以上の多重結合、すなわち二重結合や三重結合が1個の単結合をはさんで存在し、これらの結合が相互作用を示すこと。この相互作用は電子の非局在化に基づくもので、不飽和結合にはさまれた単結合はある程度不飽和結合の性質を示す。たとえばブタジエン CH2=CH−CH=CH2 における原子間距離はC=Cで 1.37Å、C−Cで 1.47Åであり、前者はエチレンのC=Cの 1.34Åより長く、後者はエタンのC−Cの 1.54Åより短い。これは共役による相互作用の結果であり、不飽和結合に関与するπ電子の広がりがあると考えると説明がつく。共役はその物質の光の吸収のような物理的性質にも、付加反応性のような化学的性質にも影響を及ぼす。

共役高分子
[よみがな] きょうやくこうぶんし
[英訳] conjugated polymer
共役高分子とは、炭素と炭素が二重結合と単結合を交互に連ねた高分子のことである。二重結合の内の1つはσ結合、もうひとつはπ結合と呼ばれ、この結合に関与している電子をそれぞれσ電子、π電子という。π電子は比較的動きやすい。この共役高分子に臭素やヨウ素を加えると金属と同程度に電気を通すようになる。これはπ電子の一部が引き抜かれて部分的に正孔ができ(ドーピング)、それを埋めるために隣の電子(π電子)が動き、またその電子が抜けた場所に正孔ができる。これを繰り返すことで電子がつぎつぎ動いて電流が流れるからである。

共役長
[よみがな] きょうやくちょう
[英訳] conjugation length
有機化合物における共役長とは、π電子共役部の長さのことを指す。π共役長が長くなるほどHOMOとLUMOのエネルギーギャップは小さくなり、半導体的な性質(可視光の吸収、電荷輸送特性)を示すようになる。

共役π電子系
[よみがな] きょうやくぱいでんしけい
[英訳] conjugated π electron system
π電子共役系と同義。

共役分子(共役系分子)
[よみがな] きょうやくぶんし
[英訳] conjugated molecule
多重結合(二重結合または三重結合)が単結合で連結された分子の総称。該当する化学構造を共役系という。共役系のうち、二重結合と単結合が交互に連結しているものを共役二重結合系といい、3個以上の二重結合が共役した脂肪族不飽和炭化水素のことを特に共役ポリエンという。共役系では多重結合のπ電子が単結合を通して相互作用し分子全体に非局在化する。そのため、大きな共役分子ではπ電子系の軌道のエネルギー間隔が狭まり、可視や近赤外領域での光の吸収がみられるようになる。

共役平面性
[よみがな] きょうやくへいめんせい
[英訳] conjugation planarity
芳香族分子の共役を伸長するとπ電子の非局在化が大きくなり、HOMO-LUMOエネルギー差が小さくなり、電子吸収スペクトルの長波長化などの物性変化が現れる。共役が平面状に伸びる場合と比べて、共役の伸長の途中で分子が捻じれる場合は、HOMO-LUMOエネルギー差や吸収スペクトルの長波長化は小さくなるため、共役平面性は共役の広がりを見積もる指標となる。例えば、ベンゼン環を単結合で結合したビフェニルは、2つのベンゼン環が溶液または気相では約45°ねじれていることが知られており、HOMO-LUMOエネルギー差の低減は限定的である。ベンゼン環を4つ単結合で結合したクオーターフェニルは吸収極大波長が300nm程度であるのに対して、ベンゼン環4つを直線状に縮合したテトラセンは吸収極大波長が480nm程度であり、物性に大きな差が生じる。

共役ポリマー(共役高分子)
[よみがな] きょうやくぽりまー
[英訳] conjugated polymer
共役ポリマーはポリマー主鎖に沿って共役π電子を持つ有機高分子であり、電子受容体(アクセプター)もしくは電子供与体(ドナー)を添加すること(ドーピング)によって電子伝導性を示し、導電性高分子として機能する。

共有結合結晶
[よみがな] きょうゆうけつごうけっしょう
[英訳] covalent crystal
共有結合結晶は、共有結合によって形成される結晶。一つの結晶粒で一つの分子(巨大分子)を形成しているため、化学式で表す際は形成される元素とその比率により表される。慣用的に共有結晶とも言われる。ダイヤモンドなどのように、共有結晶の中で各原子どうしは強い結合を形成する場合があり、その結果、融点が高かったり硬い性質を持つ場合がある。通常、電気伝導性はほとんどない。その他、ケイ素(シリコン)、二酸化ケイ素、炭化ケイ素などが共有結晶を作る。無機半導体の多くは、共有結合結晶をベースとしており、その結晶構造や電子軌道などの理解は、無機半導体そのものや無機半導体デバイスを理解する上で必須となる。

曲線因子(FF)
[よみがな] きょくせんいんし
[英訳] Fill Factor (FF)
FF=最大出力(mW/cm2) / 理想的最大出力(mW/cm2)。 ここで、理想的最大出力(mW/cm2) = 短絡電流密度(mA/cm2)x開放電圧(V)。

許容遷移
[よみがな] きょようせんい
[英訳] allowed transition
分子の電子状態が光学遷移を起こすためには次のような選択律が存在する。選択律に従って起こる遷移は許容遷移とよばれ、ルールに従っていない遷移は禁制遷移とよばれる。しかし、禁制遷移であっても分子内、分子間の摂動により遷移がおこることがある。@軌道に関する選択律(ラポルテの選択律):一つの光子を吸収する遷移においてはパリティ(偶奇性)の変化を伴う( g - u は許容、g - g および u - u は禁制)。Aスピンに関する選択律:スピン多重度Sは変化しない(スピン選択律)。B状態の対称性に由来する選択律。

キレート金属錯体
[よみがな] きれーときんぞくさくたい
[英訳] chelate metal complex
孤立電子対を持つ有機化合物や陰イオンが金属陽イオンに配位結合した化合物を金属錯体と呼ぶ。この場合、孤立電子対を持つ有機化合物やイオンを配位子という。一分子中に複数の配位子を有する化合物が金属と結合して形成される環状構造は特に安定であり、これをキレート環といい、この錯体のことをキレートと呼ぶ。

キンク点
[よみがな] きんくてん
[英訳] kink point
キンクとは、曲線が方向を急激に変える点。長方形のコーナーはキンクでである。キンクは、バルクや面とは異なる物性を示すことが知られている。

近紫外線
[よみがな] きんしがいせん
[英訳] near ultraviolet ray
近紫外線は波長範囲が 380-200 nm の電磁波である。

禁制遷移
[よみがな] きんせいせんい
[英訳] forbidden transition
分子の電子状態が光学遷移を起こすためには次のような選択律が存在する。選択律に従って起こる遷移は許容遷移とよばれ、ルールに従っていない遷移は禁制遷移とよばれる。しかし、禁制遷移であっても分子内、分子間の摂動により遷移がおこることがある。@軌道に関する選択律(ラポルテの選択律):一つの光子を吸収する遷移においてはパリティ(偶奇性)の変化を伴う( g - u は許容、g - g および u - u は禁制)。Aスピンに関する選択律:スピン多重度Sは変化しない(スピン選択律)。B状態の対称性に由来する選択律。

禁制帯(バンドギャップ)
[よみがな] きんせいたい
[英訳] forbidden band, energy gap, band gap
バンドギャップを参照

近赤外線
[よみがな] きんせきがいせん
[英訳] near infrared ray
近赤外線は波長がおよそ0.7-2.5 μm(700-2500 nm)の電磁波で、赤色の可視光線に近い波長を持つ。性質も可視光線に近い特性を持つため「見えない光」として、赤外線カメラや赤外線通信、家電用のリモコン、生体認証の一種である静脈認証などに応用されている。光ファイバーでもこの波長帯が使われ、代表的な波長は1.55μmである。

金属塩
[よみがな] きんぞくえん
[英訳] metal salt
酸の水素原子を金属イオンと置換した化合物の総称。塩酸HCl、硫酸H2SO4の水素原子をナトリウムイオン、銅イオンに置き換えたものは、それぞれ塩化ナトリウムNaCl、硫酸銅CuSO4などの金属塩となる。金属元素が属するグループによって、さらにアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、遷移金属塩などに分類される。 代表的な金属塩には,ナトリウム塩やマグネシウム塩、カルシウム塩、カリウム塩などがある。

金属酸化物
[よみがな] きんぞくさんかぶつ
[英訳] metal oxide(metallic oxide)
金属酸化物とは、金属と酸素の化合物の総称で、一般的には電気を通さない絶縁物であるが、この金属酸化物が絶縁物という性質のみでなく、導電性を示したり、電気抵抗が変化したり、電子などの電気を帯びたものを蓄えたりと、興味深い性質を持つことが知られている。透明電極として機能するITOは導電性金属酸化物の代表例である。また、金属酸化物が示す特異な現象として、電気抵抗が低温でゼロになる「高温超伝導」や、磁場をかけることで電気抵抗が1000分の1にまで激減する「超巨大磁気抵抗」などがある。

金属・配位子電荷移動 (MLCT)
[よみがな] きんぞくはいいしでんかいどう
[英訳] metal-to-ligand charge transfer (MLCT)
金属錯体の領域で興味が持たれている電荷移動には、配位子から金属へ電子が移動する配位子 ? 金属電荷移動 (LMCT) や、逆に金属から配位子へ電子が移動する金属 ? 配位子電荷移動 (MLCT)、また、混合原子価錯体に見られる原子価間電荷移動 (IVCT) などがある。

空間電荷
[よみがな] くうかんでんか
[英訳] space charge
真空やガス中、または半導体や絶縁体中に分布する電荷を指す。例えば、コピー機の有機半導体の膜に静電荷の潜像が形成される過程において、有機半導体中の空間電荷はその電荷が形成する電界によって、感光層内を流れる電流に大きな影響を与える。また、電圧印加によって、電極から注入され、有機半導体膜中を流れる電流は、空間電荷の存在によって制限を受け、定常電流を決められることが多い(空間電荷制限電流)。

空間電荷制限
[よみがな] くうかんでんかせいげん
[英訳] space charge limited
有機半導体デバイスにおいて、その性能、特に電流-電圧特性を決めるのは、有機層中のキャリア輸送もしくは電極から有機層へのキャリア注入である。有機層中のキャリア輸送によりデバイス特性が支配されることを空間電荷制限、電極から有機層へのキャリア注入、つまり電極と有機層との接触によりデバイス特性が支配されることを注入制限という。一般的に移動度の高い無機半導体においては、そのほとんどが注入制限電流の理論を用いて表現されるが、無機に比べ著しく移動度の低い有機 半導体においては空間電荷制限電流の影響を強く受けることが知られている。

空間電荷制限電流
[よみがな] くうかんでんかせいげんでんりゅう
[英訳] Space Charge Limited Current (SCLC)
半導体などで,電流の大きさが空間電荷によって支配されるような条件になっているときの電流をいう。空間電荷制限電流の値は、キャリア移動度に比例するが(チャイルド則)、キャリア密度には支配されない。

空間電荷制限電流(SCLC)法
[よみがな] くうかんでんかせいげんでんりゅうほう
[英訳] space charge limited current method
空間電荷効果とは、電荷の注入により対象物に電荷がたまった状態で電荷の移動が困難な状況になることを指し、空間電荷制限電流(SCLC)法とはこの状態の電荷移動度などを決定する測定手法である。具体的には、SCLC状態での定常電流を測定し、膜厚や誘電率から電荷移動度を決定する、などの計測に使うことができる。電荷移動度が低い有機ELの有機半導体に対してSCLC法は有力である。

クープマンズの定理
[よみがな] くーぷまんずのていり
[英訳] Koopmans' theorem
クープマンズの定理は分子の第一イオン化エネルギーと電子親和力を見積る定理である。分子系の第一イオン化エネルギーは最高被占分子軌道(HOMO)の軌道エネルギーの負数と等しいとする。

空乏層
[よみがな] くうぼうそう
[英訳] depletion layer
空乏層とは、半導体のPN接合部やショットキー接合、MOS接合において見られる電子や正孔(キャリア)のほとんど存在しない領域のこと。多数キャリアを欠くことで帯電し、電気二重層と内蔵電場を形成する。キャリアの移動に対しては1種の障壁として作用する。 空乏層の幅は印加電圧によって変化する。正方向に電圧をかけることによって縮小または解消する。逆方向に電圧をかけた場合には、その範囲が広がり、電子の移動を妨げる。 厚みが1nm前後またはそれ以下になるとトンネル効果を示す。ダイオードやトランジスタなど各種の半導体素子で利用される。

クーロンの法則
[よみがな] くーろんのほうそく
[英訳] Coulomb's law
クーロンの法則とは、荷電粒子間に働く反発力または引き合う力がそれぞれの電荷の積に比例し、距離の2乗に反比例することを示した(逆2乗の法則)電磁気学の基本法則。両者の電荷の極性が同じ場合は反発力、違う場合は引力となる。

クーロンポテンシャル
[よみがな] くーろんぽてんしゃる
[英訳] Coulomb’s potential
クーロンポテンシャルまたはクーロンエネルギーとは、電気的な力によって生じる位置エネルギーのことである。静電ポテンシャルとも呼ばれる。

クーロン力
[よみがな] くーろんりょく
[英訳] Coulomb force
二つの荷電粒子間にはたらく力(静電気力)。力の大きさは距離の2乗に反比例し、両方のもつ電荷の積に比例するというクーロンの法則に従う。電荷の極性が異なれば引力となり、同じであれば反発力(斥力)となる。

駆動寿命
[よみがな] くどうじゅみょう
[英訳] driving life
信頼性試験参照

クヌーセンセル(Knudsen cell)
[よみがな] くぬーせんせる
[英訳] Knudsen cell
クヌーセンセルは、比較的分圧の低い元素ソースの蒸着源として結晶成長学の分野でよく用いられる。ルツボ内の原料をヒーターによって加熱・蒸発させることで、基板に分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy : MBE)蒸着させるための分子線セルである。例として、ガリウム、アルミニウム、水銀、ヒ素などがある。典型的なクヌーセンセルは、るつぼ(熱分解窒化ホウ素、石英、タングステン、グラファイトなどでできている)、加熱フィラメント(タングステンやタンタル製のことが多い)、冷却水装置、熱シールド、開口部シャッターからなっている。この方法は蒸発温度制御が容易であるため、分子線エピタキシーでは一般的に使われている。

クヌーセンの式
[よみがな] くぬーせんのしき
[英訳] Knudsen formula
一定温度、一定圧力のもとで、単位時間当たりに管のある点を通過する気体の質量qは次式で与えられる。q=√(2πρ)xd3(p1-p2)/6L ここで、(p1−p2)/L は管の長さLに沿っての圧力勾配、dは管の直径、ρは与えられた温度および単位圧力における気体の密度である。

クヌーセン(クヌッセン)(Knudsen)数
[よみがな] くぬ−せんすう
[英訳] Knudsen number(Kn)
一つの分子が周囲の分子と衝突せずに自由に飛行できる平均の距離を平均自由行程といいλで表す。物体の代表長さをLとすると、クヌッセン数Knはλ/Lで定義される。Knが 0.01 以下なら流れを連続体とみなすことができる。Knが 0.01 以上なら流れを希薄気体として扱わなければならない。P、T、μを気体の圧力、絶対温度、粘度とすると、λ=(μ/p)√(πRT/2) となる。ここに、Rは単位質量当たりの気体定数である。したがって、クヌッセン数は圧力に反比例して増大する。Knが 0.01 以上の流れはボルツマン方程式に支配される。

クライオポンプ
[よみがな] くらいおぽんぷ
[英訳] cryopump
クライオポンプは、ため込み式真空ポンプの一つである。真空容器内に極低温面を設置することで、その表面に残留気体を凝縮させ捕捉する。真空容器内で動作する装置が無く、また油を用いないオイルフリー(ドライポンプ)であるため、クリーンな真空が得られる。動作範囲は、10 - 10-8 Paと広い。

クラウジウス・クラペイロン(Clausius-Clapeyron)の式
[よみがな] くらうじうすくらぺいろんのしき
[英訳] Clausius-Clapeyron equation
クラウジウス・クラペイロンの式は、飽和蒸気圧Pと温度Tの関係を定量的に表す式である。ln P=A−僣/RT ここで、僣はエンタルピー変化(J/mol)であり、固相から気相への昇華過程においては、昇華エンタルピー(昇華熱)となる。Rは気体定数、Aは定数である(単位次元はエントロピー項となる)。一般に有機エレクトロニクス分野で用いられるような新規性の高い有機物質については、真空下における昇華温度や昇華熱は未知であることが多いが、分子流における蒸発速度の温度依存性から昇華熱を測定することができる。

グリッド
[よみがな] ぐりっど
[英訳] grid
グリッドとは、格子(状のもの)、方眼(状のもの)、送電網、配管網などの意味を持つ英単語。 直線が縦横に規則正しく並んだ図形やそのような構造のもの、また、多数の対象を網目状に繋ぎあわせたものを意味することが多い。

グリッドパリティ
[よみがな] ぐりっどぱりてぃ
[英訳] grid parity
再生可能エネルギーの発電コストが、系統からの電力のコストと同等かそれ以下となること。簡単に言えば、再エネ機器を設置することで「普通に電気を買うのと同じ」か、「普通に電気を買うより安い」状態になること。

クロストーク
[よみがな] くろすとーく
[英訳] cross talk
ディスプレイにおけるクロストークとは、パネル上で駆動していない箇所へ駆動信号が漏れ込むこと。シャドーイングの原因となる。(もともとは、有線電話で隣接の回線からの漏話、混信を指す語。)

クロスニコル偏光顕微鏡
[よみがな] くろすにこるへんこうけんびきょう
[英訳] crossed Nichol polarization microscope
偏光顕微鏡の観察法の一つで、光路に偏光子に加え、検光子を差し込んで観察を行う場合を「クロスニコル」(直交ニコル)と呼ぶ。この状態で試料プレパラートを入れずに接眼レンズを覗くと暗視野に見える。これは2つの偏光板によって光線が遮断されているためである。ここに花崗岩の薄片標本を入れた場合、石英・長石などの構成鉱物が偏光を乱すため、鉱物種・結晶の方向に従って光って見える。オープンニコルの場合と同様、ステージを回転させると90°角ごとに増光・減光が起こる。また、偏光特性によって位相が乱されることにより、紫色・緑色・青色・白色・オレンジ色などの干渉色が観察される。この増光-減光周期は消光角とよばれ、ステージの目盛りを用いて測定を行うことができる。この角度は鉱物依存であるため同定に用いられる。また、試料によって発生する位相差の量をリタデーションと呼ぶが、色変化を利用してこれを測定できる。干渉色の変化を明瞭に観察するためには鋭敏色板を挿入する。これは通常530nmの位相差を発生させる光学素子で、位相差のわずかな変化を明瞭な色変化として確認できる。また位相の方向を知るためには1/4波長板を利用する。挿入による色変化によって位相ずれの方向を検出可能である。

蛍光
[よみがな] けいこう
[英訳] fluorescence
蛍光とはスピン状態の変化を伴わない電子状態間の遷移にともなう発光のことをいう。有機半導体の場合、実質的に、一重項励起状態から、基底状態(一重項状態)への遷移(緩和)の際に生じる発光のことを指す。スピン状態の変化を伴わないため、一般的に遷移の速度定数は大きく、発光寿命は短い。

蛍光量子収率
[よみがな] けいこうりょうししゅうりつ
[英訳] fluorescence quantum yield
(蛍光量子収率)=(蛍光として放出された光子数)/(吸収した光子数)で定義される。光を吸収した物質の蛍光発光のしやすさを表す。

形状因子
[よみがな] けいじょういんし
[英訳] Fill Factor(FF)
太陽電池の形状因子とは、太陽電池の発電電力は、出力電圧×電流密度で表されるが、実際に取り出される最大電力と、理想状態での出力電力(短絡電流×開放電圧)の比を形状因子(FF)という。FF=(VmxIm) / (VoxIs) ここで、Vmは電圧の最大値、Imは電流の最大値、Voは開放電圧、Isは短絡電流である。形状因子は、漏れ電流や直列抵抗の影響が直接現れる因子であり、製造工程の管理に使われるなど重要な数値である。

系統連系型太陽光発電
[よみがな] けいとうれんけいがたたいようこうはつでん
[英訳] grid-connected photovoltaics
太陽光発電のシステムは独立型と系統連系型に分けられる。大まかな分類では、電力会社の電気系統とつながっていないシステムが独立型、つながっているシステムが系統連系型である。住宅用の太陽光発電は系統連系型が一般的である。系統連系型の太陽光発電で使用する機器にはパワーコンディショナーがある。パワーコンディショナーはインバーターの一種であり、直流電流を交流電流に変換する機能を有すとともに、太陽電池モジュールが最大の電力を出力できるようにする機能や、高調波電流の発生を防ぐ機能、余剰電力を自動的に電力会社の系統に流す機能などがある。

系統連系型蓄電システム
[よみがな] けいとうれんけいがたちくでんしすてむ
[英訳] grid-connected power storage system
太陽光発電パワーコンディショナーと蓄電池パワーコンディショナー機構を兼ね備えたハイブリッドパワーコンディショナー型蓄電システムのこと。系統連系運転時の節電や停電時の電源確保が可能となる。系統連系とは、電力会社の電力系統(電力網)に蓄電システムを接続することを指す。

CASE(ケース)
[よみがな] けーす
[英訳] CASE
自動車関係のCASE(ケース)は、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェアリングとサービス/シェアリングのみを指す場合もある)、Electric(電気自動車)の頭文字をとった造語。自動車産業の今後の動向を示す重要なキーワードである。

ゲート絶縁膜
[よみがな] げーとぜつえんまく
[英訳] gate insulator, gate insulating layer
ゲート絶縁膜とは、電界効果トランジスタ (FET) において、ゲートとチャネル(基板)の間に存在する絶縁膜のことである。

ゲート電極
[よみがな] げーとでんきょく
[英訳] gate electrode
電界効果トランジスタ(FET)を構成する電極の一つで、キャリアの流れを制御する(キャリアの通る道幅をコントロールする)役割を担う。

ゲスト
[よみがな] げすと
[英訳] guest
有機材料に別の有機材料を混合する際、大多量の有機材料の方をホスト、少量混合される有機材料の方をドーパントあるいはゲストと呼ぶことがある。例えば、多層型有機ELの発光層において、主に電荷輸送を担うホスト材料の中に少量のドーパント(ゲスト)を発光を担う材料として混合することがある。

欠陥準位
[よみがな] けっかんじゅんい
[英訳] defect level
半導体結晶中の結晶欠陥や不純物によるエネルギー準位のことで、禁制帯内に形成される準位のこと。半導体デバイスの性能や特性に影響を及ぼし、製品歩留りや信頼性を左右する。

結合エネルギー
[よみがな] けつごうえねるぎー
[英訳] binding energy
結合エネルギーとは、互いに引き合う複数の要素からなる系において、その系がひとところに寄り集まって存在する状態と、粒子がばらばらに存在する状態との間での、ポテンシャルエネルギーの差のこと。結合エネルギーが大きいほど、その結合は強固で安定であると言える。有機太陽電池においては、励起状態において、正孔ー電子対となっている状態から、自由電荷の正孔と電子に分かれるために必要なエネルギーとして使われることがある。

結合次数
[よみがな] けつごうじすう
[英訳] bond order(B.O)
結合次数は、原子ペア間の結合の数である。例えば、窒素分子 N:::N の結合次数は3、アセチレン H:C:::C:HのC-C間の結合次数は3、H-C間は1である。結合次数からはその結合の安定性が分かる。結合の強さは、結合している2原子間 r-s の電子密度が大きいほど強い。この結合の強さを表す量として全結合次数を考える。このうち、σ結合の強さを表すときはσ結合次数、π結合についてはπ結合次数を用いる。  結合次数は整数である必要はない。非局在化された6個のπ電子を含むベンゼン分子で、C-C間のπ結合は本質的に0.5となる。これにσ結合を合わせると1.5となる。さらに錯体では結合次数が1.1になることがあり、これは結合次数が1のものに類似していることを意味している。分子軌道理論(MO理論)では、結合性電子の数と反結合性電子の数を区別して次のような公式を定義している。結合次数(B.O)=(結合性電子の数ー反結合性電子の数)/2 。また、結合次数は結合強さの指標や原子価結合法(VB法)などで広く使われる。

結合性軌道
[よみがな] けつごうせいきどう
[英訳] bonding orbital
水素分子は各水素原子が電子を一つずつ出し合うことで共有結合を形成しているが、結合の形態として結合性軌道(低エネルギー)と反結合性軌道(高エネルギー)の二つの軌道が存在し得る。結合性軌道においては、各原子の電子の波動関数の位相が揃っており、強め合うため、2つの原子核の間の領域に電子の存在確立が高くなり、2つの原子核を引き付け、結合性となる。反結合性軌道においては、各原子の電子の波動関数の位相が逆であり、弱め合うため、2つの原子核の間の領域に電子の存在確立が低くなるため、2つの原子核を引き付けることはなく、反結合性となる。水素以外の共有結合からなる分子においても同様の説明ができる。

結合長(結合距離、原子間距離)
[よみがな] けつごうちょう
[英訳] bond length (bond distance) (interatomic distance)
分子構造において、結合長または結合距離は、分子内の2つの原子の間の平均距離である。 結合長は結合次数と関連しており、結合の形成に参加する電子が多くなるほど結合は短くなる。また結合長は、結合強さ及び結合解離エネルギーと逆相関の関係にあり、結合が強くなるほど結合長は短くなる。2つの同じ原子の間の結合長の半分は、共有結合半径と等しい。結合長は、X線回折を用いて固相で測定されるか、回転分光法を用いて気相で見積もられる。結合を共有する2つの原子の組は、分子ごとに異なる。例えば、メタン中の炭素-水素結合の長さは、クロロメタン中の長さとは異なる。しかし、全体構造が同じ場合は、一般化することが可能である。炭素-炭素間の結合距離では、エタン( 153pm )、エチレン( 134pm )、アセチレン( 121pm )と単結合より二重結合の方が,二重結合より三重結合の方が短い。

結晶
[よみがな] けっしょう
[英訳] crystal
結晶とは原子や分子が空間的に繰り返しパターンを持って配列しているような物質である。

結晶核
[よみがな] けっしょうかく
[英訳] crystal nucleus
過飽和溶液や過冷却溶液などから結晶が作りだされるとき、その核となる微粒子で、これがもととなって結晶は成長する。

結晶格子
[よみがな] けっしょうこうし
[英訳] crystal lattice
結晶中で規則正しく配列している粒子の三次元的配列を表したものを結晶格子という。結晶格子の最小となる単位を単位格子という。代表的な金属の結晶格子には、面心立方格子、体心立方格子、六方最密構造の三つがある。結晶格子において 1 個の粒子をとりまく最近接の粒子数を配位数という。

結晶子
[よみがな] けっしょうし
[英訳] crystallite
結晶子とは、結晶粒の中で単結晶としてみなすことができる最小単位の部分。

結晶シリコン系太陽電池
[よみがな] けっしょうしりこんけいたいようでんち
[英訳] crystal silicon-based solar cell
現在、メガソーラーなどで採用されている太陽電池は、使われる原料や構造、製造方法によって、いくつかの種類がある。このうち結晶シリコン系太陽電池とは、シリコン半導体基板を原料とする単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池を指すことが多い。光エネルギーを電気エネルギーに変換する半導体素子として、シリコンのみを原料する太陽電池には、このほかアモルファス(非晶質)シリコン系太陽電池があり、こちらはシリコン基板ではなく、ガラス基板の上にアモルファスシリコンを蒸着させるという、液晶パネルと同じ薄膜製法が基本となる。

結晶性
[よみがな] けっしょうせい
[英訳] crystalline
分子が規則的に並んだ「結晶構造」を持つものを結晶性という。

結晶性高分子
[よみがな] けっしょうせいこうぶんし
[英訳] crystalline polymer
秩序だった分子配列をもつ高分子化合物の総称。ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、セルロースなどがある。融点を示し、部分的な結晶構造をもつものが多く、一般的に硬くて剛性が高い。

結晶ドメイン
[よみがな] けっしょうどめいん
[英訳] crystal domain
ドメインは領域を意味する。ある薄膜の全ての領域が同一の単結晶からなるものは単一ドメイン、薄膜が数多くの単結晶がつながった多結晶の場合はマルチドメインという。

結晶粒界(粒界)
[よみがな] けっしょうりゅうかい
[英訳] grain boundary
結晶粒界は、多結晶体において二つ以上の小さな結晶の間に存在する界面である。液体が冷却されるなどして固体になるとき、始めに多数の微小な結晶(結晶粒)が形成され、それぞれが別々に成長して多結晶体になる。このとき個々の結晶の方向を揃えておくことは困難である。一方、個々の粒子が単結晶からなる粉末を焼結させる過程においても、あらかじめ結晶の方向を揃えたり途中で結晶の方向を変えたりすることは困難である。いずれの場合も形成された多結晶体を構成する結晶は隣接する結晶と方向が異なっている。すなわち結晶と別の結晶との間に残された不連続な境界面が結晶粒界となる。

ケミルミネッセンス
[よみがな] けみるみねっせんす
[英訳] chemiluminescence
化学発光または、ケミルミネセンスとは、化学反応によって励起された分子が基底状態に戻る際、エネルギーを光として放出する現象である。この中で分子単独が励起状態を形成するものを直接発光と呼び、系内に存在する蛍光物質等へエネルギー移動し、蛍光物質の発光が観測されるものを間接化学発光と呼ぶ。

ケルビン法
[よみがな] けるびんほう
[英訳] Kelvin Method
金属や有機半導体試料の仕事関数を測定する手法としてケルビン法がある。仕事関数が異なる 2 つの金属を真空中に非常に狭い間隔で対向させた場合、トンネル効果により、仕事関数が小さい金属 B より仕事関数が大きい金属 A に電子が移動し、金属 A はマイナスに、金属 B はプラスに帯電する。両者の間でフェルミ準位が等しくなると平衡状態となり電子の移動は停止するが、このとき金属 A と金属 B の間に生じる電位障壁 eVabは、それぞれの仕事関数をφaおよびφbとして、eVab=φa−φb である。この時、金属 A と金属 B の間に生じる電位差 Vab=(φa−φb)/e を接触電位差という。 対向させた金属 A と金属 B は容量 C のコンデンサーと見なすことができ、両電極に誘起される電荷 Q は、Q=CVab=C(φa−φb)/e と表される。ここで、金属 A と金属 B に外部電場 Vexを印加すると、電荷 Q は、Q=C(Vab−Vex)=C((φa−φb)/e−Vex) となる。この状態で抵抗 R を接続した一方の電極を振動させると、外部回路に電流が流れ、抵抗 R の両端に交流電圧が発生する。この交流電圧の値がゼロになるように外部電場 Vexを調節すると、その時の Vexの値より金属 A と金属 B の間の接触電位差(φA-φB)/e が求められ、一方の電極に仕事関数が既知の金属を参照電極として用いると、未知試料の仕事関数を決定することができる。また、試料表面の不純物濃度などを変化させた場合の仕事関数の変化刄モは、たとえ参照電極の仕事関数が明らかでない場合でも測定する事ができる。試料が半導体の場合も同様の原理により仕事関数を測定することができる。

建材一体型太陽光発電(BIPV)
[よみがな] けんざいいったいがたたいようこうはつでん
[英訳] Building-Integrated Photovoltaics(BIPV)
後から追加されるのではなく、建物に組み込まれた太陽光発電システムのこと。 建物建設後に取付けの太陽光発電モジュールに比べ多くの利点がある。 多くの場合、最新のアーキテクチャにはBIPVが含まれており、また、各国がより高度なBIPVシステムを開発し、建材一体型で太陽光発電アレイを使用する新しい方法の研究プログラムを実施している。

原子間距離
[よみがな] げんしかんきょり
[英訳] atomic distance / interactomic distance
分子構造において、化学結合の長さ、すなわち化学結合で結ばれた二つの原子の原子核間の距離(核間距離ともいう)。 結合角とともに分子の立体構造や電子状態を検討するうえで重要な量である。結合長は結合次数と関連しており、結合の形成に参加する電子が多くなるほど結合は短くなる。また結合長は、結合強さ及び結合解離エネルギーと逆相関の関係にあり、結合が強くなるほど結合長は短くなる。2つの同じ原子の間の結合長の半分は、共有結合半径と等しい。

原子間力顕微鏡(AFM)
[よみがな] げんしかんりょくけんびきょう
[英訳] Atomic Force Microscope(AFM)
原子間力顕微鏡(AFM)は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の一種であり、試料の表面と探針の原子間に働く力を検出して画像を得る。走査型トンネル顕微鏡 (STM) とは異なり、絶縁性試料の測定も可能である。また、電子線を利用する走査型電子顕微鏡 (SEM) のように、導電性コーティングなどの前処理や装置内に真空を必要とする事もない。このため、大気中や液体中、または高温〜低温など様々な環境で、生体試料などを自然に近い状態で測定できる。他の走査型プローブ顕微鏡と同様に空間分解能は探針の先端半径(nm程度)に依存し、現在では、原子レベルの分解能が実現されている。有機ELや有機太陽電池においては、電極や有機膜の表面の凹凸状態を確認する等の目的に用いられる。

原子軌道(電子軌道)
[よみがな] げんしきどう
[英訳] atomic orbital (electron orbital)
原子軌道とは、原子核のまわりに存在する1個の電子の状態を記述する波動関数のことである。電子軌道あるいは単に軌道とも呼ばれる。

原子軌道エネルギー
[よみがな] げんしきどうえねるぎー
[英訳] atomic orbital energy
それぞれの原子軌道について、その軌道に存在する電子が持つエネルギーが決まっている。これを原子軌道エネルギーと呼ぶ。原子核に近いほど原子核からの引力が強くなるためエネルギーは低い。

原子配列
[よみがな] げんしはいれつ
[英訳] atomic arrangement
物質は原子が色々に組み合わさってできており、その組み合わせや構造の状態を原子の配列という。 原子の配列によって、柔らかいもの、硬いもの、電気を良く通すもの、磁石になるもの、 など様々な性質が現れる。同じ炭素原子が集まったものでも、鉛筆の芯のように黒くて柔らかい物もあれば、ダイヤモンドのように固くて透明のものもある。その性質の違いは、炭素原子の配列の違いからくるもので、原子配列の構造を知ることは、物質の性質を研究する基本である。

光化学
[よみがな] こうかがく(ひかりかがく)
[英訳] photochemistry
光照射下での物質の挙動について調べる化学の一領域。広義には、光と物質との相互作用を取り扱う化学の一分野で、光励起による蛍光・蓄光のような発光現象も対象となる。光化学が取り扱う物質は、無機化合物から有機化合物まで多岐にわたる。光の波長が赤外線よりも長波長の場合には、光の作用は熱的な作用が主となるため、光化学には含まれないことが多いが、近年の赤外レーザーの出現により、多光子吸収による化学反応が多数報告されたため、光化学の一領域として注目を集めている(非線形光学)。逆に、光の波長が短くなって、X線やγ線のようにイオン化や電子放出のような作用を及ぼす場合には、光化学ではなく放射線化学で取り扱われている。光化学では、光の強度ではなく、光の波長が本質的な意味をもつ。

光学バンドギャップ
[よみがな] こうがくばんどぎゃぷ
[英訳] optical bandgap
紫外可視光の吸収スペクトルの吸収端波長に相当するエネルギーで、基底状態と励起状態のエネルギー差をあらわす。光学バンドギャップは励起子の結合エネルギー分だけバンドギャップが過小評価されることに注意が必要である。

光化学反応
[よみがな] こうかがくはんのう
[英訳] photochemical reaction
光の吸収によって起こる化学反応の総称。一般の分子が化学変化に必要とされる以上のエネルギーの光を吸収すると、励起分子(光励起)、遊離基(前期解離、光解離)やイオン(光イオン化)などが発生する。このうち、発生した励起分子は分解、異性化、発光、無放射遷移、ほかの分子へのエネルギー移動、失活、付加などの過程により励起エネルギーを失う。励起分子や遊離基などを反応中間体として、光分解、光異性化、光重合、光還元、光酸化などの反応が起こる。分子や原子が光を吸収して中間体を生成する過程と、生成した中間体が引き続いて各種の反応をする過程とに大別できる。これらをそれぞれ光化学一次過程(初期過程)および二次過程という。このうち、一次過程は光化学特有な過程であるが、二次過程は必ずしも光化学特有な過程ではない。多くの有機物や無機物は可視領域の光に対して安定である。可視領域の光を吸収して起こる反応は、おもに生物体でみられる(たとえば光合成)。紫外領域の光(400 nm 以下)は多くの物質に吸収され、光のエネルギーも十分に大きいため、各種の光化学反応を引き起こす.さらに,短波長になると光イオン化なども起こりやすくなる。

光学遷移(光学的遷移)
[よみがな] こうがくせんい
[英訳] optical transition
分子の光吸収による遷移が光学遷移である。分子が電磁波を吸収すると内部エネルギーが増大する。このエネルギーの増加は光量子のエネルギー ΔE に等しく、次の関係で示される。ΔE=hν=hc/λ ここで h はプランク定数、νは電磁波の振動数、λは電磁波の波長、c は光速度である。分子は電磁波を吸収することにより、電子エネルギー、振動エネルギー、回転エネルギーに変化を起こす。最もエネルギーの低い電子状態は基底状態と呼ばれ、それより高い電子状態は励起状態と呼ばれる。基底状態、励起状態にはいくつかの振動準位があり、各振動準位にもいくつかの回転準位がある。多くの分子は遠赤外、マイクロ波のようなエネルギーが低い電磁波を吸収すると回転状態に変化が生じ、中・近赤外程度であれば振動、回転状態に変化が生じ、可視光線および紫外線の場合には電子、振動、回転状態に変化が生じる。

項間交差
[よみがな] こうかんこうさ
[英訳] intersystem crossing
一重項状態が非輻射的に三重項状態へ変わるとき、または逆に三重項が一重項へ変わるとき、この過程を項間交差という。 系間交差と呼ばれることもある。項間交差においては、励起電子のスピンの反転が起こる。 2つの励起状態の振動準位が重なるとき、遷移によるエネルギーの変化が小さいために項間交差が起こる確率は高くなる。

交換積分
[よみがな] こうかんせきぶん
[英訳] exchange integral
2個の電子の交換にもとづくエネルギー積分。水素分子の共有結合形成についてのハイトラー-ロンドンの理論のなかではじめて導入された積分であり、∬ ψa*(1)ψb*(2)(H−2Eh)ψa(2)ψb(1)dτ1dτ2 なる形をしている。ここで、ψa, ψb は水素原子a, bに対する1s軌道関数、Hは二つの1s 電子のハミルトニアン、Eh は1s 電子のエネルギーである。この交換積分によって表されるエネルギーは、交換エネルギーとよばれる。水素分子の平衡結合間隔付近では、上記の積分値は負であるから、水素分子の安定化エネルギーは、交換積分の値の大きさによってほぼ決定され、水素分子の結合の本質は交換エネルギーにあることが証明された。同様に、有機半導体において一重項励起状態と三重項励起状態のエネルギー差を交換積分の値の大小によって見積もることができる。分子内に電子-ホール対が形成されている励起状態の分子の場合、HOMOとLUMOの重なりが大きくなるために、励起一重項状態と励起三重起状態のエネルギー差である交換積分は大きくなる。一方、電子とホールが離れているラジカル対では、そのエネルギー差は小さくなると予想される。

交換相互作用/交換エネルギー/交換ポテンシャル
[よみがな] こうかんそうごさよう/こうかんえねるぎー/こうかんぽてんしゃる
[英訳] exchange interaction/ exchange energy / exchange potential
交換相互作用は、同種粒子間でのみ起こる量子力学的効果である。古典力学による説明はできない量子力学効果のひとつである。粒子が電子の場合、J(交換積分)とK(クーロン積分)を導入すると、スピン一重項に対応する固有エネルギーはK+J、スピン三重項に対応する固有エネルギーはK-Jとなる。交換積分が正の場合、三重項エネルギーの方が一重項エネルギーよりも安定となる。このように交換積分によりスピン一重項、三重項の間でエネルギー差とエネルギーの大小が生じ、これを引き起こすのが交換相互作用と言える。Jは交換エネルギー、交換ポテンシャルとも呼ばれる。

交換反発力(交換斥力)
[よみがな] こうかんはんぱつりょく
[英訳] exchange-repulsion
電子雲の重なりによって生じる短距離での斥力であり、重なり積分の大きさに比例する。分子間距離が離れていくにつれ、指数関数的に減衰していく。強い方向依存性を持つ。Pauli 反発力とも呼ばれる。

高高度長時間滞空型無人機
[よみがな] こうこうどちょうじかんたいくうがたむじんき
[英訳] Global High-Altitude Long-Endurance Unmanned Aerial Vehicle
太陽電池とバッテリーを使い、成層圏を最大1年間飛行可能で、従来の航空機と衛星の間をつなぐ画期的な無人飛行機(UAV)として開発されている。UAVは、インターネットサービス、環境監視、災害救援、通信・放送の中継基地となる空中通信プラットフォーム等、人工衛星の安価な代替手段として注目を集めており、5G 以降の更なる高速通信化に伴い、そのニーズはさらに高まると予想される。昼間に太陽光発電で飛行しながら、余った電力をバッテリーに蓄積し、夜間の飛行に用いることで、理論的には半永久的な飛行も可能となる。充電なしでの航続距離を伸ばすこと、モジュールを軽量化することによりUAVの実用化は進むと考えられる。

光子
[よみがな] こうし
[英訳] photon
光子とは光の粒子である。物理学における素粒子の一つであり、光を含む全ての電磁波の量子かつ電磁力の媒介粒子である。光量子(light quantum)とも呼ばれる。

高次三重項状態生成
[よみがな] こうじさんじゅうこうじょうたいせいせい
[英訳] higher triplet state generation
一重項励起状態にある分子(1A*)と三重項励起状態にある別の分子B(3B*)との間に生じるエネルギー移動(1A*+3B* → 1A+3B**)。フェルスター(Forestr)機構によるエネルギー移動の場合で、Bの光吸収が許容遷移であり、かつAの発光スペクトルと重なりを持ち、Aのリン光スペクトルとBの三重項ー三重項吸収の重なりが必要である。

格子散乱(フォノン散乱)
[よみがな] こうしさんらん
[英訳] lattice scattering
半導体中で、キャリア(電子や正孔)が散乱されるメカニズムの一つで、格子振動による散乱である(フォノンとは結晶格子の熱振動を量子化したもの)。熱エネルギーによる原子の振動による散乱であるため、低温ではその影響は小さく、高温ほど影響は大きくなる。電子の移動度への影響は温度Tの 3/2 乗に比例する。

格子振動
[よみがな] こうししんどう
[英訳] lattice vibration
格子振動とは、結晶中の原子(格子)の振動のこと。振動の駆動力は熱であるが、絶対零度においても、不確定性原理から原子(格子)は振動している(零点振動)。格子振動は、熱伝導の原因の一つであり、比熱とも関係が深い。また、格子振動によって電子が散乱される(電気伝導に影響)。

格子定数
[よみがな] こうしていすう(こうしじょうすう)
[英訳] lattice constant
格子定数とは、結晶軸の長さや軸間角度のこと。単位格子の各稜間の角度 α,β,γ と、各軸の長さ a,b,c を表す6個の定数である。その性質上、格子の形状によっては一部の値のみで表すことが出来る。例えば、立方格子ではa = b = cかつα = β = γ=90°であるため、aの値のみで表すことができ、斜方格子ではα = β = γ=90°であるため、a,b,cのみを指定すればよい。軸の長さの単位は普通オングストローム(A)を用い、自明として単位を付けずに数値のみを書く場合が多い。X線の波長は約1 Aであるため、X線の回折によって格子定数を求めることが可能である。

高次フラーレン
[よみがな] こうじふらーれん
[英訳] higher fullerenes
高次フラーレンは、70個以上の炭素で構成されるフラーレン分子である。六角形と五角形の面が融合して籠の形を作っている。

格子分極
[よみがな] こうしぶんきょく
[英訳] lattice polarization
格子分極とは、注入した電荷とそれが周囲の分子に引き起こす双極子の相互作用に基づいて周辺分子の格子位置からの変位に基づいた分極である。有機半導体中の電荷担体の移動では、電荷担体が一分子中に滞在する時間は格子分極に要する時間より短く、格子分極は伴わないと考えられている。

構造規則性
[よみがな] こうぞうきそくせい
[英訳] structural order
共役高分子はモノマーが連結して1本の分子鎖が形成されている。モノマーが立体的に対象ではなくheadとtailが定義できる場合、共役高分子がhead-to-tailで規則的に連結されている場合、構造規則性が高いと呼ばれる。モノマーとしてアルキルチオフェンが用いられる場合、そのポリチオフェン体の物性は構造規則性に大きく左右されることが知られている。

光束(lm)
[よみがな] こうそく
[英訳] luminous flux
光束とは、ある面を通過する光の明るさを表す物理量である。SI単位はルーメン(記号: lm)。

光束維持率
[よみがな] こうそくいじりつ
[英訳] lumen maintenance factor
「光束維持率」とは、LEDが最初(新品の時)と比べて、どれくらい明るさを維持しているか を割合(%)で表したもので、LED製品の寿命を考える上で用いられる指標。 一般的なLED照明器具の場合、光束維持率が70%に落ちるまでの使用可能時間で寿命が設定されている。

光電エネルギー変換効率(光電変換効率)
[よみがな] こうでんえねるぎーへんかんこうりつ
[英訳] photoelectric power conversion efficiency
得られる電気エネルギ(電力)を入射した光のエネルギーで割ったものである。測定においては100 mW/cm2 の光源(疑似太陽光)を用いて評価することが多い。

光電子
[よみがな] こうでんし
[英訳] photoelectron
光電子は、光電効果によって、光のエネルギーを吸収し、物質表面から外部に放出された自由電子と、固体の内部に留まるが励起されて伝導(光伝導)に寄与するようになった電子の総称である。また、光電子による電流を光電流と呼ぶ。

光電子収量分光法 (PYS)
[よみがな] こうでんししゅうりょうぶんこうほう
[英訳] Photoemission Yield Spectroscopy (PYS)
紫外光電子分光法 (UPS)を参照

光電子分光
[よみがな] こうでんしぶんこう
[英訳] Photoemission Spectroscopy(PES)
光電子分光(PES)は、試料にエネルギーhνの単色光を照射し、被占準位にある電子を真空準位よりも高いエネルギーに励起する。励起した電子の運動エネルギーEkを測定することで、準位エネルギーEbを測定する。これにより被占準位の状態密度がわかる。被占準位の上端は、ホールの輸送を担うことから重要である。真空準位を基準とする非占有準位の上端のエネルギーがイオン化(閾値)エネルギーである。

光伝導
[よみがな] こうでんどう / ひかりでんどう
[英訳] photoconduction
半導体や絶縁体に光を当てたとき、電気伝導度が増加する現象で、光電子放射と区別して内部光電効果とも呼ばれる。照射した光により、試料中の価電子帯あるいは不純物準位にある電子は励起して自由な電子や正孔となり、それらは外部からの電場によって結晶中を移動するために電流が流れる。光電流の大きさは、光照射によって発生した電子または正孔の数や電場の強さに一定の範囲内で比例するが、結晶中での自由電子または自由正孔の寿命や移動度にも関係する。有機半導体の分野では、電子複写機の感光体の動作原理や有機太陽電池の動作原理に含まれる。

光電変換
[よみがな] こうでんへんかん
[英訳] photoelectric conversion
光エネルギーを電気エネルギーに変換すること。光励起による電荷分離状態は、一般にその逆反応が速やかに起こり、光エネルギーを他の化学エネルギーや電気エネルギーに変換して取り出すことは必ずしも容易ではない。光励起された状態からエネルギー移動や電子移動を効果的に行うことにより、速やかに逆反応の起こりにくい電荷分離状態をつくり出し、電流として取り出すことが必要である。実用例としては、金属と半導体の接触界面のショットキー効果を用いたセレン光電池や、シリコンなどの半導体単結晶のpn接合を用いた光電池などがある。有機薄膜太陽電池の光電変換は、光吸収による励起子生成、励起子のドナー-アクセプター界面への拡散、電荷分離、フリーキャリアの生成、および電子と正孔の電極への輸送からなる。

光電変換効率
[よみがな] こうでんへんかんこうりつ
[英訳] photoelectric conversion efficiency
光電変換効率は太陽光のエネルギー変換効率であり、電流密度(単位時間,単位面積を流れる電荷量)と電圧の積である単位面積当たりの電力を、単位時間、単位面積当たりに入射する太陽光のエネルギーで割った値である。

光度(cd)
[よみがな] こうど
[英訳] luminous intensity
点光源から発する光の単位立体角当たりの光束。単位はカンデラ(cd)。

高分子半導体
[よみがな] こうぶんしはんどうたい
[英訳] semiconducting polymer
半導体的な性質をもつ高分子を指す。電導度の値が金属と絶縁体の中間的な値を示さないものであっても、その光吸収帯や発光帯が可視光領域に存在したり、注入した電荷を良好に輸送できれば、高分子半導体と呼ばれることもある。

高分子有機EL素子
[よみがな] こうぶんしゆうきいーえるそし
[英訳] polymer electroluminescent device
有機EL素子の発光材料として高分子化合物を用いる素子。有機EL材料は、低分子系と高分子系に大別され、さらに高分子系は共役系高分子と非共役系高分子に分けられる。 共役系高分子はπ電子が共役系の中に非局在化しているため、電子やホールの輸送を行うことができる。一方、非共役系高分子は、ポリビニルカルバゾールのように、π共役系のユニットを非共役の主鎖にぶら下げた構造をもつ。高分子有機EL材料は、蒸着で膜形成するこはできないが、溶媒への可溶性があり、溶液とすることでインクジェット法などの印刷プロセスを用いた成膜を行うことができる。

光量(lm・s)
[よみがな] こうりょう
[英訳] quantity of light
一定の面を一定時間内に通過する光のエネルギーの総量。単位(lm・s)。

固液抽出
[よみがな] こえきちゅうしゅつ
[英訳] solid-liquid extraction
抽出は、原料中の特定成分を溶媒によって分離する操作で、溶媒抽出ともいわれる。液体原料では液液抽出、固体原料では固液抽出とも呼ばれている。固体からの成分を抽出したい場合は、一般的には試料を溶媒に浸漬し、可能であれば加熱・攪拌する。成分によっては、抽出剤としてキレート剤や酸・アルカリなどを加える。また、試料が少ない場合は、ソックスレー抽出器を用いることにより、より少ない溶媒で、短時間で抽出することができる。一般的に溶媒の温度が高まるほど溶解度が増加する。

コープレーナー構造
[よみがな] こーぷれーなーこうぞう
[英訳] coplanar structure
トップコンタクト−トップゲート型の有機トランジスタ構造。

コールドウォール型化学気相成長法
[よみがな] こーるどうぉーるがたかがくきそうせいちょうほう
[英訳] cold wall type Chemical Vapor Deposition (CVD)
熱反応を利用した熱化学気相成長(熱CVD)法の一つ、基板をあらかじめ所定の成膜温度に熱加熱しておき、原料気体を加熱された基板表面へ導入し,ここで化学反応を起こして基板の表面に成膜する。コールドウォール型は,基板を加熱するヒーターは真空容器の中に設置され、成膜をおこなう基板およびその近傍のみを加熱するため、原料の利用効率が高い。真空内の構造が複雑であり、約500°C以下の低温プロセスに使用されることが多い。この構造のヒーターは、通常、抵抗加熱ヒーターを使用することが多いが、ハロゲンランプなどのランプ加熱を使用すると、基板の急速加熱、急速冷却ができ、高速熱処理が可能になる。

固定価格買取制度(FIT)
[よみがな] こていかかくかいとりせいど
[英訳] Feed-in Tariff(FIT)
FIT(固定価格買取制度)を参照

コネクト&マネージ(C&M)
[よみがな] こねくとあんどまねーじ
[英訳] Connect & Manage(C&M)
コネクト&マネージとは、電力系統のうち、ローカル(地内)系統制約への対応方法で、現在の日本で導入している先着優先(系統の空き容量の範囲内で先着順に受け入れる制度)ではなく、混雑時の出力抑制など、一定の条件下で接続を認める仕組み。日本では、電力会社との連系協議で、系統との接続を認められた場合、常に送電できる。こうした仕組みをファーム接続と言う。これに対し、系統の混雑状況によって送電(出力)を制限される条件での接続をノンファーム接続と呼び、こうした系統接続の考え方をコネクト&マネージという。海外では、出力変動の大きい太陽光や風力など再生可能エネルギー電源に対して、ノンファームで接続するケースが増えている。

コヒーレント
[よみがな] こひーれんと
[英訳] coherent
コヒーレントとは、波動が互いに干渉しあう性質を持つことを表す言葉で、二つまたは複数の波の振幅と位相の間に、一定の関係があることを意味する。電磁波であるラジオやテレビの電波は、その周波数や位相、波面がきれいに揃った波であるのに対し、光は電磁波の一種であるが、自然光は位相と周波数が揃っていない。レーザ光はコヒーレント性の高い光であり、拡散しにくく、遠方まで届きやすい性質を持つ。

混成軌道
[よみがな] こんせいきどう
[英訳] hybrid orbital
混成軌道とは、原子が化学結合を形成する際に、新たに作られる原子軌道を指す。新たに作られる軌道は、基本となる軌道とは異なるエネルギーや形状等を持つ。混成軌道の概念は、第2周期以降の原子を含む分子の幾何構造と、原子の結合の性質の説明において非常に有用である。有機半導体用途の有機化合物においては、炭素原子の3つの混成軌道sp3、sp2、spが重要である。特に、sp2軌道は、π電子を作り出す二重結合を形成する根本の原理と考えられている。

サイクリックボルタンメトリー
[よみがな] さいくりっくぼるたんめとりー
[英訳] Cyclic Voltammetry (CV)
サイクリックボルタンメトリーとは、電極電位を直線的に掃引し、応答電流を測定する手法である。電気化学分野において、最も基本的であり、多用される測定法である。静止溶液中に電極を配し、電位をくり返し掃引した際に流れる電流を測定して得られる電流?電位曲線(サイクリックボルタモグラム、CV)を解析し、酸化還元特性などを調べる測定法である。電位を制御しながら電流を測定できるポテンショスタットに作用極・参照電極・対極を接続し、支持電解質を含んだ溶液に3電極を浸し、一定の掃引速度で電位を増減させて電流値を測定する。電位を負側へ掃引すると還元波が生じ、電位を正側へ掃引すると酸化波が生じ、電位と電流から酸化還元系の標準電位を知ることができる。

再結合
[よみがな] さいけつごう
[英訳] recombination
電荷分離とは反対に、電子と正孔が結合すること。有機ELにおいては、電極から注入された正孔と電子が、それぞれの輸送層においてラジカルカチオン(正孔)、ラジカルアニオン(電子)を形成して移動し、発光層において接近、再結合して正孔-電子対(励起子)を形成する。その後、正孔-電子対の間で電荷の受け渡しが行われ、基底状態の分子と励起状態の分子が生成する。励起状態の分子はその後発光などを伴い基底状態に戻る。

再結合効率
[よみがな] さいけつごうこうりつ
[英訳] recombination efficiency
キャリア再結合の過程では、電子の動きは、陰極から注入された電子電流 Je、有機層内で再結合により消失する電子電流 Jre、再結合せずに陽極まで通過する電子電流 Jte を用いて、Je=Jre+Jte と表わされる。一方、ホールの動きは、陽極から注入されたホール電流 Jh、有機層内で再結合により消失するホール電流 Jrh、再結合せずに陰極まで通過するホール電流 Jth を用いて、Jh=Jrh+Jth と表わされる。これより、電子の再結合効率(ηe)は ηe=Jre/(Je+Jth)、ホールの再結合効率(ηh)は ηh=Jrh/(Jh+Jte) と表わすことができる。再結合効率の向上には、積層構造により再結合の場を形成する方法、ドーピングなどによるキャリアトラップを活用する方法、発光に寄与しないトラップ準位を作らない方法などが検討されている。

再結晶
[よみがな] さいけっしょう
[英訳] recrystallization
固体物質の精製法の一つ。目的の固体物質を適当な溶媒に溶かし、再び結晶を析出させて不純物を除く方法。温度による溶解度の差を利用して、高温度でつくった飽和溶液を冷却するか、あるいは、飽和溶液から溶媒を徐々に蒸発させるなどの方法がある。

最高占有軌道(HOMO)
[よみがな] さいこうせんゆうきどう (ほも)
[英訳] Highest Occupied Molecular Orbital, HOMO
HOMOまたは最高被占軌道とは、電子に占有されている最もエネルギーの高い分子軌道である。原子核からの束縛が最も弱く、電子が最も動きやすい軌道である。そのエネルギー準位は有機半導体の物性として重要な指標である。有機EL素子では、陽極とホール輸送層の界面において、ホール輸送材料のHOMOから陽極へ電子が動く。言い方を変えれば、陽極からホール輸送材料にホールが注入される。この電子の動きは、(陽極の仕事関数)-(ホール輸送材料のHOMO準位の絶対値)が小さいほど容易となる。

最大視感度
[よみがな] さいだいしかんど
[英訳] maximum spectral luminous efficacy
最大視感度とは、視感度が最大となる光の波長である。明るい場所では、多くのヒトが波長555nmで視感度が最大となるため、明所最大視感度は波長555nmとされる。555nmでの視感度は683lm/Wとされる。

再沈殿
[よみがな] さいちんでん
[英訳] reprecipitation
沈殿を繰り返し生成させ純度を高める手法を再沈殿という。いったん生成した沈殿物を溶かすので単に沈殿物を濯ぐ場合よりも純度の向上が期待できる。再沈殿は、高分子合成において低分子量体(モノマーなど)を除去する目的でよく行われる。

最低非占有軌道(LUMO)
[よみがな] さいていひせんゆうきどう (るも)
[英訳] Lowest Unoccupied Molecular Orbital, LUMO
LUMOまたは最低非占有軌道とは、電子に占有されていない最もエネルギーの低い分子軌道である。そのエネルギー準位は有機半導体の物性として重要な指標である。有機EL素子では、陰極と電子輸送層の界面において、陰極から電子輸送材料のLUMOへ電子が動く(電子が注入される)。この電子の動きは、(陰極の仕事関数)-(電子輸送材料のLUMO準位の絶対値)が小さいほど容易となる。

再配列エネルギー
[よみがな] さいはいれつえねるぎー
[英訳] reorganization energy
再配列エネルギーは、電子移動が起こる際に生じる、溶媒などの近傍の分子との相互作用の変化および化学結合の変化に伴い出入りするエネルギーであり、溶媒の再配列エネルギー(λs)と化学結合の変化の再配列エネルギー(λv)の和で表される。有機半導体で、高い電荷移動度を示す材料には、中性分子とラジカルアニオンとの間のエネルギー差である再配列エネルギーが小さいことが求められる。電荷移動の重要な制御因子である。

錯体
[よみがな] さくたい
[英訳] complex
錯体とは、広義には、配位結合や水素結合によって形成された分子の総称である。狭義には、金属と非金属の原子が結合した構造を持つ化合物(金属錯体)を指す。この非金属原子は配位子である。ヘモグロビンやクロロフィルなど生理的に重要な金属キレート化合物も錯体である。また、中心金属の酸化数と配位子の電荷が打ち消しあっていないイオン性の錯体は錯イオンと呼ばれる。

SAM
[よみがな] さむ
[英訳] Self-Assembled Monolayer(SAM)
自己組織化単分子膜参照

作用スペクトル
[よみがな] さようすぺくとる
[英訳] action spectrum
ある光依存現象について、その反応を定量的に測定し、各波長の単色光がその反応をひき起こす効率を波長を横軸にして表したもの。光依存現象に関与する光受容体の吸収スペクトルを推定することができる。逆にある物質の吸収スペクトルが既知であれば、作用スペクトルとの比較から、その物質が主たる光受容体であるか否かが判定できる。

3E+S
[よみがな] さんいーぷらすえす
[英訳] 3E+S
エネルギーにおける 3E+S とは、エネルギーの安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)、安全性(Safety)から成り、日本のエネルギー政策の基本となる概念である。

酸化還元系
[よみがな] さんかかんげんけい
[英訳] oxidation-reduction system (Redox system)
酸化とは、物質、分子または原子が電子を失う過程をいい、還元とは、逆に物質、分子または原子が電子を得る過程をいう。ある物質の酸化型と還元型の混合系を酸化還元系と呼び、この系の中で、酸化反応と還元反応は可逆的に起こりうる。自然界で起こる多くの物質変化において、酸化還元反応は基本的で重要な反応といえる。色素増感太陽電池においては、電子を陽極から酸化物まで運ぶために、ヨウ素とヨウ化物イオン間の酸化還元系の電解質溶液を用いることがある。

酸化還元電位
[よみがな] さんかかんげんでんい
[英訳] redox (oxidation-reduction) potential
酸化還元電位とは、ある酸化還元反応系における電子のやり取りの際に発生する電位(正しくは電極電位)のことである。物質の電子の放出しやすさ、あるいは受け取りやすさを定量的に評価する尺度である。単位はボルト(V)を用い、標準水素電極を基準として表わされるが、実際には標準水素電極の代わりに、銀?塩化銀電極やカロメル電極など実用的な基準電極を基準にして酸化還元電位を測定することが頻繁に行なわれる。したがって、酸化還元電位を表記する際には、基準電極を必ず明記せねばならない。

酸化電位
[よみがな] さんかでんい
[英訳] oxidation potential
電気化学的には、有機半導体分子のHOMOと電極との間で、ホールのやり取りが平衡になる点の電極電位である。酸化電位VoxとHOMOの電子エネルギー準位Ehoとの関係は、−Vox=Eho+C(Cは溶媒和エネルギーを含む定数であり、Voxが与えるのはEhoの相対値である。)。有機半導体の酸化電位の決定方法としては、例えば、有機溶媒に有機半導体と支持電解質を溶解させてサイクリックボルタンメトリーを行うなどの手法がある。

酸化物半導体
[よみがな] さんかぶつはんどうたい
[英訳] oxide semiconductor
酸化物半導体は、半導体の一つで、金属をカチオンとして用いたものが大多数である。多くが広いバンドギャップを有し、可視光域の光を透過する。中には高い電荷担体濃度や移動度を示すものもあり、これらの特徴を用いた様々な用途が考案されている。代表的なものに酸化亜鉛や二酸化スズ、酸化インジウムやITO(通常、In2O3:SnO2 = 90:10 [wt%])がある。多くは電子を電荷担体としたn型であるが、酸化銅や酸化銀、また一酸化スズなどの正孔を電荷担体としたp型も報告されている。代表的な用途として透明伝導膜や超伝導、センサーなどが研究されている。

酸化物半導体トランジスタ
[よみがな] さんかぶつはんどうたいとらんじすた
[英訳] oxide semiconductor transistor
酸化物半導体を活性層に用いたトランジスタ。ポリエチレンテレフタラート(PET)など軽量で曲げられるプラスチックフィルムの上に、薄膜を容易に形成でき、かつ アモルファスシリコンや有機トランジスタを活性層に用いたTFTよりも優れた性能のものが開発され、液晶ディスプレイのトランジスタなどに実用化されている。無機物半導体であるため、熱的・化学的な安定性に優れている。用いる酸化物としては、インジウムーガリウムー亜鉛酸化物(IGZO)が最も広く用いられている。また、多結晶シリコントランジスタよりもオフ電流が小さいため、待機電力を低減できる。

III-V 系太陽電池
[よみがな] さんごけいたいようでんち
[英訳] III-V solar cells
周期律表のV族のガリウム(Ga)とX族のヒ素(As)を主原料とする化合物半導体を用いた太陽電池。直接遷移型の半導体のため光吸収係数が大きく変換効率が高い。In や P など他の元素を添加することでバンドギャップを調整できるため、異なる吸収波長帯を持つ複数の膜を積層することにより、広い波長範囲で光を吸収することができる。3 層程度の積層構造が用いられることが多いが、より高効率を得る為に 6 層程度まで積層化することにより最高効率を得た報告もある。また、宇宙線などの放射線損傷に対し高い耐久性を持つため、宇宙用太陽電池として有効である。ただし、GaAs の半導体製造コストが他の太陽電池に比べ非常に高いため、宇宙用や集光用などに用途が限定されている。

三重結合
[よみがな] さんじゅうけつごう
[英訳] triple bond
化学における三重結合は、通常の単結合での2つの電子の代わりに6つの結合電子が関与する2元素間の化学結合である。最も一般的な三重結合は、炭素-炭素間の結合であり、アルキンで見られる。その他の三重結合を含む官能基は、シアニドやイソシアニドである。二窒素や一酸化炭素といったいくつかの二原子分子も三重結合を持つ。構造式では、三重結合は2つの結合原子間の3本の平行線(≡)として描かれる。三重結合は、単結合や二重結合よりも強く短い。結合次数は3である。

三重項
[よみがな] さんじゅうこう
[英訳] triplet
量子化学における多重度は、全スピン角運動量をSとしたとき、2S+1 で定義される。 多重度は、スピン角運動量の向きのみが異なる複数の縮退した量子状態(波動関数)を区別するために使われている。多重度は不対電子スピンの量の定量化で、フントの規則の結果である。全スピン角運動量Sは、単純には不対電子の数を2で割ったものである。全ての電子が対になっている場合は S=0 で、多重度は1である。この場合は一重項(singlet)と呼ばれる。分子が1個の不対電子を有している場合は S=1/2 で、多重度は 2S+1=2(二重項、doublet)である。不対電子が2個の場合は同様に三重項(triplet)と呼ばれる。三重項状態は系の電子が偶数個で不対電子を2個もつ場合にのみ生じる。つまり、系の電子をスピンの方向が互いに反平行であるような2個の電子の組に分けるとき、最後に平行スピンをもつ2個の電子が残る場合である。この平行スピンをもつ電子は、パウリの原理によって同じ空間軌道に入ることはできず、異なった空間軌道に帰属する。偶数の電子を有する分子の基底状態は一般に一重項状態であるが、酸素分子のように、縮退した最高被占軌道(HOMO)に2個の電子が帰属するときは、フントの規則に従い、電子は平行スピンをもって異なる軌道に帰属することになり、基底状態が三重項状態になるものもある。

三重項 - 一重項エネルギー移動
[よみがな] さんじゅうこういちじゅうこうえねるぎーいどう
[英訳] triplet-singlet energy transfer
三重項励起状態にある分子A(3A*)と基底状態(一重項)にある別の分子B(1B)間に生じるエネルギー移動(3A*+1B → 1A+1B*)。フェルスター(Forester)機構によるエネルギー移動の場合で、Bの光吸収が許容遷移であり、かつAの発光スペクトルと重なりを持つ場合に観測される。

三重項 - 三重項エネルギー移動
[よみがな] さんじゅうこうさんじゅうこうえねるぎーいどう
[英訳] triplet-triplet energy transfer
三重項励起状態にある分子A(3A*)と基底状態(一重項)にある別の分子B(1B)間に生じるエネルギー移動(3A*+1B → 1A+3B*)。デクスター(Dexter)機構が支配的である。三重項 - 三重項エネルギー移動により、本来一重項から三重項への項間交差が起こらないような系においても三重項状態を生成できる特徴がある。

三重項-三重項消滅
[よみがな] さんじゅうこうさんじゅうこうしょうめつ
[英訳] Triplet-Triplet Annihilation(TTA)
三重項-三重項消滅は、三重項状態にある2つの分子間のエネルギー移動機構である。デクスターエネルギー移動機構と関連している。三重項-三重項消滅が励起状態にある2分子間で起こると、1つ目の分子はその励起状態エネルギーを2つ目の分子に伝達し、その結果、1つ目の分子は基底状態に戻り、2つ目の分子はより高い励起一重項、三重項、または四重項状態へと昇位する。励起子の三重項-三重項消滅(TTA)は励起子の密度の2乗に比例して生じるため、有機ELでは、キャリア再結合領域を広くとることで、高電流密度駆動下でのTTAによる発光効率の低下を抑制することが可能である。三重項-三重項消滅は1960年代に始めて発見され、アントラセン誘導体における遅延型蛍光の観測結果を説明した。

三重項状態/三重項励起状態/励起三重項状態
[よみがな] さんじゅうこうじょうたい
[英訳] triplet state
一重項基底状態にある分子中の電子が光吸収などによってより高いエネルギー状態へ励起したとき、励起一重項状態または励起三重項状態となる。三重項状態では励起電子は基底状態の電子と対ではなくなり、平行スピン(同じ向きのスピン)となる。三重項状態への励起では、禁制遷移であるスピンの反転を含むため、分子が光吸収によって直接的に三重項状態を作る確率は低い。一方、一重項励起状態から系間交差により三重項励起状態に遷移しやすい化合物が知られている。

三重項励起子
[よみがな] さんじゅうこうれいきし
[英訳] triplet exciton
三重項励起状態にある分子のことを指す。電子とホールの再結合で分子が励起状態になる場合に、1:3の割合で一重項励起子と三重項励起子が生じる。一重項励起子と三重項励起子の違いは励起準位にある電子のスピンの向きが基底状態と違うか同じかということに起因している。再結合により分子が励起状態になったとき、励起準位にあるスピンの向きが打ち消し合っていれば、励起一重項状態である。スピンの向きが同じであれば、励起三重項状態である。

三重項励起子生成効率
[よみがな] さんじゅうこうれいきしせいせいこうりつ
[英訳] triplet exciton production efficiency
有機分子の励起状態には、一重項励起状態(S1)と三重項励起状態(T1)の二つのスピン多重度の異なる状態が存在する。燐光型有機EL素子において、生成された励起子のうちEL 発光として利用されうる三重項励起子の生成割合を、三重項励起子生成効率と定義している。電子と正孔の再結合による励起子生成過程では、スピン統計則に従って、一重項励起子が 25%の確率で、三重項励起子が 75%の確率で生成すると考えられている。このうち、一重項励起子が系間交差によって三重項励起子に全て変換される場合には、三重項励起生成効率は100%となる。

g因子
[よみがな] じーいんし
[英訳] g-factor
電子系が軌道運動またはスピンによる角運動量をもつとき、それに伴う磁気モーメントが存在し、外部磁場によってゼーマン効果がみられる。この磁気モーメント μ と角運動量 J の間には μ=gμ0eJ/2m(ここで、μ0 は真空の透磁率、e は電子の電荷、m は電子の質量)という関係があり、比例定数 g を g 因子という。また γ=μ/J を磁気回転比と呼ぶこともある。角運動量が純粋に電子の軌道運動量による場合は g=1 、純粋に電子スピンだけなら g=2 となる。スピン軌道相互作用が大きい自由原子では、g=3/2+{S(S+1)−L(L+1)}/2J(J+1) で与えられる。ここで、L は軌道角運動量、S はスピン角運動量、J は合成角運動量を表わす。この g をランデの g 因子という。核子系では、電子の場合に用いたボーア磁子の代りに核磁子を用いて、同様に g 因子が定義される。

CNDO法
[よみがな] しーえぬでぃおーほう
[英訳] Complete Neglect of Differential Overlap
CNDOは、Complete Neglect of Differential Overlap(微分重なりの完全無視)の略で、量子化学における最初の半経験的手法の1つである。「内殻近似」(外側の価電子のみが明示的に含まれる)と「ゼロ微分重なり」の2つの近似を使用する。それ以前の方法としては、電子-電子反発項を明示的に無視した拡張ヒュッケル法があったが、電子エネルギーと分子軌道を計算するための方法だった。CNDOはこの方法から発展したもので、電子-電子反発項を明示的に含むが、多くの項を無視し、その一部を近似し、他の項を分光実験データに適合させることによって開発された。

CCD(電荷結合素子)
[よみがな] しーしーでぃー
[英訳] Charge-Coupled Device(CCD)
通常の半導体集積回路では、一般に、その上に作り込まれたそれぞれの素子の間は金属層のパターンによる配線によって、電気的に接続され信号がやりとりされる。これに対し、隣り合った素子の間の電荷的な結合を利用して、次々と電荷の状態が送り出されることにより信号がやりとりされる素子がCCD(電荷結合素子)である。

CMOS(相補型MOS)
[よみがな] しーもす
[英訳] Complementary MOS( CMOS)
CMOS(相補型MOS)とは、P型とN型のMOSFETをディジタル回路(論理回路)の論理ゲート等で相補的に利用する回路方式(論理方式)、およびそのような電子回路やICのことである。また、そこから派生し多義的に多くの用例がみられる。CMOSイメージセンサ(CMOSを用いた固体撮像素子)を単にCMOSと言う場合がある。

紫外光電子分光法(UPS)
[よみがな] しがいこうでんしぶんこうほう
[英訳] Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy (UPS)
紫外光電子分光法は、原子価領域の分子軌道エネルギーを決定するために用いられる分析法。紫外線を吸収した分子によって放出される光電子の運動エネルギースペクトルを測定する。光は固体内部まで進入するため、表面数層の領域の価電子状態を調べることができる。各種材料の仕事関数評価にも用いられる。

自家消費型太陽光発電
[よみがな] じかしょうひがたたいようこうはつでん
[英訳] self-consumption photovoltaics / self-consumption solar power generation
自家消費型太陽光発電システムとは、太陽光発電の発電電力を電力会社に売電せずに、太陽光パネルを設置している施設で使用(自家消費)する設置モデル。

時間依存密度汎関数理論
[よみがな] じかんいぞんみつどはんかんすうりろん
[英訳] Time-dependent density-functional theory(TDDFT)
時間依存密度汎関数理論(TDDFT)は、電場や磁場といった時間依存的ポテンシャルの存在下での、多体系の性質と動力学を調べるために、物理学および化学において使われる量子力学理論である。こうような場の分子や固体に対する効果はTDDFTを使って研究することが可能であり、励起エネルギー、周波数依存応答特性、光吸収スペクトルのような特徴を抽出できる。TDDFTは密度汎関数理論(DFT)の拡張であり、概念的、計算的基礎は類似している。

視感度
[よみがな] しかんど
[英訳] luminosity factor
視感度は、分光視感効果度とも呼ばれ、人間の目が最も強く感じる波長約555ナノメートル(nm)の光を1として、他の波長の明るさを感じる度合いを比を用いて表現したもの。

時間分解発光スペクトル
[よみがな] じかんぶんかいはっこうすぺくとる
[英訳] time-resolved emission spectrum / time-resolved PL spectrum
時間分解発光スペクトルは、発光スペクトルをミリ秒〜ピコ秒の時間領域で時間分解したもので、発光の減衰過程や発光スペクトルが時々刻々変化する様子を知ることができる。

時間分解マイクロ波伝導度測定法
[よみがな] じかんぶんかいまいくろはでんどうどそくていほう
[英訳] Time-Resolved Microwave Conductivity (TRMC) Measurement Method
光パルスを材料に照射すると電荷が生じ、その電荷がマイクロ波と相互作用してマイクロ波のエネルギーが減衰する。その量から、電荷の時間挙動や電荷キャリアの局所的な移動度がナノスケールで評価できる。

色域
[よみがな] しきいき
[英訳] gamut / color gamut
色空間参照

閾値
[よみがな] しきいち
[英訳] threshold
しきい値(閾値)は、境目となる値のこと。半導体では、伝導帯の最低エネルギー準位は、他の物質との電子の授受の閾値と相関があり、価電子帯の最高エネルギー準位は、他の物質との正孔の授受の閾値と相関する。

閾値電圧
[よみがな] しきいちでんあつ
[英訳] threshold Voltage
一般に、デジタル信号を H(もしくは 1)/L(もしくは 0)信号として検知するのに必要となるしきい値となる電位を指す。有機トランジスタの例では、ゲート電極に電圧を印加すると、ゲート電圧とソース電圧の電位差により、ソース電極から有機層内にキャリアが注入されてチャネルを形成し、キャリアが流れることによる電流が観察される。このチャネルが形成され始める電圧のことを閾値電圧と呼ぶ。閾値電圧は、ゲート絶縁膜と有機半導体の界面に存在する界面準位やゲート絶縁膜内の電荷の影響を受ける。また、有機ELの例では、発光が始まる電圧を指して閾値電圧と呼ぶことがある。

色素
[よみがな] しきそ
[英訳] dye / pigment
色素は可視光の吸収あるいは放出により物体に色を与える物質の総称。 色刺激が全て可視光の吸収あるいは放出によるものとは限らず、光の干渉による構造色や真珠状光沢など、可視光の吸収あるいは放出とは異なる発色原理に依存する染料や顔料も存在する。染料や顔料の多くは色素である。色素となる物質は無機化合物と有機化合物の双方に存在する。

色素増感
[よみがな] しきそぞうかん
[英訳] dye sensitization
可視光応答性のない半導体などの表面に色素を吸着させ、半導体に光電流発生などの可視光応答を生じさせることができる。これを色素増感作用という。n型半導体の場合、色素増感作用で注入された電子により、銀イオンが還元されて銀粒子となる作用は、銀塩カラー写真として利用されている。また、色素増感作用を利用した太陽電池は色素増感太陽電池と呼ばれる。

色素増感太陽電池
[よみがな] しきそぞうかんたいようでんち
[英訳] Dye Sensitized Solar Cell(DSC, DSSC)
色素増感太陽電池は、色素が光を吸収して電気に変える仕組みの有機系太陽電池である。 酸化物半導体(酸化チタン、酸化亜鉛など)の表面に色素を吸着させることにより変換効率が大きく向上することが確認されて以来、次世代太陽電池として注目を集めている。 低照度環境での発電能力が高く、ほかの太陽電池にはできないデザイン設計(カラー、絵柄模様、フレキシブルなど)が可能である。

色素レーザー
[よみがな] しきそれーざー
[英訳] dye laser
窒素レーザ等の短波長の光源によって蛍光色素を励起することによる誘導放出を利用したレーザー。色素レーザーでは分子構造により所望の波長を得る事ができる。色素レーザーには液体の溶媒に蛍光色素を分散させて循環する液体レーザーと高分子に蛍光色素を分散させた高分子色素レーザーがある。液体レーザーではレーザー媒体を循環することにより、劣化した色素を交換することができる。

色度
[よみがな] しきど
[英訳] chromaticity
目で感じる色は、色の明るさと色の性質とによって決るが,明るさ(明度)を無視した色の性質(色相と彩度)を数量的に表示したものが色度である。色度は色の特性をx‐yの直交座標の数値で表示する色度図において用いられる。あるいは色度図上で読み取ることのできる主波長と純度を使って色度を表わすこともできる。

色度座標
[よみがな] しきどざひょう
[英訳] chromaticity coordinates
三色座標または三色係数ともいい、色度を数量的に表わすための3つの数値の組のことをいう。通常はCIE表色系のXYZ系において、ある色光の3刺激値が X、Y、Z であるとき、刺激和を X+Y+Z=S として x=X/S、y=Y/S、z=Z/S で定義される x、y、z を色度座標という。色度座標には x+y+z=1 という関係があるから、色度はどれか2つだけで表わされ、普通は x、y を用いる。x を横軸、y を縦軸にとって図示したのが CIE色度図である。任意の色は色度を表わす x、y 値と明るさを表わす視感反射率 (Y値) とで数量的に表現される。

四極子(四重極)
[よみがな] しきょくし
[英訳] quadrupole(quadrapole)
四極子または四重極とは、モーメントが等しい双極子が、2個逆向きに接近して並んでいるような単極子の分布をいう。

CIGS系太陽電池
[よみがな] しぐすけいたいようでんち
[英訳] CIGS-based solar cell
Cu(In,Ga)Se2化合物からなる太陽電池で、携帯電話に搭載できる程度に面積が小さくて軽く、しかも大量の電力を生み出す高効率の太陽電池として注目されている。光電変換効率が高い、数μmの薄さでも十分に機能する、経年劣化が少ないなどの長所がある。セラミックス、金属箔、ポリマーなど様々なフレキシブル基板を用いた高性能な太陽電池の作製にも成功している。

σ結合
[よみがな] しぐまけつごう
[英訳] sigma bond
2原子間に形成される単結合を軌道の対称性から名づけた名称。一般に、2原子間の結合が単結合である場合、その分子軌道関数の形は結合軸に対して対称となり、結合軸のまわりの角運動量成分は0になる。角運動量成分が0、1・・・に対して、σ、π、・・・なる記号で分子軌道関数を表すため、この場合の分子軌道をσ軌道とよび、それに原子価電子が入って形成される結合をσ結合とよぶ。また、σ結合をつくっている電子をσ電子とよぶ。たとえば、エタンのC-C結合、C-H結合はともにσ結合であり、エテンのC=C結合はσ結合とπ結合1つづつからなる。

σ電子
[よみがな] しぐまでんし
[英訳] σ-electron
二つの原子を結合させている電子の分類の一つ。ほかにπ(パイ)電子などがある。化学結合ができるとき、少なくとも二つの電子が必要であるが、これに関与する電子がどのような状態にあるかによって結合の状態を区別する。分子軌道法の表示に従えば、結合軌道を示す波動関数が、結合の軸に対する角運動量成分をもたないときをσ結合とよび、その電子をσ電子という。たとえば、水素分子においては二つの水素原子の1s電子が二つの原子核間に存在するが、1s電子は球対称であり、結合軸からみた角運動量成分はゼロである。一般に単結合はσ電子からなる。なお、多重結合における第一の結合もσ電子からなる。

自己組織化
[よみがな] じこそしきか
[英訳] self-organization
自己組織化とは、物質や個体が系全体を俯瞰する能力を持たないにも関わらず、個々の自律的な振る舞いの結果として、秩序を持つ大きな構造を作り出す現象のことである。自発的秩序形成とも言う。幾何学的な形状を持つ雪の結晶の成長など自然現象の中にも見出すことができる。

自己組織化単分子膜
[よみがな] じこそしきかたんぶんしまく
[英訳] Self-Assembled Monolayer(SAM)
自己組織化によって形成される単分子膜で、厚さ 1〜2 ナノメートルの有機系の薄膜である。有機分子の溶液や蒸気中に材料を置いておくと、有機分子が材料表面に化学吸着し、その過程で有機分子の配向性がそろった単分子膜が形成される。材料に吸着した部分とは反対側の分子の末端にある機能性官能基が材料表面を覆うことになり、官能基の特性によって材料表面に新たな機能を付与することができる。

仕事関数
[よみがな] しごとかんすう
[英訳] work function
仕事関数とは、固体内にある電子を、固体の外、正確には真空中に取り出すために必要な最小限のエネルギーの大きさのことである。金属では、フェルミ準位と真空準位のエネルギー差に相当する。仕事関数を決める要因は二つある。一つは表面からの電子の浸みだしであり、もう一つは、価電子間の交換ポテンシャル(同種のスピンの電子どうしが避け合うことにより生じるポテンシャルの安定化効果)である。仕事関数の大小は、電子の受容性・供与性の指標となり、有機ELなどのデバイスでは、電極からのキャリア注入の特性を左右する。

CIS系太陽電池
[よみがな] しすけいたいようでんち
[英訳] CIS-based solar cell
新型の薄膜多結晶太陽電池。光吸収層の材料として、シリコンの代わりに、Cu、In、Ga、Al、Se、Sなどから成るカルコパイライト系と呼ばれるI-III-VI族化合物を用いる。代表的なものはCu(In,Ga)Se2 やCu(In,Ga)(Se,S)2, CuInS2 などで、それぞれCIGS, CIGSS, CIS と略称される。CIS 系太陽電池は薄くすることができ、結晶シリコンの 150〜200μm に対して、2〜3μm と非常に薄く、大量生産時のコスト低減につながる。製造法や材料のバリエーションが豊富で、低コスト品から高性能品まで対応できる。多結晶であるため、大面積化や量産化に向き、フレキシブルなものやカスタマイズ品も作りやすい。シリコン太陽電池が苦手とする分野から実用化が始まっている。また、禁制帯幅が材料次第で自由に変えられることから将来の多接合型太陽電池への応用も期待されている。

システムインパッケージ(SiP)
[よみがな] しすてむいんぱっけーじ
[英訳] System in a Package(SiP)
システムインパッケージ(SiP)は、複数のLSIチップを1つのパッケージに封止した半導体および製品のこと。従来の集積回路は、1つの半導体チップ上に必要とされる全ての機能(システム)を集積することを目標に微細加工化が進められてきた。この半導体チップをシステムオンチップ(System on a Chip (SoC))という。SoCには欠点もあり、拡散プロセスが大幅に異なる機能を組み合わせる必要がある場合(例えばCPUと大容量メモリ、高耐圧電源ICと低電圧CPUをワンチップ化する場合など)には、拡散プロセスが非常に複雑化し、製造工期が長期化しやすくなる。これを改善する方法としてSiPが生まれた。SiPでは、大幅に拡散プロセスが異なる機能は、それぞれ個別に最適化した拡散プロセスで製造し、パッケージ上でそれぞれのチップを適切に配線することにより、より高度な機能を持った集積回路を、より安定した生産プロセスで製造することができる。また、従来2パッケージに別れていたチップを1パッケージに封止する事により、実装面積を小さくすることが出来る為、携帯電話などの小型化などにも利用されている。SoCにも消費電力が抑えられ、極端な広帯域メモリが統合可能、チップ間の配線を別に行う必要がないなどのメリットがあり、SiPと組み合わせて用いられている。

システムオンチップ(SoC)
[よみがな] しすてむおんちっぷ
[英訳] System on a Chip(SoC)
システムオンチップ(SoC)は集積回路の1個のチップ上に、プロセッサコアをはじめ一般的なマイクロコントローラが持つような機能の他、応用目的の機能なども集積し、連携してシステムとして機能するよう設計されている集積回路製品である。SoCには、消費電力が抑えられ、極端な広帯域メモリが統合可能、チップ間の配線を別に行う必要がないなどのメリットがあるが、大容量のDRAMやアナログ回路の混載にはさまざまな難しさやリスクもあるなどデメリットもあるため、DRAMを別チップに集積し、同一パッケージに収めたシステムインパッケージ(System in a Package (SiP))の形態をとる製品もある。

自然放射増幅光(ASE)
[よみがな] しぜんほうしゃぞうふくこう
[英訳] amplified spontaneous emission(ASE)
自然放射増幅光(ASE)は、原子・分子の二準位間の遷移により生じた自然放射光が、高密度に反転分布した媒質自身の誘導放射過程により増幅された光である。

失活
[よみがな] しっかつ
[英訳] deactivation
有機半導体分野で失活とは、一般に励起状態のエネルギーが失われることを指す。例えば、有機ELにおいて、励起エネルギーが熱として失われる現象などを指す。しかし、有機ELにおいて、励起エネルギーが光を伴って基底状態に戻る場合には、一般に失活とは呼ばない。これは、発光の取得を目的とする有機ELにおいて、目的とする発光が得られる所望の物理過程だからである。このように、失活とは、目的とする物理現象以外の経路でエネルギーを失うことに対して用いられる。

自発光デバイス
[よみがな] じはっこうでばいす
[英訳] Self-luminous device
有機EL素子のように、それ自体が発光するデバイスのこと。

遮断周波数
[よみがな] しゃだんしゅうはすう
[英訳] cutoff frequency
トランジスタは入力信号をある係数を持って増幅し、出力する機能を有する。その増幅が得られなくなる周波数を遮断周波数と定義する。

シャドーマスク
[よみがな] しゃどーますく
[英訳] shadow mask
シャドーマスクは有機ELの製造工程に用いられる部材。RGB画素位置に対応する穴が空いた薄い金属板である。例えばBlueの発光層を成膜する工程においては、GreenとRedの画素位置にはBlueの発光層が成膜されてはならない。これを実現するためには、Blue画素の位置に穴をもつシャドーマスクを所望の位置に合わせ、ガラス基板の成膜面側にできるだけ近接して配置する。その後に蒸着工程を実施すると、穴が空いている箇所には成膜面にBlue発光層が成膜され、穴が開いていない箇所にはシャドーマスク上にBlue発光層が成膜されるため、その下にあるGreen, Red画素部分には何も成膜されず、影(シャドー)となる。このように成膜とパターニングが同時にできるメリットがある。レジストを用いるパターニング工程は、全面に成膜、レジスト塗布、露光、現像、エッチングという多数の工程を要することに対して対照的である。

自由エネルギー
[よみがな] じゆうえねるぎー
[英訳] free energy
自由エネルギーとは、熱力学における状態量の1つであり、化学変化を含めた熱力学的系の等温過程において、系の最大仕事(潜在的な仕事能力)、自発的変化の方向、平衡条件などを表す指標となる。物体の内部エネルギーをE、絶対温度をT、エントロピーをSとするとき,F=E?TSをヘルムホルツの自由エネルギーまたは単に自由エネルギーといい、さらに物体の圧力をp、体積をVとするとき、G=F+pV=E?TS+pVをギブズの自由エネルギーまたは熱力学的ポテンシャルという。物体が等温(または等温・等圧)変化をする場合、F(またはG)の増加は、変化が可逆的なら外からなされた仕事に等しく、不可逆的なら外からの仕事より小さい。熱力学第二法則より、系は自由エネルギーが減少する方向に進行する。閉じた系で温度・圧力が一定なら、F、Gが極小のとき熱平衡が成り立つ。

重原子効果
[よみがな] じゅうげんしこうか
[英訳] heavy atom effect
原子核の周りでは電子が軌道運動(公転運動)している。また、電子は自転運動(電子スピン)もしている。電子の公転と自転により誘起された二種類の磁気モーメントは相互作用する。それをスピン-軌道相互作用という。重い原子のときほど公転による磁気モーメントの大きさが大きくなるため、このスピン-軌道相互作用の大きさも大きくなる。そして、これが大きければ大きいほどスピン反転がしやすくなり、重原子ではスピン禁制則が弱まる。これが重原子効果である。

集光型セル
[よみがな] しゅうこうがたせる
[英訳] concentrating solar cell
太陽光をレンズなどで集めてエネルギー変換効率を高める方式のセル。

重合度
[よみがな] じゅうごうど
[英訳] degree of polymerization
高分子を構成する繰返し単位の数のこと。一般に、高分子化合物は多分散性であるから重合度分布が重要である。この重合度の平均値の表し方には、数平均重合度、重量平均重合度、粘度平均重合度、z平均重合度がある。同一の繰返し単位よりなる高分子では、一般に重合度が大となると融点は上昇し、溶解度は低下し、機械的強度などは増大する。

集束イオンビーム(FIB)
[よみがな] しゅうそくいおんびーむ
[英訳] Focused Ion Beam(FIB)
集束イオンビーム(FIB)装置は、集束したイオンビームを試料に照射し、加工や観察を行う装置である。FIBで試料内部の所望位置の構造を切り出すことができるため、近年活発に開発が行われている3D デバイスや高機能材料の解析や品質管理に欠かせない装置となっている。イオン源から放出されたイオンを静電レンズで試料上に集束させ、静電偏向器で走査する。試料から放出される二次電子を走査と同期して検出し、走査顕微鏡像を得る。得られた画像を基に加工領域を設定し、イオンビームを設定領域のみに照射し加工を行う。

自由電子
[よみがな] じゆうでんし
[英訳] free electron
自由電子とは、束縛を受けていない電子のこと。電子気体(フェルミ気体)とも呼ばれることがある。通常、電子は何らかの束縛を受けているため、自由電子は実在しないが、問題を簡潔にし自然科学への理解を助ける。この自由電子を用いたモデルを、自由電子モデル(Free electron model)と言う。現実の電子系について、それらが自由電子であると仮定する近似を自由電子近似と言う。

周波数制御
[よみがな] しゅうはすうせいぎょ
[英訳] frequency control
電力系統の周波数(50または60Hz)が一定に保たれるように制御すること。電力系統の周波数は発電機の回転数によって定まり、発電機の入力と出力に不均衡が生ずると周波数が変動する。周波数変動が生ずると電気時計が狂ったり、電動機の回転数が変動し、工業製品の品質に影響を与える。電力系統にとっても電圧変動など好ましくない影響があるため、0.1〜0.2Hz程度の幅を目標に一定に保つように制御する。

需給一体型電源
[よみがな] じゅきゅういったいがたでんげん
[英訳] supply and demand integrated system
需給一体型とは、自家消費や地産地消をベースとし、発電と消費をセットにして需給バランスを担保しながら発電された再エネ電気を100%有効活用するモデル。その価値としては、@レジリエンスを高めるマイクログリッド電源、A 無電化地域、電力不安定地域におけるオフグリッド電源、B 住宅設置における自立電源、などが想定される。

縮合
[よみがな] しゅくごう
[英訳] condensation
2つの分子から水,アンモニア,アルコールなどの簡単な分子の脱離を伴って,新しく共有結合を生成する反応。カルボン酸とアルコールからエステルのできる反応はその一例。2個以上の分子間での縮合を分子間縮合,同一分子内での縮合を分子内縮合という。また,縮合を繰返して高分子化合物をつくる反応を重縮合という。

縮合環化合物
[よみがな] しゅくごうかんかごうぶつ
[英訳] condensed ring compound
二つの単環化合物がそれぞれ単位ごとに1対1で辺を共有する構造の化合物。例としてはナフタレンがある。

縮合(多)環芳香族化合物
[よみがな] しゅくごう(た)かんほうこうぞくかごうぶつ
[英訳] condensed-ring aromatic compound
縮合環とは、2つ以上の単環がそれぞれの環の辺を互いに1つだけ供給(縮合するという)してできる化学構造を指す。たとえば、ベンゼンは単環であるが、ナフタレンやアントラセンは縮合環である。縮合環構造をもつ芳香族化合物を縮合(多)環芳香族化合物と呼び、ナフタレンやアントラセンもこれに分類される。

縮退
[よみがな] しゅくたい
[英訳] degeneracy
縮退とは量子物理学において、2つ以上の異なったエネルギー固有状態が同じエネルギー準位をとること。電子配置と電子のエネルギー準位には縮退が起こることが知られている。電子を含むフェルミ粒子は、パウリの排他原理により、同一の量子状態を占めることはできない。そのため、原則としてひとつの電子軌道は2つしか電子を収容することはできない。しかし、軌道に対称性がある場合は、複数の軌道が同じエネルギー準位となることがあり得る。例えば、通常d軌道は5重に縮退している。また、水素原子ではエネルギー準位の数は主量子数にのみ依存し、2sと2p、3sと3pと3d軌道などが縮退している(ただしスピン軌道相互作用の影響やラムシフトは考慮していない)。

受動素子
[よみがな] じゅどうそし
[英訳] passive element / passive component
受動素子は、供給された電力を消費・蓄積・放出する素子で、増幅・整流などの能動動作を行わないものを言う。抵抗器、コンデンサ、コイルなどがある。受動素子と電源とで構成された電気回路を受動回路という。 一方、真空管、継電器やトランジスタなど、入力信号として小さな電力、電圧または電流を入れ、出力信号として大きな電力、電圧または電流が得られる素子は能動素子と呼ばれる。

寿命(有機EL素子)
[よみがな] じゅみょう
[英訳] lifetime
素子寿命参照

シュレーディンガー方程式
[よみがな] しゅれーでぃんがーほうていしき
[英訳] Schrodinger equation
シュレーディンガー方程式は、物理学の量子力学における基礎方程式である。シュレーディンガー方程式の解は一般的に波動関数と呼ばれる。波動関数はまた状態関数とも呼ばれ、量子系(電子など量子力学で取り扱う対象)の状態を表す。シュレーディンガー方程式は、ある状況の下で量子系が取り得る量子状態を決定し、また系の量子状態の時間的変化を記述する。

循環型社会
[よみがな] じゅんかんがたしゃかい
[英訳] recycling-based society
循環型社会とは、有限である資源を効率的に利用するとともに、循環的な利用(リサイクルなど)を行って、持続可能な形で循環させながら利用していく社会のこと。循環型社会形成推進基本法第2条では、「循環型社会とは、製品等が廃棄物となることが抑制され、並びに製品等が循環資源となった場合においてはこれについて適正に循環的な利用が行われることが促進され、及び循環的な利用が行われない循環資源については適正な処分が確保され、もって天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会をいう」と定義している。

昇華
[よみがな] しょうか
[英訳] sublimation
昇華は元素や化合物が液体を経ずに固体から気体、または気体から固体へと相転移する現象。温度と圧力の交点が三重点より下へ来た場合に起こる。標準圧では、ほとんどの化合物と元素が温度変化により固体、液体、気体の三態間を相転移する性質を持つ。この状態においては、固体から気体へと相転移する場合、中間の状態である液体を経る必要がある。 しかし、一部の化合物と元素は一定の圧力下において、固体と気体間を直接に相転移する。相転移に影響する圧力は系全体の圧力ではなく、物質各々の蒸気圧である。日本語においては、昇華という用語は主に固体から気体への変化を指すが、気体から固体への変化を指すこともある。また気体から固体への変化を特に凝固と呼ぶこともあるが、これは液体から固体への変化を指す用語として使われることが多い。英語では sublimation が使われるが、気体から固体への変化を特に deposition と呼ぶこともある。

昇華エンタルピー
[よみがな] しょうかえんたるぴー
[英訳] sublimation enthalpy
転移エンタルピーを参照

昇華精製
[よみがな] しょうかせいせい
[英訳] sublimation
昇華精製とは、不純物が混入している原料を、物質の昇華・堆積温度の差異を用いて精製する方法。有機半導体の精製方法として重要である。ただし、揮発できない材料(高分子系など)には適用できない。

昇華熱
[よみがな] しょうかねつ
[英訳] heat of sublimation
固体が直接気化するとき吸収する熱。熱力学第一法則により、ある温度における固体の昇華熱は同じ温度における同じ物質の融解熱と蒸発熱の和に等しい。

蒸気圧
[よみがな] じょうきあつ
[英訳] vapor pressure
蒸気圧、あるいは平衡蒸気圧とは、液相あるいは固相にある物質と相平衡になるような、その物質の気相の圧力のことである。蒸気圧は物質に特有の物性値であり、温度に依存して決まる。物質の沸点とは、その物質が液相にあるときの蒸気圧が外圧に等しくなる温度である。また、物質の昇華点とは、その物質が固相にあるときの蒸気圧が外圧に等しくなる温度である。さらに物質が液相と固相の平衡状態にあるときの蒸気圧が外圧に等しくなる温度は三重点と呼ばれる。

消光(クエンチング)
[よみがな] しょうこう
[英訳] quenching
消光(クエンチング)とは,蛍光やリン光などのルミネセンスの強度がなんらかの作用によって減少する現象である。その原因としては、(1)発光分子の有している励起エネルギーが消光物質にエネルギー移動して失われる。(2)消光物質との衝突によって化学反応を起こしたり、発光を起こさない分子間化合物をつくる。(3)発光分子が分解反応などによって発光を起こさない状態に変わる。などにより起こる。

消光サイト(クエンチャー)
[よみがな] しょうこうさいと
[英訳] quenching site (quencher)
有機EL素子の発光層内において、消光が起こるサイトのこと。材料分子の分解などで生じた物質などが消光サイトになると推察されている。

状態密度
[よみがな] じょうたいみつど
[英訳] density of states(DOS)
固体物理学および物性物理学において、系の状態密度(DOS)とは、微小なエネルギー区間内に存在する、系の占有しうる状態数を各エネルギーごとに記述する物理量である。気相中の原子や分子のような孤立系とは異なり、密度分布はスペクトル密度のような離散分布ではなく連続分布となる。あるエネルギー準位において DOS が高いということは、そこに占有しうる状態が多いことを意味する。DOS がゼロとなることは、系がそのエネルギー準位を占有しえないことを意味する。一般的に DOS とは、空間的および時間的に平均されたものを言う。局所的な変動は局所状態密度 (local density of states, LDOS) と呼ばれ区別される。

蒸着速度(蒸着レート)
[よみがな] じょうちゃくそくど
[英訳] deposition rate or evaporation rate
真空蒸着法において、有機薄膜は分子を少しずつ平らに積んでいくことによって形成されるが、その形成速度を蒸着速度と呼ぶ。単位は Å/s や nm/s で表し、一秒間にどれくらい薄膜を積層させることができるかで示す。なお、蒸着速度(蒸発速度)から、昇華熱を算定することもできる、すなわち、蒸着速度Jは次に示すクヌーセン(Knudsen)の式に従う。J=P/√(2πknMT) ここで、Pは飽和蒸気圧(昇華圧)、knはボルツマン(Boltzmann)定数、Mは分子量、Tは温度を示す。特定の真空度における蒸発速度を見積ることができれば、クラウジウス・クラペイロン(Clausius?Clapeyron)の式、ln P=A−僣/RT から、昇華熱が実験的に求められる。また、逆に、ある物質の分子量と昇華熱が分かれば、特定の温度における蒸気圧だけでなく、真空蒸着における蒸着速度の推定が可能となる。

照度(lx)
[よみがな] しょうど
[英訳] illuminance
照射面の明るさ(単位面積あたりに入射する光束)。単位はルクス(lx)。

初期輝度
[よみがな] しょききど
[英訳] initial luminance
有機EL素子の信頼性試験における試験開始時(t=0)の輝度。寿命や加速係数の算出、バーンイン(電圧印加によるエージング)などの評価に必要である。

触針式膜厚計(触針式段差計)
[よみがな] しょくしんしきまくあつけい(しょくしんしきだんさけい)
[英訳] stylus profiler / contact-type thickness meter / probe type step profiler
薄膜の膜厚を評価するための装置。先の尖った針で表面をなぞっていき、薄膜が存在する部分と存在しない部分の段差を測定する。水平方向にはmm単位でスキャンでき、垂直方向(膜厚方向)にはオングストロームオーダーの分解能を持つ。有機薄膜デバイスの有機層の膜厚は、通常、数十〜数百nm程度と薄いが、触針式膜厚計で測定が可能である。

ショットキー (Schottky) 極限/ショットキー・モット限界
[よみがな] しょっときーきょくげん/しょっときー・もっとげんかい
[英訳] Schottky limit / Schottky・Mott limit
ショットキー (Schottky) 極限とは、金属/半導体界面におけるショットキーバリアにおいて、金属と半導体の間に界面相互作用がない場合に、双方の物質の真空中での仕事関数 (真空を基準にした最高占有電子準位のエネルギー位置) の差が、そのままショットキーバリア高さとして現れることを指す。このとき、金属の仕事関数を fm、半導体の電子親和力を c、エネルギーギャップを Eg とすると、その電子、正孔に対する障壁の高さ fbn, fbp は、それぞれ次式で与えられる。fbn=fm-c, fbp=c+Eg-fm

ショットキー・モット則
[よみがな] しょっときー・もっとそく
[英訳] Schottky-Mott Rule
金属電極から半導体への電子注入のショットキー障壁において、ショットキー=モット則とは、ショットキー障壁高さを金属の真空仕事関数と半導体の真空電子親和力との差として記述しうる法則をいう。同様に、金属電極から半導体への電子注入のショットキー障壁において、ショットキー=モット則とは、ショットキー障壁高さを金属の真空仕事関数と半導体の真空イオン化エネルギーとの差として記述しうる法則をいう。

ショットキー型構造
[よみがな] しょっときーがたこうぞう
[英訳] Schottky type structure
電極と有機半導体層の界面に形成されるショットキー障壁によりキャリア注入を制御する有機トランジスタ構造。

ショットキー効果
[よみがな] しょっときーこうか
[英訳] Schottky effect
ショットキー効果は、導体表面に強い電界を与えることでポテンシャルエネルギー(ポテンシャル障壁)が低下し、熱電子が放出されやすくなる現象のこと。熱電子放出を電界によってアシストするものであり、電界と熱エネルギーを組み合わせることにより、高い効率で電流密度を得ることができる。また、デバイスの低電力化や寿命の向上に繋がり、SEMやTEMといった電子顕微鏡の電子放出源に応用されている。

ショットキー障壁(ショットキーバリア)
[よみがな] しょっときーしょうへき
[英訳] Schottky barrier
半導体と金属を接合させたとき、半導体部分に、金属の仕事関数と半導体の持つ電子親和力(フェルミエネルギー)の差が、障壁として現れる場合がある。これをショットキー障壁(ショットキーバリア)と呼ぶ。

ショットキー障壁高さ(ショットキーバリア高さ)
[よみがな] しょっときーしょうへきたかさ
[英訳] schottky barrier height
金属-半導体接合面におけるショットキー障壁高さ(ショットキーバリア高さ)の定義は、n型半導体とp型半導体とで異なり、n型では伝導帯端とフェルミ準位の差、p型では価電子端とフェルミ準位の差である。金属-半導体接合がオーミックコンタクトかショットキー障壁かは、接合のショットキー障壁高さΦBに依存する。ショットキー障壁高さΦBが熱エネルギー kTよりも十分に大きい場合は、半導体は金属との界面で空乏層を形成し、ショットキー障壁としてふるまう。ショットキー障壁高さが小さい場合は、半導体に空乏層はなく、オーミックコンタクトを作る。金属から半導体へ、電流の担い手となるキャリアを注入するためには、このポテンシャルの障壁を乗り越えなければならない。

ショットキー接合
[よみがな] しょっときーせつごう
[英訳] Schottky (barrier) junction
ショットキ−接合とは、金属と半導体がある仕事関数の関係を持って接合している場合にpn接合と同様の整流特性を示すものである。ショットキ−接合になる仕事関数の関係は、金属とn型半導体の接合と、金属とp型半導体の接合とで異なる。金属の仕事関数をφm、半導体の仕事関数をφsとすると、金属とn型半導体の 接合ではφm>φsの場合、金属とp型半導体の接合ではφm<φsの場合にショットキ−接合になる。また、仕事関数の関係が逆になった場合は整流特性は示さず、オ−ミック接合となる。

シリコンウエハー
[よみがな] しりこんうえはー
[英訳] silicon wafer
シリコンウェハーは高純度な珪素(シリコン)のウェハーである。珪素のインゴットを厚さ1 mm程度に切断して作られる。シリコンウェハーは集積回路 (IC、LSI)の製造に最も多く使用される。このウェーハにアクセプターやドナーとなる不純物導入や絶縁膜形成、配線形成をすることにより半導体素子を形成することができる。太陽電池用途では、1個のシリコンインゴットからより多くのウェハーをとることがコスト上重要であり、150-200um程度の薄さでスライスする技術が確立されている。

シリコンカーバイド(SiC)パワー半導体
[よみがな] しりこんかーばいどぱわーはんどうたい
[英訳] silicon carbide power semiconductor
シリコンカーバイド(SiC)は、シリコン (Si) と炭素 (C) で構成される化合物半導体材料である。絶縁破壊電界強度がSiの10倍、バンドギャップがSiの3倍と優れていること、デバイス作製に必要なp型、n型の制御が広い範囲で可能であることなどから、Siの限界を超えるパワーデバイス材料として期待されている。SiCには様々なポリタイプ(結晶多系)が存在し、それぞれ物性値が異なる。パワーデバイス向けには4H-SiCが最適とされている。

シリコン系太陽電池
[よみがな] しりこんけいたいようでんち
[英訳] silicon-based solar cell
電気的な性質の異なる2種類の半導体(p型シリコン、n型シリコン)を重ね合わせた構造をした太陽電池で、太陽光が当たると電子(−)と正孔(+)が発生し、正孔はp型半導体側へ、電子はn型半導体側へ移動するように内部に電界が発生する。n型半導体側の電極(表面電極)とp型半導体側の電極(裏面電極)に外部回路をつなぐと電流が流れ出す。現在最も多く使われている太陽電池である。

自立分散型電力システム
[よみがな] じりつぶんさんがたでんりょくしすてむ
[英訳] distributed power system
分散型発電とは、地域で必要とされる電力を小規模な発電所を複数設置してまかなう自立・分散型のエネルギー供給システム。分散型電源ともいう。大規模な発電所から送電線によって利用場所に電気を送る従来の集中型発電(集中型電源)に対してこう呼ばれる。利用場所近くでの小規模発電で供給する形態は、エネルギーの地産地消システムとして期待されている。分散型発電には、発電の際に発生する熱も利用するコージェネレーションがしやすく、送電や変電のロスが減らせる利点がある。また、太陽光発電や燃料電池、風力発電など再生可能エネルギーの普及につながる。

自律分散システム
[よみがな] じりつぶんさんしすてむ
[英訳] decentralized autonomous system
自律分散システムとは、生体をイメージした個別に動作しながら全体最適化を実現するシステムのこと。例えば、生体においては、細胞が1つのシステムとして機能しつつも、生物としての統合体としての役割も果たす。このサブシステムが自律的に個々に動作しつつも、全体としての協調を実現する仕組みのことを自律分散システムと呼ぶ。自律分散システムの利点としては、拡張性に優れる点とシステムを止めずに増設や撤去などが行える点などが挙げられる。自律分散システムの例としては、各地に局在する多数のサーバーを連結したインターネット、小規模の太陽電池と蓄電池を連結して広範な電力消費を賄う電力供給システムなどが挙げられる。

真空準位
[よみがな] しんくうじゅんい
[英訳] vacuum level
真空準位は、内部に構造を持たない電荷を持った粒子(荷電粒子)が、真空中に孤立(かつ単独)で存在し、加えて運動エネルギーがゼロの状態にある時の最低のエネルギー準位のこと。固体物理における電子の真空準位の解釈としては、固体のすぐ外に電子が静止している時の準位と解釈される。ここで、固体のすぐ外にある電子の固体表面からの位置は、原子間隔に比べれば十分遠く、試料の大きさに比べれば十分近い距離となり、無限遠方ではない。

真空準位シフト
[よみがな] しんくうじゅんいしふと
[英訳] vacuum level shift
有機デバイスにおいて、電極と有機半導体層の界面の電子構造は、両者の真空準位が一致するMott-Schottkyのモデルには従わず、後者の真空準位が前者よりも低くシフトする。これが真空準位シフトである。真空準位シフトの原因としては、接合界面の有機分子の双極子などによって、電気二重層の形成などが考えられている。

真空蒸着
[よみがな] しんくうじょうちゃく
[英訳] vacuum deposition
真空にした容器の中で、蒸着材料を加熱し気化もしくは昇華させて、離れた位置に置かれた基板の表面に付着させ、薄膜を形成するプロセスを指す。蒸着材料、基板の種類により、抵抗加熱、電子ビーム、高周波誘導、レーザーなどの方法で加熱される。

真空度
[よみがな] しんくうど
[英訳] degree of vacuum
容器内の気体はつねに容器の壁を外側に押している。この力が圧力であり、気体の圧力を表すのにこの大きさを用いる。希薄気体の場合にこの圧力を真空度という。真空度の単位は器壁の受ける単位面積当たりの力で表し、Pa、Torr、および bar などが使われる。真空技術で使う圧力は、一般に大気圧に比べて非常に小さい場合が多いので、直接壁に及ぼす力として測定することは不可能なことが多い。そのため、気体の電離、熱伝導などの諸性質の圧力依存性を利用する方法、および分子密度を測定する方法など、種々の方法によって測定される。

シングリング技術
[よみがな] しんぐりんぐぎじゅつ
[英訳] singling technology
シングリング技術とは、太陽電池セルを5〜6個に細分化し、セルを重ね合わせて直接接続する技術。電力損失が低減するほか、セルの充填率を上げられることから、高効率モジュールに応用されている。

真性半導体
[よみがな] しんせいはんどうたい
[英訳] intrinsic semiconductor
真性半導体とは、添加物を混じえていない純粋な半導体のことを指す。英語名からi型半導体と呼ばれることもある。真性半導体におけるキャリアは、価電子帯から伝導帯に熱励起された電子と、価電子帯にできた同数の正孔である。

振動緩和
[よみがな] しんどうかんわ
[英訳] vibrational relaxation
有機分子のエネルギー状態において、エネルギー的に高い振動状態から低い振動状態へ無放射遷移する過程をいう。

振動子強度
[よみがな] しんどうしきょうど
[英訳] oscillator strength
分光学でスペクトルの解析に用いられる量で、原子を古典的な調和振動子とみなして光の吸収、放出、分散を論ずるとき、特定の振動数をもった振動子の個数に対応する数。原子による可視光付近の光の吸収は,主として原子内電子と光の電場による双極子相互作用に起因し,原子の基底状態から種々の励起状態への光による遷移によって決まる。

振動準位
[よみがな] しんどうじゅんい
[英訳] vibrational level
振動準位は、分子の重心の移動を伴わず、核の相対的な位置の変位にともなう運動を表す量子状態である。分子内において核は、結合する隣接核と結合エネルギーに相当するポテンシャルの井戸を形成し、お互いばねで結ばれた様な状態にあるために、上記のような運動は振動運動によって記述される。振動準位間の遷移は振動遷移と呼ばれ、主に赤外分光法またはラマン分光法によって観測される。

振動励起
[よみがな] しんどうれいき
[英訳] vibrational excitation
系の温度が高くなると、分子を構成する原子の間の距離が振動するようになる。この振動エネルギーは飛び飛びの値をとり、その値を振動準位と呼ぶ。温度が高くなるにつれて、高い振動準位にある分子が存在するようになる状態を振動励起という。

信頼性試験
[よみがな] しんらいせいしけん
[英訳] reliability test
有機EL素子の信頼性試験には、駆動寿命と保管寿命がある。駆動寿命は、素子の駆動方法により、定電流駆動、定電圧駆動、定輝度駆動に区分される。素子自体の性能評価には定電流駆動が一般的である。矩形波を有した駆動を用いることもある。保管寿命は、素子を駆動させずに、恒温槽の中で長時間保管した時の寿命である。信頼性試験では、駆動環境条件に関わらず、所定時間ごとに輝度、電圧、電流、色度を測定する。信頼性試験で重要なファクターは、試験開始時の初期輝度、温度、湿度の3つである。初期輝度は、加速係数の算出、焼き付きなどの評価に必要となる。温度データは、温度加速係数や活性化エネルギーの算出に必要である。湿度データは、主に素子の封止耐性を評価する時に用いる。製品に近い素子を評価する際には、そのアプリケーションに合った温度、湿度条件下で試験を行う。

水蒸気バリア性
[よみがな] すいじょうきばりあせい
[英訳] water barrier property
バリア性とは、気体や水分や溶剤などを遮断する特性である。有機EL素子に必要な水のバリア性(透過性)は、一般に10-5g/m2・day(25℃)のオーダー以下であると考えられている。一般のPETフィルムやプラズマCVD(PECVD)により作製した無機膜などに比べるとはるかに高いバリア性が必要である。

水晶振動子式膜厚計
[よみがな] すいしょうしんどうししきまくあつけい
[英訳] quartz film thickness meter
真空蒸着時の膜厚の測定には、真空下で使用でき、オングストロームオーダーの膜厚計測が可能な水晶振動子式膜厚計が用いられる。水晶振動子の固有振動数は非常に安定で、交流電場を印加すると、水晶振動子の固有振動数と交流電場の振動数が等しくなったところで共振現象が起こる。この水晶振動子表面に物質が蒸着すると、水晶振動子の固有振動数は低い方向へ変化する。この変化量は蒸着物質の質量に比例するので、共振周波数の変化を精度よく検出し、蒸着物の付着質量を膜厚に換算すれば膜厚が測定できることになる。

水素結合
[よみがな] すいそけつごう
[英訳] hydrogen bond
水素結合は、電気陰性度が大きい原子(陰性原子)に共有結合で結びついた水素原子が、近傍に位置した窒素、酸素、硫黄、フッ素、π電子系などの孤立電子対とつくる非共有結合性の引力的相互作用である。水素結合には、異なる分子の間に働くもの(分子間力)と単一の分子の異なる部位の間(分子内)に働くものがある。水素結合は陰性原子上で電気的に弱い陽性 (δ+) を帯びた水素が周囲の電気的に陰性な原子との間に引き起こす静電的な力として説明されることが多い。つまり、双極子相互作用のうち、特別強いもの、として考えることもできる。ただし水素結合はイオン結合のような無指向性の相互作用ではなく、水素・非共有電子対の相対配置にも依存する相互作用であるため、水素イオン(プロトン)の「キャッチボール」と表現されることもある。典型的な水素結合(5〜30 kJ/mol)は、ファンデルワールス力より10倍程度強いが、共有結合やイオン結合よりはるかに弱い。水素結合は水などの無機物においても、DNAなどの有機物においても働く。水素結合は水の性質、たとえば相変化などの熱的性質、あるいは水と他の物質との親和性などにおいて重要な役割を担っている。

垂直遷移
[よみがな] すいちょくせんい
[英訳] vertical transition
分子が外部からエネルギーを吸収して異なる電子状態に遷移する場合、フランク-コンドンの原理にもとづき、その原子間距離をかえずに遷移することを指す。

垂直配向
[よみがな] すいちょくはいこう
[英訳] homeo tropic alignment
液晶が基板に対して垂直に配向するか、水平に配向するかは基板の表面張力と液晶の表面張力の関係によって決まる。基板の臨界表面張力をγc、液晶の表面張力をγLcとすると、γc<γLc:垂直配向、γc>γLc:水平配向となる。液晶の表面張力は、26〜30 dyn/cm であるから、非極性の高分子であるテトラフルオロエチレンなどで は垂直配向、極性高分子であるポリビニルアルコール、ポリアミドなどでは水平配向となる。

スイッチングTFT
[よみがな] すいっちんぐTFT
[英訳] switching TFT
アクティブマトリクス型の有機ELディスプレイにおいて、1素子を動かすために最低限必要なトランジスタは2個である。1つはスイッチングトランジスタであり、EL電流を決定する信号を読み取るか、読み取らないかのタイミングを決定する役目を果たす。

水平配向
[よみがな] すいへいはいこう
[英訳] homogeneous alignment
液晶が基板に対して垂直に配向するか、水平に配向するかは基板の表面張力と液晶の表面張力の関係によって決まる。基板の臨界表面張力をγc、液晶の表面張力をγLcとすると、γc<γLc:垂直配向、γc>γLc:水平配向となる。液晶の表面張力は、26〜30 dyn/cm であるから、非極性の高分子であるテトラフルオロエチレンなどで は垂直配向、極性高分子であるポリビニルアルコール、ポリアミドなどでは水平配向 となる。

スターガ構造
[よみがな] すたーがこうぞう
[英訳] staggered structure
ボトムコンタクト−トップゲート型の有機トランジスタ構造。

スタック型有機EL素子
[よみがな] すたっくがたゆうきいーえるそし
[英訳] stacked organic EL device
スタック型素子は2つ以上の素子を直列に接合させる構造で、p型半導体層とn型半導体層とが隣接する電荷発生層を介在させて、ホール輸送層/発光層/電子輸送層の基本単位を二つ接合させる。2段積層構造の例では、陽極(ITO)/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電荷発生層(n型層とp型層が隣接)/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、の多層構成となる。素子に電圧が印加されると、電荷発生層では、プラスとマイナスの両方の電荷が発生し、電界に従って対極側へ輸送される。電荷発生層を挟んで配置されるキャリア輸送層には、電極から注入されるキャリアと等量のキャリアが電荷発生層から供給され、発光層で再結合する。透明電極から取り出される光は両発光層からの光を混合したものとなる。スタック型素子は、マルチフォトンエミッション素子やタンデム型素子とも呼ばれる。

ステップ・テラス構造
[よみがな] すてっぷてらすこうぞう
[英訳] step-terrace structure
単結晶薄膜において見られる単位格子の大きさを段差とする階段状の表面構造。

ストークスシフト
[よみがな] すとーくすしふと
[英訳] Stokes shift
ストークスシフトは、同一の電子遷移の吸光および発光スペクトル(例えば蛍光やラマンなど)のバンド極大の位置の間の差(波長あるいは周波数単位)である。名称はアイルランドの物理学者ジョージ・G・ストークスに由来する。系(分子あるいは原子)が光子を吸収する時、系はエネルギーを得て、励起状態に入る。系が緩和する1つの方法は光子を放出しエネルギーを失うことである(他には熱エネルギーを失う方法もある)。放出された光子が吸収された光子よりも小さいエネルギーを持つ時、このエネルギー差がストークシフトである。放出される光子のエネルギーが吸収された光子のエネルギーより大きい時は、このエネルギー差は反ストークスシフトと呼ばれる。

ストリークカメラ
[よみがな] すとりーくかめら
[英訳] streak camera
ストリークカメラとは、光検出部として光電効果を用いたストリーク管を内蔵し、極めて短い時間に生じる高速な発光現象をとらえるカメラのこと。通常の高速度カメラが時間分解能10ps〜1ns程度に対し、ストリークカメラは2〜3psから1ps以下を実現し、光の強度の時間的な変化と空間分布を同時に測定できる。さらに、分光器と組合せることで、発光スペクトルの時間変化の測定にも対応する。ストリーク管は高感度で、測定波長も近赤外からX線まで選択できる。超高速パルスレーザの持続時間の測定、時間分解分光法、LIDARなどに使用される。

ストリーク像
[よみがな] すとりーくぞう
[英訳] streak image
ストリークカメラで写し出される像をストリーク像という。ストリーク像を動画として記録し、画像処理を行うことで蛍光寿命を算出することができる。

ストレージパリティ
[よみがな] すとれーじぱりてぃ
[英訳] storage parity
ストレージパリティとは、蓄電池を導入しないよりも、蓄電池を導入したほうが経済的メリットがある状態のこと。経済産業省が公開した「ソーラーシンギュラリティの影響度等に関する調査」報告書では、蓄電池価格が6万円/kWhとなることでストレージパリティは達成可能としている。

スパッタ法
[よみがな] すぱったほう
[英訳] Sputtering Method
スパッタ法とは、薄膜を生成する手法のひとつで、アルゴンガス粒子をターゲット(薄膜にしたい物質)に衝突させ、その衝撃ではじき飛ばされたターゲット成分を基板上付着させて薄膜を作る方法である。このターゲット成分をはじき飛ばす(sputter)過程は、ナノ粒子を作る方法としても用いられている。スパッタ法は、基板への付着力の強い膜の作製が可能、合金系や化合物のターゲットの組成比をほぼ保ったまま膜作製が可能、時間制御だけで精度の高い膜厚の制御が可能、また弾き飛ばすガスに反応性のガスを混合することにより酸化物・窒化物の薄膜の作成も可能である。

スパッタリング
[よみがな] すぱったりんぐ
[英訳] Sputter deposition
スパッタリングは「乾式成膜法」あるいは「乾式めっき法」に分類され、コーティングする対象物を液体や高温気体にさらす事なく成膜が出来る。真空チャンバー内に薄膜を形成したい金属をターゲットとして設置し、高電圧によってイオン化させた希ガス元素(普通はアルゴン)や窒素(普通は空気由来)を衝突させると、ターゲット表面の原子がはじき飛ばされ、基板に到達して製膜する。 原理が単純で、「スパッタ装置」としても各種あることから、様々な技術分野で使われている。 最近では、高品質の薄膜が要求される半導体、液晶、プラズマディスプレイ、光ディスクなどの製膜にも広く用いられている。

スピロ化合物
[よみがな] すぴろかごうぶつ
[英訳] spiro compound
スピロ化合物は、ただ一つの原子に結合した環を有する二環式有機化合物である。スピロ環化合物またはスピロ環式化合物とも呼ばれる。環が結合している原子はスピロ原子とも呼ばれる(ほとんどの場合は四級炭素である)。

スピン角運動量
[よみがな] すぴんかくうんどうりょう
[英訳] spin angular momentum
スピン角運動量は、量子力学上の概念で、粒子が持つ固有の角運動量である。単にスピンとも呼ばれる。粒子の角運動量には、スピン以外にも粒子の回転運動に由来する角運動量である軌道角運動量が存在し、スピンと軌道角運動量の和を全角運動量と呼ぶ。ここでいう「粒子」は電子やクォークなどの素粒子であっても、ハドロンや原子核や原子など複数の素粒子から構成される複合粒子であってもよい。素粒子はそれぞれ固有のスピン角運動量をもつが、その大きさはhをプランク定数として、一般に (h/2π)√(s(s+1))で与えられる。このsをスピン量子数という。たとえば、電子、陽子はいずれも s=1/2、重水素核 2D は s=1 である。

スピン軌道相互作用
[よみがな] すぴんきどうそうごさよう
[英訳] spin orbit coupling
スピン軌道相互作用とは、電子のスピンと電子の軌道角運動量との相互作用のこと。この相互作用により、縮退していた電子のエネルギー固有値が分裂する。最低エネルギーの多重項を知るためにフントの規則とよばれる実験則が有効である。

スピン禁制遷移
[よみがな] すぴんきんせいせんい
[英訳] spin forbidden transition
化合物に紫外光や可視光を照射すると電子遷移が起こるが、その際、電子遷移前のスピン多重度と電子遷移後のスピン多重度は同じでなければならない。つまり、一重項からは一重項へ、三重項からは三重項への電子遷移しか起こらない。これがスピン禁制則である。言い換えると、電子遷移の際にスピンの反転は起こらない。

スピンコート
[よみがな] すぴんこーと
[英訳] spin coat
スピンコートとは平滑な基材を高速回転させる事により遠心力で薄膜を付着させる手法である。回転速度が速いほど生成される薄膜は薄くなる。中心と周辺で膜厚を均質にする必要がある。スピンコートは半導体製造工程に於いて広範囲に使用されている。

スピン磁気量子数
[よみがな] すぴんじきりょうしすう
[英訳] spin magnetic quantum number
素粒子の固有の角運動量(スピン角運動量)のZ軸成分を特徴づける量子数。スピン量子数をsとすると、スピン磁気量子数の値は、-sからsまでの整数または半整数の値をとる。

スピン多重度
[よみがな] すぴんたじゅうど
[英訳] spin multiplicity
量子化学における多重度は、全スピン角運動量をSとしたとき、2S+1で定義される。 多重度は、スピン角運動量の向きのみが異なる複数の縮退した量子状態(波動関数)を区別するために使われている。有機半導体において重要な多重度は次の2つである。全ての電子が対になっている場合はS = 0で、多重度は1であり一重項(singlet)と呼ばれる。不対電子が2個の場合はS=1で多重度は3であるから三重項(triplet)と呼ばれる。

スピン量子数
[よみがな] すぴんりょうしすう
[英訳] spin quantum number
素粒子はそれぞれ固有のスピン角運動量をもつが、その大きさはhをプランク定数として、一般に (h/2π)√(s(s+1))で与えられる。このsをスピン量子数という。たとえば、電子、陽子はいずれも s=1/2、重水素核 2D は s=1 である。

すべり角
[よみがな] すべりかく
[英訳] slip angle
すべり角とは、色素分子が会合体を形成する場合などの分子の長軸と会合体の伸長方向がなす角度。たとえば、色素分子のπ電子共役系では、平面性が高く大きな置換基が存在しない場合にはそのまま積み重なり(すべり角が大)、大きな置換基が存在する場合には置換基を避けてずれて積み重なる(すべり角が小)。H会合体を形成する色素は前者に対応し、J会合体を形成する色素は後者に対応する。

スマートメーター
[よみがな] すまーとめーたー
[英訳] smart meter
スマートメーターは、毎月の検針業務の自動化やHEMS( Home Energy Management System、住宅用エネルギー管理システム)等を通じた電気使用状況の見える化を可能にする電力量計。スマートメーターの導入により、電気料金メニューの多様化や社会全体の省エネ化への寄与、電力供給における将来的な設備投資の抑制等が期待されている。

スメクチック液晶相
[よみがな] すめくちっくえきしょうそう
[英訳] smectic liquid crystal phase
ネマティック相に比べ、より位置的な制約を受けることで2次元の層状構造を持っているのがスメクティック相である。分子の移動可能な範囲が比較的狭いため、ネマティック液晶よりも硬い液晶相であることが知られている。また、ネマティック相の冷却によりスメクティック相が現れることがある。スメクティック相は、層構造の違いにより多くの種類の液晶相が知られている。

スロープパラメーター
[よみがな] すろーぷぱらめーたー
[英訳] slope parameter
電極の仕事関数を変化させたときに、注入障壁高さがどの程度変化するかを示すパラメーター(S)である。無機半導体では、半導体の種類によってS=0〜1の値をとることが知られている。そのうち、S=1が Schottky Mott モデルに対応し、 Schottky 極限と呼ばれ、仕事関数の増減分だけ障壁高さを制御できる。一方、S=0の場合は、Bardeen 極限と呼ばれ、Fermin 準位がピン止めされて障壁高さは仕事関数によらなくなる。

スワズムラ(swatheムラ)
[よみがな] すわすむら
[英訳] swathe ununiformity / swathe mura
インクジェットプリント法でのパネル化の際には、画素内およびパネル全体での不均一性が問題となる。プリントヘッドには一定の幅があるため、一度に印刷できる幅は一定であり、隣接する列幅を塗布する際には列幅の端部と中央部で乾燥ムラ起きる。つまり、ヘッドの周期でムラができる。こうしたムラは スワスムラ(swatheムラ)と呼ばれ、インク配合、プリントプロセス、および乾燥プロセスの最適化により解消することができる。

正孔(ホール)
[よみがな] せいこう
[英訳] hole
ホール参照

正孔移動度(ホール移動度)
[よみがな] せいこういどうど
[英訳] hole mobility
ホール移動度参照

正孔注入(ホール注入)
[よみがな] せいこうちゅうにゅう
[英訳] hole injection
ホール注入参照

正孔注入材料(ホール注入材料)
[よみがな] せいこうちゅうにゅうざいりょう
[英訳] hole injection material
ホール注入材料参照

正孔注入層(ホール注入層)
[よみがな] せいこうちゅうにゅうそう
[英訳] hole injection layer
ホール注入層参照

正孔ブロック層(ホールブロック層)
[よみがな] せいこうぶろっくそう
[英訳] hole blocking layer
ホールブロック層参照

正孔密度(ホール密度)
[よみがな] せいこうみつど
[英訳] hole density
バンド理論を用いると、電子密度は伝導帯での体積当たりの電子の個数であり、正孔密度は価電子帯での体積当たりの正孔の個数である。キャリア密度は半導体で重要であり、ドーピング過程で重要な量である。

正孔輸送(ホール輸送)
[よみがな] せいこうゆそう
[英訳] hole transport
ホール輸送参照

正孔輸送材料(ホール輸送材料)
[よみがな] せいこうゆそうざいりょう
[英訳] hole transporting material
ホール輸送材料参照

正孔輸送層(ホール輸送層)
[よみがな] せいこうゆそうそう
[英訳] hole transport layer
ホール輸送層参照

整数電荷(移動)モデル
[よみがな] せいすうでんかもでる
[英訳] integer charge model
電極と有機半導体層の界面において、有機半導体層の純度が高く、電荷担体がほとんど存在しない場合、電極のフェルミ準位が有機半導体層のHOMOより低い場合は、両者が接触すると有機半導体層から電極へ電子が移動し、フェルミ準位とHOMOは同じレベルになる。一方、電極のフェルミ準位が有機半導体層のLUMOより高い場合は、両者が接触すると電極から有機半導体層へ電子が移動し、フェルミ準位とLUMOは同じレベルになる。どちらの場合も真空準位のシフトを伴う。この現象は整数電荷(移動)モデルと呼ばれている。

精製
[よみがな] せいせい
[英訳] purification
精製とは、混合物を純物質にする工程、あるいはその技術。化学的に合成したり、抽出などにより得た化合物は、多くの場合、いくつかの化合物の混合物であるため、単一で純度の高いものにするために精製を行う。 重要な精製技術に、再結晶、蒸留、昇華、クロマトグラフィーなどがある。

成層圏プラットフォーム
[よみがな] せいそうけんぷらっとふぉーむ
[英訳] stratosphere platform
成層圏プラットフォームとは、成層圏飛行船やソーラープレーンなどの航空機を利用して、成層圏にあたる高度約20キロメートルの高さに常駐する通信用空中プラットフォームである。主に通信や放送への活用を目的に研究開発が行われている。

静電ポテンシャル
[よみがな] せいでんぽてんしゃる
[英訳] electrostatic potential
時間的に変化しない電荷分布により、ある空間に生じる電場を静電場といい、静電場の電位(ポテンシャル)のことを静電ポテンシャルという。電荷に係る位置エネルギーである。クーロンポテンシャルともいう。

整流作用
[よみがな] せいりゅうさよう
[英訳] rectification
ダイオードは、アノード(陽極)およびカソード(陰極)の二つの端子を持ち、電流を一方向にしか流さない。すなわち、アノードからカソードへは電流を流すが、カソードからアノードへはほとんど流さない。このような作用を整流作用という。ダイオードのアノード側に正電圧、カソード側に負電圧を印加することを順バイアスをかけると言う。これはn型半導体に電子、p型半導体に正孔を注入することになり、これらの多数キャリアが過剰となるために空乏層は縮小・消滅し、キャリアは接合部付近で次々に結びついて消滅(再結合)する。全体でみると、これは電子がカソードからアノード側に流れる(=電流がアノードからカソード側に流れる)ことになる。この領域では、電流はバイアス電圧の増加に伴って急激に増加する。一方、アノード側に負電圧を印加することを逆バイアスをかけると言う。この場合、n型領域に正孔、p型領域に電子を注入することになるので、それぞれの領域において多数キャリアが不足する。すると接合部付近の空乏層がさらに大きくなり、内部の電界も強くなるため、拡散電位が大きくなる。この拡散電位が外部から印加された電圧を打ち消すように働くため、逆方向には電流が流れにくくなる。

ゼーマン(Zeeman)エネルギー
[よみがな] ぜーまんえねるぎー
[英訳] Zeeman energy
ゼーマン効果参照

ゼーマン(Zeeman)効果
[よみがな] ぜーまんこうか
[英訳] Zeeman effect
ゼーマン効果は、原子から放出される電磁波のスペクトルが、磁場が無いときには単一波長であったスペクトル線が、磁場中では複数のスペクトル線に分裂する現象である。磁気モーメントが磁場中にあるときのエネルギーは、磁気モーメントの向きによっていろいろな値をとるが、量子力学では、磁気モーメントの磁場方向の成分は量子化されるためエネルギーは離散的となる。このため、磁気モーメントをもつ原子核、原子、分子は磁場中で磁気量子数に関する縮退がとれてエネルギー準位が分裂し、その結果、原子や分子のスペクトル線は数本に分かれる。この現象をゼーマン効果といい、分裂したエネルギーをゼーマンエネルギーという。

ゼーマン(Zeeman)分裂
[よみがな] ぜーまんぶんれつ
[英訳] Zeeman splitting
磁場のない場合においては、原子の主量子数と方位量子数が等しく、磁気量子数だけが異なる軌道のエネルギーは縮退している。しかし磁場が存在する場合には、磁気量子数と磁場の積に比例して各軌道のエネルギーが変化して縮退が解ける。この磁場によるエネルギー準位の分裂をゼーマン分裂という。

積層型白色有機EL素子
[よみがな] せきそうがたはくしょくゆうきいーえるそし
[英訳] multilayer white organic EL device
積層型白色有機EL素子は、白色発光を示す有機EL素子のうち、発光層を複数もつ有機EL素子のことを指す。例えば、青色とオレンジ色の発光層を積層して、それぞれの光を混色して素子外に取り出すことで白色光が得られる。青色と緑色と赤色の三つの発光層を有する場合もある。

積層型有機EL素子
[よみがな] せきそうがたゆうきいーえるそし
[英訳] multilayer organic EL device
積層型有機 EL素子は、有機EL素子の発光に必要な各機能(電荷輸送、発光など)を、それぞれの機能に特化した材料からなる層に分離したことを特徴としている。各層がそれぞれの機能を効率よく発揮することで、キャリア注入効率の向上、キャリアバランスの改善、キャリア再結合効率の向上などが図られ、電極からの低電圧キャリア注入、高輝度が可能となっている。

積層構造
[よみがな] せきそうこうぞう
[英訳] multilayer structure
薄膜デバイスにおいて、1つの薄膜にすべての機能を担わせることは難しいことが多い。その際、複数の層を積層して各層に異なる機能を担わせて、多層膜全体で必要な機能全てを確保するという手法がとられることが多い。このような考え方を機能分離と呼ぶこともある。有機EL素子の積層構造を例にとると、電子輸送層(陰極からの電子の注入を受け、発光層へ輸送する役割をもつ)、ホール輸送層(陽極からのホールの注入を受け、発光層へ輸送する役割をもつ)、発光層(電子とホールの注入を受け、再結合により励起子を生成し、発光する役割をもつ)などを積層させている。

絶縁体
[よみがな] ぜつえんたい
[英訳] insulator
絶縁体は、電気あるいは熱を通しにくい性質を持つ物質の総称。絶縁体には電流が流れない。バンド理論において絶縁体は、半導体と同じく価電子帯と伝導帯の間にバンドギャップ(禁制帯)が存在する状態、またはその状態を示す物質である。金属などの電気伝導体では電子が励起して伝導帯に遷移することで電流が流れるが、絶縁体はバンドギャップによりそのような状態にならない。半導体よりバンドギャップの値が大きいものが絶縁体であるがその間に明確な境界はない。絶縁は、電子に占有された最もエネルギー準位の高い価電子帯と、その上にある次のバンド(伝導帯)までの間が大きなエネルギーギャップで隔てられているために起きる。絶縁体は共有結合性やイオン結合性の強い物質に多い。化学結合の面からは、σ結合のみからなる有機化合物はバンドギャップが大きく絶縁体である。σ結合は種々の化学結合の中で最も強固な結合であり、その結合を断ち切って電子を取り出すためには結合エネルギーに相当するエネルギーが必要であるが、これは分子の分解を伴う。従って、実質的にσ電子はキャリアとして自由に動き回ることはできない。

接触抵抗
[よみがな] せっしょくていこう
[英訳] contact resistance
2つの導体を互いに接触させて電流を流すと、その接触部に電圧降下と温度上昇が生じる。 これは接触部に抵抗ができるためで、その値は導体の種類、圧力、酸化膜の有無、吸着気体の状態、電流密度などによって異なる。有機電界効果トランジスタでは、ソース電極/有機半導体層および有機半導体層/ドレイン電極の接触抵抗を小さくし、その影響を抑えることが応答速度を速めるために重要である。

接触電位差
[よみがな] せっしょくでんいさ
[英訳] contact potential difference
異種物質を接触させたとき、その接触面を境に現れる電位差のこと。金属のフェルミ準位と外界の電位の間には仕事関数と呼ばれるエネルギー差があるが、2種の金属が接触したとき、フェルミ準位が等しくなるようにトンネル効果などで電子が移動して表面に電位差を生じる。各種金属の接触電位差の間にはボルタの法則が成り立ち、金属A、B、Cがあって、AとBの接触電位差を VAB 、AとC、CとBのそれを VAC 、VBC とすると、VAB=VAC+VBC となる。

接続層
[よみがな] せつぞくそう
[英訳] inter-connecting layer(ICL)
タンデム構造の有機薄膜太陽電池において、最も基本的な構造は単層セルを直列に2層つないだものである。この単層セルをつなぐ間の層を接続層という。接続層には次のようなことが求められる。(1)抵抗や電荷の蓄積が少ないこと、電圧降下がないこと、1層目と2層目の準位が等電位であること。(2)光学的に透明であること、特に太陽光スペクトルの範囲で光学的な吸収係数が小さいこと。(3)電荷再結合の役目を負うこと(電荷のすり抜けや蓄積がないこと)。

設備利用率
[よみがな] せつびりようりつ
[英訳] capacity factor / utilization factor
太陽光発電システムの設備利用率は、対象設備が定格出力で運転したと仮定して得られる発電電力量に対する実際の発電電力量の割合であり、対象設備の発電性能を評価する指標の一つである。

ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)
[よみがな] ぜろえねるぎーびる
[英訳] Zero Energy Building(ZEB)
ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)とは、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物。

ゼロエミッション住宅
[よみがな] ぜろえみっしょんじゅうたく
[英訳] Zero Emission House(ZEH)
室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅。

ゼロ磁場分裂
[よみがな] ぜろじばぶんれつ
[英訳] zero field splitting(ZFS)
外部磁場が存在しなくても、結晶場、スピン間の相互作用、スピン-軌道相互作用などによって多重項の縮退がとれてエネルギー準位の分裂が起こることをいう。実際には電子スピン共鳴吸収の微細構造によってその事実が確認される。スピン量子数が1/2より大きな系で観測されうる。

遷移
[よみがな] せんい
[英訳] transition
原子や分子は、特有ないくつかのエネルギー状態(エネルギー準位)をもっている。最もエネルギーの低い状態を基底状態、それ以外の状態を励起状態といい、エネルギーの低いものから、第1励起状態、第2励起状態(n =1, 2, …)と名づけられている。原子や分子内の電子は、光を吸収することによってエネルギーを手に入れ、より高いエネルギー準位へと移動する。一方、エネルギー準位の低い方へ原子や分子の状態が移動する時は、光を放射することによってエネルギーを外に出す。この様に、光を放出したり吸収したりしてエネルギー準位が移り変わる事を遷移という。

遷移エネルギー
[よみがな] せんいえねるぎー
[英訳] transition energy
分子のエネルギーの最も低い安定な状態が基底状態,その他のエネルギーの高い状態が励起状態である。状態(準位)間の移り変わりを遷移という。遷移にはエネルギーの出入りを伴ない、遷移エネルギーと呼ばれる。

遷移確率
[よみがな] せんいかくりつ
[英訳] transition probability
量子力学に従う系において、原子や分子が電磁場など外部から作用を受けて、単位時間内に、ある定常状態から別の定常状態に遷移する確率。具体的には、基底状態にある原子が光を吸収し、エネルギーが高い別の定常状態に遷移する頻度などを指す。

遷移金属酸化物
[よみがな] せんいきんぞくさんかぶつ
[英訳] transition metal oxide
遷移金属元素(長周期表の3A-7A、8、1B中d殻が満たされていく元素)と酸素との化合物。電子-電子、電子-格子相互作用が強く、伝導性および磁性において興味深い性質をもつ。遷移金属酸化物は磁性体の代表であり、絶縁体、半導体、金属、超伝導体のすべてを含む。1986年にランタン、バリウム、銅からなる酸化物高温超伝導体が発見された。酸化物の磁性研究によって,物性物理学あるいは固体電子論が発展してきた。遷移金属酸化物の結晶構造は中心に遷移金属原子が位置する酸素八面体、ピラミッド、四面体などをユニットとした連結構造によって表され、単純なものから長周期・変調構造を導く複雑なものまで多くのパターンが存在する。

遷移双極子
[よみがな] せんいそうきょくし
[英訳] transition dipole
分子の中における電子の分布は、基底状態においても必ずしも一様ではないため、分子のある部分は正に他の部分は負に帯電している。このような分子の中の電荷の偏りの一次のモーメントを静的双極子という。静的双極子は基底状態における分子の性質であるのに対し、遷移双極子は分子が基底状態から励起状態に遷移するときに現れる仮想的な電気双極子である。

前駆体
[よみがな] ぜんくたい
[英訳] precursor
ある化学物質について、その物質が生成する前の段階の物質のことを指す。化学反応によって前駆体から目的とする化合物を合成することができる。

センサー
[よみがな] せんさー
[英訳] sensor
センサーは、自然現象や人工物の機械的・電磁気的・熱的・音響的・化学的性質あるいはそれらで示される情報を、何らかの科学的原理を応用して、人間や機械が扱い易い別媒体の信号に置き換える装置のことをいう。位置決めをするための赤外線センサー、超音波センサー、接触を検出する感圧センサー、熱いものを検出する熱センサー、角度を知るためのジャイロセンサーなど、数多くの種類がある。センサを利用した計測・判別をセンシングという。センサはトランスデューサーの一種と言えるが、明確な定義はされていない。センサという言葉は、トランスデューサーのみを指す場合もあれば、トランスデューサーに増幅・演算・制御・出力等の機能を合わせた装置を指す場合もある。

選択則
[よみがな] せんたくそく
[英訳] selection rule
選択規則、選択律ともいう。系の二つの定常状態間の遷移が許容であるか禁制であるかを決定する規則。系の二つの定常状態間の遷移確率の大きさは、その遷移モーメントの2乗に比例するが、この値が0になるかどうかは、遷移に関係する状態の固有関数の性質によって一義的に決められることが多い。たとえば、光吸収による電子遷移の場合、二つの固有関数のスピン多重度が異なっていて、スピン-軌道相互作用がない場合、遷移モーメントの値は0となる。したがって、この遷移に対するスペクトルは観測されない。このほか、電子遷移に対しては、分子の対称性による選択則などがある。また、振動スペクトル、回転スペクトルなどに対しても、それぞれの選択則がある。

全反射測定法(ATR法)
[よみがな] ぜんはんしゃそくていほう
[英訳] Attenuated Total Reflection
全反射測定法(ATR)は、試料表面で全反射する赤外光を測定することによって試料表面の吸収スペクトルを得る方法である。赤外領域に透明な高屈折率媒質(プリズム)に試料を密着させ、プリズムから試料内部にわずかにもぐり込んで反射する全反射光を測定すると、試料表層部の吸収スペクトルが得るられる。このとき赤外光は試料表面から数μm程度の比較的深い領域までもぐり込み、その深さは,空気中での赤外光の波長、入射角、プリズムの屈折率、試料の屈折率に依存する。ATR法によるFT−IRスペクトルは、透過法によるFT−IRスペクトルと比較し、低波数側の吸収が強く現れる。

染料
[よみがな] せんりょう
[英訳] dye
可視光を吸収して、色を与える物質(色素)のうち、水や有機溶剤に可溶なものを染料と呼ぶ。狭義には、繊維を着色するのに用いる色素を指す。その化学構造としては、一般的に芳香環をもち、可視部に吸収をもつに十分で、平面共役なπ電子系を有している。また染色法に適合するように溶解性,金属錯塩形成,吸着,水素結合性などに富む置換基をそなえている。

[よみがな] そう
[英訳] phase
相とは化学的組成及び物理的状態が一様な物質系の実体である。相とは化学組成及び物理的状態が全体的に一様な形態のものである。気体、液体、固体は、物質の三つの形態(物質の三態)として知られているが、固体や液体には複数の違った形態をとる場合があることもまた知られている。そこで、これらを区別する別の用語が必要になり、それに相という用語が使用される。

増感色素
[よみがな] ぞうかんしきそ
[英訳] sensitizing dye
色素増感型太陽電池に用いられる色素で、酸化物半導体微粒子に吸着させることにより、半導体の分光感度を可視光の領域(?700nm)まで広げるために使用される色素を増感色素と呼ぶ。

双極子
[よみがな] そうきょくし
[英訳] dipole
双極子とは、一対の正負の同じ大きさの単極子がわずかに離れた位置に存在するものである。和訳せずダイポールと呼ばれることもある。分子内では、電子の偏りを原因として発生する電荷のひずみである。分子構造の中で、正の電荷の重心と負の電荷の重心が一致しない電荷の配置を双極子という。双極子は、負から正の単極子への方向ベクトルとその大きさとの積で特徴づけられる。このベクトルを双極子モーメントといい、このベクトルの方向との関係により指向性を持つ場となる。

双極子-双極子相互作用
[よみがな] そうきょくしそうきょくしそうごさよう
[英訳] dipole-dipole interaction
電気陰性度が異なる原子同士が結合すると、わずかな電荷の偏りが生じる。例えば、H-O結合では、電気陰性度が高い酸素原子が少しマイナスの電荷を帯び、水素原子が少しプラスの電荷を帯びる。このように正電荷と負電荷の偏りが非常に近くで存在する状態を分極といい、分極している分子を双極子という。炭素に対して酸素、窒素、硫黄、ハロゲンは電気陰性度が高く、これらの原子が炭素と結合すると電荷に偏りが生じ、電気的双極子が生じる。双極子はプラスとマイナスの電荷をもつため、他の双極子が来ると引き寄せられ、双極子-双極子相互作用が生まれる。また、双極子がイオンの電荷によって引き寄せられる場合は、イオン-双極子相互作用が生まれる。イオンの方が双極子より強い電荷を持つため、イオン-双極子間相互作用の方が強い結合となる。

双極子モーメント
[よみがな] そうきょくしもーめんと
[英訳] dipole moment
微小な距離だけ離れた大きさの等しい1対の正負の電荷や磁極をさす双極子の強さを表わす量。一般的には、空間内の電荷密度を ρ(r) とすると積分 p=∫ρ(r)r dv で定義される。分子の双極子モーメントは分子の電気的特性を示し、分子構造についての有益な情報が得られる。電気双極子についていえば、距離 l をへだてて1対の点電荷 +q、−q をもった双極子のモーメント P を ql で定義する。 l は −q から +q に向う位置ベクトルである。

走行時間効果
[よみがな] そうこうじかんこうか
[英訳] transit-time effect
インピーダンス分光(IS)法は微小正弦波電圧を電子デバイスに印加し、その応答電流の振幅と位相からインピーダンスを算出し、印加電圧の周波数の関数としてインピーダンススペクトルを得る測定法である。測定対象デバイスの静電容量、コンダクタンスの周波数特性は、低周波域から高周波域に向かって、静電容量は増加し、コンダクタンスは減少する。これは、微小交流電圧の印加により注入されたキャリアによる空間電荷が印加電圧に完全には追従できず、電流に位相遅れが生じるからである。高周波域においては、注入キャリアは交流電界に追従できず、1/2 周期の間に対向電極に到達することができないため、幾何容量が測定される。コンダクタンスに関しても、同様の理由により変化が生じる。これを走行時間効果と呼ぶ。

相互貫入型接合有機薄膜太陽電池
[よみがな] そうごかんにゅうがたせつごうゆうきはくまくたいようでんち
[英訳] interpenetrating junction organic solar cell
有機太陽電池における電子受容性(アクセプター性、n型)分子と電子供与性(ドナー性、p型)分子の接合様式として、バルクヘテロ接合が適用されることが多い。しかしながら、この方法では電子集合体と電子受容体の望みの組織構造を得ることが難しく、より積極的に理想的な相分離構造を構築することが重要になっている。電子供与体と電子受容体が相互に入り込んだ構造の相互貫入型接合が電荷分離、電荷移動において好ましいが製造工程が複雑になるなどの課題がある。

走査型電子顕微鏡(SEM)
[よみがな] そうさがたでんしけんびきょう
[英訳] Scanning Electron Microscope(SEM)
走査型電子顕微鏡(SEM)は電子顕微鏡の一種であり、電子線を照射することで放出される二次電子・反射電子・X線などを検出し、試料の表面を観察する。透過型電子顕微鏡(TEM)が試料全体に電子線を照射するのに対し、SEMは細く直線的な電子線の軸を少しずつずらしながら照射して試料の表面を網羅的に走査(スキャン)し、表面全体の詳細な情報を得る。電子線の照射によって試料から放出される二次電子やX線などは全て信号として検出され、照射した電子線の座標などの情報と組み合わされた後、画像として可視化される。光学顕微鏡に比べ、焦点深度が100倍以上深く、広範囲にわたり立体的な像を得ることができる。有機ELや有機系太陽電池では、素子の断面構造の解析などに用いられる。

ソース電極
[よみがな] そーすでんきょく
[英訳] source electrode
電界効果トランジスタ(FET)を構成する電極の一つで、キャリアを放出する(キャリアを流す源となる)役割を担う。

相対量子収率
[よみがな] そうたいりょうししゅうりつ
[英訳] relative quantum yield
蛍光物質が吸収した励起光の光量子数と蛍光として発した光量子数の比を量子収率と言い、照明・ディスプレイなどに利用される蛍光体やライフサイエンス分野の蛍光プローブなどの発光強度や発光効率の評価に用いられている。量子収率を求める方法として、量子収率が既知の蛍光物質を標準試料として、未知の試料の量子収率を算出する相対法と、積分球を用いて未知試料の量子収率を直接求める絶対法がある(絶対法で求めた値を絶対量子収率または量子効率と言う)。

想定潮流
[よみがな] そうていちょうりゅう
[英訳] estimated power flow
想定潮流とは、送電事業者が系統計画を立てる段階で用いられる概念で、特定のシナリオ下で電源の連系や稼働がスムーズに行く電気の潮流のこと。想定潮流が送電網の運用容量を超えると、送電網の安定性が損なわれると判断されるため、現行の運用容量内に想定潮流を留めるか(超えると「空き容量がない状態」)、想定潮流をもとに送電網を増強する必要がある。

想定潮流の合理化
[よみがな] そうていちょうりゅうのごうりか
[英訳] rationalization of estimated power flow
従来、想定潮流は軽負荷期や重負荷期などの特定の時期に電源がフル稼働(出力最大)で発電する想定で算出してきた。その結果、実際の需給よりも過渡に空き容量を確保していた。想定潮流の合理化は、需要に応じて実態に則した電源稼働を想定して算出する。エリア全体の需給バランス、長期休止電源や自然変動電源の均し効果などから電源の稼働の蓋然性評価等を実施。需要と出力の差が最大となる断面(最大潮流の断面)で評価することで生じる容量を活用する。

相転移
[よみがな] そうてんい
[英訳] phase transition
相変化ともいう。ある系の相が別の相へ変わることを指す。相転移には、エントロピーや体積などの値が両相で有限の差をもつような一次相転移と、定圧比熱や等温圧縮率の値に有限の差をもつような二次相転移とがある。一次相転移の例としては水蒸気から水、水から氷への転移などがあり、二次相転移の例としては、磁性体における常磁性-強磁性転移、合金の秩序無秩序転移、液体ヘリウムのλ点における正常流体から超流動流体への転移などがある。

相分離
[よみがな] そうぶんり
[英訳] phase separation
相分離とは相転移現象の一つで、混合系の温度・圧力などを変えることで相溶性が変化し、一相状態から二相状態に変化することをいう。相分離現象は、水と油のような液体混合系だけでなく、合金などの固体混合系でも起こるが、その機構が後者は拡散によってのみ進行するのに対し、前者は流動性も大きく影響し、それぞれ model B、model H と呼ばれている。

相平衡
[よみがな] そうへいこう
[英訳] phase equilibrium
相平衡とは、同じ物質が複数の異なる相を取るとき、これらの相の間で平衡状態になることである。あるいは平衡状態になりうることを説明するための用語である。例えば氷と水は同じ物質であるが性質が大きく異なる、すなわち相が異なる。平衡状態とは氷と水とが共存し、なおかつその構成比率が変化しない状態である。なお、氷が溶けたり水が凍ったりする現象は相転移と呼ばれる。氷水がちょうど摂氏0度であれば氷と水の構成比率は変化せず、従って氷と水とは平衡状態にあると言える。平衡状態にあっても氷が溶けたり水が凍ったりする現象が止まっているわけではなく、双方の速度が等しいため構成比率が変化しないということである。

ソーラーシミュレーター
[よみがな] そーらーしみゅれーたー
[英訳] solar simulator
ソーラーシミュレーターとは、太陽光に近いスペクトル分布を持つ光を人工的に作り出した疑似太陽光発光装置。ソーラーシミュレータ(疑似太陽光源)は、高効率な太陽電池の研究、植物の光合成の研究、人工光合成の研究、光触媒の研究など太陽光の照射に関連する幅広い分野で使われている。

層流
[よみがな] そうりゅう
[英訳] laminar flow
流れの中で、流体の各部分が互いに混り合うことなく流れるものをいう。粘性の作用が大きいとき、すなわち流れのレイノルズ数が比較的低いときは、流れは層流の状態に保たれるが、レイノルズ数がある臨界値をこえると、流れは不安定になり、流体の各部分が乱雑に混り合う乱流に移行する。

ゾーンメルト法
[よみがな] ぞーんめるとほう
[英訳] zone melting
金属や半導体の精製法の一つ。金属などが融解している状態から固化する際、固相中に取込まれる不純物の量が液相中のそれと異なる現象 (偏析現象) を利用している。帯域溶融法または帯域精製法ともいう。金属棒をボート皿に載せ、あるいは垂直に懸垂し、これに沿って短寸の電気抵抗炉または高周波炉を摺動させるか、または試料を移動させて局部的溶融部分を移動してゆく。ほとんどの不純物は偏析係数が1より小さいので、通過後の凝固部分の純度が上がり、不純物は次第に棒の末端のほうへ濃縮される。ただし、不純物によっては、偏析係数が1より大きく、棒の他端に濃縮されるものもある。この操作を繰返すと最終的に高純度の金属が得られる。半導体原料のシリコン、ゲルマニウムの精製に実用され、99.999999999% (イレブンナイン) の高純度が得られている。ほとんどあらゆる種類の金属に応用できる。

束縛エネルギー
[よみがな] そくばくえねるぎー
[英訳] binding energy
電子の束縛エネルギーは、中性分子を+1価のカチオン分子にするために最小限必要なエネルギー、つまりイオン化ポテンシャルである。

Society 5.0
[よみがな] そさえてぃー5.0
[英訳] Society 5.0
ソサエティー5.0(Society 5.0)は、日本が提唱する未来社会のコンセプト。科学技術基本法に基づき、5年ごとに改定されている科学技術基本計画の第5期(2016年度から2020年度の範囲)でキャッチフレーズとして登場した。サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する新たな未来社会(Society)を“Society 5.0(ソサエティー5.0)”として提唱しており、令和3年版 科学技術・イノベーション白書では、「Society 5.0の実現に向けて」と題してSociety 5.0を特集し解説動画を公開している。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)といった人類がこれまで歩んできた社会に次ぐ第5の新たな社会を、デジタル革新、イノベーションを最大限活用して実現するという意味で「Society 5.0」と名付けられた。

素子(半導体素子)
[よみがな] そし(はんどうたいそし)
[英訳] element (semiconductor device)
半導体素子とは、半導体の電気的特性を利用して作られる電気回路の構成要素である。 整流機能を有するダイオード、増幅機能を有するトランジスタなどがある。

素子寿命
[よみがな] そしじゅみょう
[英訳] device lifetime
有機EL素子の寿命の指標として、初期輝度の半分になるまでの時間(LT50)がある。素子寿命が非常に長い場合などは、評価効率を上げるために、例えば、初期輝度の80%になるまでの時間(LT80)寿命とする場合もある。製品に近い素子を評価する場合は、そのアプリケーションに合った寿命定義をする。たとえば、照明用途の場合はLT70、ディスプレイ用途の場合はLT95などが、最近では多く使われている。ディスプレイ用途でLT95を指標とする理由は、固定表示をした場合に、発光させた素子と発光させていない素子との間に5%の輝度差が生じてしまうと、例えば全白表示をしたときに焼き付きとして人間に視認されるためである。

疎水結合
[よみがな] そすいけつごう
[英訳] hydrophobic bond
水と親和性のない化学構造同士の間に作用する力を、その構造間の結合と表現して疎水結合と呼ぶ。ただし明確な結合ではなく、水になじまない部分同士が親水性の分子環境からはみ出して重なり合うことにより、相対的に安定化した状態と考えられる。具体的には、有機物のうちで、炭化水素鎖 (−CH2−)nやベンゼン環 (C6H6) のように炭素と水素の組合せから成る部分は疎水的であるため、それらの間には疎水結合が生じやすい。

ソックスレー抽出器
[よみがな] そっくすれーちゅうしゅつき
[英訳] Soxhlet extractor
ソックスレー抽出器は、固体試料から溶媒によって物質を効率よく抽出するための装置(固液抽出)である。一般的なソックスレー抽出器は、最下部に溶媒を入れたフラスコ、中間に固体の試料を入れたろ紙あるいは焼結ガラスでできた容器、最上部に冷却管がついた装置である。フラスコを加熱すると溶媒は蒸発し、最上部の冷却管で凝結し、滴下する際に固体試料に滴り落ち、目的成分を少量溶かしこんだ後、フラスコへと戻る。通常の場合、目的成分は溶媒より沸点が高いため、このサイクルを繰り返すことで、フラスコ内には徐々に目的成分が濃縮される。還流する溶媒は目的成分を含まないので飽和することはなく、比較的少量の溶媒で効率よく抽出を行うことができる

ダークスポット
[よみがな] だーくすぽっと
[英訳] dark spot
有機EL素子の劣化要因を現象別に区分すると、ダークスポット、突発的な故障、輝度劣化に分けられる。ダークスポットとは、素子外から侵入してくる大気中の酸素や水が原因で引き起こされる陰極の劣化・剥離により現れる素子上の黒点のことで、発光面の一部が丸くスポット的に発光しなくなる。

ターボ分子ポンプ
[よみがな] たーぼぶんしぽんぷ
[英訳] turbomolecular pump(TMP)
ターボ分子ポンプは機械式真空ポンプの一種で、金属製のタービン翼を持ったロータが高速回転し、気体分子を弾き飛ばすことにより排気するポンプである。JISではこのような排気方式を「運動量輸送式」の真空ポンプと呼んでいる。

大気中光電子収量分光法 (PYSA)
[よみがな] たいきちゅうこうでんししゅうりょうぶんこうほう
[英訳] Photoemission Yield Spectroscopy in Air ( PYSA)
光電子収量分光において、外部光電子を空気中で酸素に捕獲させてオープンカウンターで計測する方法。大気中で測定できるのでUPSよりも簡便である。

第三者所有モデル(TPOモデル)
[よみがな] だいさんしゃしょゆうもでる
[英訳] Third-Party Ownership(TPO)
第三者所有モデルもしくは第三者保有モデルとは、住宅太陽光発電の施工事業者が、投資家を募って資金を集めて住宅屋根に太陽光設備を設置し、その住宅居住者と電力購入契約(Power Purchase Agreement:PPA)を結んで発電電力を供給する仕組み。住宅居住者にとっては、初期投資ゼロで太陽光を導入して、その発電電力を利用できる。また、太陽光発電の施工事業者にとっては、手持ち資金なしで施工件数が増やせ、資金提供者は、相対的に収益性の高い住宅向け売電事業に投資できるメリットがある。

Time of Flight 移動度
[よみがな] たいむおぶふらいといどうど
[英訳] time-of-flight mobility
Time of Flight 法参照

Time-of-Flight 法(TOF法、飛程時間法)
[よみがな] たいむおぶふらいとほう
[英訳] time-of-flight method
Time-of-Flight 法(TOF法、飛程時間法)は、キャリアが一定距離を移動する時間を測定することによってキャリアの平均速度vを測定して、移動度を求める手法。試料の厚さdが既知であれば、キャリアが試料を通過するのに要する時間t(過渡時間)を測定し、試料厚さdをその時間tで割ることにより、キャリアの平均走行速度が得られる。得られたキャリアの平均速度vを電界強度Eで割れば、キャリア移動度 μが算出できる(μ=v/E=d/Et)。有機半導体の電子物性を決める重要なパラメーターは、キャリア密度とキャリア移動度である。光照射や化学ドーピングなどの外部刺激によって大きく変動するキャリア密度と異なり,キャリア移動度は物質固有の物性値であり、有機半導体の評価やデバイス設計、分子設計を行ううえで重要なパラメーターである。キャリア移動度を測定するためのさまざまな手法がこれまでに開発されているが、 Time-of-Flight法(TOF法、飛程時間法)はバルクのキャリアのドリフト移動度を求める一般的な手法である。

ダイヤモンド型構造
[よみがな] だいやもんどがたこうぞう
[英訳] diamond structure (diamond type structure)
立方晶系に属する結晶構造の1種。単位胞の中に8個の原子があり,そのうちの4個ずつが2つの面心立方格子をつくり,それらは互いに立方対角線に沿ってその長さの 1/4 だけ移動した位置を占める。1つの原子には4個の最近接原子が正四面体の頂点の位置にある。共有結合をする炭素,ケイ素,ゲルマニウムなどの結晶にみられる。

太陽光発電(PV)
[よみがな] たいようこうはつでん
[英訳] photovoltaics / solar photovoltaics(PV)
太陽光発電(PV)は、太陽光を太陽電池を用いて直接的に電力に変換する発電方式である。ソーラー発電、大規模な太陽光発電所はメガソーラーとも呼ばれる。再生可能エネルギーである太陽エネルギーの利用方法の1つである。

太陽光発電協会(JPEA)
[よみがな] たいようこうはつでんきょうかい
[英訳] Japan Photovoltaic Energy Association(JPEA)
一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)は、日本の太陽光発電産業の業界団体である。太陽光発電の普及促進活動のほか、統計作成、技術開発促進、需要家や消費者の相談窓口業務などを行う。

太陽電池
[よみがな] たいようでんち
[英訳] solar cell
太陽電池は、光エネルギーを電気エネルギー(電力)に変換する電力機器である。主に、太陽光エネルギーを家庭用や産業用の電力として活用する目的で使用される。"電池"と表現されるが、電力を蓄える蓄電機能は持っていない。タイプは大きく分けてシリコン系、化合物系、有機系がある。

太陽電池セル
[よみがな] たいようでんちせる
[英訳] photovoltaic cell / solar cell
太陽電池の一番小さな単位(基本単位)で、太陽電池素子そのものをいう。

太陽電池モジュール
[よみがな] たいようでんちもじゅーる
[英訳] solar cell module / photovoltaic module
太陽光発電はセル単体では大きな発電量にならない。また、セル単体では強度も保てないため、必要数のセルを集めてつなぎ、ガラスや樹脂、フレームで保護して板状に作ったものを太陽電池モジュールという。一般的には「太陽光パネル」とか「太陽電池パネル」ともいう。

多結晶
[よみがな] たけっしょう
[英訳] polycrystalline
多結晶は、固体が多数の微小な単結晶すなわち微結晶から構成されていることを示す。多結晶の物体は、多結晶体または単に多結晶と呼ばれる。多くの金属やセラミックスは多結晶体である。多結晶は複数の単結晶から構成されているため、互いに隣接する単結晶間に結晶粒界と呼ばれる界面が存在する。一般に多結晶は単結晶より強度が弱い。

多結晶シリコン
[よみがな] たけっしょうしりこん
[英訳] polycrystal silicon
珪素(シリコン)の多結晶。単結晶シリコンよりつくりやすく、安価。IC・太陽電池などに利用される。

多重トラッピングモデル
[よみがな] たじゅうとらっぴんぐもでる
[英訳] multiple trapping model
有機半導体中の電荷担体の移動モデルの一つで、伝導帯の存在下で電荷担体がトラップによる捕獲と放出を繰り返しながら移動し、その移動速度がトラップから伝導帯への脱出速度に支配されるような場合に適用できる。

多接合太陽電池
[よみがな] たせつごうたいようでんち
[英訳] multi-junction solar cell
多接合太陽電池とは、種類の異なる(異なる波長の太陽光を吸収する)太陽電池を直列につなぎ合わせ、幅広い波長領域の太陽光を吸収させて発電効率を高めた太陽電池。出力電圧は各セルの電圧の合計になるため、接合数が大きいほど高電圧になる。太陽電池の接合数により、2接合、3接合、4接合太陽電池と呼ばれる。

ダックカーブ
[よみがな] だっくかーぶ
[英訳] duck curve
ダックカーブは1日間の発電量を示すグラフであり、電力需要と再生可能エネルギー由来の電力供給の不均衡を示している。負荷と、出力が変動する電源 (太陽光発電や風力発電など) の発電量との差をネットロード(net load)と呼ぶ。太陽光発電設備が大規模に導入された地域では、1日を通じてネットロードが特徴的に変化することがある。朝は、人々が起床し、電気を消費し始めることにより、ネットロードが徐々に増加する。昼になると、太陽光発電から大量の電力が供給され、ネットロードが劇的に減少する。逆に、夕方になって日が沈むと、太陽光発電からの電力供給がなくなり、さらに、帰宅した人々が自宅で電気を使い始めて負荷が増加することで、ネットロードが急増する。夜になると、人々が就寝することで、ネットロードが徐々に減少する。このネットロードの変化をグラフに表すと、昼間のネットロードの急減がカモの腹部に、夜のネットロードの急増がカモの首に似ているため、ダックカーブと呼ばれる。

縦型構造
[よみがな] たてがたこうぞう
[英訳] vertical structure
有機トランジスタにおいて、ソース電極とドレイン電極を縦方向に配した構造。

ダビドフ分裂
[よみがな] だびどふぶんれつ
[英訳] Davydov splitting / factor group splitting
因子群分裂ともいう。気体や液体で観測される電子準位間の遷移に対する1本の吸収線が、同じ物質から成る固体 (分子結晶) では2本以上に分れる現象をいう。A.ダビドフにより発見された。分子結晶中で分子が方位を異にして配列する場合にこの分裂が起り、並進に対して等価でない n個の分子があると、n個のダビドフ多重項が生じる。この現象は、結晶をつくると励起状態が結晶全体で共有され、分子励起子をつくることに関連している。多くの分子結晶、たとえばベンゼン、ナフタリン、アントラセンなどで観測される。

ダブルガラスモジュール(両面ガラスモジュール)
[よみがな] だぶるがらすもじゅーる
[英訳] double glass module
従来の太陽電池モジュールは、裏面が樹脂性のバックシートで覆われている。これを強化ガラスで代替したものが両面ガラスモジュールである。これにより裏面も光透過性を有することから、太陽電池の両面発電により変換効率が向上する。また、膨張係数の異なるバックシートを強化ガラスに置換することにより、モジュールとしての信頼性や強度が向上する。一方で、両面ガラスのため太陽電池モジュールの重量が重くなため、アルミフレームレス構造や薄膜の強化ガラス構造の検討が進んでいる。

ダブルゲート型構造
[よみがな] だぶるげーとがたこうぞう
[英訳] double gate type structure
ゲート電極を上下に二つ配置する構造。

単極性有機発光トランジスタ
[よみがな] たんきょくせいゆうきはっこうとらんじすた
[英訳] unipolar organic light emitting transistor
トランジスタのチャネル中に単一キャリア(ホールまたは電子)のみを蓄積し、ドレイン電極から注入されたごくわずかな少数キャリアと再結合することにより発光する方式の有機発光トランジスタ。

ダングリングボンド
[よみがな] だんぐりんぐぼんど
[英訳] dangling bond
ダングリングボンドとは、原子における未結合手のこと。無機系の半導体結晶において、結晶の表面や格子欠陥付近では、原子は共有結合の相手を失って、結合に関与しない電子(不対電子)で占められた結合手が存在する。 この手をダングリングボンドと呼び、半導体膜バルクとは異なる性質を示し、電荷トラップや消光サイトなどにもなりうることから注意を要する。有機半導体においては、半導体膜の構成単位は中性分子であることから、表面(界面)や膜の欠陥部においてもダングリングボンドは存在しないが、界面や膜の欠陥部はやはり半導体膜バルクとは異なると考えられ、注意を要する。

単結晶
[よみがな] たんけっしょう
[英訳] single crystal, monocrystal
単結晶とは結晶のどの位置であっても、結晶軸の方向が変わらないものをいう。単結晶の集合体が多結晶である。多結晶中の個々の単結晶を結晶粒という。

単結晶シリコン
[よみがな] たんけっしょうしりこん
[英訳] single crystal silicon
珪素(シリコン)の単結晶。多結晶シリコンに比べ製造コストは高い。高純度のものは集積回路のシリコンウエハーや高性能の太陽電池などに利用される。

単層カーボンナノチューブ
[よみがな] たんそうかーぼんなのちゅーぶ
[英訳] single-walled carbon nanotube
カーボンナノチューブ参照

タンデム型太陽電池
[よみがな] たんでむがたたいようでんち
[英訳] tandem solar cell
タンデム型太陽電池とは、利用波長の異なる太陽電池を複数積み重ねた太陽電池で、スタック型、積層型などとも呼ばれる。太陽光のエネルギーをより無駄なく利用することで変換効率の向上が図れる。例えば、短波長に感度が高いアモルファスシリコンと長波長に感度が高い微結晶シリコンを積層してタンデム型太陽電池とすることで、より広い波長域に感度を持たせることができ、出力特性を向上できる。

タンデム型有機EL素子
[よみがな] たんでむがたゆうきいーえるそし
[英訳] tandem organic electroluminescent device
スタック型有機EL素子参照

タンデム型有機薄膜太陽電池
[よみがな] たんでむがたゆうきはくまくたいようでんち
[英訳] tandem organic thin film solar cell
有機薄膜太陽電池におけるエネルギーロスの最大の原因は光の未吸収ロスである。有機半導体材料が吸収できる光の波長は限られているため、単一の有機物だけでは変換効率に限界がある。タンデム型有機薄膜太陽電池は、相補的な異なる吸収帯を持つ活性層を直列につなぐことで、光の利用効率和高める方法をとっている。最も基本的な構造は、単層セルを直列に2層つないだものである。

断熱イオン化
[よみがな] だんねついおんか
[英訳] adiabatic ionization
分子と分子イオン両者の最低振動状態間の遷移に対応するイオン化。イオン化電位は、イオン化によって分子内の原子間距離が変わらない場合は、断熱イオン化電位と垂直イオン化電位は等しいが、変わる場合は、断熱イオン化電位は垂直イオン化電位より低い。

短絡電流
[よみがな] たんらくでんりゅう
[英訳] short circuit current
太陽電池の外部にかかる電圧が0Vの時の電流を短絡電流と呼ぶ。太陽電池の性能の一つの指標となる。

短絡電流密度
[よみがな] たんらくでんりゅうみつど
[英訳] short circuit current density
太陽電池において、光照射条件において、陽極と陰極間の電圧を0V(短絡)に設定した時に外部に流れ出る電流密度。短絡電流をセル面積で除したもの。一般に単位[mA/cm2]がよく使われる。

単量体(モノマー)
[よみがな] たんりょうたい
[英訳] monomer
モノマーとは単位が一個ということを意味し、一般に高分子(ポリマー)の構成単位や重合反応前の原料(基質)のことを指す。モノマーが2つ結合したものはダイマー(二量体)、3つ結合したものはトリマー(三量体)と呼ばれる。

チエノキノイド
[よみがな] ちえのきのいど
[英訳] Thienoquinoids
チエノキノイド構造とは、チオフェン環の3位と4位の炭素が二重結合を形成し、2位と5位の炭素が別の原子と二重結合を形成した化学構造である。チエノキノイド化合物は深いLUMOエネルギー準位を有するものが多く、電子輸送性材料の有用なビルディングユニットである。また、チエノキノイド骨格をポリマーに導入することで、ポリマー主鎖の結合交替(単結合と二重結合の結合長の差)が小さくなり、バンドギャップが小さくなる。例えば、ベンゾジチオフェンジオンを導入したポリマーは、小さいバンドギャップをもち、アンビポーラー性(p型とn型の両方の性質)を示すとともに、高い移動度を示すポリマーとなりうる。

遅延蛍光(遅延発光)
[よみがな] ちえんけいこう
[英訳] delayed fluorescence
遅延発光ともいう。電荷分離状態のような準安定状態に一度エネルギーが保持され、その後電荷再結合により放出されるエネルギーが光として放出される現象をいう。有機ELでは、一重項状態(S1)と三重項状態(T1)の間での遷移は、本来禁制であるため、T1からの遷移は起こりにくく、T1状態での寿命は長い。このT1状態において、外部から熱を受け取ると、三重項状態のより高い振動準位にエネルギーが上がり、S1に遷移することが可能となる。このようにしてS1に遷移すると、その発光(蛍光)は、T1からスタートしたS1の発光であるため寿命が長く、遅延蛍光と呼ばれる。遅延蛍光を利用することで、内部量子効率が25%以上の蛍光発光型有機EL素子の実現が期待され、注目を集めている。

窒化ガリウム(GaN)パワー半導体
[よみがな] ちっかがりうむぱわーはんどうたい
[英訳] gallium nitride power semiconductor
窒化ガリウム(GaN)は、非常に硬く、機械的に安定したワイド・バンドギャップ半導体である。高い絶縁破壊強度、速いスイッチング速度、高い熱伝導率、低いオン抵抗によって、GaNに基づくパワー・デバイスは、シリコン・ベースのデバイスよりも非常に優れている。窒化ガリウム結晶は、サファイア、炭化ケイ素(SiC)、シリコン(Si)などのさまざまな基板上で成長させることができる。GaNは、半導体パワー・デバイスだけでなく、RF部品、発光ダイオード(LED)などに使われている。また、電力変換、RF、およびアナログなどの各アプリケーションにおいてシリコン半導体の置き換えとなる能力が実証されている。

チャージアップ
[よみがな] ちゃーじあっぷ
[英訳] charge up
チャージアップは、SEMあるいはESCAなどで絶縁体試料を測定している際、サンプルが帯電し適切な結果が得られなくなる現象のことである。SEMでは、サンプルに電子線を照射して発生する2次電子を観測している。したがって、サンプル表面からは常に電子が失われ続けるため、徐々に正に帯電する。ESCAでは、サンプルにX線を照射して発生する光電子を観測している。したがって、SEMの場合と同様に徐々にサンプルが正に帯電する。これにより仕事関数が大きくなるため、光電子の運動エネルギーが小さくなり、その結果、得られる結合エネルギーのスペクトルは高エネルギー側にシフトする。

チャイルド則
[よみがな] ちゃいるどそく
[英訳] Child's law
有機EL素子のような絶縁体薄膜に流れうる空間電荷制限電流(SCLC)Jは、次のチャイルド則によって表わされる。J=(9/8)εε0(μV2/L3) ここで、ε:薄膜の比誘電率、ε0:真空の誘電率、μ:キャリア移動度、V:印加電圧、L:薄膜の膜厚。

チャネル
[よみがな] ちゃねる
[英訳] channel
有機トランジスタのゲート電極に電圧(Vg)を印加すると、ソース電極から有機半導体層にキャリアが注入されるようになり、有機半導体層にキャリアが蓄積され、電流が流れる。このキャリアが蓄積された部分を「チャネル」と呼ぶ。

チャネル長
[よみがな] ちゃねるちょう
[英訳] channel length
ソース電極とドレイン電極間の距離。

チャネル幅
[よみがな] ちゃねるはば
[英訳] channel width
ソース電極/ドレイン電極の幅。

中間流
[よみがな] ちゅうかんりゅう
[英訳] transition flow
クヌッセン数 Kn(=λ/L,λ:平均自由行程,L:代表長さ)が 0.1〜10 の希薄流を中間流といい、すべり流(Kn<0.1)と自由分子流(Kn>10)の中間に位置する。

注入効率
[よみがな] ちゅうにゅうこうりつ
[英訳] injection efficiency
有機EL素子の界面の接触性能指標としてキャリア注入効率がある。キャリア注入効率ηは、η=Ji/Jb で定義できる、Ji:界面制限電流(界面特性に依存)、Jb:バルク制限電流(有機材料層の特性に依存)。オーミック接触ではη=1となる。このパラメーターは、単純に界面抵抗値の高低だけでオーミック接触が決まるのではなく、バルク抵抗との相対値で決まることを示している。

注入障壁
[よみがな] ちゅうにゅうしょうへき
[英訳] injection barrier
キャリア注入障壁を参照

注入制限
[よみがな] ちゅうにゅうせいげん
[英訳] injection limited
有機半導体デバイスにおいて、その性能、特に電流-電圧特性を決めるのは、有機層中のキャリア輸送もしくは電極から有機層へのキャリア注入である。有機層中のキャリア輸送によりデバイス特性が支配されることを空間電荷制限、電極から有機層へのキャリア注入、つまり電極と有機層との接触によりデバイス特性が支配されることを注入制限という。一般的に移動度の高い無機半導体においては、そのほとんどが注入制限電流の理論を用いて表現されるが、無機に比べ著しく移動度の低い有機 半導体においては空間電荷制限電流の影響を強く受けることが知られている。

超共役
[よみがな] ちょうきょうやく
[英訳] hyperconjugation
超共役とは、σ軌道(通常は炭素-水素結合)の電子が空間的に近い位置にあるπ軌道あるいは空のp軌道と相互作用する現象のことである。空間的に近い位置に2つのπ結合が存在する場合、それらを構成する軌道間の相互作用により、軌道のエネルギーや電子分布に変化が生じ、その結果、物質の物性などに変化が生じる。このように2つのπ結合が相互作用する現象は共役と呼ばれる。この共役の概念をσ結合とπ結合の間の相互作用にまで拡張したのが超共役の概念である。

超微細相互作用
[よみがな] ちょうびさいそうごさよう
[英訳] hyperfine interaction
原子内電子と原子核の間のクーロン力より高次な相互作用を一般に超微細相互作用と呼び、それが原因で起こるスペクトル線の分裂を超微細構造という。このような相互作用でもっとも重要なものは、電子のつくる磁場と原子核の磁気双極子モーメントとの相互作用である。超微細相互作用には、原子核スピンと電子スピンの向きが互いに反対の場合にスピンを反転させる作用がある。これにより、一重項状態と三重項状態の交換が起こる。有機ELでは、キャリア再結合の過程で、電子とホールを有したラジカル対が形成されるが、超微細相互作用によって、一重項ラジカル対と三重項ラジカル対の間でスピン交換が生じる場合、励起一重項状態の生成確率は、25%からずれてくる。

直接遷移
[よみがな] ちょくせつせんい
[英訳] direct bandgap
直接遷移とは、価電子帯の頂上Evと伝導帯の底Ecが一致する、すなわち、波数空間(k空間)において、EvとEcが等しい波数ベクトル点に存在している場合をいう。「垂直遷移」と呼ぶこともある。伝導帯に励起された電子は、エネルギー差であるバンドギャップEgを光子(フォトン)の形で放出して価電子帯に遷移し、正孔と再結合する。直接遷移型半導体としては、GaN、GaAs、InP、InAsなどの化合物半導体があり、これらは光の発生効率が高いため、半導体レーザをはじめとする発光素子に用いられる。

直接法
[よみがな] ちょくせつほう
[英訳] direct method
外部発光効率を測定する方法としては、素子から放出される全ての光エネルギーを直接測定して、入力電気エネルギーとの比を取る方法(直接法)とスポット輝度計を用いて求めた発光輝度から間接的に全発光エネルギーを求める方法(輝度換算法)とがある。直接法には、素子の発光面を完全に覆うような受光面を持ち、発光波長領域で正確な検定がなされた受光素子を用いて計測する方法や、積分球内で素子を発光させて計測する方法、あるいは化学光量計を用いる方法などがある。

TSO
[よみがな] てぃーえすおー
[英訳] Transmission System Operator(TSO)
TSOは送電管理・系統運用者のこと、DSOは配電系統の管理・運用者のこと。発電所で発電された電気は、50万V〜27.5万Vの超高圧送電線を通して超高圧変電所に送電され、以降各送電線によって変電所を経由して段階的に降圧しながら顧客に届けられる。送電は電圧が高いほど送電ロス(電線で消費する電力量)が減少するため、電力系統は可能な限り顧客の手前まで高い電圧を維持するという思想に基づいて設計されている。このうち、発電所から変電所までの基幹部分が送電系統、変電所から企業や住宅などに電力を届ける部分が配電系統であり、それぞれの運用機関をTSO、DSOという。

DSO
[よみがな] でぃーえすおー
[英訳] Distribution System Operator(DSO)
TSOは送電管理・系統運用者のこと、DSOは配電系統の管理・運用者のこと。発電所で発電された電気は、50万V〜27.5万Vの超高圧送電線を通して超高圧変電所に送電され、以降各送電線によって変電所を経由して段階的に降圧しながら顧客に届けられる。送電は電圧が高いほど送電ロス(電線で消費する電力量)が減少するため、電力系統は可能な限り顧客の手前まで高い電圧を維持するという思想に基づいて設計されている。このうち、発電所から変電所までの基幹部分が送電系統、変電所から企業や住宅などに電力を届ける部分が配電系統であり、それぞれの運用機関をTSO、DSOという。

TOPCon型太陽電池
[よみがな] てぃーおーぴーしーおんがたたいようでんち
[英訳] Tunnel Oxide Passivated Contact(TOPCon)
TOPCon型太陽電池はPERC型太陽電池の改良版として開発された。PERC型太陽電池は世界的に開発が進んでおり、飛躍的に効率向上が進んでいるが、開放電圧(Voc)の向上が限界に近づいてきた。Voc向上のためにはパッシベーション膜の改良が必要で、TOPCon技術が開発された。TOPCon太陽電池は半導体の裏面に極薄膜の酸化物不活性層を付加した太陽電池で、表面の接触をなくしトンネル効果によって正孔を電極に取り出す。正孔と電子の再結合が起きやすい電極−半導体間の接触を極限まで減らすことで、表面再結合損失を抑え、変換効率を向上させている。

定格出力
[よみがな] ていかくしゅつりょく
[英訳] rated power
太陽光発電の定格出力は、標準試験条件(STC: Standard Test Conditions)での測定値により決定される。

disorder(無秩序性)
[よみがな] でぃすおーだー
[英訳] disorder
アモルファス性の有機半導体は、アモルファス状態が持つ揺らぎ(分布)のため、その半導体特性は、結晶性半導体のようなバンド理論に則した特性とは異なるものと考えられている。その伝導性の記述のために、乱れ(disorder)というパラメーターを導入したモデルが提案されており、disorder modelと呼ばれている。disorderの中には、電荷のエネルギー的なdisorderと分子軌道の重なりなどの位置的なdisorderの2種類が考えられている。

ディスコティック液晶相
[よみがな] でぃすこてぃっくえきしょうそう
[英訳] discotic liquid crystal phase
ネマティック相、スメクティック相が主に棒状分子によって構成されるのに対し、ディスコティック相の形成にはディスク状の芳香族分子が用いられる。ディスク上の分子は積層して通常は一次元カラム(カラムナー相)を形成する。

デクスター機構
[よみがな] でくすたーきこう
[英訳] Dexter electron transfer
デクスター機構は、励起電子状態が、ある分子(ホスト)から別の分子(ゲスト)へ移動することによるエネルギー移動機構のことである。 これはドナーとアクセプターの間の波動関数の重なりが必要であるので、一般には15-20Aオーダーの近距離でのみ起こる。 励起状態は1段階もしくは2段階の電子移動によって交換される。三重項励起子は、一般にこの機構でエネルギー移動する。

テクスチャ構造
[よみがな] てくすちゃこうぞう
[英訳] texture structure
太陽電池における太陽光の反射損失低減の方法としてテクスチャ構造がある。テクスチャ構造とは、Si表面に(または裏面にも)凸凹を形成し、光の多重反射によって表面の反射損失を低減させ、さらに発電層では光を閉じ込める効果を持たせるためのものである。

デジタルフォトフレーム
[よみがな] でじたるふぉとふれーむ
[英訳] digital photo frame
デジタルフォトフレームとは、デジタル写真の表示に特化したディスプレイ。フォトプレーヤー、デジタル写真立てなどと呼ばれることもある。デジタルフォトフレームは、デジタルカメラや携帯電話などで撮影した画像データ(デジタル写真)を表示する専用の情報機器の一つで、基本的にはそれ単体で完結した製品ではあるが、内蔵された記憶装置(概ねフラッシュメモリ)かメモリカードなどに画像データを記録する必要があり、他の情報機器と連携して使用する。その多くは前面に液晶ディスプレイを具え、画像データを表示する。

デマンドレスポンス(DR)
[よみがな] でまんどれすぽんす
[英訳] Demand Response(DR)
デマンドレスポンス(DR)とは、需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させること。DRは、需要制御のパターンによって、需要を減らす(抑制する)「下げDR」、需要を増やす(創出する)「上げDR」の二つに区分される。

電圧誘起劣化(PID)
[よみがな] でんあつゆうきれっか
[英訳] Potential Induced Degradation(PID
電圧誘起劣化(PID)とは、産業用などの高電圧を発生させる太陽光発電システムで、太陽光発電モジュールとそれを支える金属フレームの間で漏れ電流が発生し、出力の低下を招く現象のことをいう。

転移エンタルピー
[よみがな] てんいえんたるぴー
[英訳] transition enthalpy
純物質には、固相、液相、気相の三相があり、圧力一定の場合、異なる相の間の転移(相転移)は、一定の温度で起こり、その温度を転移点という。相転移では、熱の出入りがあり、これを相転移に基づくエンタルピー変化、転移エンタルピーという。転移エンタルピーには、融解過程(固体が液体になる過程)のエンタルピー変化である融解エンタルピー、蒸発過程(液体が気体になる過程)のエンタルピー変化である蒸発エンタルピー、昇華過程(固体が気体になる過程)のエンタルピー変化である昇華エンタルピーがあり、それぞれの大小関係は、物質によらず、融解エンタルピー<蒸発エンタルピー<昇華エンタルピーとなっている。

電界効果トランジスタ(FET)
[よみがな] でんかいこうかとらんじすた
[英訳] Field Effect Transistor (FET)
電界効果トランジスタは、ゲート電極に電圧を加えることでチャネル領域に生じる電界によって電子または正孔の密度を制御し、ソース・ドレイン電極間の電流を制御するトランジスタである。

電解質
[よみがな] でんかいしつ
[英訳] electrolyte
電解質とは溶媒中に溶解した際に、陽イオンと陰イオンに電離する物質のことである。これに対し、溶媒中に溶解しても電離しない物質を非電解質という。一般に電解液は電気分解が起こる以上の電圧をかければ電気伝導性を示すが、電解液でないものは電気抵抗が大きい。電解質溶液は十分に高い電圧(一般に数ボルト程度)をかけると電気分解することが可能である。「電解質」という名称はこのことから付けられた。

電荷移動
[よみがな] でんかいどう
[英訳] charge transfer
2つの分子の間で起こる電子の移動のこと。例えば、ドナー分子からアクセプター分子に電子が1つ移動する場合、ドナー分子はラジカルカチオンに、アクセプター分子はラジカルアニオンになる。ラジカルカチオンは正孔とも呼ばれ、ラジカルアニオンは電子とも呼ばれ、それぞれ、荷電粒子として取り扱うこともある。また、電荷移動の結果生じるカチオン種とアニオン種の間に強い相互作用があり、その結果、お互いが安定化される場合は、電荷移動錯体として単離することも可能である。

電荷移動型励起子(CT励起子)
[よみがな] でんかいどうがたれいきし
[英訳] charge transfer exciton
電子と正孔がそれぞれ隣接する分子(アクセプター分子およびドナー分子)に分離した状態の励起子。有機半導体薄膜では、光励起によりフレンケル励起子が生成するが、ドナー/アクセプター界面や有機固体/金属界面などのキャリア分離を起こしやすい場所へ拡散することにより、電子・ホール対への解離が生じる。また、生成した電子・ホール対は近接する分子の電子・ホール対により束縛されるため、フレンケル励起子と比べて束縛は弱くなる。このような励起子を電荷移動型励起子という。

電荷移動錯体(CT錯体)
[よみがな] でんかいどうさくたい
[英訳] charge-transfer complex
電荷移動錯体(CT錯体)あるいは電子受容-供与錯体(Electron-donor-acceptor complex、EDA錯体)とは、電荷が分子間で移動できる2つ以上の異なる分子もしくは1つの巨大分子の異なる部分の会合体である。会合により分子が静電気的に引きつけられ、錯体が安定化される力が生まれる。電子を供与する分子は電子供与体、電子を受容する分子は電子受容体と呼ばれる。電荷移動錯体における静電気的な結合は安定なものではないため、共有結合よりずっと弱い。多くの錯体は励起状態で電荷移動遷移を引き起こす。これらの錯体は電子のエネルギーが変化する際に可視光領域の光と同じエネルギーを吸収するため、特有の色を持つ。この吸収帯は電荷移動吸収帯(CT帯)と呼ばれる。スペクトルを測ることで電荷移動吸収帯を決定できる。電荷移動錯体は無機分子や有機分子、固体や液体に溶液と様々な種類が存在する。有機半導体分野では、TTF-TCNQが有名である。この錯体は溶液中で生成し、結晶化も可能で、結晶はほぼ金属のような電気伝導性を示し、最初の有機伝導体として報告された。

電荷移動遷移
[よみがな] でんかいどうせんい
[英訳] Charge Transfer (CT) transition
電荷移動遷移(CT遷移)は、原子間での電子の移動を伴う遷移過程である。錯体化学などで用いられることの多い概念である。CT遷移は配位子から中心金属へ、あるいは中心金属から配位子へなど、異なる原子間での電子移動を伴う遷移過程をさす。配位子から中心金属への電子移動をLMCT (Ligand to Metal Charge Transfer) 遷移、逆のことをMLCT (Metal to Ligand Charge Transfer) 遷移という。LMCT遷移は配位子が電子豊富なもの、すなわちベンゼン環など不飽和結合を有する化合物を含む場合に起きやすい。CT遷移はラポルテ許容遷移のため吸光度は大きくなる。

電荷移動相互作用
[よみがな] でんかいどうそうごさよう
[英訳] charge transfer interaction
電荷移動とは、分子間で一部の電子が移動あるいは非局在化することであり、それに伴って生じる分子間相互作用を電荷移動相互作用という。 電荷移動相互作用は、一般にファンデルワールス力よりも近距離で作用する比較的強い相互作用である。 電子供与体(D)と電子受容体(A)が作る複合体を電荷移動錯体といい、その中では、電荷移動相互作用が働いている。

電荷移動度
[よみがな] でんかいどうど
[英訳] charge carrier mobility
キャリア移動度を参照。

電荷寿命
[よみがな] でんかじゅみょう
[英訳] carrier lifetime
有機薄膜太陽電池などにおいて、有機分子の光吸収による生成する励起状態を経て生じた正孔と電子は、再結合などの過程によって消滅するパスが存在する。生成した正孔と電子が消滅するまでの平均的な時間を電荷寿命と呼ぶ。

電荷生成
[よみがな] でんかせいせい
[英訳] charge generation
自由電荷が存在しない状態から電荷が生成することを指す。有機薄膜太陽電池の場合では、光照射によって生じた励起子が p 型有機半導体/n 型有機半導体界面で電子と正孔に分離するして電荷生成が起こる。生成した電子は n 型有機半導体を、正孔は p型有機半導体を移動し、集電極で回収される。

電荷生成効率
[よみがな] でんかせいせいこうりつ
[英訳] charge generation efficiency
太陽電池において、界面において一個の光子から電子が生成する効率。

電荷担体(電荷キャリア)
[よみがな] でんかたんたい
[英訳] charge carrier
電荷担体または電荷キャリアとは、電荷を運ぶ自由な粒子を指し、特に電気伝導体における電流を担う粒子を指す。例えば、電子やイオンがある。金属では、伝導電子が電荷担体となる。各原子の外側の1個または2個の価電子は金属の結晶構造の中を自由に移動できる。この自由電子の雲をフェルミ気体という。半導体では、電子と正孔(ホール)が電荷担体となる。正孔とは価電子帯の空席になっている部分を粒子のように移動するものと捉えた見方であり、正の電荷を担う。 不純物半導体では、不純物(ドーパント)をドープすることで、電子や正孔の濃度を増すことができる。ドーピングによって増やされた電荷キャリアを多数キャリアと呼び、相対的に減った電荷キャリアを少数キャリアと呼ぶ。具体的には、n型半導体中の電子とp型半導体中の正孔が多数キャリアとなり、n型半導体中の正孔、p型半導体中の電子が少数キャリアとなる。pn接合にみられる空乏層には電荷担体はほとんどない。

電荷注入
[よみがな] でんかちゅうにゅう
[英訳] charge injection
半導体や絶縁体に、電極からまたは光照射などにより、熱平衡以上に電荷(正孔 and/or 電子) を注入すること。

電荷注入効率(キャリア注入効率)
[よみがな] でんかちゅうにゅうこうりつ
[英訳] charge injection efficiency
電極から有機半導体への電荷注入効率(キャリア注入効率)は、その系で実測される電流量と、オーミック接触が達成された場合に流れる空間電荷制限電流(SCLC)の比と定義される(電荷注入効率=注入電流/SCLC)。

電荷注入障壁
[よみがな] でんかちゅうにゅうしょうへき
[英訳] charge injection barrier
キャリア注入障壁参照

電荷注入速度
[よみがな] でんかちゅうにゅうそくど
[英訳] charge injection rate
金属電極から半導体層へ電荷が注入される速度。電荷注入速度が界面近傍での有機相内の伝導速度よりも大きい場合は、界面近傍で電荷が蓄積されることになる。この蓄積された電荷は空間電荷層を形成し、界面から対極への伝導の他に、電荷注入電極への逆電流を生む。その結果、電流は電荷注入電極からではなく、あたかも空間電荷層から対極へ流れているとみなすことができ、空間電荷制限電流と呼ばれる。

電荷発生層
[よみがな] でんかはっせいそう
[英訳] charge generation layer(CGL)
スタック型有機EL素子を参照

電荷分離
[よみがな] でんかぶんり
[英訳] charge separation
光照射によって半導体中に生じた電子ー正孔対(励起状態)を自由な電子と正孔へと空間的に分離すること。光を電気に変換するためには、光励起で生じる電荷分離状態をいかに効率よくつくるかが重要である。

電荷分離界面
[よみがな] でんかぶんりかいめん
[英訳] charge separation interface
有機太陽電池の電子供与体と電子受容体の界面を電荷分離界面という。この界面で電荷分離・再結合が行われるため、界面の構造はデバイスの性能向上に非常に重要である。界面の接合には、PNヘテロ接合、バルクヘテロ接合、相互貫入型接合などがある。

電荷輸送
[よみがな] でんかゆそう
[英訳] charge transport
ある物質内を自由電荷(電子あるいは正孔)が輸送される現象を指す。有機分子からなるアモルファス、あるいは多結晶薄膜などの凝集体における伝導は、一般に、個々の分子が電荷の移動サイトとなり、分子から分子 へ電荷が移動するホッピング伝導で、分子を構成する芳香環を含むπ電子共役系に関わる分子軌道が伝導を担ってる。一般に、有機物においては、条件が整わない限り、無機半導体で見られるバンド伝導は起こらない。電荷移動の素過程は隣接する分子間の電荷移動(一電子酸化還元反応)と考えることができる。

電荷輸送効率
[よみがな] でんかゆそうこうりつ
[英訳] charge transport efficiency
太陽電池において、生成した電子が集電極に到達する確率。

電気化学
[よみがな] でんきかがく
[英訳] electrochemistry
電気化学は、物質間の電子の授受と、それに付随する諸現象を扱う化学の分野である。 物理化学、分析化学、化学工業などとの繋がりが深い。電気化学では、電解質溶液の性質・電極反応の速度、界面での電気化学的現象などを扱う。これらの現象は電気化学ポテンシャルを基礎として、相互に関与しあった複雑な理論体系を築いている。

電気化学発光セル
[よみがな] でんきかがくはっこうせる
[英訳] Light-Emitting Electrochemical Cell ( LEC)
発光電気化学セル(LEC)は発光材料と電解質(イオン液体等)からなる発光層を電極で挟む構造の発光デバイスであり、原理的に単層構造でも発光する有機系発光素子の一種である。印加された電圧によって電極付近で電気化学的な還元反応(陰極)および酸化反応(正極)がおこり、ラジカルアニオンとラジカルカチオンが生成されることで電気二重層が形成される。そして異極性のイオンが発光層上で衝突して励起状態の中性分子を生成し、励起状態から基底状態への失活で発光が起きる。このとき、電気二重層によって生じた界面電場により電気抵抗が減少し、また、イオン性液体を発光層へ加えることによってイオン伝導性を高めることができる。発光性材料に電解質を添加することで正極と負極の間を発光層のみの単層とすることが可能であり、作製の簡便さや、厚膜化が可能などの特長がある。

電気双極子
[よみがな] でんきそうきょくし
[英訳] electric dipole
電気双極子とは、大きさの等しい正負の電荷が無限小の間隔で対となって存在する状態のことである。電気双極子の物理的な実体としては、電子と原子核の束縛状態である原子や、原子同士の束縛状態である分子が挙げられる。 例えば水の分子では、酸素原子が電子を引き付けており、分子形状も曲がっているため、酸素原子が負、水素原子が正に偏った電気双極子とみなすことができる。このような電場がかかっていない状態でも分子がもつ電気双極子は永久双極子と呼ばれる。 また原子や分子に外部電場をかけることで、電荷の偏りが生じて分極する。このときの電気双極子を誘起双極子という。

電気素量
[よみがな] でんきそりょう
[英訳] elementary charge
電気素量は、電気量の単位となる物理定数であり、約1.6x10-19クーロンである。陽子あるいは陽電子1個の電荷に等しく、電子の電荷の符号を変えた量に等しい。素電荷、電荷素量とも呼ばれる。一般に記号 e で表される。 原子核物理学や化学では粒子の電荷を表すために用いられる。

電気抵抗率(抵抗率、比抵抗)
[よみがな] でんきていこうりつ
[英訳] electrical resistivity
電気抵抗率は、どんな材料が電気を通しにくいかを比較するために、用いられる物性値である。単に、抵抗率、比抵抗とも呼ばれる。単位は(Ω・m)である。慣例的に Ω・cm もよく使われる。電気抵抗Rの値は、電気抵抗率をρ、導体の長さをL、導体の断面積をAとすると、R=ρL/Aで示される。すなわち、ρ=RA/Lである。電気抵抗率ρの逆数1/ρを電気伝導率(導電率)と呼ぶ。

電気伝導率(電気伝導度、導電率)
[よみがな] でんきでんどうりつ
[英訳] electrical conductivity
電気伝導率とは、物質中における電気伝導のしやすさを表す物性量である。導電率や電気伝導度とも呼ばれる。理学系では電気伝導率、工学系では導電率と呼ばれる傾向がある。長さL、断面積Aの一様な導体の底面間における抵抗Rは、R=ρL/Aである。これは長さや断面積に依存しない。このときの比例係数ρを抵抗率あるいは比抵抗といい(含まれている不純物や温度によって変化する)、その逆数を電気伝導率という。式で表すと電気伝導率σは、σ=1/ρである。

電気二重層
[よみがな] でんきにじゅうそう
[英訳] Electrical Double Layer (EDL)
電気二重層は、流体(荷電粒子が比較的自由に動ける系)中の物体の界面に電位が与えられたときに形成される2層の構造である。一般に、仕事関数の違いや帯電の影響によって、2つの異なる物質が接する界面には電位差が生じる。そのため、どちらかの物質中で荷電粒子が移動可能であれば、界面には必ず電気二重層が形成される。具体的には、電気分解を行う際の電解液と電極の界面、コロイド粒子と分散媒の界面、半導体のpn接合面などについて考えられることが多い。他にも気泡、液滴、多孔質体などの表面に生じる。電気二重層は、正電荷の表面に固定吸着された陰イオン(または負電荷に吸着した陽イオン)からなる非常に薄い層と、静電引力の中で拡散しつつ濃度分布が生じる層(拡散層)の2つの層で構成される。

点光源
[よみがな] てんこうげん
[英訳] point light source
発光部の大きさが受光部までの距離に比べて小さく、点とみなせる光源。

電子
[よみがな] でんし
[英訳] electron
電子は素粒子のひとつであり、電子素量の負の電荷(-1.6x10-19クーロン)と質量9.1x10-31 kg (陽子の2000/1程度)を持つ。スピン数は1/2と-1/2を取りうる。有機半導体において、電荷(正孔・電子ともに)の移動を担っている。有機半導体の光吸収・発光・電荷分離・電荷輸送などの特性に関わりが大きいのは、最高占有軌道(HOMO)や最低非占有軌道(LUMO)の電子である。

電子移動層
[よみがな] でんしいどうそう
[英訳] electron transfer layer
電子輸送層参照

電子移動速度
[よみがな] でんしいどうそくど
[英訳] electronic transfer rate
電子移動度を参照

電子移動度(キャリア移動度)
[よみがな] でんしいどうど
[英訳] electron mobility
電子移動度とは、固体の物質中での電子の移動のしやすさを示す量であり、キャリアの移動のしやすさを示す。半導体の場合、キャリアとは、電子および正孔のことである。移動度の定義としては、 物質に電場E をかけたとき、電場によって電子(もしくは正孔)が平均速度v で移動したとき、次式で定義される v=μE (μ: 移動度)。

電子移動反応速度
[よみがな] でんしいどうはんのうそくど
[英訳] electron transfer kinetics
マーカス理論参照

電子雲
[よみがな] でんしうん
[英訳] electron cloud
電子雲とは、原子に束縛された電子の状態を雲に例えた呼び方のこと。原子を理解する際のモデルについて、旧来のラザフォード模型では、電子は太陽のまわりを公転する惑星のように、原子核のまわりを廻っているとされた。しかし、その後の研究で、電子には不確定性があり、電子は粒や点のようなものではなく「雲のようにぼんやりと存在する」ことが明らかとなった。すなわち、電子の存在は、確率密度関数で表される空間的な広がりがある。このような電子の有り様を電子雲と呼ぶ。

電子エネルギー準位
[よみがな] でんしえねるぎーじゅんい
[英訳] electronic [electron] energy level
電子はとびとびのエネルギーしかとれず、このとびとびのエネルギーの状態を、エネルギー準位という。エネルギー準位がn=1の状態を基底状態とよぶ。異なるエネルギー準位へ状態が変化することを遷移という。電子が低いエネルギー準位から高いエネルギー準位に遷移した状態を励起状態と呼ぶ。

電子軌道
[よみがな] でんしきどう
[英訳] electron orbital
原子軌道を参照

電子求引性基
[よみがな] でんしきゅういんせいき
[英訳] electron-withdrawing group
水素原子と比較して、結合している原子側から電子を引きつけやすい置換基をいう。誘起効果やメソメリー効果(または共鳴効果)などの置換基効果の結果、電子を引きつけることを意味する。-F、-CF3、-NO2、-CN、-C=NR、-COR、-COOR、-SO3R (Rは水素あるいはアルキル基)などがある。有機半導体の分子構造にこのような置換基が導入されると、導入されていないものよりも電子を受け入れやすくなり、電子アクセプターが増加する。

電子供与体
[よみがな] でんしきょうよたい
[英訳] electron donor
電荷移動において、電子を供与する分子を電子供与体(ドナー分子D)、電子を受容する分子を電子受容体(アクセプター分子A)と呼ぶ。すなわち、D→D++eとなり、A+e→A−となる。

電子供与性基
[よみがな] でんしきょうよせいき
[英訳] electron-donating group
水素原子と比較して、結合している原子側に電子を与えやすい置換基をいう。誘起効果やメソメリー効果(または共鳴効果)などの総和として、電子を与えやすいことを意味する。-R、-OR、-SR、-OCOR、-NR2(Rは水素あるいはアルキル基)などである。有機半導体に電子供与性基が導入されると、導入されていないものよりも電子を与えやすくなり、電子ドナー性が増加する。

電子受容-供与錯体(EDA錯体)
[よみがな] でんしじゅようきょうよさくたい
[英訳] electron-donor-acceptor complex
電荷移動錯体(CT錯体)参照

電子受容体
[よみがな] でんしじゅようたい
[英訳] electron acceptor
電荷移動において、電子を供与する分子を電子供与体(ドナー分子D)、電子を受容する分子を電子受容体(アクセプター分子A)と呼ぶ。すなわち、D→D++eとなり、A+e→A−となる。

電子親和力
[よみがな] でんししんわりょく
[英訳] Electron Affinity (EA)
電子親和力は、原子、分子(場合により、固体や表面も対象となる)に1つ電子を与えた時に放出または吸収されるエネルギー。放出の場合は正、吸収の場合は負と定義する。電子親和力が負であることは、陰イオンになり難いことを意味する。電気的に中性になる原子、分子の電子親和力は、それらが一価の負のイオンとなっている状態のイオン化エネルギー(イオン化ポテンシャル、電離エネルギーとも言う)と等しい。また、一価の正のイオンとなっているある原子、分子の電子親和力は、それらが中性の原子、分子のイオン化エネルギーと等しい。中性の原子、分子の電子親和力と中性の原子、分子のイオン化エネルギーは等しくない(この場合、通常イオン化エネルギーの方が値として大きい)。電子親和力は金属では仕事関数と一致するが、半導体の場合は、電子親和力は伝導帯の底から真空準位までのエネルギー差として定義されるため、フェルミ準位から真空準位までのエネルギー差として定義される仕事関数とは異なる値になる。有機固体では、LUMOと真空準位のエネルギー差が電子親和力と呼ばれる。

電子スピン共鳴(EPR、ESR)
[よみがな] でんしすぴんきょうめい
[英訳] Electron Paramagnetic Resonance(EPR)/ Electron Spin Resonance( ESR)
電子スピン共鳴(EPR、ESR)は不対電子を検出する分光法の一種。遷移金属イオンや有機化合物中のフリーラジカルの検出に用いられる。磁場に置かれた試料中の不対電子は、ある特定のエネルギー(周波数)を持つマイクロ波を共鳴吸収し、高いエネルギー準位へと遷移する。この現象を利用して不対電子の検出を行うのが電子スピン共鳴であり、不対電子の量、種類、性質、周囲の環境、挙動などについての情報が得られる。試料の形状 (液体、気体、固体) に影響されない、非破壊で選択的にフリ−ラジカルを測定できる唯一の手段であり、理学系・医薬学系、農工学系の基礎研究の分野で活用されている。不対電子の検出法としては非常に有効であるが、たいていの安定な有機化合物は閉殻構造をとっており、不対電子を持たないため、核磁気共鳴 (NMR) に比べると適用範囲が狭い。

電子スピン共鳴スペクトル(ESRスペクトル)
[よみがな] でんしすぴんきょうめいすぺくとる
[英訳] ESR spectrum
電子スピン共鳴(ESR、EPR)において、試料に加える磁場の強さの変化に対して、マイクロ波の吸収強度の変化を表したもの。

電子遷移
[よみがな] でんしせんい
[英訳] electronic transition
分子電子遷移は、分子中の電子があるエネルギー準位からより高いエネルギー準位へ励起した時に起こる。この遷移に関連するエネルギー変化は、分子の構造に関する情報から与えられ、色といった多くの分子の性質を決定する。有機化合物およびその他の一部の化合物における電子遷移は紫外・可視分光法によって決定することができる。この分光法からは、化合物に存在する電磁スペクトルの紫外あるいは可視領域における遷移が得られる。σ結合のHOMOを占有する電子はσ結合のLUMOに励起することができ、σ → σ*遷移と表わされる。同様に、π結合性軌道から反結合性π*軌道への電子遷移はπ → π*遷移と表わされる。nで示される自由電子対を持つ助色団は、芳香族性π結合遷移と同じように独自の遷移を持つ。こういった検出可能な電子遷移を経ることができる分子の部分は、遷移が電磁放射(光)を吸収し、これが電磁スペクトルのどこかで色として知覚されうるため、発色団と呼ばれる。次の分子電子遷移が存在する。σ → σ*、π → π*、n → σ*、n → π*、芳香族性π → 芳香族性π*。

電子相関
[よみがな] でんしそうかん
[英訳] electron correlation
電子が持つ電荷(マイナス)に由来する電子と電子の間に働くクーロン反発力のこと。電子の密度が低い場合(通常の半導体や金属)には、この影響は無視できるが、電子の密度が高くなると、電子はお互いに避け合いながら運動するようになる。このような状態を電子相関が働いているという。

電子タグ
[よみがな] でんしたぐ
[英訳] electronic tag
電子タグ(ICタグ、RFタグ、無線タグなどの呼び方もある)は、無線電波を利用して非接触でICチップの中のデータを読み書きするRFID(Radio Frequency Identification)技術を利用したもので、「モノ」の識別に使われる。これまでバーコードだけでは実現できなかったような高度な管理や業務の効率化を実現するツールとして注目が集まってる。電子タグは、データを格納するICチップと小型のアンテナで構成され、ICチップには、識別番号や用途に応じて様々な情報が書き込まれる。通常、電子タグは電源を持たず、リーダ・ライタが発する無線電波をアンテナで受けることによって通信が可能になり、ICチップのデータの読み書きが行われる。

電子注入
[よみがな] でんしちゅうにゅう
[英訳] electron injection
電子を有機半導体に注入すること。電極からの注入や、別の有機半導体から特定の有機半導体への電子の注入を指す。

電子注入材料
[よみがな] でんしちゅうにゅうざいりょう
[英訳] electron injection material
有機EL素子などにおいて、陰極から電子輸送層への電子注入を促進するために用いられる材料のこと。

電子注入障壁
[よみがな] でんしちゅうにゅうしょうへき
[英訳] electron injection barrier
キャリア注入障壁参照

電子注入層(バッファ層)
[よみがな] でんしちゅうにゅうそう
[英訳] electron injection layer
電子注入層は陰極と電子輸送層の間にあって、陰極と電子輸送層の間の電位障壁を下げ、陰極から電子輸送層への電子注入効率を改善させる役割を担う。

電子ブロック層
[よみがな] でんしぶろっくそう
[英訳] electron blocking layer
電子の移動をブロックする層。有機EL素子において、ホールが陰極から陽極に貫通してしまうと、電子は発光に寄与しないため、量子効率を下げる結果となる。これを防ぐために、発光層の界面において電子が抜け出ないようにブロックすることができれば、ホールの陰極への流出が防がれ、電子と再結合して発光に寄与する確率を上げることができる。

電子分極
[よみがな] でんしぶんきょく
[英訳] electronic polarization
電界の作用を受けて、原子・分子内の電子の分布が変化することで生じる誘電分極。特に価電子の移動によるものを指す。ベンゼン結晶では、ベンゼン分子に正孔を注入すると周囲のベンゼン分子中の電子が接近し、電子を注入すると遠ざかる(電子分極)。有機半導体においては、電荷担体が一分子中に滞在する時間は電子分極に要する時間より長く、常に電子分極を伴う。これに対し、無機半導体では、電荷担体の一つの格子点での滞在時間は短く、この間にいかなる分極も引き起こさず、周囲の電子も原子も止まったままとみなすことができる(剛体モデル)。

電子密度
[よみがな] でんしみつど
[英訳] electron density
バンド理論を用いると、電子密度は伝導帯での体積当たりの電子の個数であり、正孔密度は価電子帯での体積当たりの正孔の個数である。キャリア密度は半導体で重要であり、ドーピング過程で重要な量である。

電子輸送
[よみがな] でんしゆそう
[英訳] electron transport
半導体の中で電子が輸送されること。有機半導体の多くは、ラジカルアニオン種(電子)と中性分子との間のホッピング伝導として記載され、分子間の電子のやりとりは一電子酸化還元反応と捉えることもできる。

電子輸送材料
[よみがな] でんしゆそうざいりょう
[英訳] electron transporting material
電子を輸送する性質がある材料のことを指す。電子(negative charge)を受け入れて、運ぶ性質から、n型材料と呼ばれることもあり、また電子を受け取ってラジカルアニオンを形成しやすいことからアクセプター材料と呼ばれることもある。

電子輸送層(ETL)
[よみがな] でんしゆそうそう
[英訳] electron transporting layer
多層型有機EL素子において、電子を輸送する役割を担う層。電子輸送は、有機分子の観点からは、電子輸送層を構成する分子が還元されてラジカルアニオンを形成し移動する過程といえる。有機薄膜太陽電池において、電子輸送層は光活性層で発生した電子をアノード側へ抽出し、正孔の流入をブロックする役割を持つ。

伝導準位
[よみがな] でんどうじゅんい
[英訳] conduction level
固体中で電子の入っていない準位。空準位とも呼ぶ。負の電荷を担う電子の通り道。

導電性
[よみがな] どうでんせい
[英訳] conductivity
電流が流れやすい性質、電気伝導を生じやすい性質を指す。電気伝導の担い手は電子あるいは正孔である。有機半導体においては、ある種の電荷移動錯体のようにバンド伝導(非局在的な伝導)となる場合と、局所サイトを電荷がホッピングしながら伝導するホッピング伝導とに分けられる。また、電界が印加されていない場合においては、電子や正孔密度が極めて低く絶縁的な挙動を示すが、電界を印加して適切な注入準位から電荷を注入すれば高い伝導性を示す有機半導体も多い。

伝導帯
[よみがな] でんどうたい
[英訳] conduction band
伝導帯は、バンドギャップのある系において、バンドギャップの直上にある空のバンドのこと。フェルミレベルよりも高いエネルギーにあり電気伝導に寄与する。

伝導電子
[よみがな] でんどうでんし
[英訳] conduction electron
伝導電子とは、物質(主に金属)において、電気伝導を担う電子のことを指す。半導体においては、伝導帯にある電子のことも伝導電子と呼ぶ(半導体において単に「電子」と言う場合、多くは伝導電子の意味になる)。価電子帯に存在する電子は、絶対温度とボルツマン定数の積に値するエネルギーを受け、このエネルギーがバンドギャップより大きい場合、価電子帯上端付近の電子が伝導帯へと励起され、この電子が伝導電子として振舞うことになる。金属においては、フェルミ準位が伝導帯内に存在するため、この熱的励起のエネルギーが非常に小さくともフェルミ準位以上のエネルギー帯域に電子が存在することになる。強く束縛を受けない伝導電子を自由電子と呼ぶ。

伝導電流
[よみがな] でんどうでんりゅう
[英訳] conduction current
導体の中を電流の担い手が移動することによって生ずる電流を伝導電流という。ふつう電流という場合はこれを指す。金属やn型半導体では電流の担い手(キャリア)は電子であり,p型半導体では正孔である。伝導電流の値はキャリア密度とキャリア移動度の積に比例する(オーム則)。

電流効率(視感効率)
[よみがな] でんりゅうこうりつ
[英訳] current efficiency
電流効率(視感効率)は正面輝度の電流密度に対する比である(cd/A)。比視感度を含むため同じ発光波長の素子間でしか比較できないが、電圧を含まないため発光材料自体の特性の評価や、一般に駆動電圧に深く関係する電極材料や積層構造の最適化を、電圧の影響を除いて考えることができる。

電流密度
[よみがな] でんりゅうみつど
[英訳] current density
電流密度は、単位面積に垂直な方向に単位時間に流れる電気量のことであり、電気量についての流束である。 単位は一般には A/m2 であるが、有機半導体の分野では慣用的にmA/cm2を用いることも多い。

電流励起
[よみがな] でんりゅうれいき
[英訳] current excitation
外部から有機分子にエネルギーを供給し、励起状態の有機分子を形成させるために、外部エネルギーとして紫外線などの光を用いる手法を光励起と呼び、外部エネルギーとして電流を用いる手法を電流励起と呼ぶ。有機ELなど、電流励起の場合は、スピン統計則に従い、励起一重項状態(S1)と励起三重項状態(T1)が1:3の割合で生成する。

電力系統
[よみがな] でんりょくけいとう
[英訳] power system
電力系統とは、電力を需要家の受電設備に供給するための、発電・変電・送電・配電を統合したシステムである。

電力購入契約(PPA)
[よみがな] でんりょくこうにゅうけいやく
[英訳] Power Purchase Agreement(PPA)
第三者所有モデル(TPOモデル)を参照

電力効率
[よみがな] でんりょくこうりつ
[英訳] power efficiency
電力効率は全出力光束の投入電力に対する比である(lm/W)。ディスプレイや光源の評価に用いられる。しかし、ランバシアンの仮定と比視感度の両方が入っていることに注意が必要である。

導電性高分子(導電性ポリマー)
[よみがな] どうでんせいこうぶんし
[英訳] conductive polymer
導電性高分子または、導電性ポリマーとは、電気伝導性の高い高分子化合物の呼称である。代表的な物質としてはポリアセチレン、ポリチオフェン類などが挙げられる。性質は導体というより半導体であり、高分子半導体などと呼ぶ場合もある。

導電率
[よみがな] どうでんりつ
[英訳] conductivity
物質中における電気伝導のしやすさを表す物性量である。単位はS/mである。

等方性
[よみがな] とうほうせい
[英訳] isotropy
物理的性質が方向によって違わないことをいう。異方性に対する語。気体、液体、アモルファスなどの無定形固体は多くの場合に等方的である。結晶の場合も、対称性の高い立方晶系では多くの物理量が等方性を示す。

透明OLED
[よみがな] とうめいおーえるいーでい
[英訳] transparent OLED
陽極・陰極ともに透明電極を用いるOLEDのことを指す。例えば、ディスプレイを透明OLEDとした場合、観察者は、ディスプレイに表示される画像とともに、ディスプレイの背後にある物体を見ることもできる(シースルー性)。透明OLEDディスプレイを例えばショーウィンドウに用いた場合、商品の現物とともに商品の説明をディスプレイに表示させることができる。

透明電極
[よみがな] とうめいでんきょく
[英訳] transparent electrode
透明電極とは電子機器に使用される電極であり、高い透明性と高い伝導性を併せ持つ特徴を有する。液晶ディスプレイや有機EL、タッチパネル、有機太陽電池などの電子表示装置に使用される。 いずれも化合物半導体の一種で従来は酸化インジウムスズが使用されてきたが、資源の高騰により、近年では代替素材の開発が進められ、酸化亜鉛、酸化スズ等が開発されつつある。他にポリアニリンやグラフェン等の有機材料の開発も進められている。

透明電極基板
[よみがな] とうめいでんきょくきばん
[英訳] transparent electrode substrate
透明電極が形成された基板のこと。一般的には、透明性と平滑性、低い線膨張係数の観点から、ホウ珪酸ガラスを基板に用いることが多い。有機EL の実験に用いるITO(Indium-Tin Oxide)透明電極基板は、面抵抗10~100Ω/ □のガラス基材品が比較的入手しやすく、初期特性評価などに用いられている。

透明導電性(TCO)基板
[よみがな] とうめいどうでんせいきばん
[英訳] Transparent Conducting Oxide(TCO)coated substrate
高い透過率を示すIndium Tin Oxideなどの透明導電膜をコートしたガラスや樹脂基板を指す用語。

透明導電膜
[よみがな] とうめいどうでんまく
[英訳] transparent conductive film
透明導電膜とは、金属材料と同じように導電性を持ちながら、可視光を透過する性質を持つ材料で形成された薄膜。光を通すので外観上は透明であって、普通に見ても目視することはできない。電気を通す性質も持つことから、ガラスやフィルム上に透明導電膜を形成することで、見た目は透明でありながら導電性を付加することが出来る。この性質を利用して、スマートホンのディスプレイや、タッチパネル、電子ペーパーの画面、太陽電池の電極など、幅広い用途に用いられている。透明導電膜には様々な素材が使用されているが、代表的なものに、酸化インジウムに酸化スズを添加したITO(酸化インジウムスズ)がある

ドーパント
[よみがな] どーぱんと
[英訳] dopant
ドーパントとは、半導体にドーピング(混合)される不純物のことを指す。有機半導体層内に電子あるいは正孔を生じさせるために混合するn-ドーパントやp-ドーパントの他、発光中心として有機層内に混合するなど、目的に応じてドーパントの種類も変わる。

ドーピング
[よみがな] どーぴんぐ
[英訳] doping
ホスト材料中にゲスト材料を添加すること。ドープされた分子は、ドーパントやゲストと呼ばれる。ドーパントは発光中心や、電荷発生、素子の長寿命化などの役割を果たし、素子の性能向上に寄与する。一般的なドーピングでは、ホスト分子で生成した励起子からゲスト分子へのエネルギー移動を利用して発光効率の向上を図られている。また、発光層では、ホスト分子中でゲスト分子が直接キャリアをトラップし、そのトラップサイトがキャリア再結合中心の役割を担うため、キャリア再結合効率の向上にも寄与することが示唆されている。

独立型太陽光発電
[よみがな] どくりつがたたいようこうはつでん
[英訳] stand-alone photovoltaics / stand-alone PV
太陽光発電のシステムは独立型と系統連系型に分けられる。大まかな分類では、電力会社の電気系統とつながっていないシステムが独立型、つながっているシステムが系統連系型である。独立型の太陽光発電とは、発電した電力をすべて自家消費する仕組みのことで、電力設備が電力会社のものから独立している。太陽光発電は、電力を全て自家消費する場合、電力消費量よりも発電量の方が多くなってしまうことがある。そのため、独立型の太陽光発電では余剰となった電力を蓄えるための蓄電池が必要となる。蓄電池の利用により、発電量の多い昼間に電気を蓄え、発電ができない夜に蓄えた電気を使用することで電力の自家消費が可能となる。そのほかに必要な機器として、日照の強さによって発電量が変化する太陽光発電において、バッテリーへの充電や放電を自動的にコントロールするチャージコントローラーと、太陽光で発電された直流電力を家電製品で使える交流に変換するためのインバーターがある。

突発的故障
[よみがな] とっぱつてきこしょう
[英訳] sudden failure
有機EL素子における突発的故障には、陰極と陽極間の電気的ショートにより、発光面全体が同時に突如発光しなくなる現象がある。基板表面に、パーティクルなどの異物が存在する場合や、ITOなどの陽極において、クラックが生じる場合などが要因としてあげられる。

トップエミッション構造
[よみがな] とっぷえみっしょんこうぞう
[英訳] top emission structure
有機ELパネルのデバイス構造の一種で、ボトムエミッションが基板を通過して有機EL素子の光を取り出すのに対して、トップエミッションは基板を通過せず、有機EL素子の光を基板表面側に取り出す構造である。この構造はTFTアレイ上に有機EL素子を形成後、発光層の上に透明電極を成膜する。TFTの数やレイアウトによらず高い開口率(画素面積に対する発光面積の割合)を保てるため高精細化に有利である。

トップゲート型
[よみがな] とっぷげーとがた
[英訳] top gate type
有機トランジスタの代表的な構造の一つで、支持基板上に先に有機半導体層を成膜し、その“上(トップ)”にゲート絶縁膜、ゲート電極を配する構造は「トップゲート型」と呼ばれる。

トップコンタクト型
[よみがな] とっぷこんたくとがた
[英訳] top contact type
有機トランジスタの代表的な構造の一つで、有機半導体層の上面にソース/ ドレイン電極を配する構造を「トップコンタクト型」と呼ぶ。

トップダウン加工
[よみがな] とっぷだうんかこう
[英訳] top-down processing
トップダウン加工とは、大きな材料を微細な構造に加工していく方式である。トップダウン方式はおもに、構造体を転写するリソグラフィ、「液体を用いた化学反応によるウェットエッチング」や「プラズマやイオンなどによって形状加工するドライエッチング」を用いて加工することである。

ドナー
[よみがな] どなー
[英訳] donor
シリコン半導体においては、半導体を構成する母体元素の原子価よりも大きい原子価をもつ不純物元素をいう。たとえば、シリコン( 14族半導体)に、15族元素であるリン、ヒ素、アンチモンなどを不純物として添加すると、これらの不純物元素の5個の最外殻電子のうち4個は母体元素との共有結合にあずかり、残りの1個は結合に関与せず、低温では不純物元素に比較的弱い力で束縛されている。温度が上昇すると、この電子は束縛状態から解放され、伝導帯で自由電子となる。このように伝導帯に自由電子を供給 (donate) するような不純物をドナー (または供与体) と呼ぶ。ドナー不純物は禁制帯の中にドナー準位を形成し、伝導帯に電子を供給するので、その半導体はn型伝導を示す。一方、有機半導体の分野においては、電子を与えやすい分子のことを一般にドナーと呼ぶ。たとえば、トリフェニルアミン類やチオフェン系の化合物は、HOMOのエネルギー準位が浅く、電子を別分子に放出しやすい。

ドナー・アクセプター型ポリマー
[よみがな] どなーあくせぷたーがたぽりまー
[英訳] donor acceptor type polymer
高分子において、電子を与えやすいドナー性のモノマーと電子を受け取りやすいアクセプター性のモノマーの両方の部位を有する高分子をドナー・アクセプター型ポリマーと呼ぶ。その特徴としては、ドナーとしての性質とアクセプターとしての性質の両方の特性を併せ持つ両極性の高分子であることや、長波長の光吸収を示すことが多いことで特徴づけられる。太陽電池の光吸収層に用いる高分子の基本設計となっている。

ドナー準位
[よみがな] どなーじゅんい
[英訳] donor level
電子ドナーを半導体に混合させたときに出現するエネルギー準位を指す。シリコン半導体においては、4価の元素半導体シリコン(Si)に不純物として5価の元素ヒ素(As)を微量添加すると、Siとの共有結合から余ったAsの5番目の電子は、As陽イオンによる遮蔽されたクーロンポテンシャルによって束縛され、As陽イオンの周辺に存在する。このAs陽イオンに束縛された弱い結合の電子は、少しの熱エネルギーでSiの伝導帯に移り、キャリアーとなる。Asは電子を供給するのでドナーと呼ばれ、そのエネルギー準位(電子の束縛準位)がドナー準位である。ドナー準位は伝導帯のすぐ下に存在し、0.049eV程度の小さい値である。この場合は、電子がキャリア―となりn形半導体になる。一方、有機半導体の分野でドナー準位というと、電子ドナー性の分子を混合あるいは接合させた場合に、その分子のHOMO準位で代表させることが多い。

ドライビングTFT
[よみがな] どらいびんぐTFT
[英訳] Driving TFT
アクティブマトリクス型の有機ELディスプレイにおいて、有機EL画素の発光輝度(電流値)を制御するためには、最低2つのトランジスタが必要であり、その2つのトランジスタは役割によってスイッチングトランジスタとドライビングトランジスタと呼ばれる。ドライビングトランジスタは、一定の電流を有機EL素子に流す機能を果たす。ちなみに、電流を流す電力源としてキャパシタも必要であり、1ピクセルあたりの最低の回路構成は2トランジスタ、1キャパシタである。

トラップ
[よみがな] とらっぷ
[英訳] trap
キャリアトラップを参照

トラップ準位
[よみがな] とらっぷじゅんい
[英訳] trap level
トラップ深さ(深い準位)参照 (半導体における深い準位をトラップと呼ぶ)

トラップ深さ(深い準位)
[よみがな] とらっぷふかさ
[英訳] trap depth
半導体における深い準位とは、不純物などの欠陥がバンドギャップ中に作るエネルギー準位で、特に伝導帯や価電子帯からエネルギー的に離れているものを指す。深い準位を占有した電子(または正孔)が伝導帯(または価電子帯)へ遷移するために必要なエネルギーは、熱エネルギー kTよりも遥かに大きい。そのため、大きな光エネルギーや熱エネルギーを与えない限り、電子(または正孔)は深い準位から抜け出せない。このことを深い準位にトラップされたと言う。伝導帯の電子と価電子帯の正孔は、深い準位を中間状態として再結合することができる。 その結果、電荷キャリアの非輻射寿命を短くし、Shockley?Read?Hall 過程を通して少数キャリアの再結合を加速させるため、半導体デバイス性能に悪影響を与える。 たとえばドーピングによって電子または正孔が与えられても深い準位による再結合で消滅してしまう。つまり深い準位はドーピングを阻害する。 また深い準位はトランジスタ、発光ダイオードなどのデバイスや光エレクトロニクスデバイスの動作も阻害する。

トランスファー積分
[よみがな] とらんすふぁーせきぶん
[英訳] transfer integral
トランスファー積分は、分子軌道間の相互作用を表すパラメータである。有機固体の伝導性は、移動度に応じてバンドモデルとホッピングモデルが適用 されるが、どちらの伝導モデルでも重要なパラメータである。 通常の強結合近似ではトランスファー積分を 2 分子の計算などから求めて、そこからバンド構造を計算する。

トランスファーバンドギャップ
[よみがな] とらんすふぁーばんどぎゃぷ
[英訳] transfer bandgap
基底状態と、自由なホール(カチオンラジカル)と電子(アニオンラジカル)に分離した状態とのエネルギー差をあらわす。

ドリフト移動度
[よみがな] どりふといどうど
[英訳] drift mobility
半導体中において、電界のみが印加されたときに生じるキャリア移動の指標であり、ドリフト電流(→キャリアドリフト)に対してもとめられる移動度。キャリアは電界によって加速されるが、トラップに捕捉されたり不純物原子などに衝突を繰り返すことによってドリフト速度とよばれる平均速度になる。このドリフト速度は電界に比例し、この比例定数をドリフト移動度とよぶ。

ドリフト電流
[よみがな] どりふとでんりゅう
[英訳] drift current
物性物理学や電気化学においてドリフト電流とは、電場が与えられたことで生じる電流または電荷キャリアの移動のこと。半導体材料に電場が与えられると、電荷キャリアの流れにより電流が生じる。 ドリフト電流中の電荷キャリアの平均速度はドリフト速度と呼ばれる。ドリフト速度とドリフト電流は移動度により特徴づけられる。 ドリフト電流、拡散電流、キャリア生成と再結合は、ドリフト-拡散方程式によって関連付けられる。

ドルーデ(Drude)モデル
[よみがな] どるーでもでる
[英訳] Drude model
ドルーデ(Drude)モデルは、物質(特に金属)内部の電子の特性について記述する。このモデルは気体分子運動論を応用しており、固体中の電子の微視的挙動は古典的に扱えるものとし、重く動きづらい陽イオンの間をピンボールのように電子が常に行き来しながら満たしているという仮定をおく。また、金属が正に帯電したイオンの集まりと、それから放出された膨大な数の自由電子から構成されていると考える。このことは、原子の価電子準位が他の原子によるポテンシャルと接触することにより非局在化していると考えることもできる。このモデルでは電子とイオン、もしくは電子同士の間に働く一切の長距離相互作用は無視される。自由電子が環境との間に持つ唯一の相互作用は衝突の一瞬のうちにのみ行なわれる。衝突する相手の性質はドルーデモデルの計算や結果には影響しない。

ドレイン電極
[よみがな] どれいんでんきょく
[英訳] drain electrode
電界効果トランジスタ(FET)を構成する電極の一つで、キャリアを吸収する(キャリアが流れていく出口となる))役割を担う。

ドレイン電流―ゲート電圧特性
[よみがな] どれいんでんりゅうーげーとでんあつとくせい
[英訳] drain current-gate voltage characteristics
伝達特性とは、ドレイン電流が飽和領域となるドレイン電圧印加条件下で、ドレイン電圧を一定に保ち、ゲート電圧を走査した電流―電圧特性である。

ドレイン電流−ドレイン電圧特性(静特性)
[よみがな] どれいんでんりゅうーどれいんでんあつとくせい
[英訳] drain current-drain voltage characteristics
静特性評価とは、ゲート電圧をある一定値にしておき、ドレイン電圧を走査しその時のドレイン電流を測定し、そのドレイン電流のゲート電圧依存性を評価したものである。

トンネル効果
[よみがな] とんねるこうか
[英訳] tunneling effect
トンネル効果、量子トンネル、またはトンネリングとは、非常に微小な世界において発生する物理現象であり、粒子が、ポテンシャル障壁を貫通し、あたかもトンネルを抜けたかのように反対側に現れる現象である。古典力学では説明できない現象であり、ハイゼンベルクの不確定性原理と、物質における粒子と波動の二重性を用いて説明することができる。例えば、電極と有機半導体の界面において、ショットキー接合が形成された場合、この接合を超えて電荷を注入するためには、ショットキー障壁を超える必要が一般にあるが、ショットキー障壁が非常に薄い領域に形成されている場合、電荷は障壁を超えずともトンネル効果によって注入されることが知られている。

内殻準位
[よみがな] ないかくじゅんい
[英訳] core level
原子における内殻電子のエネルギー準位。原子は主量子数(n)の順に内から外に配置された幾つかの殻から成ると考えることができ、n=1, 2, 3, … に対応してそれぞれK殻、L殻、M殻 … と呼ばれる。化学反応に関与するのはいちばん外側の殻で外殻と呼ばれ、それ以外の殻は内殻と呼ばれる。内殻にある電子は内殻電子、外殻にある電子は外殻電子または価電子と呼ばれる。

内蔵電場 / 内蔵電位(拡散電位)
[よみがな] ないぞうでんば / ないぞうでんい
[英訳] built‐in electric field / built-in potential
半導体のpn接合においては、接合部で電子と正孔が再結合することにより消滅するため、接合部付近にキャリアの少ない領域(空乏層)が形成される。また、接合の両側では電子と正孔の密度が異なるため、拡散電流が流れる。空乏層のn型側では、本来存在する伝導電子が不足する一方で正電荷をもつドナーイオンが固定されているため正に帯電する。空乏層のp型側では、本来存在する正孔が不足する一方で負電荷をもつアクセプターイオンが固定されているため負に帯電する。その結果、空乏層は正に帯電した層と負に帯電した層が重なり合った電気二重層を形成し、内蔵電場が生じる。内蔵電場によって発生する静電ポテンシャルの差を拡散電位または内蔵電位と言う。内部電場は電子をn型領域へ正孔をp型領域へ引き戻そうとする。内蔵電場の発生によってドリフト電流も発生する。熱平衡状態では正味の電流はゼロであり、拡散電流とドリフト電流は釣り合っている。よってpn接合全体のフェルミ準位(化学ポテンシャル)は一定となる。

内部磁場
[よみがな] ないぶじば
[英訳] internal magnetic field
原子核の核磁気モーメントに作用する磁場をいう。内部磁場は原子核のまわりの電子がスピン角運動量または軌道角運動量をもつ場合につくられる。すなわち、内部磁場は、電子の軌道がs状態であるときは電子のスピンによるフェルミ相互作用によるが、p、dなどの状態のときはスピンに伴う磁気モーメントの古典的な双極子相互作用によって生じる。しかし、鉄属などのようにd電子をもつ磁気的原子では、元来はスピンが打ち消し合って閉殻をつくっていた内殻電子が、d電子によって磁気分極を起こし、d電子の磁気モーメントとは反対の向きの内部磁場をつくる。希土類金属の原子では、電子の軌道運動からの寄与も重要である。さらに、金属の場合は、伝導電子からの寄与もある。内部磁場の値はその原子核が含まれている物質によって異なるが、一般には非常に大きい。たとえば、Feではほぼ 2.5×107 A m−1 である。内部磁場は核磁気共鳴吸収やメスバウアー効果によって直接測定され、また、極低温における比熱容量の解析からも求めることができる。内部磁場の測定によって、原子核の知識が得られるだけでなく、物質の電子構造の情報も与えられる。

内部遮蔽効果
[よみがな] ないぶしゃへいこうか
[英訳] 
希土類錯体参照

内部重原子効果
[よみがな] ないぶじゅうげんしこうか
[英訳] internal heavy atom effect
電子遷移の前後においてスピンの向き(角運動量)は保存される必要があり、反転することはできない。しかし、軌道角運動量の変化が伴えば、スピンの向きを変えることができる。この時、スピンと軌道が相互作用するため、スピン-軌道相互作用という。また、原子が重くなるほどその軌道角運動量は大きくなり、スピン軌道相互作用も大きくなるため、スピン反転しやすくなる。これを重原子効果と呼ぶ。有機分子の光吸収や発光といった過程は、一重項の基底状態と励起状態との間の遷移によるものであり、一重項 - 三重項間の遷移はスピン禁制のため通常は起こりにくい。しかし、臭素やヨウ素などの高周期典型元素で置換された分子や、重金属錯体においては、これらの重原子に起因した強いスピン-軌道相互作用によって一重項 - 三重項間の遷移が起こりやすくなる。これを内部重原子効果と呼び、項間交差による蛍光消光やりん光増強の原因となる。

内部電界
[よみがな] ないぶでんかい
[英訳] inner electric field
ある薄膜デバイスの内部に生じる電界のことを指す。対義語として、電源を用いて外部から印加する外部電界が挙げられる。シリコン系太陽電池の内部電界は次のようにして生じる。n型シリコンとp型シリコンの接合部において、n型半導体からp型半導体へ伝導電子が流れてp型の正孔を打ち消すと、電子が流れた後のn型半導体はプラスに、余分に電子を得たp型半導体はマイナスに帯電することで接合部分に電界が生じる。一方、有機EL素子の内部電界は、電極から注入された正孔が、正孔輸送層と発光層の界面に蓄積することで形成されると考えられている。

内部転換(内部変換)
[よみがな] ないぶてんかん
[英訳] internal conversion
最低励起一重項状態から、基底状態の高い振動順位を経て基底状態の最低順位へと無輻射遷移することを内部転換という。

内部量子効率
[よみがな] ないぶりょうしこうりつ
[英訳] internal quantum efficiency
内部量子効率(ηφ(int))は、有機ELにおいては、発光性能を示す重要な指標であり、ηφ(ext) = (発生したフォトン数) / (素子に注入したキャリア数) x 100で定義される。また、太陽電池においては、電流密度(単位時間、単位面積を流れる電荷量)を単位時間、単位面積に素子に吸収された光の量(光子の流れの密度)で割った値であり、「一個の光子が吸収された際、素子から取り出される電子の数」とも定義され、内部量子効率=電荷生成効率×電荷輸送効率の関係がある。

内部量子収率
[よみがな] ないぶりょうししゅうりつ
[英訳] internal quantum yield
量子収率参照

斜め蒸着
[よみがな] ななめじょうちゃく
[英訳] oblique deposition
真空蒸着によって薄膜を形成する際に、基板を蒸発源に対して大きく傾斜させて配置すると、シャドーイング効果によって数10 nm ?数100 nm の太さのコラム構造が自然に形成される。蒸着中に基板の向きを変えてやることで螺旋やジグザグなど様々な3次元形態の制御が可能である。

ナノインプリント
[よみがな] なのいんぷりんと
[英訳] nanoimprint
ナノインプリントとは、原版となるモールド(金型)を型押しすることで、数十ナノメートル単位のパターンを転写する微細加工技術です。工程がシンプルなため、微細構造体を安価に再現性良く大量に製造する技術として期待されている。

ナノエレクトロニクス
[よみがな] なのえれくとろにくす
[英訳] nanoelectronics
ナノエレクトロニクスとは、エレクトロニクス(電子工学)の一分野であり、1ナノメートル(1/10億 メートル )程度の大きさの構造で見ることができる電子現象を利用する技術である。その例として、超微細化技術で電子を3次元的に閉じ込め、自由度をゼロにしたような構造(量子ドットまたは量子箱)を用いる場合がある。こうした超微細構造では電子のエネルギー準位が離散的になる。これを利用した量子ドット・レーザーや、極めて微小なトンネル接合と微小なコンデンサーを組み合わせた単電子トランジスタ、電子1個単位で情報の記憶を行わせる単電子メモリーなどが研究・開発中である。

ナノコーティング
[よみがな] なのこーてぃんぐ
[英訳] nanocoating
ナノコーティングとは、ナノテクノロジを用いて作製する、膜厚nmオーダーで特長を発揮する分子構造(単分子〜数分子の分子膜)を用いた被膜技術のこと。 例えば、光触媒機能をもつ酸化チタン、親水性を発揮するシリカ、疎水性をもつフッ素樹脂、帯電防止、遮熱など、ナノレベルでの制御により多様な機能のコーティングが開発されている。

ナノコンポジット
[よみがな] なのこんぽじっと
[英訳] nanocomposite
ナノコンポジットとは、ある素材を1〜100nmの大きさに粒子化したものを、別の素材に練りこんで拡散させた複合材料の総称である。ナノコンポジットの形成により、引張強さ、弾性率、熱変形温度等の様々な物性が飛躍的に向上する。また、新たな光学的特性、電磁的特性なども加わる。

ナノテクノロジー
[よみがな] なのてくのろじー
[英訳] nanotechnology
ナノテクノロジーは、物質をナノメートル(nm)(1 nm = 1/10億 m)の領域、すなわち原子や分子のスケールにおいて自在に制御する技術のことであり、このようなスケールで新素材やデバイスの開発を行うことである。ナノテクノロジーは非常に範囲が広く、半導体素子を分子セルフアセンブリ法という全く新たなアプローチで製造することや、ナノスケールのナノ素材と呼ばれる新素材を開発することなど様々な技術を含む。物質をナノメートルレベルで制御する利点は、例えば、現在コンピュータなどで利用されている電子回路のトランジスタは、だいたい数十nm程度の大きさであるが、これを1/10にすることができれば、コンピュータをずっと小型化し、必要な電力や発熱を抑えることが可能となる。同様に、記憶装置などでも小型化・高機能化が期待される。また、物質を数ナノメートルの大きさにすると、量子効果と呼ばれる特殊な現象が発現する。例えば、近年の電子デバイスで利用されている電子の閉じこめによるエネルギー準位の離散化があらわれる大きさや、トンネル効果があらわれる距離はこの領域である。電子材料以外にも、ドラッグデリバリーシステムに代表されるような医療への展開もさかんに試みられている。

ナノパターニング
[よみがな] なのぱたーにんぐ
[英訳] nanopatterning
ナノパターニング技術は、半導体などの基板表面に微細なパターンを形成するリソグラフィ技術の一つで、従来と比べ、より微細なパターンを形成できる可能性があることから、電子デバイスの高機能化を実現する技術として注目されている。サブミクロンスケールでの製造技術は、半導体産業に端を発する高度なリソグラフィ法から、自己組織化をベースとするより新規な材料探索・化学的手法まで幅広い範囲に及んでいる。

ナノピラー構造
[よみがな] なのぴらーこうぞう
[英訳] nanopillar structure
ナノピラー構造とは、ナノメートルオーダーの寸法を持つ柱(ピラー)構造のことで、セミやトンボなどの昆虫の羽には無数のナノメートルオーダーの寸法を持つ柱(ピラー)構造が存在している。有機薄膜太陽電池では、キャリア分離過程とキャリア輸送過程が両立可能なナノピラー型の素子構造が理想的な構造であると考えられている。この構造では、ドナーおよびアクセプターから電極までのパスが、それぞれ連続的につながっており、単一デバイス内でのドナー・アクセプター界面が飛躍的に増加すると同時に、励起子失活の抑制やキャリア分離の促進、さらには光散乱(光閉じ込め)効果などにより、変換効率の大幅な向上が期待できる。

ナノマテリアル
[よみがな] なのまてりある
[英訳] nanomaterial
ナノマテリアルとは、粒径が100nm以下の大きさの素材で、より詳細には『非結合状態、または強凝集体(アグリゲート)または弱凝集体(アグロメレート)であり、個数濃度のサイズ分布で50%以上の粒子について1つ以上の外径が1 nmから100 nmのサイズ範囲である粒子を含む、自然の、または偶然にできた、または製造された材料(マテリアル)』とも定義される。一部の物質では粒径が小さくなることで同じ物質でもバルク状の場合とは異なる機能が発現する事が知られている。酸化チタンや酸化亜鉛のような半導体としての性質を持つ素材をコロイド状に分散させて機能を利用する。種類としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、カーボンブラック、酸化亜鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン等がある。用途には、化粧品、触媒、量子ドット、造影剤、ドラッグデリバリー、電子デバイス接合配線材等があり多岐に渡る。また、ゴム、樹脂、紙、インキ、塗料、シーラントといった種々の材料にフィラーとして混錬され、様々な物性を発現している。

二光子吸収
[よみがな] にこうしきゅうしゅう
[英訳] two-photon absorption
光の照射により、分子は通常、ある瞬間に1個の光子を吸収(一光子吸収)するが、照射光の強度が増加すると2個の光子を同時に吸収する「二光子吸収」が起こりうる。二光子吸収では、基底状態の分子(対称性g)が直接吸収する光(振動数ν)よりも長い波長のレーザーを照射されると、二光子最低励起状態の分子(基底状態と同じ対称性g)が生成し、無放射失活により最低励起一重項状態を生成し、発光する。

二光子吸収断面積
[よみがな] にこうしきゅうしゅうだんめんせき
[英訳] two-photon absorption cross section
分子の持つ二光子吸収断面積は、二光子吸収効率を表わす値で、遷移双極子モーメントの2乗に比例し(基底状態と励起一重項状態との間の遷移双極子モーメントの2乗、励起一重項状態と二光子励起状態との間の遷移双極子モーメントの2乗にそれぞれ比例し)、他方、励起一重項状態のエネルギーと二光子励起の内の1個の光子エネルギーの差に逆比例する。遷移双極子モーメントを大きくするためには、π共役系の拡張、π共役系の平面性の向上、分子内電荷移動を大きくするなどが指針となっている。二光子吸収断面積の単位はGMである。

二酸化炭素回収貯留(CCS)
[よみがな] にさんかたんそかいしゅうちょりゅう
[英訳] Carbon dioxide Capture and Storage
CCSとは、Carbon dioxide Capture and Storage の略で、日本語では「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれる。発電所や化学工場などから排出されたCO2を、ほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入すること。

二重結合
[よみがな] にじゅうけつごう
[英訳] double bond
二重結合は、通常の単結合での2つの電子の代わりに4つの結合電子が関与する2元素間の化学結合である。最も一般的な二重結合は、炭素-炭素間の結合であり、アルケンで見られる。2つの異なる元素間の二重結合には多くの種類が存在する。例えばカルボニル基は炭素原子と酸素原子間の二重結合を含む。その他の一般的な二重結合は、アゾ化合物 (N=N)やイミン (C=N)、スルホキシド (S=O) で見られる。構造式では、二重結合は2本の平行線(=)として描かれる。二重結合は単結合よりも強く短い。結合次数は2である。二重結合は電子が豊富であり反応しやすい。

二重項
[よみがな] にじゅうこう
[英訳] doublet
量子化学における多重度は、全スピン角運動量をSとしたとき、2S+1 で定義される。 多重度は、スピン角運動量の向きのみが異なる複数の縮退した量子状態(波動関数)を区別するために使われている。多重度は不対電子スピンの量の定量化で、フントの規則の結果である。全スピン角運動量Sは、単純には不対電子の数を2で割ったものである。全ての電子が対になっている場合は S=0 で、多重度は1である。この場合は一重項(singlet)と呼ばれる。分子が1個の不対電子を有している場合は S=1/2 で、多重度は 2S+1=2(二重項、doublet)である。不対電子が2個の場合は同様に三重項(triplet)と呼ばれる。水素原子の基底状態やNO分子の基底状態は、電子スピンによる二重項である。

二層型構造(シングルヘテロ構造)
[よみがな] にそうがたこうぞう
[英訳] double layer structure
有機層2層からなるデバイス構造。1987年に報告された最初の高効率有機EL素子の基本的なコンセプトであり、ホール輸送層と電子輸送兼発光層から成っていた。その後、さらに機能分離を進め、多層化することによってデバイス性能が向上している。

日射量データベース
[よみがな] にっしゃりょうでーたべーす
[英訳] insolation database
NEDOの日射量データベースは、次の3つのデータベースを含んでいる。@ 年間時別日射量データベース(METPV-11)【国内837地点・20年間(1990〜2009年)の代表年に関する日射量データベース。毎時の方位角別、傾斜角別の日射量が表示でき、方位角別、傾斜角別の発電量の推定に活用できる。その他、降水量や気温等も把握することができる。】A 年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)【国内837地点・29年間(1981〜2009年)の平均値に関する日射量データベース。各月(年間)の方位角別、傾斜角別の月(年)平均日積算日射量を表示でき、年間・月間発電量を推定することに活用できる。】B 全国日射量マップ【日射量データを日本地図上にマップ化したものを表示することができ、月別及び年平均の日射量の地理的分布を把握することができる。年間月別日射量データベース、MONSOLA-11を日本地図上にマップ化したもの。】

二量体(ダイマー)
[よみがな] にりょうたい
[英訳] dimer
二量体またはダイマー(dimer)は、2つの同種の分子やサブユニット(単量体)が物理的・化学的な力によってまとまった分子または超分子を言う。 二量体を形成することを、おもに化学では二量化、生化学では二量体化という。

濡れ性
[よみがな] ぬれせい
[英訳] wettability
濡れ性とは、主として固体表面に対する液体の親和性(付着しやすさ)を表すもの。液体が水の場合には、濡れ性は親水性や疎水性という言葉でも表される。濡れ性は接触角の大小で評価されることが多い。一様な固体表面上に液滴が形成されると、液滴は球帽形となって、その外縁部(接触線)の接線と固体表面がある平衡角をもつ。この平衡角のことを接触角と呼び、接触角が小さいほど濡れ性が良い、あるいは親液性が高いという。

熱活性化遅延蛍光
[よみがな] ねつかっせいかちえんけいこう
[英訳] Thermally Activated Delayed Fluorescence( TADF)
熱活性化遅延蛍光(TADF)とは、励起一重項準位と励起三重項準位のエネルギーギャップが小さい分子を発光材料として用い、最低三重項励起状態(T1)から最低一重項励起状態(S1)へ熱的に励起されることで逆項間交差(Reverse intersystem crossing: RISC)を起こし、遅れて生成したS1状態から観測される蛍光である。TADFを応用することで、重原子を用いることなく高い発光量子収率を達成することができるため、有機エレクトロルミネッセンス(EL)を利用した有機発光ダイオード(OLEDs)への応用が期待されている。

熱刺激電流
[よみがな] ねつしげきでんりゅう
[英訳] Thermally Stimulated Current(TSC)
有機材料中にトラップされた電荷は加熱することにより外部電極へ移動する。これを電流として測定したものが熱刺激電流現象のひとつである。

熱刺激電流法(TSC法)
[よみがな] ねつしげきでんりゅうほう
[英訳] Thermally Stimulated Current method
熱刺激電流法(TSC法)は、薄膜・粉末試料を冷却した後に、加熱した際に生じる電流を測定することで、試料内の基礎物性を評価する熱分析手法の一種である。例えば、電荷トラップの評価はトラップ電荷の空間分布やトラップ準位の起源、バンドテイル構造などを調べることができるため、太陽電池やトランジスタなどの半導体デバイス解析に応用されている。

熱失活
[よみがな] ねつしっかつ
[英訳] heat inactivation
有機材料において、励起状態から発光を伴わずに分子振動など熱によって基底状態に戻る非放射失活のこと。三重項励起子は従来、熱として失活することが多かったが、近年では燐光として取り出したり、一重項励起に転換し直して光として取り出したりする工夫がされ、大幅な発光効率の向上に結び付いている。

熱(運動)速度
[よみがな] ねつそくど
[英訳] thermal velocity / thermal speed
熱運動速度とは、気体、液体などを構成する粒子の熱運動の代表的な速度であり、ボルツマン分布におけるピークの速度である。温度によって間接的に測ることができる。例えば、20℃における水蒸気の熱運動速度は583m/sである。

熱電子
[よみがな] ねつでんし
[英訳] thermoelectron
高温の金属や半導体から熱電子放出で放出される電子。電子管のほか,熱電子発電などに利用される。

熱電子放出
[よみがな] ねつでんしほうしゅつ
[英訳] thermoelectronic emission
高温に加熱された固体表面から電子が放出される現象。金属または半導体などの固体が加熱されて高温になると、固体内の自由電子の運動は激しくなり、表面のエネルギー障壁を越えて外へ飛出すものが出てくる。これを熱電子と呼び、温度が高いほど毎秒放出される電子数は多い。金属電極から有機半導体層への電荷注入における熱電子放出モデルでは、電圧を印加すると、金属のフェルミ準位の電子は熱エネルギーを得て障壁を乗り越え、有機半導体のLUMOに注入される。障壁は印加電圧の平方根に対して直線的に低くなる。

熱電変換素子
[よみがな] ねつでんへんかんそし
[英訳] thermoelectric conversion element
熱と電力を変換する素子。熱電素子の一種である。2種類の異なる金属または半導体を接合して、両端に温度差を生じさせると起電力が生じるゼーベック効果を利用する。大きな電位差を得るために、p型半導体とn型半導体を組み合わせて使用する。熱電変換素子は、多数の素子を板状または円筒状に組み合わせた熱電モジュールとして使用される。熱電変換素子を用いた熱電発電は地上用発電、人工衛星用の電源として利用されている。

熱平衡
[よみがな] ねつへいこう
[英訳] thermal equilibrium
熱の交換が可能な物体系において、物体間に熱の移動がなく、かつ相の変化もないときに、これらの物体系は熱平衡にあるという。熱平衡にある各物体の温度は等しい。一般に孤立した系は十分に長く放置すれば必ず熱平衡の状態になる。AとBが熱平衡にあり、AとCも熱平衡にあれば、BとCとを熱的に直接接触させると必ず熱平衡にある。この事実を熱力学第零法則という。これが温度という量をそれぞれの熱平衡状態に与えることができる理由である。またBとCを熱的に直接接触させたときに熱平衡であるかどうかを介在して判定するAは温度計とみなせる。熱平衡状態には安定状態のほかに、過熱や過飽和のような準安定状態もある。種々の条件のもとで、系が熱平衡状態にあることの判定は、適当な熱力学的関数の極大または極小によって与えられる。

熱平衡状態
[よみがな] ねつへいこうじょうたい
[英訳] thermal equilibrium state
外界と熱や物質のやりとりがなく、力も及ぼし合わない物体の集り(孤立系)を放置しておくと、何の変化も生じないエントロピー最大の状態になる。これを熱平衡状態という。

熱ゆらぎ
[よみがな] ねつゆらぎ
[英訳] thermal fluctuation
固体中の分子において、配列や配座が温度に依存してダイナミックに変化すること。

熱励起
[よみがな] ねつれいき
[英訳] thermal excitation
励起参照

ネマチック液晶相
[よみがな] ねまちっくえきしょうそう
[英訳] nematic liquid crystal phase
棒状分子が一次元に配向しており、個々の分子は長軸方向に比較的自由に移動できる状態にある液晶状態。最も柔らかい部類の液晶相であり、流動性が大きく粘度が小さいことが知られている。ネマティック液晶分子として、シアノビフェニル系などの誘電率異方性(Δε)の大きい棒状分子を用いることで、電場による分子配向の高速制御が可能となる。

粘性流
[よみがな] ねんせいりゅう
[英訳] viscous flow
気体でも液体でも流体は粘性を持っているが、レイノルズ数が小さいとき、流体運動において粘性力が慣性力に比較して支配的になる。そのような流れを粘性流という。

能動素子
[よみがな] のうどうそし
[英訳] active element / active component
能動素子は、供給された電力で増幅・整流などの能動動作を行う素子や波形や周波数などを制御する機能を持った素子をいう。

濃度消光
[よみがな] のうどしょうこう
[英訳] concentration quenching
発光層中の発光材料の濃度が高くなると、発光材料分子間の相互作用により発光効率が極端に低下する現象を濃度消光と呼ぶ。

ノズルプリンティング法
[よみがな] のずるぷりんてぃんぐほう
[英訳] nozzle printing
ノズルプリンティング法は、インクジェット法と同様にノズルからインキを吐出し塗布する方式である。インクジェット法と異なる点は、ピクセル毎のインキ吐出をON/OFF せず、連続的に吐出させたまま塗布する。この場合、隔壁はストライプ状に形成しておく、インキ吐出を連続して行うため、インクジェット法での欠点であるピクセル毎の膜厚バラツキは改善される。但し、インキがパターン形成領域以外も連続吐出するため、塗布後に周辺部のインキを除去する工程が必要となる。

ノンファーム接続
[よみがな] のんふぁーむせつぞく
[英訳] non-firm connection
コネクト&マネージ参照

バーチャルパワープラント(VPP)
[よみがな] ばーちゃるぱわーぷらんと
[英訳] Virtual Power Plant(VPP)
バーチャルパワープラント(VPP)とは、需要家側エネルギーリソース、電力系統に直接接続されている発電設備、蓄電設備の保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御(需要家側エネルギーリソースからの逆潮流も含む)することで、発電所と同等の機能を提供すること。太陽光発電や家庭用燃料電池などのコージェネレーション、蓄電池、電気自動車、ネガワット(節電した電力)など、需要家側に導入される分散型のエネルギーリソースの普及が進んだことから、大規模発電所(集中電源)に依存した従来型のエネルギー供給システムが見直され、需要家側のエネルギーリソースを電力システムに活用する仕組みの構築が進められている。工場や家庭などが有する分散型のエネルギーリソース一つ一つは小規模であるが、IoT(モノのインターネット)を活用した高度なエネルギーマネジメント技術によりこれらを束ね(アグリゲーション)、遠隔・統合制御することで、電力の需給バランス調整に活用することができる。この仕組みは、あたかも一つの発電所のように機能することから、「仮想発電所:バーチャルパワープラント(VPP)」と呼ばれている。VPPは、負荷平準化や再生可能エネルギーの供給過剰の吸収、電力不足時の供給などの機能として電力システムでの活用が期待されている。

バーディーン (Bardeen) 極限
[よみがな] ばーでぃーんきょくげん
[英訳] Bardeen limit
金属/半導体界面におけるショットキーバリアにおいて、金属と半導体のバルクでの仕事関数差 刄ウ と、両者を接触させた際のショットキーバリア高さを 儼 としたとき、スロープパラメータ S = (儼 /刄ウ) を定義した場合に、界面準位の状態密度が非常に高い時には、電荷の移動があっても、電荷中性準位の位置は殆ど変わらないので、金属のショットキーバリア高さは状態密度の高い界面準位に固定されてしまうため、儼 = 0 となり、S = 0 である。この極限はバーディーン (Bardeen) 極限と呼ばれる。なお、ショットキー極限の際には、双方の物質のバルクでの仕事関数の差がそのままショットキーバリア高さとなる (儼 = 刄ウ) ので、S = 1 となる。

パーティクル
[よみがな] ぱーてぃくる
[英訳] particle
パーティクルとは一般に小片、粒子を指す。クリーンルームでは、塵・ホコリ・異物・ダストなどを意味する。

ハートリーフォック(Hartree-Fock)近似
[よみがな] はーとりーふぉっくきんじ
[英訳] Hartree-Fock approximation
多電子系の波動関数を、規格直交系のスピン軌道の反対称化された積で近似する方法。波動関数をこのように近似すると、ハミルトニアンの期待値を極値とするようなスピン軌道の組はハートリーフォックの方程式の解となる。

ハーフカットセル
[よみがな] はーふかっとせる
[英訳] half-cut cell
同一効率の太陽電池セルを使った場合でも、モジュール全体の電気的設計次第で太陽電池モジュールの効率は向上の余地がある。太陽電池セルから取り出される電流の損失の主要因であるオーム損失は、電流の2乗に比例する。電力は電流と電圧の積であり、同じ電力でも電圧を高めれば電流を減らすことができる。このことから、直列セル数を増やしてモジュールの出口電圧を高めることによりオーム損失は低減する。その手法としてハーフカットセルがある。これは1枚の太陽電池セ ルを半分にカットしたもので、これを直列につなげることにより電圧を約2倍、電流を半分にすることができる。

配位
[よみがな] はいい
[英訳] cordination
結晶中の一つの原子を近接の電子が取り巻くこと、原子またはイオンのまわりに原子、分子、またはイオンが配列することをいう。狭義には、錯体における配位子のように、比較的強い化学結合の存在する場合をいい、配位子の数を配位数という。

配位座標
[よみがな] はいいざひょう
[英訳] configuration coordinate
固体の中での電子の運動と原子核の運動(格子振動)を比較すると、フェルミ準位付近の電子は10^7[cm/s]という高速で運動し、原子核は10^5[cm/s]程度の遅い速度で振動している。電子からみれば原子核は止まっているように感じられるが、電子の受けるポテンシャルは原子核の位置に依存するので、電子の固有エネルギーは原子核の位置(配位座標)の関数となる。電子エネルギーが原子位置に依存する様子をグラフに描いたものを配位座標曲線という。励起状態と基底状態では波動関数の形が異なり、周囲の原子から受けるポテンシャルが異なるので、励起状態のエネルギーの極小を与える原子の配位座標は、基底状態の極小を与える配位座標からずれる。また、励起状態にある電子は波動関数の広がりが大きいため、原子核の位置に対するポテンシャルの変化の影響を受けにくく、配位座標曲線の曲率は小さくなる。

配位子
[よみがな] はいいし
[英訳] ligand
配位子とは、金属に配位する化合物をいう。配位子は孤立電子対を持つ基を有しており、この基が金属と配位結合し、錯体を形成する。

配位子場
[よみがな] はいいしば
[英訳] ligand field
配位子が中心金属イオンの電子に及ぼす静電場、および配位子の分子軌道がつくる場のことを指す。

バイオエレクトロニクス
[よみがな] ばいおえれくとろにくす
[英訳] bioelectronics
バイオテクノロジーとエレクトロニクス (電子工学 ) を組合せた用語。生物あるいは生体物質がもつすぐれた機能、たとえば脳における情報処理・神経伝達機能、DNA (デオキシリボ核酸 ) の記録機能、エネルギー変換機能、生体膜の情報伝達機能、酵素の触媒機能、抗体の抗原認識機能などを有効に利用して電子工学の新分野を開こうとする研究領域。具体的な応用として、バイオセンサ、バイオチップ、バイオコンピュータなどの研究開発が進められている。

バイオマス
[よみがな] ばいおます
[英訳] biomass
バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mass)を表す概念で、再生可能な生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの。太陽エネルギーを使って水と二酸化炭素から生物が光合成によって生成した有機物であり、生命と太陽エネルギーがある限り持続的に再生可能な資源である。石油等化石資源は、地下から採掘すれば枯渇するが、植物は太陽と水と二酸化炭素があれば、持続的にバイオマスを生み出すことができる。バイオマスを燃焼させた際に放出される二酸化炭素は、化石資源を燃焼させて出る二酸化炭素と異なり、生物の成長過程で光合成により大気中から吸収した二酸化炭素であるため、バイオマスは大気中で新たに二酸化炭素を増加させないカーボンニュートラルな資源といわれている。バイオマスはその賦存状態により次の(1)〜(3)のように分類される。(1)廃棄物系バイオマス:家畜排せつ物、食品廃棄物、廃棄紙、黒液(パルプ工場廃液)、下水汚泥、し尿汚泥、建設発生木材、製材工場等残材、(2)未利用バイオマス:稲わら、麦わら、もみがら、林地残材、(3)資源作物:糖質資源(さとうきび等)、でんぷん資源(とうもろこし等)、油脂資源(なたね等)、柳、ポプラ、スイッチグラス。

π軌道
[よみがな] ぱいきどう
[英訳] π orbital
二重結合や三重結合を説明する際に現れる分子軌道の一種。本来は二原子分子の二重結合を表すために考えられたが、エテンの二重結合(σ結合とπ結合からなる)やアセチレンの三重結合(σ結合と二つのπ結合からなる)でも構造的に似ているので、拡張して使われている。π軌道は二つのp軌道が組み合わさって反結合性の π* 軌道と対になって生じる。

π共役化合物
[よみがな] ぱいきょうやくかごうぶつ
[英訳] π-conjugated compound
π共役系から構成される化合物。 π共役系は、交互につながった単結合と多重結合からなり、非局在化した電子(π電子)を有する。 π電子は、光吸収・発光特性、電導性、磁性など、π共役化合物が発現する様々な物性を司っている。

π共役高分子(π共役ポリマー)
[よみがな] ぱいきょうやくこうぶんし
[英訳] π-conjugated polymer
π共役高分子は、二重結合と単結合が交互につながった構造を持ち、その主鎖上をπ電子が自由に動き回ることができるため、従来の高分子(ポリマー)にはない導電性や発光性などの特異的な性質を有している。そのため、トランジスタ、EL(エレクトロルミネッセンス)、太陽電池などの電子デバイスの材料として注目されている。

π結合
[よみがな] ぱいけつごう
[英訳] π-bond
σ結合に対する語。化学結合のうち共有結合を大きく分類すると、結合軸に対して軸対称性 (軸を回転軸とする回転対称) をもつσ結合と、軸対称性をもたないπ結合に分けられる。π結合は結合軸に対して直交し、かつ互いに平行な2個のp軌道やd軌道の重なりによって生じる。一般に、二重結合は1個のσ結合と1個のπ結合よりできており、π結合はσ結合に比べて弱いことが知られている。二重結合をもつ化合物が一般に種々の化学変化を起しやすいのは、この弱く切れやすいπ結合によるものである。

π結合エネルギー
[よみがな] ぱいけつごうえねるぎー
[英訳] πbinding energy
結合エネルギーとは,分子や結晶を構成する原子が、ばらばらの状態で存在する原子との間のポテンシャルエネルギーの差をいう。結合エネルギーは、分子の持つ全結合を切断するためのエネルギーの総和となる。炭素-炭素間の結合エネルギーでは、エタン(331kJ/mol)、エチレン(591kJ/mol)、アセチレン(827kJ/mol)と単結合より二重結合の方が、二重結合より三重結合の方が大きいが、エチレンとエタンのエネルギー差は260kJ/mol、アセチレンとエチレンのエネルギー差は236kJ/molと、どちらも単結合であるエタンの結合エネルギーより小さい。これは、パイ結合の結合エネルギーはシグマ結合の結合エネルギーより小さいことを意味する。一般的に,多重結合を持つ多くの化合物は,単結合の化合物より反応性が大きい。これは,パイ結合のエネルギーがシグマ結合のエネルギーより低いうえに,攻撃試薬がシグマ結合の電子よりパイ結合の電子に近づきやすいためと考えられている。なお,分子中の結合を一つ一つ切断するのためのエネルギーは,結合解離エネルギーという。

配向
[よみがな] はいこう
[英訳] orientation
有機半導体分野において、配向とは、基板などのある平面に対する分子の並び方や、分子同士の並び方を指す意味で使われることが多い。分子配向とも呼ばれる。

配向分極
[よみがな] はいこうぶんきょく
[英訳] orientation polarization
永久双極子モーメントをもつ分子(有極性分子)または基が電場の方向に配向することによって生ずる分極。

配向膜
[よみがな] はいこうまく
[英訳] alignment film
膜を構成する分子あるいは高分子が、ある向きに揃っている膜を指す。すべての分子や高分子の向きが揃っている必要はなく、全体として統計的にある方向を向いている膜を含む。液晶分子を配列させるためのラビング膜や配列した液晶膜などが挙げられる。

πスタック
[よみがな] ぱいすたっく
[英訳] π-stack
π電子雲をもつ芳香族環は、その平面性と豊富なπ電子の数によってロンドン分散力が強く、他の分子との分子間相互作用を形成しやすい。このような分子間の重なり構造はπスタックとよばれる。特に芳香族環同士のπスタックは、コインを積み重ねたような構造で安定化する傾向にあり、πーπスタッキングと呼ばれる。分子がランダムに配列するよりも、πスタッキングに基づく秩序構造をとると、分子間の電荷輸送などに有利に働くことがある。とくに、有機トランジスタや有機太陽電池では、分子間相互作用を増加して電荷輸送能力を高めてデバイス特性を改善する試みが多く行われている。

配置方式(ピクセルアレイ)
[よみがな] はいちほうしき(ぴくせるあれい)
[英訳] RGB pixel array
白色発光を得る方法としては、配置方式、色変換方式、分散方式、積層方式の4つの方式に大別できる。配置方式は、ディスプレイで利用されているように、RGBのサブピクセルが周期的に配置され、ピクセルアレイと呼ばれる。RGBのそれぞれの光源の物理的な配置が十分に細かく、かつ観察者が光源から十分に離れた距離では、人の目に入射するRGBの光は白色として認識される。

π電子
[よみがな] ぱいでんし
[英訳] π-electron
π結合をつくっている電子。二重結合の一方はσ結合、もう一方はπ結合であるが、特に共役二重結合の場合、π軌道は分子全体に広がり、π電子は1つの原子上にとどまらず、分子全体に非局在化して結合エネルギーを大きくして分子を安定させる。これを非局在結合と呼ぶ。π軌道を形成するp原子軌道をもった多くの原子が、鎖状または環状の分子をつくるときは、π電子はπ軌道を通して原子から原子へと動くことができる。この意味でπ電子は可動電子ともよばれる。

π電子共役系
[よみがな] ぱいでんしきょうやくけい
[英訳] π-electron conjugated system
単結合と二重結合が交互に連なった分子構造を持つ有機化合物、あるいはその共役構造のことを指す。二重結合と単結合が交互に並んだ分子では、二重結合のπ結合の電子は、二重結合の部分だけに存在するのではなく、単結合部分や別の二重結合の部分にも存在しうる非局在化が一般に生じている。このようなとき、分子がπ電子共役系をもつという。分子軌道法の観点からは,ベンゼンを例にとると,6個の炭素原子の2pz軌道から形成されるπ軌道に6個のπ電子が入っていると考える。有機半導体はπ電子共役系を基本骨格としており、特別な光・電子物性を発現するベースとなっている。

π電子系化合物
[よみがな] ぱいでんしけいかごうぶつ
[英訳] π-electron system compound
π電子系化合物は、その分子骨格に共役したπ電子系を持ち、そのπ電子系に基づいて特異な電子的、光学的、および磁気的特性を発現する。これまでに、環状炭化水素、アヌレン、複素環式化合物、およびそれらのカチオン種やアニオン種など、様々な構造をもつπ電子系化合物が合成された。これらπ電子系化合物がもつ電子的、光学的物性に着目し、これらを巧みに利用することで、有機トランジスタ(OFET)、有機EL(OLED)、および有機系太陽電池(OPV、 DSSC、ペロブスカイト太陽電池)など、有機エレクトロニクスの開発研究が急速に発展している。

π電子系芳香族化合物
[よみがな] ぱいでんしけいほうこうぞくかごうぶつ
[英訳] π-electron system aromatic compound
π電子系化合物および芳香族化合物を参照

ハイドライド気相成長(HVPE)法
[よみがな] はいどらいどきそうせいちょうほう
[英訳] Hydride Vapor Phase Epitaxy(HVPE)
ハイドライド気相成長(HVPE)法は気相成長の一種であり、H2 や N2 などのキャリアガスとともに原料ガスを輸送して下地結晶上に目的とする結晶を成長させる。III_V 族化合物半導体の HVPE成長では、原料ガスとしては、III 族元素の塩化物、V 族元素の水素化物(ハイドライド)が用いられ、GaN 成長の場合には塩化ガリウム(GaCl)とアンモニア(NH3)が原料となる。HVPE 法は別名ハロゲン輸送法とも呼ばれる。反応装置としては、高温で塩化物を扱うことから、ガスと直接触れる部分は石英やカーボンが用いられる。反応装置はソース領域と成長領域に別れ、ソース部には Ga を入れた容器が設置され、この Ga 上に HCl を供給することで GaCl を発生させている。GaCl への変換効率は高く、750℃以上であればほぼ95%以上が得られる。成長領域で GaCl と NH3 の反応により GaN が析出する。

π-π相互作用
[よみがな] ぱいぱいそうごさよう
[英訳] π-π interaction
π-π相互作用とは、有機化合物分子の芳香環の間に働く分散力(ロンドン分散力)である。2つの芳香環がコインを積み重ねたような配置で安定化する傾向があるため、スタッキング(積み重ね)相互作用とも呼ばれる。芳香族化合物は堅固な平面構造をとり、π電子系により非局在化した電子が豊富に存在する為、とくにロンドン分散力が強く発現する。したがって、π電子が増えるほど強くなる。この相互作用は普通の分子間力よりやや強く、いろいろな分子の立体配座や超分子構造形成に影響を与えている。芳香族化合物の結晶、液晶などの物性にもπ-π相互作用の寄与が存在している。多くのディスコティック液晶はπ-π相互作用により柱状構造を形成する。さらにπ-π 相互作用はナノテクノロジーにおける自己集合技術でも重要な要因である。

パウリの排他原理
[よみがな] ぱうりのはいたげんり
[英訳] Pauli exclusion principle
パウリの排他原理とは、2つ以上のフェルミ粒子(電子、陽子、中性子など)は、同一の量子状態を占めることはできない、という原理である。1925年にヴォルフガング・パウリによって提唱された。パウリの定理、パウリの排他律、パウリの禁制、パウリの禁則などとも呼ばれる。

白色LED
[よみがな] はくしょくえるいーでぃー
[英訳] white LED
白色に発光するLED。無機LEDで白色光を得るには何通りかの方法がある。代表的な方法としては、1) 青色LED+黄色蛍光体(青色LEDとその補色である黄色蛍光体の組合せにより白色光を得る方法で、他の方式に比べて構造が単純で効率も高く、現在主流となっている)。2) 赤色LED+緑色LED+青色LED(光の三原色のLEDを組合せて白色光を得る方法で、主にフルカラーLED表示装置として使われている)。有機ELにおいては、1)と2)の方式に加えて、補色の関係(例えば、水色とオレンジ)にある発光層を積層して、一つのデバイスを白色発光させることも可能である。

白色有機EL素子
[よみがな] はくしょくゆうきいーえるそし
[英訳] white organic EL device
白色に発光する有機EL素子。照明用に用いることができ、またRGBのカラーフィルタを通すことでディスプレイ用途に用いることができる。白色発光を実現するためには、複数種の発光材料からの発光を混ぜる必要がある。方式としては、発光3原色の赤色・緑色・青色発光層を積層する方式と、補色関係にある黄色・青色発光層を積層する方式がある。3色方式は演色性やカラーフィルタ後のRGBの色純度に優れ、2色方式は低コストに特長がある。

薄膜トランジスタ
[よみがな] はくまくとらんじすた
[英訳] Thin Film Transistor (TFT)
薄膜トランジスタは、電界効果トランジスタの1種で、基本的に三端子素子である。主に液晶ディスプレイ に応用されている。

バスバー
[よみがな] ばすばー
[英訳] bus bar
バスバーは、配電盤(キュービクル)や制御盤、電池などにおいて使用され、大容量の電流を導電する導体を指す。バスバーは電気抵抗が小さく、大容量の電流を効率的に各部分へ供給する役割を担う。

パッキング構造
[よみがな] ぱっきんぐこうぞう
[英訳] packing structure
パッキングとは、固体や薄膜中で分子がどのように集合しているかを表す用語である。定義は曖昧である。例えば、π電子をもつ芳香環同士が重なっているπーπスタッキングなどの集合状態などが一例である。結晶などの長距離秩序をもつ集合体の分子間の重なりを指す場合もあるし、アモルファス薄膜内における短距離秩序における分子間の配向や重なりなどを指す場合もある。

バックコンタクト型太陽電池
[よみがな] ばっくこんたくとがたたいようでんち
[英訳] back contact solar cell
一般的な構造の結晶系シリコン太陽電池では、受光面にn型半導体側の電極、裏面にp型半導体側の電極が設けられている。この構造の場合、n型側の電極が光を遮るため発電効率低下の要因となっていた。一方、バックコンタクト型太陽電池では、裏面にn+拡散層とp+拡散層が形成され、その上に電極を形成している。電極を裏面に集約し受光面の電極を無くしたため、そのぶん受光面が広くなって変換効率を高めることができる。また、裏面への電極の集約による配線の集約も可能で、配線抵抗が低減でき、電力ロスを減らすことができる。

バックプレーン
[よみがな] ばっくぷれーん
[英訳] backplane
バックプレーンとは、一般に、電子機器内部の回路基板の一種で、基板などを挿入する複数のコネクタ間の通信や電源供給を行うためのもの。有機ELディスプレイにおいては、ガラス基板上にトランジスタや電極配線、絶縁膜などを形成した基板を指すことが多い。有機EL以降の工程(フロントプレーンとも呼ばれる)を開始できる状態の基板のことで、有機ELの片側の電極(通常陽極)までが形成されたものを指すことが多い。

発光開始電圧
[よみがな] はっこうかいしでんあつ
[英訳] light emission start voltage
有機ELにおいて発光が開始される電圧のこと。よく設計された有機ELデバイスにおいては、発光材料の光学的エネルギーギャップ(eV)に相当する電圧付近で発光が始まる。それより低い電圧では、電流が流れても発光しない。発光開始電圧以上で、電圧上昇に対する電流の増え方が急になり、電流の量に応じて発光するようになる。

発光過程
[よみがな] はっこうかてい
[英訳] light emission process
有機ELの発光過程は、陰極および陽極に電圧をかけることにより各々から電子と正孔を注入する。注入された電子と正孔がそれぞれの電子輸送層・正孔輸送層を通過し、発光層で結合する。結合によるエネルギーで発光層の発光材料が励起される。その励起状態から再び基底状態に戻る際に光を発生する。励起状態(一重項)からそのまま基底状態に戻る発光が蛍光であり、一重項状態からややエネルギー準位の低い三重項状態を経由し基底状態に戻る際の発光を利用すれば燐光である。励起しても光に上手く利用できないエネルギーは無放射失活(熱失活)する。

発光効率
[よみがな] はっこうこうりつ
[英訳] luminous efficacy
光源に与える電力(W)に対して、光源から発する全光束(lm=ルーメン)の割合。全光束を消費電力で割った値のこと(単位:lm/W)。ランプ効率または光源効率とも言う。

発光材料
[よみがな] はっこうざいりょう
[英訳] emitting material
一般には発光性の有機材料のことを指す。狭義には、有機ELにおいて、デバイスの発光を担う材料のことを指す。

発光寿命
[よみがな] はっこうじゅみょう
[英訳] emission lifetime
蛍光やリン光の寿命のこと。電子励起状態の重要な性質で、発光寿命から励起状態の電子構造スピン状態を明らかすることができ、励起状態がエネルギーを失うメカニズムに関係する。蛍光寿命は5ns(1ns=10のマイナス9乗秒)以下なのに対し、リン光寿命は1ns以下のものもあれば1sを越えるものもある。

発光スペクトル
[よみがな] はっこうすぺくとる
[英訳] emission spectrum
原子や分子が、エネルギーの高い励起状態から低い状態へ遷移するときに放射する、電磁波のスペクトルの総称。

発光性励起子
[よみがな] はっこうせいれいきし
[英訳] luminous exciton
発光に関与する励起子のこと。以前は、一般に一重項励起子のこと(一重項励起子を参照)を指したが、最近は三重項からの発光も広く活用されている。

発光性励起子生成効率
[よみがな] はっこうせいれいきしせいせいこうりつ
[英訳] luminous exciton production efficiency
発光に関与する励起子の生成効率のこと。以前は、一般に一重項励起子の生成効率(一重項励起子を参照)を指したが、最近は三重項からの発光も広く活用されている。

発光層(EML)
[よみがな] はっこうそう
[英訳] Emitting Layer
多層型の有機ELにおいて、発光を担う有機層のことを指す。発光層では、ラジカルカチオンとラジカルアニオンが接近、再結合し電子・ホール対(励起子)を形成する。この励起子が基底状態に戻る(失活過程)ときにエネルギーを放出する(発光する)。

発光ダイオード
[よみがな] はっこうだいおーど
[英訳] Light Emitting Diode (LED)
発光ダイオードはダイオードの一種で、順方向に電圧を加えた際に発光する半導体素子である。ここでは、無機半導体を用いる発光ダイオードについて記載する。無機の発光ダイオードの発光領域は、半導体を用いたpn接合で作られ、発光はこの中で電子の持つエネルギーを直接光エネルギーに変換することで行われる。電極から半導体に注入された電子と正孔は異なったエネルギー帯(伝導帯と価電子帯)を流れ、pn接合部付近にて禁制帯を越えて再結合する。再結合時に、バンドギャップ(禁制帯幅)にほぼ相当するエネルギーが光として放出される。放出される光の波長は材料のバンドギャップによって決められ、赤外線領域から可視光線領域、紫外線領域まで様々な発光が得られるが、基本的に単一色で自由度は低い。ただし、青色、赤色、緑色(光の三原色)の発光ダイオードを用いることであらゆる色(フルカラー)が表現できる。

発光ドーパント
[よみがな] はっこうどーぱんと
[英訳] emitting dopant
有機ELにおいて、発光を担当する添加剤(ドーパント)。一般に、有機ELの発光層は、電子や正孔の電荷輸送を担当するホスト材料と発光を担当するドーパント(ゲスト)材料の2成分系で、発光ドーパントは0.1?5%程度の濃度でホスト材料中に均一に分散されている。

発光波長
[よみがな] はっこうはちょう
[英訳] emission wavelength
LEDなどの発光体から発せられる光の波長であり、発光波長を強度とともに表示したものは、発光スペクトルと呼ばれる。単位はnm(ナノメートル)。スペクトルの強度が一番高い波長をピーク波長という。

発光量子効率
[よみがな] はっこうりょうしこうりつ
[英訳] luminescent quantum efficiency
発光量子収率と同義、発光量子収率参照

発光量子収率
[よみがな] はっこうりょうししゅうりつ
[英訳] emission quantum yield
発光量子収率とは、物質が吸収した光子のうち、蛍光あるいはリン光として放出される光子の割合を表すもので、励起子の全緩和過程における放射過程の割合である。素子構造に依存しない発光材料そのものがもつ発光効率である。 量子収率が高いほど発光効率が良く、発光強度が強いことになる。

パッシブマトリクス駆動(単純マトリクス駆動)
[よみがな] ぱっしぶまとりくすくどう
[英訳] passive matrix drive
液晶パネルや有機ELパネルの駆動方式の一つで、格子状に張り巡らされた導線の各交点に画素を置き、縦横の両方が通電している画素を点灯させる方式。互いに直行するX軸、Y軸の二方向に画素数と同じ本数の導線が引かれ、両者に挟まれる形で交点に各画素が並んでいる。両軸ともいずれか一本を選んで通電することにより、その交点にある素子の点灯状態を制御することができる。構造が単純で低コストだが、選択した画素の周囲の画素にもわずかに電圧がかかり影響を受けてしまうため、にじみや乱れが生じやすく、コントラストも低い。

パッシベーション
[よみがな] ぱっしべーしょん
[英訳] passivation
パッシベーションとは不活性化すること。半導体では、素子の表面に不動態膜をコートして、外気の影響やごみの付着を防ぐことをパッシベーションと呼んでいる。太陽電池に限らず、半導体結晶の表面を空気中に曝したままにすることは通常は行わない。結晶の表面上には SiO2 などの絶縁膜を着けるのが普通で、これによって半導体結晶表面の欠陥を減らせることが知られている。表面の欠陥が減るとキャリアの再結合も少なくなる。

発電コスト
[よみがな] はつでんこすと
[英訳] power generation cost
一定量の電気エネルギーを得るために必要とされる費用。発電所の法定耐用年数を通して掛かるすべての費用を総発電電力量で割った 1kWh当たりの費用で表される。太陽光発電のコストは、運転に燃料費は不要であるため、設備と設置工事費および長寿命化のためのメンテナンス費用でほぼ決まる。発電コスト(円/kWh)=(建設費+運転維持費+廃棄処理費)/運転年数内総発電量(kWh)

発電層
[よみがな] はつでんそう
[英訳] photovoltaic layer / power generation layer
光活性層参照

バッファ層
[よみがな] ばっふぁそう
[英訳] buffer layer
有機ELデバイスや有機薄膜太陽電池などの有機半導体デバイスにおけるバッファ層とは、金属電極と有機化合物層の間に置かれる層で、無機電極の仕事関数と有機層のイオン化ポテンシャルを近づけて、電子やホールといったキャリアが電極から有機層へ注入される際の障壁を低減させる役割を担う。

波動関数
[よみがな] はどうかんすう
[英訳] wave function
広い意味では波動現象を記述する関数をいうが、量子力学におけるものを指すことが多い。量子力学では、電子、光子などの微粒子は粒子的性質と波動的性質の両方をもっていて、そのふるまいは波動関数によって表されると考える。波動関数は波動方程式(シュレーディンガー方程式)に従い、粒子の種類やその粒子がどのような条件の下におかれているかによって定まる。有機固体では、一般にファンデルワールス相互作用により、分子が凝集した分子性固体であるため、価電子帯の波動関数は、分子内のみに広がっている。分子と分子の間にはポテンシャル壁があるため、電子の移動は大きな制限を受ける。

ハミルトニアン
[よみがな] はみるとにあん
[英訳] Hamiltonian
ハミルトニアンは、物理学におけるエネルギーに対応する物理量である。各物理系の持つ多くの性質は、ハミルトニアンによって特徴づけられる。古典力学においては、T を運動エネルギー、V をポテンシャルエネルギーとして、全エネルギー を H=H(q,p;t)=T+V と表し、量子力学においてもハミルトニアンは、系の全エネルギーを表す。ただし量子力学では、正準量子化に従って位置と運動量を演算子で表す。

バランシンググループ
[よみがな] ばらんしんぐぐるーぷ
[英訳] balancing group
バランシンググループとは、いわゆるパワープールを採用していない自由化制度において、発電・小売会社が形成する責任グループである。日本の現行制度では、バランシンググループに30分単位で発電量と需要量を合わせる同時同量(バランシング)を義務付けている。

バランス・オブ・システム(BOS)
[よみがな] ばらんすおぶしすてむ
[英訳] Balance of System(BOS)
BOSとは、Balance of Systemの略で「周辺機器」と訳される。太陽光発電システムにおいては太陽電池モジュール以外の周辺機器のことで、架台、ケーブル、パワーコンディショナなどをさす。

バリア性
[よみがな] ばりあせい
[英訳] barrier property
外部からの品質低下を招く要因を遮断する働きをバリア性という。有機EL素子に必要な水のバリア性は、一般に10-6 g/m2・day(25℃)のオーダー以下であると考えられている。一般のPETフィルム(1 g/m2・dayオーダー)やプラズマCVD(PECVD)により作製した無機膜(10-3 g/m2・dayオーダー)などに比べてはるかに高いバリア性が必要であり、無機積層膜や、ALD法による欠陥被覆などの手法で所望のバリア性を確保する。

パリサー・パー・ポープル法(PPP法)
[よみがな] ぱりさーぱーぽーぷるほう
[英訳] Pariser-Parr-Pople method
分子物理学において、パリサー・パー・ポープル法(PPP法)は、自己無撞着場理論とπ電子近似から共役分子やイオンの性質を計算する半経験的量子力学的手法である。有機化学分野で注目されている分子の電子構造やスペクトルの定量的予測に適用できる。それまでにもヒュッケル法といった手法は存在していたが、拡張ヒュッケル法のように、その範囲、適用範囲、複雑さが限定されていた。パリサー・パー・ポープル法はハートリー・フォック法といったより単純なモデルと比較して電子反発相互作用をより良く考慮できる。

バルク制限電流
[よみがな] ばるくせいげんでんりゅう
[英訳] bulk limited current
有機EL素子のようなキャリア注入を伴うデバイスの特性向上には、電極と有機半導体の界面の接触抵抗を下げること、つまりオーミック接触をとることが重要である。有機ELを流れる電流は、界面特性に依存する界面制限電流と有機半導体層の特性に依存するバルク制限電流で決まる。そして、界面の接触が悪ければ界面制限電流で制限され、界面の接触が良ければバルク制限電流で制限されて有機半導体層での空間電荷制限電流となる。

バルクヘテロ接合
[よみがな] ばるくへてろせつごう
[英訳] bulk heterojunction
有機太陽電池のバルクヘテロ接合とは、電子受容性(アクセプター性)と電子供与性(ドナー性)の有機半導体分子を混ぜ合わせたブレンド膜内において、アクセプター性とドナー性分子が接合している状態を指す。アクセプター性とドナー性分子をそれぞれ単独膜として接合させた場合(シングルヘテロ接合)に比べて広い電荷分離界面(アクセプター性とドナー性分子の界面)を有することができる。また、数十nmレベルで相分離した混合層となることで、励起子を効率良く電荷分離界面に到達させることが可能である。

バルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池
[よみがな] ばるくへてろせつごうがたゆうきはくまくたいようでんち
[英訳] bulk hetero junction organic solar cell
バルクヘテロ接合の構造を有する有機薄膜太陽電池のこと。

パワーエレクトロニクス
[よみがな] ぱわーえれくとろにくす
[英訳] power electronics
パワーエレクトロニクスは、電力用半導体素子を用いた電力変換と制御に関する技術であり、電力変換と制御を中心とした応用システム全般の技術である。

パワーコンディショナー(パワコン)
[よみがな] ぱわーこんでぃしょなー
[英訳] Power Conditioning System(PCS)
パワーコンディショナーとは、直流の電気を交流に変換し、家庭用の電気機器などで利用できるようにするための機器。太陽電池やエネファーム、エコウィルなどの家庭用発電システムで発生する直流電力を交流電力に変換して家庭内で利用できるようにする。また、蓄電池への充電や、系統への売電などに適した安定した出力に整える機能なども備えている。パワコン、PCSとも呼ばれる。

パワー半導体
[よみがな] ぱわーはんどうたい
[英訳] power semiconductor
パワー半導体とは、電力の制御や変換を行う半導体の総称で、パワーデバイスとも呼ばれている。電力の制御や変換を行うパワー半導体は、大きな電圧・電流の電力も取り扱えることが特徴で、一般的には定格電流が1A以上のものとされている。パワー半導体の代表的なデバイスには、スイッチングを行うパワートランジスタとサイリスタ、スイッチングを行わないダイオードがある。

バンク
[よみがな] ばんく
[英訳] bank
インクジェットプリント法にてディスプレイパネルに印刷する場合に、画素領域の周辺に設ける撥インク性隔壁のこと。バンクにより、インクジェット液滴はバンクを避けて画素領域に自発的に定着し、高精度のパターニング成膜が可能となる。

半経験的分子軌道法
[よみがな] はんけいけんてきぶんしきどうほう
[英訳] semi-empirical molecular orbital method
非経験的分子軌道法 ab initio 分子軌道法による理論計算は、高速コンピューターの利用によって多原子分子についても行われるようになっている。しかし、原子数が増加すると、この方法を用いるのが困難になるので、価電子のみを考慮し、また、計算上必要になる積分値などに経験的な数値を用いる半経験的分子軌道法を用いることが多い。これには、近似の性格が異なるいくつかの方法が知られているが、代表的なものとしては、拡張HMO法、CNDO法、AMI法などがある。

反結合性軌道
[よみがな] はんけつごうせいきどう
[英訳] antibonding orbital
水素分子は各水素原子が電子を一つずつ出し合うことで共有結合を形成しているが、結合の形態として結合性軌道(低エネルギー)と反結合性軌道(高エネルギー)の二つの軌道が存在し得る。結合性軌道においては、各原子の電子の波動関数の位相が揃っており、強め合うため、2つの原子核の間の領域に電子の存在確立が高くなり、2つの原子核を引き付け、結合性となる。反結合性軌道においては、各原子の電子の波動関数の位相が逆であり、弱め合うため、2つの原子核の間の領域に電子の存在確立が低くなるため、2つの原子核を引き付けることはなく、反結合性となる。水素以外の共有結合からなる分子においても同様の説明ができる。

反射電極
[よみがな] はんしゃでんきょく
[英訳] reflective electrode
有機EL素子において、内部で生じた発光を反射する電極。ボトムエミッション型では、基板と逆側に配置され、トップエミッション型では基板上に配置される。反射率が低いと光損失があるため、反射電極の材質は、一般にアルミ系か銀系が用いられる。

反転分布
[よみがな] はんてんぶんぷ
[英訳] population inversion
反転分布とは、物理学、とくに統計力学において、基底状態の粒子等(例えば、原子や分子)の数よりも、励起状態の粒子等の数の方が多いような系の状態をいう。 レーザーを発振するためには、反転分布が不可欠である。

半導体
[よみがな] はんどうたい
[英訳] semiconductor
半導体とは、電気伝導性の良い金属などの導体(良導体)と電気抵抗率の大きい絶縁体(不導体)の中間的な抵抗率をもつ物質を言う。代表的なものとしては元素半導体のケイ素やゲルマニウムなどがある。半導体は不純物の導入や、熱や光、磁場、電圧、電流、放射線などの影響でその導電性が顕著に変わる特徴を持つが、これらの特徴は固体のバンド理論によって説明される。バンド理論を用いれば、半導体とは、価電子帯を埋める電子は完全に詰まっている状態(充満帯)であるものの、禁制帯を挟んで、伝導帯を埋める電子は存在しない状態(空帯)である物質として定義される。有機半導体は、電気伝導性が半導体の領域になりうる有機物質のことを指す。その導電メカニズムは、無機の半導体と同様のものもあるが、電荷注入が可能な電極を選択した場合にのみ半導性を示し、それ以外の電極との組み合わせでは絶縁性を示す物質も包含されており、注意が必要である。

半導体レーザー
[よみがな] はんどうたいれーざー
[英訳] semiconductor laser
半導体レーザーは、半導体の再結合発光を利用したレーザーである。同じものを指すのに、ダイオードレーザーやレーザーダイオードという名称も良く使われる。半導体の構成元素によって発振する中心周波数、つまりレーザー光の色が決まる。レーザーの発振には反転分布の形成が必要であるが、このための励起機構としては、半導体に数ボルトの電圧を加えて電子を注入する方式が一般的である。基本的にはpn接合領域の両端から電子と正孔を加え、これらが再結合する時に光子の形でバンドギャップに相当するエネルギーを放出するのを利用する。量子井戸構造などを用いて電子と正孔を接合部の狭い領域に高密度に注入することで、最初の小規模放出光(=電磁波)が次々と誘導放出を招くことで継続的な発光現象を生じさせ、雪崩のように光量が増す効果を利用している。 誘導放出によって増幅された光は、共振器構造の発光領域内で幾度も反射を繰り返すため、同相状態で増幅されて定常的に発振し、位相の揃ったレーザー光がハーフミラーである端面から放射される。有機半導体レーザーもレーザーダイオードと同様の原理で通電するとレーザー発振する。

半透明太陽電池
[よみがな] はんとうめいたいようでんち
[英訳] semi-transparent solar cell
半透明の太陽電池で、建材一体型や自動車リアガラスなどへの用途が見込まれる。ペロブスカイト太陽電池や有機薄膜太陽電池の半透明型のものが開発されている。

バンドギャップ
[よみがな] ばんどぎゃっぷ
[英訳] band gap
結晶のバンド構造における、禁制帯のエネルギー幅。価電子帯の上部から伝導帯の下部までのエネルギーの差を指す。この幅が広いと絶縁体、狭いと半導体になり、かつ半導体の特性を左右する。有機半導体においては、主にHOMO-LUMOのエネルギー差を指すことが多い。光吸収などで光学的に測定した値と、サイクリックボルタンメトリーなどの電気化学的手法で測定した値で差がでることも多く、観測手法などの明示が必要となる。

バンド構造
[よみがな] ばんどこうぞう
[英訳] band structure
バンドとは、エネルギー差が非常に小さい数多くのエネルギー準位の集まりを、エネルギー的に連続であると見なしたもの。例としてN個の炭素原子から成るダイアモンド結晶中の電子のバンド構造を考える。もし炭素原子同士が互いに遠く離れていた場合、それぞれの炭素原子は同じエネルギーのs軌道とp軌道をもつ(縮退)。炭素原子が互いに近づくと軌道が重なり、異なるエネルギーを持つN個の軌道に分裂する。 Nは非常に大きい数であるため分裂したエネルギーの間隔は非常に狭く、連続的な帯状であると見なすことができる。これをエネルギーバンドまたは単にバンドと呼ぶ。 原子間距離では、価電子帯と伝導帯と呼ばれる2つのバンドを作る。それぞれ化学結合における結合性軌道と反結合性軌道に対応する。エネルギー的に隣り合うバンドのエネルギー差(エネルギーギャップ)はバンドギャップと呼ばれる。ダイアモンドの伝導帯と価電子帯のバンドギャップは5.5 eVである。バンドギャップにはエネルギー準位は存在しない。

バンド伝導
[よみがな] ばんどでんどう
[英訳] band conduction
シリコンなどのエネルギーバンドを形成する半導体における電荷の伝導機構を指す。シリコン中の電荷は、個々のシリコン原子に束縛された「粒子」ではなく、シリコン結晶の全体に拡がった「波動」としての性質をもち、電気伝導のメカニズムは、ちょうど水面を波が拡がっていくように、連続的な波動の伝播として説明することができる。有機半導体の中でもルブレンの単結晶は、シリコンの場合と同じように、分子の枠を超えて拡がった「波動」としての伝導電荷が実現することが明らかになっている。「波動」的な電荷は、結晶を構成する個々の原子に属することなく、広い範囲に拡がって存在しているため、電気伝導は連続的になり、速く移動することが可能になる。

バンドの曲がり
[よみがな] ばんどのまがり
[英訳] band bending
フェルミ準位の一致、フェルミ準位のピン止め参照

バンド理論
[よみがな] ばんどりろん
[英訳] band theory
束縛状態の電子が取りうるエネルギー準位は、特定の準位のみに限定され飛び飛びに(離散的に)なる。一方、固体中の外殻電子は、隣接する原子と電子との相互作用により、電子の取りうるエネルギー準位の幅が広がって連続的(バンド構造)になる。これがバンド理論である。一方で、電子が取りえないエネルギー準位も依然として存在し、バンドとバンドの間の空隙(ギャップ)となる。これをエネルギーバンドギャップという。エネルギーバンドの特徴は、絶縁体と金属の違いを説明することができる。絶縁体や半導体では、フェルミ準位は価電子帯と伝導帯の間のギャップの中に存在するため、自由電子が存在しない。一方、金属はエネルギーバンドの中にフェルミ準位が存在するため、バンドギャップを超えることなく電子がエネルギーを得ることができる、すなわち、わずかなエネルギーで電子を動かし、電流を流すことができる。

Peer to Peer(P2P)
[よみがな] ぴあつーぴあ
[英訳] Peer to Peer
Peer to Peer(ピア・ツー・ピア)とは、複数のコンピューター間で通信を行う際のアーキテクチャのひとつで、対等の者(Peer、ピア)同士が通信をすることを特徴とする通信方式、通信モデル、あるいは通信技術の一分野を指す。P2Pと略記することが多い。

P2P電力取引ビジネス
[よみがな] ぴあつーぴあでんりょくとりひきびじねす
[英訳] Peer to Peer power trading business
P2P電力取引ビジネスでは、個別の分散型電源の自律自動的運用という視点を持っている。現時点ではスマートメーターのデータを介し、実需給の後に需要家側の調達電力と発電側の供給電源を P2Pでマッチングするサービスが展開されている。将来的には需要家側の発電、需要量の予測により、実需給の前にP2P電力取引をすることが想定されている。 実需給時点で需要家と発電所で制御できることで、系統への負荷低減に寄与する。さらに今後、FIT制度の見直しに伴い、自家消費、オフサイト型 PPAモデル 、発電量予測等の需給一体での太陽光発電の活用に関連したビジネスモデルが出てくることが予想される。

PIN構造
[よみがな] ぴーあいえぬこうぞう
[英訳] pin structure
PINフォトダイオードの構造は、PN接合の間に真性半導体であるI層(Intrinsic Layer)を挟み込んだ構造になっている。PN構造との違いは、I層を挟むことで逆電圧を印加したときに空乏層が大きくなる。これにより、高速な応答特性を得ている。また、逆電圧を加えたときの暗電流もPN構造より優れている。

PERC(Passivated Emitter and Rear Cell)
[よみがな] ぴーいーあーるしー
[英訳] PERC(Passivated Emitter and Rear Cell)
PERC(Passivated Emitter and Rear Cell)とは、セル裏面側にパッシベーション層(不活性化層)を形成することで、キャリア(電子と正孔)の再結合で生じる発電ロスを抑制する技術。単結晶シリコン太陽電池モジュールは、キャリアが再結合して消滅するまでのライフタイムが長いため(変換効率が高くなる主要因)、PERCによる変換効率の向上が多結晶シリコン太陽電池に比べ顕著になる。

PERC型太陽電池
[よみがな] ぴーいーあーるしーがたたいようでんち
[英訳] Passivated Emitter and Rear Contact(PERC)
PERC型太陽電池は、BSF型太陽電池の改良として開発された。セル裏面に不活性化層(パッシベーション膜)を付加し、キャリア(正孔と電子)の再結合による発電ロスを制御することで発電効率の向上が可能となった。単結晶シリコン太陽電池モジュールは、キャリアが再結合して消滅するまでのライフタイムが長いため、PERCによる変換効率の向上が多結晶シリコン太陽電池に比べ顕著である。

PN接合
[よみがな] ぴーえぬせつごう
[英訳] pn junction
pn接合とは、半導体中でP型半導体の領域とN型半導体の領域が接している部分を言う。整流性、エレクトロルミネセンス、光起電力効果などの現象を示す。

pn接合型有機薄膜太陽電池
[よみがな] ぴーえぬせつごうがたゆうきはくまくたいようでんち
[英訳] pn junction organic solar cell
電子受容性(アクセプター性、n型)分子と電子供与性(ドナー性、p型)分子を接合させた構造を持つ有機薄膜太陽電池のことを指す。同種(ホモ)分子間の接合ではなく、異種(ヘテロ)分子間の接合をベースとすることから、ヘテロ接合型と呼ばれることもある。電子受容性分子の単独膜と電子供与性分子の単独膜を接合させたシングルヘテロ接合構造と電子受容性分子と電子供与性分子を混合したバルクヘテロ接合構造などがある。

P型遅延蛍光
[よみがな] ぴーがたちえんけいこう
[英訳] P-type delayed fluorescence
分子間で三重項-三重項消滅が起きると、遅延蛍光が観測される。すなわち、三重項-三重項消滅により、2つの分子の内、一方の分子が励起一重項状態となるため蛍光が生じる。三重項-三重項消滅による遅延蛍光は、ピレン(Pyrene)ではじめて観測されたことから、P型遅延蛍光と呼ばれている。

p型半導体
[よみがな] ぴーがたはんどうたい
[英訳] p-type semiconductor
p型半導体とは、正孔(ホール)が多数キャリアとして電荷を運ぶ半導体である。正の電荷を持つ正孔が移動することで電流が生じる。例えば、シリコンなど4価元素の真性半導体に、微量の3価元素(ホウ素、アルミニウムなど)を添加することでつくられ、不純物半導体に分類される。P型半導体をつくる為の添加物をアクセプタといい、この添加物によって形成された準位をアクセプタ準位と呼ぶ。正( positive)の電荷を持つ正孔が多数キャリアであることから、英語の頭文字をとってp型半導体と呼ばれる。有機半導体におけるp型半導体は、一般に電子ドナー性のπ電子系有機化合物のことを指し、HOMOが真空準位に対して浅いエネルギー準位に位置し、電子を他の分子などに与えやすい性質を特徴とする。p型有機半導体は、電子を与えた後にラジカルカチオン(正の荷電体)となり、これが有機半導体の正孔として機能する。

p型有機半導体
[よみがな] ぴいがたゆうきはんどうたい
[英訳] p-type organic semiconductor
p型半導体参照

p型有機半導体材料
[よみがな] ぴーがたゆうきはんどうたいざいりょう
[英訳] p-type organic semiconductor material
正孔を受け入れやすく(注入されやすく)、正孔をメインキャリアとして輸送する性質をもつ有機半導体材料を指す。

ピーク波長
[よみがな] ぴーくはちょう
[英訳] peak wavelength
吸収スペクトルや発光スペクトルにおいて、強度が極大あるいは最大となる波長のことを指す。例えば、有機ELの発光においては、極大波長で発光スペクトルを代表させることなどに使われる。

BCP電源
[よみがな] びーしーぴーでんげん
[英訳] BCP power supply
BCPとは、英語のBussiness Continuity Plan (事業継続計画)を略したもので、企業が非常事態に陥った時においても、重要な事業の継続が可能となるように事前に策定しておく計画のこと。BCP対策としての非常用電源(BCP電源)とは、電力供給が停止した際に一時的に電力が供給できる装置や設備のことで、太陽光発電と蓄電池、ディーゼル発電機、ガス発電機、ポータブル発電機(電池)、インバータ発電などがある。

pチャネルトランジスタ
[よみがな] ぴーちゃねるとらんじすた
[英訳] p-channel transistor
電界効果トランジスタのドレイン・ソース間の電流が流れる領域をチャネルという。p型チャネルでは正電荷を帯びた正孔がキャリアとなる。これに対し、n型チャネルでは負電荷を帯びた電子がキャリアとなる。

P_BSF型太陽電池
[よみがな] ぴーびーえすえふがたたいようでんち
[英訳] Back Surface Field(BSF)solar cell
p型シリコンウエハーの裏面に直接アルミニウム電極を形成するのではなく、間にBSFと呼ばれる裏面障壁を設けた型の太陽電池。低コストで作成できるが効率向上が望めない。BSF型の改良としてPERC(Passivated Emitter and Rear Contact)の開発が行われた。

PYS
[よみがな] ぴーわいえす
[英訳] Photoemission Yield Spectroscopy (PYS)
光電子収量分光法参照

PYSA
[よみがな] ぴーわいえすえい
[英訳] Photoemission Yield Spectroscopy in Air ( PYSA)
大気中光電子収量分光法参照

光アンテナ
[よみがな] ひかりあんてな
[英訳] optical antenna
単独の金属ナノ粒子、あるいはナノ(10億分の1)メートルサイズの金属粒子の周期構造は、表面プラズモン共鳴を通じて光を集めたり特定の方向に放出する効果があることから、光に対する微小なアンテナという意味で「ナノアンテナ」と呼ばれている。金属ナノ構造が示すプラズモン共鳴は、光局在化を伴うために光と分子との相互作用効率を向上させるのに役立つと期待されている。ナノ構造の形状によって共鳴波長を可視〜近赤外領域で自在に変えることができるため、光アンテナとしての利用を目指した研究が各所で行なわれている。

光アンテナ効果
[よみがな] ひかりあんてなこうか
[英訳] optical antenna effect
希土類錯体は、4f軌道間遷移(4f-4f遷移)に基づく発光を可視領域から近赤外領域に示す。しかしながら、4f-4f遷移遷移はLaporte禁制であるため、希土類イオンの直接励起で十分な発光強度を得ることは困難である。このため、希土類錯体では、配位子から希土類イオンへのエネルギー移動(光アンテナ効果)がしばしば利用される。このエネルギー移動機構では、光励起により配位子の励起一重項状態(S1)が生成し、その後、項間交差により励起三重項状態(T1)が生成する。配位子の励起三重項準位から、Forster機構またはDexter機構を介したエネルギー移動により、希土類イオンの励起状態が生成し、基底状態に戻るときに発光する。

光活性層
[よみがな] ひかりかっせいそう
[英訳] photoactive layer
太陽電池における光活性層は、光を吸収し電子と正孔を発生させる層。例えば、ITO/PEDOT:PSS/P3HT+PCBM/BCP/Al構造の有機薄膜太陽電池においては、P3HTが光吸収して励起子(電子と正孔が束縛されている状態)が生成し、電子をPCBMが受け取ることで正孔と電子の電荷分離(発電)を行っている。P3HTに残った正孔は正孔輸送層(PEDOT:PSS)を通してITOへ移動する。PCBMの電子はBCPを通してAlに移動する。カソードの正孔とアノードの電子と再結合することで外部回路に電流が流れる。

光還元
[よみがな] ひかりかんげん
[英訳] photoreduction
光の吸収によって起こる還元。通常の反応で還元されない物質でも、光を吸収することによって生じた励起分子などのため、還元反応が起こることがある。たとえば、チオニンやメチレンブルーは Fe2+ によっては還元されないが、光の照射により容易に還元される。ケトン類やアクリジンなどは、光の吸収によって生じるビラジカルが、他分子より水素原子を引き抜き遊離基となり、さらに遊離基の反応によりアルコールや 9,10-ジヒドロアクジンなどに還元される。

光吸収
[よみがな] ひかりきゅうしゅう
[英訳] light absorption
特定の分子が光を吸収するということは、その波長(もしくは振動数)に相当する光のエネルギーを分子が受け取ることである。電子は必ず分子軌道上に存在するため、分子はHOMOとLUMOのエネルギー準位差分に相当するエネルギーを持つ光が入射したときにはじめて光を吸収し(光の振動の見方では共鳴し)、その吸収したエネルギー分だけ高い空の軌道へと移る(光吸収による電子の遷移)。

光吸収端
[よみがな] ひかりきゅうしゅうたん
[英訳] optical absorption edge
半導体に光が入射した時、通常は光のエネルギーがバンドギャップよりも高くなければ吸収は起こらない。この吸収の起こる光の最小エネルギーを基礎吸収端と呼ぶ。半導体に高い電界を印加すると、基礎吸収端は長波長側に移動する(フランツ・ケルディシュ効果)。この効果は半導体中の電子の波動関数がバンドギャップにしみ出すことによって起こる。

光酸化
[よみがな] ひかりさんか
[英訳] photooxidation
光の吸収によって起こる酸化。酸化が起これば必ず還元も行われている。光の吸収によって生じる励起分子や遊離基が、直接酸素分子と化合して過酸化物を形成する場合と、生成した励起分子が酸素にエネルギー移して励起酸素を形成し、その励起酸素がほかの分子と化合する場合(光増感酸化)とがある。アントラセンや色素などの場合は後者の例である。

光触媒
[よみがな] ひかりしょくばい
[英訳] photocatalyst
光触媒は、太陽や蛍光灯などの光が当たると働き始める触媒の総称。例えば、酸化チタンは、光が当たると表面に強い酸化作用が発生し、有害化合物や細菌などを分解する作用を持っている。 酸化チタンに紫外線を当てると電子と正孔が生成され、これが水や酸素などと反応し、活性酸素や水酸ラジカル(・OH)を生成する。この活性酸素や水酸ラジカルは、非常に酸化性が高く有害化学物質などを分解する。

光電荷分離
[よみがな] ひかりでんかぶんり
[英訳] photocharge separation
光電荷分離は、ある中性分子に光を照射したときに生じる光励起状態から、電子アクセプター分子あるいは電子ドナー分子との間で電子移動が起き、大きな化学エネルギーをもつ陽イオン−陰イオン対(これを電荷分離状態と呼ぶ)を生成する反応である。

光伝導性(光導電性)
[よみがな] ひかりでんどうせい
[英訳] photoconductivity
半導体や絶縁体に短波長の光を照射し、物質内部の伝導電子が増加して電気伝導率が増加する物質の性質を光伝導性(光導電性)あるいは内部光電効果と呼ぶ。半導体や絶縁体において、価電子帯や不純物準位などにある電子が光子のエネルギーを吸収すると伝導帯などへ励起される。この励起された電子を光電子と呼ぶ。これによって伝導電子や正孔が増加し、導電性が増す。この性質を光伝導性(光導電性ともいう)。この時の電気伝導率の増加刄ミは、キャリアの電荷を e、キャリアの寿命を τ、移動度を μ、体積・時間あたりの光子数を f、1光子あたりに生じるキャリア数(量子効率)を η として、刄ミ=eτμηf で表される。この効果は半導体のみならず、酸化物や硫化物、有機物など非常に多様な物質で見られる。

光電流
[よみがな] ひかりでんりゅう
[英訳] photocurrent
物質が光を吸収して可動な電荷が発生し、その電荷が伝導することによって生じる電流のことを指す。有機半導体においては、紫外〜可視光を吸収して励起子(分子内で正と負の電荷が生じた状態)が生成し、電界等によって正孔と電子に分離して自由電荷となる。この正孔 and / or 電子が電界に応じて伝導することで光電流として観測される。

光閉じ込め技術
[よみがな] ひかりとじこめぎじゅつ
[英訳] optical confinement technology / light confinement technology
有機薄膜太陽電池は、有機材料の移動度が低いため、電気抵抗を下げる目的で発電層の厚さが約100nmと薄い。このため、発電層の光吸収量が低くなりがちである。この課題の解決のために、入射した光がデバイス外部に逃げないよう、デバイス内部に閉じ込める技術が要求される場合がある。例えば、モスアイ構造と呼ばれる構造を用い、入射光を斜めに曲げて繰り返し反射させることで発電層に閉じ込め、光の吸収量を増やすことで光電変換効率を高めることができる。

光取出し過程
[よみがな] ひかりとりだしかてい
[英訳] emission extraction process
有機ELにおいて、有機層中の発光を空気中へ取り出す過程のこと。有機層の屈折率は1.7近辺であり、屈折率1.0の空気中に取り出す過程において、大部分の光は屈折率の界面で全反射して失われてしまう。

光取出し効率
[よみがな] ひかりとりだしこうりつ
[英訳] light-extraction efficiency / Out-Coupling Efficiency(OCE)
デバイス内部で発生した光がデバイス外部に取り出される割合。有機ELの場合、発光層の内部で発生した光が外部に取り出される効率を指す。発光層の屈折率をnとし、空気中に光を取り出す場合、1/(2n^2)が光取り出し効率の一つの指標となる。nは発光層の屈折率である。n=1.7を仮定すると、光取り出し効率は17%程度となり、実に83%もの光が素子内部で失われることを意味する。このため、素子内の光学干渉条件の改善や、光取り出し形状の付与などの方法で光取り出し効率を改善する方法が検討されている。

光半導体
[よみがな] ひかりはんどうたい
[英訳] optical semiconductor
紫外光、可視光の照射により、暗所で観測される電流より数桁大きな電流が流れる有機材料は光半導体と呼ばれる。暗所では電子的キャリアが極めて少ないので、絶縁体のような性質が観測されるが、光照射により材料中に正負の電子的なキャリアが大量に発生すると、キャリアは印加電圧によって容易に移動し、大きな電流が流れる。ほとんどの場合、光照射によりキャリア数は増大するが、キャリア移動度自体が増大しているわけではない。

光マネジメント
[よみがな] ひかりまねじめんと
[英訳] optical management
太陽電池の変換効率の向上には、発電層の改良が中心となるが、それに加えて太陽から入射する光を効率よく光吸収層に吸収させる技術である光マネジメント技術も重要である。光マネジメント技術として、@反射防止技術(Anti-reflection)、Aライトトラッピングがある。特に薄膜系太陽電池ではライトトラッピングが重要となる。薄膜系太陽電池の光吸収層の膜厚は数μmと薄く光を十分に吸収できない。膜厚を厚くすれば光の吸収は増加するが、変換効率(取り出せる電流)は膜厚に比例しないため発電コストに見合わない。ガラスやTCO表面に凹凸のテクスチャ形状を形成したテクスチャ基板は、入射光を散乱(回折)させ、光吸収層内の光路長を増加させる(ライトトラッピング)ことで変換効率を上げることができる。

光励起
[よみがな] ひかりれいき
[英訳] optical excitation / photo-excitation
光は光量子(または光子)と呼ばれるエネルギー粒子の流れであり、物質に光があたると物質内の電子はこのエネルギーを得て高いエネルギー状態になる。これを光励起と呼ぶ。光励起では、光吸収後の内部転換によって、ほぼ100%の確率で励起一重項状態が生成する。光励起された物質の多くはもとの状態にもどるが、種類によっては分解したり、他の物質と化学反応を起こして新しい物質を生じる。

非共役系高分子
[よみがな] ひきょうやくけいこうぶんし
[英訳] non-conjugated polymer
非共役系高分子は、主鎖方向へのπ電子の共役がない高分子を指す。ビニルカルバゾールは非共役高分子の例であり、主鎖のポリエチレンに機能性構造のカルバゾールを側鎖に有する構造を持っている。この場合、光電子機能性は、側鎖のカルバゾールが担い、主鎖のポリエチレンは熱物性や成膜性、機械的特性を高める役割を担っている。

非局在化電子
[よみがな] ひきょくざいかでんし
[英訳] delocalized electron
化学において、非局在化電子は、単一の原子あるいは共有結合と結び付いていない分子、イオン、固体金属中の電子である。この用語は一般的に異なる分野では若干異なる意味を持つ。有機化学では、これは共役系および芳香族化合物における共鳴を意味する。固体物理学では、電気伝導を容易にする自由電子を意味する。量子化学では、複数の隣接する原子にわたって広がった分子軌道を意味する。ベンゼンの単純な芳香環において、 C6環にわたる6つのπ電子の非局在化はしばしば丸によって図示される。6本のC-C結合が等距離であるという事実がこの非局在化の一つの現われである。原子価結合法では、ベンゼンの非局在化は複数の共鳴構造によって表わされる。

ピクセル(画素)
[よみがな] ぴくせる(がそ)
[英訳] pixel
コンピュータで画像を扱うときの色情報 (色調や階調) を持つ最小単位、最小要素。しばしばピクセルと同一の言葉として使われるドットとは、後者が単なる物理的な点情報であることで区別される。例えばディスプレイにおいて320×240ピクセルの画像を100%表示すれば320×240ドットとなるが、200%表示ならば640×480ドットとなる。

非結合性軌道
[よみがな] ひけつごうせいきどう
[英訳] non-bonding orbital
非結合性軌道は、電子による占有が関与する原子間の結合次数を増加も減少もさせない分子軌道である。非結合性軌道は分子軌道ダイアグラムおよび電子遷移表記法においてしばしば文字nで表される。分子軌道法における非結合性軌道はルイス構造における孤立電子対に相当する。非結合性軌道のエネルギー準位は典型的には、より低いエネルギーの原子価殻結合性軌道とそれに対応するより高いエネルギーの反結合性軌道との間にある。そのため、電子によって占有された非結合性軌道は通常はHOMO(最高被占分子軌道)となる。

微結晶シリコン太陽電池
[よみがな] びけっしょうしりこんたいようでんち
[英訳] microcrystalline silicon solar cell
微結晶シリコン型太陽電池とは、結晶シリコン型と薄膜型の中間の性質を持つ太陽電池。50〜100μm程度の微細なシリコン結晶を、薄膜型太陽電池の製造法と同じ方法で、ガラス基板に蒸着させる。微結晶シリコンは、主としてシリコンと水素原子から構成される太陽電池材料で、非常に微細なシリコンの結晶子がアモルファス(非晶質)シリコン層に囲まれた複合的な構造をもつ。光学的特性は完全な結晶体からなるバルクの結晶シリコンとほぼ同じで、可視域〜近赤外域で発電できる太陽電池材料である。アモルファスシリコンと同様にプラズマ援用化学気相堆積法でメートルサイズの大面積に一括製膜できる。なおアモルファスシリコンは光照射によって性能が劣化することが知られているが、微結晶シリコンはほとんど光劣化を示さない。

飛行時間型二次イオン質量分析法(ToF-SIMS)
[よみがな] ひこうじかんがたにじいおんしつりょうぶんせきほう
[英訳] Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry(ToF-SIMS)
飛行時間型二次イオン質量分析法(ToF-SIMS)は、固体試料にイオン(一次イオン)を照射し、その表面からスパッタリング現象により放出される粒子のうち、電荷を持ったもの(二次イオン)を、飛行時間差(飛行時間は重さの平方根に比例)によって質量分離し、固体表面をキャラクタリゼーションする手法である。放出される二次イオンはその大部分が固体表面の一原子または一分子層から放出されるため、ToF-SIMS 法はナノメートルレベルの組成を同定できる表面分析法の一つとして知られている。ToF-SIMS の質量スペクトル解析からは表面に存在する元素、ならびに無機や有機化合物を高感度に定性できる。また、一次イオンを走査させることにより、100 nm レベルの空間分解能で化合物などから発生した二次イオンのイメージが取得でき、更に、イオンエッチングを併用すると nm レベルの精度で質量スペクトルや二次イオンイメージを表面から深さ方向に観察することも可能になる。

比視感度
[よみがな] ひしかんど
[英訳] luminosity function, or photopic luminous efficiency function
比視感度とは、ヒトの目が光の各波長ごとの明るさを感じる強さを数値で表したものである。明るい場所に順応したときに、ヒトの目が最大感度となる波長での感じる強さを "1" として、他の波長の明るさを感じる度合いをその比となるよう、1以下の数で表したものである。明るい所では555nm付近の光を最も強く感じ、暗いところでは507nm付近の光を最も強く感じるとされる。標準比視感度とは、国際照明委員会(CIE)と国際度量衡総会では、ヒトの比視感度の平均から世界標準となる「標準比視感度」が規定された。標準比視感度には「明所視標準比視感度」と「暗所視標準比視感度」がある。特に断らない場合は、視感度といえば明るい環境でのヒトの目の感じ方である明所比視感度のことを指す。

微小共振器EL
[よみがな] びしょうきょうしんきいーえる
[英訳] microcavity EL
微小共振器構造を持つ有機ELのこと。有機ELは、2つの電極に挟まれており、透明電極であっても、屈折率の差が大きいために、有機層と電極の界面では反射成分がある。有機層側に反射された光は、有機層内の光と干渉する。有機EL素子の膜厚は一般に光の波長のオーダーであり(100nm-200nm)、比較的強い光干渉が内部で起こる。透明電極を反射率が高い半透明電極とすれば、この光干渉がより強くなり、デバイス全体として微小共振器として設計可能である。

微小共振器構造(マイクロキャビティ構造)
[よみがな] びしょうきょうしんきこうぞう
[英訳] microcavity structure
光共振器とは、特定の間隔の対向する鏡面によって一定の波長の光のみを選別する機能を有する素子である。閉じ込める次元の数により、3次元共振器(箱、ドット)、2次元共振器(細線)、1次元共振器(面、薄膜)と区別される。特に、この特性長を発光波長のオーダーにまで小さくし、発光媒体自身を共振器内部に置い たものを微小共振器と呼ぶ。発光波長のオーダーの特性長の共振器構造では、共振の生じるそれぞれの波長の間隔が十分に広くなり、素子内部で発生する発光を共振構造により制御して素子外部に取り出すデバイスがきわめて効果的に実現できる。

非輻射緩和(非放射緩和)
[よみがな] ひふくしゃかんわ(ひほうしゃかんわ)
[英訳] non-radiative relaxation
励起状態から基底状態に戻る際に、光でなく熱を放出してエネルギーが緩和されること。

微分コンダクタンス
[よみがな] びぶんこんだくたんす
[英訳] differential conductance
コンダクタンスとは、回路における電流の流れやすさのこと。直流回路では電気抵抗の逆数、交流回路ではインピーダンスの逆数の実数部で単位はジーメンス(S)。導線のコンダクタンス(G)は、太いほど大きく、長いほど小さくなる。G=σA/L ここで、Lは長さ(m)、Aは断面積(m2)、σは電気伝導率(S/m)である。微分コンダクタンスはコンダクタンスを微分したものである。

比誘電率
[よみがな] ひゆうでんりつ
[英訳] relative permittivity
比誘電率とは、媒質の誘電率と真空の誘電率の比 ε / ε0 = εrのことである。比誘電率は無次元量であり、用いる単位系によらず一定の値をとる。

ヒュッケル近似の分子軌道法(HMO法)
[よみがな] ひゅっけるきんじのぶんしきどうほう
[英訳] Huckel's molecular orbital method
量子論を化学に応用してみると、それまで不可解であったさまざまな現象に 説明を付けることできる。分子の電子の状態を量子論的に計算することは一般には大計算であるが、 1931年にE.Huckel が考案したHuckel 近似を用いると、その大雑把な近似にも関わらず、分子の電子状態の定性的振舞を比較的簡単に 知ることができる。ヒュッケル法では電子に関する積分に対して以下のような近似を導入する。・重なり積分の値は同じ原子軌道同士では1、異なる原子軌道の間では0とする。・クーロン積分(ハミルトニアン行列の対角要素)の値は同じ種類の原子では等しいものとし、パラメータα によって表す・共鳴積分(ハミルトニアン行列の非対角要素)の間に結合を持つ原子間でのみ0でない値をもつとし、パラメータβによって表す。

標準電極電位
[よみがな] ひょうじゅんでんきょくでんい
[英訳] standard electrode potential
標準電極電位は、ある電気化学反応(電極反応)について、標準状態(反応に関与する全ての化学種の活量が1で平衡状態)の電極電位である。標準電位(standard potential)、標準還元電位(standard reduction potential)とも呼ばれる。標準電極電位は標準水素電極の電位を基準(0 ボルト)として表すと約束されている。したがって、標準水素電極と測定対象の電極を組み合わせて作った電池の標準状態における起電力は標準電極電位と等しい。このとき、規約により標準水素電極の電極反応は酸化反応(アノード反応)として表すことになっているため、 測定対象電極の電極反応は全て還元反応(カソード反応)として表現される。

表面再結合
[よみがな] ひょうめんさいけつごう
[英訳] surface recombination
絶縁体あるいは半導体中における電子と正孔の結合は、いわゆる再結合中心を通じて行われる。一般に固体の表面は内部と異なり、化学的な不純物が入りやすく格子欠陥ができやすいため、再結合中心が多く存在し再結合の行われる機構も複雑となる。

表面準位
[よみがな] ひょうめんじゅんい
[英訳] surface level
結晶の表面近くにのみ限られて存在する電子のエネルギー準位。表面近くと内部で位置エネルギーが違うためにできる準位,表面に吸着された他の分子によってできる準位などもある。半導体においては電子と正孔の再結合が表面準位で行われるなど,電気的性質に大きい影響を与える。

表面パッシベーション
[よみがな] ひょうめんぱっしべーしょん
[英訳] surface passivation
結晶シリコン太陽電池の変換効率を向上させるには、1)光の吸収量を増やすこと、2)光吸収により生成された少数キャリアの多くを発電に寄与させること、が必要である。1)関しては、受光面側の電極を排することなどでより多くの光を吸収することが可能となる。2)に関しては、結晶の高品質化と並んで結晶表面の不活性化が重要である。結晶の表面は少数キャリアとの再結合が起こりうる。光吸収により生成した少数キャリアが再結合するとそれらは発電に寄与しない。表面の不活性化に用いられるのがパッシベーションと呼ばれる技術である。不活性化の基本的な考え方は、結晶表面に存在する未結合手を終端することである。

表面プラズモン共鳴(SPR)
[よみがな] ひょうめんぷらずもんきょうめい
[英訳] Surface Plasmon Resonance(SPR)
表面プラズモン共鳴(SPR)とは、固体あるいは液体中の電子が、入射した光によって集団振動を誘導される現象、あるいは、その集団振動のことである。共鳴条件は、光量子(フォトン)の周波数が表面電子の自然周波数(原子・分子中で電子は、正電荷である原子核の復元力に対して周期的に振動している)と一致する時に達成される。ナノメートルサイズの構造におけるSPRは局在表面プラズモン共鳴と呼ばれる。有機デバイスでは、電荷が移動できる距離が短いので、有機半導体膜の厚さに制約があり、入射光を十分に捕捉できないことが多い。一方、金や銀などのナノ粒子は光を吸収するとナノ粒子内の自由電子の集団振動(プラズモン共鳴)が起こり、光がナノ粒子周辺に留まるので、近くの有機半導体分子が励起される機会を増加させる。また、金属ナノ粒子のプラズモン共鳴は、近隣に強く増強された電場をもたらし、その影響を受けた有機半導体分子の発光速度を増加させる。

ビルトイン電位
[よみがな] びるといんでんい
[英訳] built-in potential
内蔵電位参照

ピンチオフ
[よみがな] ぴんちおふ
[英訳] pinch off
トランジスタのゲート電極とソース電極の間に電位差があると、ソース電極から有機層内にキャリアが注入されてチャネルを形成する。チャネル内のキャリア数はドレイン電極に近づくにつれて少くなる。一方、ドレイン電極とソース電極間の電位差が大きくなるとチャネルはドレイン電極から次第に離れ、ついには完全に離れる。この完全に離れる点をピンチオフという。ピンチオフとなる点(ピンチオフ点)のドレイン電圧Vdは、Vd=VgーVth である(Vg:ゲート電圧、Vth:閾値電圧)。

ファーム接続
[よみがな] ふぁーむせつぞく
[英訳] firm connection
コネクト&マネージ参照

Fowler-Nordheim 理論
[よみがな] ふぁうらーのるとはいむりろん
[英訳] Folwer-Nordheim theory
Fowler-Nordheim 理論は、静電場のかかった金属表面から、伝導電子がトンネル効果によりポテンシャル障壁を抜けて外部へ放出される確率を取扱う。放出電流密度 [A/m2] を算出する式を与える。

ファンデルワールス結合
[よみがな] ふぁんでるわーるすけつごう
[英訳] van der Waals binding
電荷を持たない中性の原子あるいは分子が、主としてファンデルワールス力で凝集している場合を、化学結合の区分の一つとしてファンデルワールス結合と呼ぶ。永久双極子(双極子モーメント)を持つハロゲン化アルキルなど電荷的には中性であるが定常的に分極している物質の凝集も、必ずしも典型的なファンデルワールス力ではないが、ファンデルワールス結合の範疇に含める。それ故、ファンデルワールス結合の元になる分子間力という意味で、広義のファンデルワールス力が定義されることが多い。

ファンデルワールス力
[よみがな] ふぁんでるわーるすりょく
[英訳] van der Waals force
ファンデルワールス力は、原子、イオン、分子の間に働く力(分子間力)の一種である。ファンデルワールス力は、励起双極子やロンドン分散力などが元になって引力が働くと考えられている。すなわち、電荷的に中性で、かつ双極子モーメントがほとんどない無極性な分子であっても、分子内の電子分布は、定常的に対称で無極性な状態が維持されるわけではない。瞬間的には非対称な分布となる場合があり、これによって生じる電気双極子(双極子モーメント)が、同様にして出来た周りの分子の電気双極子同士と相互作用することによって凝集力を生じる。ファン・デル・ワールス力は最も弱い力であるが、それにも関わらず凝縮や凝集の過程、そして原子・分子物質の相挙動を支配する最も決定的な相互作用である。

FIT(固定価格買取制度)
[よみがな] ふぃっと
[英訳] Feed-in Tariff(FIT)
FITとは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(Feed-in Tariff)のことを指す。一般家庭や事業者が再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が買い取ることを国が約束する制度で、国内での再生可能エネルギーによる発電の普及を目的とし、日本では「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT法)」に基づき2012年7月に開始した。発電方法や電力量によって定められた期間中は、単価を変えることなく電力会社が買い取ることが義務付けられている。

封止
[よみがな] ふうし
[英訳] encapsulation
封止とは、精密部品などが外気に触れないように隙間なく包むこと。有機ELや有機太陽電池などの素子の封止は、デバイスが形成された基板と、封止基板、乾燥剤、エポキシ接着剤などにより行う。封止はデバイスが大気暴露されないように作製直後に大気暴露のないグローブボックス内で行う。封止の方法は、例えば、UV光硬化樹脂を封止ガラスに塗布して基板と付け合わせ、硬化剤部位に沿ってUV光を照射することで封止ガラスを基板に接着し素子を封止する。これにより、外部からの空気と水の侵入を防ぎ、ダークスポットの発生・成長を防ぐとともに飛躍的に寿命を延ばすことができる。

Poole-Frenkel モデル
[よみがな] ぷーるふれんけるもでる
[英訳] Poole-Frenkel model
Poole-Frenkel モデルは、分子のポテンシャルにトラップされた電荷が、隣の分子に移るために大きな熱活性化エネルギーを超える必要があるとするモデルであり、外部電場の印加によって一方向の活性化エネルギーが減少することで、その方向へ活性化されやすくなり、ホッピング伝導が進行するというモデルである。

face-on 配向
[よみがな] ふぇいすおんはいこう
[英訳] face-on orientation
face-on 配向とは、ある平面に対して芳香環が並行に配列する構造を指す。

face-to-face
[よみがな] ふぇいすつーふぇいす
[英訳] face-to-face
分子配列において、隣り合う分子どうしの分子面(face)が重なり合った配列。

フェルスター機構(蛍光共鳴エネルギー移動)
[よみがな] ふぇるすたーきこう
[英訳] Forster Resonance Energy Transfer (FRET)
蛍光共鳴エネルギー移動とは、近接した2個の色素分子の間で励起エネルギーが、電磁波にならず電子の共鳴により直接移動する現象。このため、一方の分子で吸収された光のエネルギーによって他方の分子にエネルギーが移動し、受容体が蛍光分子の場合は受容体から蛍光が放射される。一重項励起子は、一般にこの機構でエネルギー移動する。

フェルミ準位
[よみがな] ふぇるみじゅんい
[英訳] Fermi level
電子などのフェルミ粒子が、相互作用がない状態で、絶対零度において有する化学ポテンシャルのことをフェルミエネルギーあるいはフェルミ準位と呼ぶ。金属など、フェルミ準位にエネルギー準位が存在する場合、絶対零度ではフェルミエネルギーより高いエネルギー準位の占有数は0となることから「零度におけるフェルミ粒子によって占められた準位のうちで最高の準位のエネルギー」と表現される。また、金属では通常、伝導帯の半分が電子で満たされた状態になっており、電子が存在する最もエネルギーの高い準位をフェルミ準位と呼ぶ。一方、半導体や絶縁体の場合、フェルミエネルギーは伝導帯と価電子帯の間のバンドギャップの中にあり、エネルギー準位が存在しない。真性半導体のフェルミエネルギーはバンドギャップのほぼ中央に位置するが、ドープ量が多くなると、フェルミエネルギーの位置はバンド端の近くになる。半導体におけるフェルミ準位は、ドーピングによってコントロールすることができる。p型半導体とn型半導体を接合させた界面においては、フェルミ準位をそろえるように、バンド構造が曲がる挙動を示すことから、フェルミ準位を理解することは半導体工学上重要である。

フェルミ準位の一致
[よみがな] ふぇるみじゅんいのいっち
[英訳] Fermi level match
P型半導体とN型半導体を接触させると、接合面の両側では伝導電子および正孔のキャリア密度に大きな差がある。? 伝導電子と正孔は、それぞれの濃度勾配を解消する方向に移動(拡散)し、互いに再結合して消滅する。境界面には、伝導電子も正孔も存在しない空乏層が形成される。空乏層には、移動できないドナーおよびアクセプタイオンが存在するので、空間電荷領域とも呼ばれる。この領域のイオン化したドナーおよびアクセプタにより、キャリアの移動を妨げる方向の電界が発生し、エネルギーバンドは曲がる。? キャリアの移動は、同一エネルギー準位におけるキャリアの存在確率が等しくなると停止する。すなわち、N型領域とP型領域のいたるところでフェルミ準位が一致する。空乏層領域内の電界により発生する電位差を拡散電位またはビルトインポテンシャル(内蔵電位)と呼ぶ。

フェルミ準位のピン止め
[よみがな] ふぇるみじゅんいのぴんどめ
[英訳] Fermi level pinning
金属と有機半導体の界面の電子構造において、金属のフェルミ準位が有機半導体のHOMOより低い場合は、有機半導体から金属へ電子が移動して両者が一致し(金属のフェルミ準位が有機半導体のHOMOにピン止めされ)、界面で有機半導体の真空準位が金属の真空準位よりも低くシフトする。また、金属のフェルミ準位が有機半導体のLUMOより高い場合は、金属から有機半導体へ電子が移動して両者が一致し(金属のフェルミ準位が有機半導体のLUMOにピン止めされ)、界面で有機半導体の真空準位が金属の真空準位よりも高くシフトする。これらの金属のフェルミ準位のピン止めを引き起こす電子移動は、整数電子移動と呼ばれている。

フォトクロミズム
[よみがな] ふぉとくろみずむ
[英訳] photochromism
フォトクロミズムとは、光の作用により、単一の化学種が分子量を変えることなく色の異なる二つの異性体を可逆的に生成する現象を言う。二つの異性体は性質が異なる分子であるため、光によって可逆的に分子の物性を変換させることが可能である。

フォトダイオード
[よみがな] ふぉとだいおーど
[英訳] photodiode
フォトダイオードは光センサーと呼ばれるものの一部で、素子のPN接合部に光を照射すると電流や電圧が発生する。構造は一般のダイオードと同様に、P型半導体とN型半導体のPN接合で構成される。N型半導体には動きやすい電子が多いため、その一部がP型半導体に移動して正孔と結合し電荷を打ち消し合い、空乏層と呼ばれる領域がでる。空乏層のN型半導体では電子がなくなるので+に、P型半導体では正孔がなくなるので−に帯電し、内部電界が発生する。空乏層に光を照射すると、そのエネルギーを得て電子と正孔が発生し、内部電界により電子はN型半導体側の電極へ、正孔はP型半導体側の電極へ移動し電力が発生する。これを光起電力という。

フォトニクス
[よみがな] ふぉとにくす
[英訳] photonics
光工学のこと。電子(エレクトロン)を扱う電子工学(エレクトロニクス)に対して、光子(フォトン)を扱う工学をフォトニクスとよぶ。光学(オプティクス)を取り入れた電子工学は光エレクトロニクス(オプトエレクトロニクス)という。光は波(電磁波)と粒子(光子)、両方の性質をもつが、その粒子性に着目した研究や技術開発を指す。1960年代のレーザー開発やオプトエレクトロニクス研究の進展以降、注目されている分野であり、光通信、光半導体や光デバイスなど、実用化が進められている技術も多い。とくに、ナノ(10億分の1)メートルの精度で技術開発が行われているナノフォトニクスでは、ナノスケールでの加工や計測、さらにナノ物質など、材料工学の面からも期待は大きい。

フォトニック結晶
[よみがな] ふぉとにっくけっしょう
[英訳] photonic crystal
フォトニック結晶とは、屈折率が異なる物質を光の波長と同程度の間隔で並べた、ナノ周期構造を持つ人工結晶。光が内部に閉じ込められたり、侵入できなかったりする現象が起きる。ナノテク・半導体技術で実現され、様々な応用可能性のある光技術デバイスとして活用する研究が近年加速度的に進展している。フォトニック結晶レーザーは、その応用例であり、フォトニック結晶を用いて光を内部に閉じ込め、共振させつつ外部に取り出す。

フォトルミネッセンス
[よみがな] ふぉとるみねっせんす
[英訳] Photoluminescence
フォトルミネッセンス(PL)とは、物質に光を照射し、分子の電子状態を励起し、その励起した分子が基底状態に戻る際に発生する光のこと。

フォトン(光子)
[よみがな] ふぉとん
[英訳] photon
光子(フォトン)とは、光の粒子である。物理学における素粒子の一つであり、光を含む全ての電磁波の量子かつ電磁力の媒介粒子である。

フォノン
[よみがな] ふぉのん
[英訳] phonon
固体における格子振動の音波を量子化したときのエネルギー量子。P.J.W. Debye(デバイ)が固体の比熱が低温で0に近づくことを説明するのに使った概念。光波を量子化して光子とよんだように、結晶中の音波を量子化してフォノンとよんだ。現在は結晶ばかりでなく、固体中の原子の振動を量子化するときはすべてフォノンとよぶようになっている。フォノンは、光子と同様に生成や消滅をすることができ、質量は存在しない。振幅が大きくなる、つまり振動が激しくなることはフォノンの数が増えることで表される。比熱や熱伝導はフォノン間の相互作用として、金属の電気抵抗や低温での超伝導はフォノンと電子との相互作用として説明される。

フォノン散乱
[よみがな] ふぉのんさんらん
[英訳] phonon scattering
フォノンは物質を伝搬する際にいくつかのメカニズムによって散乱する。これらの散乱メカニズムは、ウムクラップ散乱、不純物散乱、フォノン-電子散乱、および境界散乱である。 それぞれの散乱メカニズムは、対応する緩和時間の逆数である緩和速度によって特徴付けることができる。

負荷周波数制御(LFC)
[よみがな] ふかしゅうはすうせいぎょ
[英訳] Load Frequency Control(LFC)
負荷周波数制御(LFC)とは、定常時における電力系統の需給バランスをとるため、系統周波数や連系線潮流の変化を検出して発電機の出力を変化させる制御のことをいう。AFC(Automatic Frequency Control)と呼ばれることもある。LFC は需要変動のうちの主に数分から20 分周期程度の変動成分を吸収している。それより長い周期の変動成分に対しては、EDC による予測に応じて最も経済的となるように、先行的に各発電機の出力が調整される。また、それより短い周期の変動成分は発電機のガバナフリー制御(回転数を一定に保つように出力を変化させる制御)や負荷特性(自己制御性)によって吸収される。

輻射失活/無輻射失活
[よみがな] ふくしゃしっかつ/ むふくしゃしっかつ
[英訳] radiation deactivation / non-radiation deactivation
一重項励起状態から一重項基底状態へ戻る過程は、スピン反転を伴わないため許容となりスムーズに起こる。 その際、光を放出しながら戻る過程を輻射失活と呼ぶ。これに対し、熱を放出しながら戻る過程を無輻射失活と呼ぶ。また、一重項励起状態から一重項基底状態への輻射失活を蛍光と呼ぶ。

複素環式化合物
[よみがな] ふくそかんしきかごうぶつ
[英訳] heterocyclic compound
複素環式化合物は、環の中に少なくとも2種類の異なる元素を含む環式化合物である(炭素以外の原子を環の構成元素に持つ有機化合物)。芳香族性を有する芳香族複素環と、それ以外に大きく分類される。炭素以外の元素としては窒素、酸素、硫黄が一般的である。

不純物散乱
[よみがな] ふじゅんぶつさんらん
[英訳] impurity scattering
キャリア散乱参照

不純物準位
[よみがな] ふじゅんぶつじゅんい
[英訳] impurity level
不純物を添加することにより半導体の禁止帯中に発生する準位で、この不純物のまわりに電子が局在したり欠けていることによって生じる。この準位には、伝導帯の下端近くに存在するドナー準位(伝導帯に電子を供給する)と、価電子帯の上端近くに存在するアクセプター準位(価電子帯に正孔を供給する)がある。また、外部から加えられた不純物によるものだけでなく、結晶中の格子欠陥に由来する準位も不純物準位という。伝導帯または価電子帯に近い準位は、室温程度の熱エネルギーで自由電子または正孔を励起し電気伝導に寄与する。禁止帯の中心部付近に存在する深い準位は、キャリヤーに対して捕獲中心や再結合中心として働くことが多くある。

不純物による劣化
[よみがな] ふじゅんぶつによるれっか
[英訳] degradation by impurities
有機EL素子の膜内に存在するイオン性不純物や酸素、水などにより輝度劣化がおこること。

不純物半導体(外因性半導体)
[よみがな] ふじゅんぶつはんどうたい(がいいんせいはんどうたい)
[英訳] extrinsic semiconductor
不純物半導体または外因性半導体とは、純粋な真性半導体に不純物(ドーパント)を微量添加(ドーピング)した半導体のこと。ドーピングする元素により、キャリアがホール(正孔)のP型半導体と、キャリアが電子のN型半導体に分類される。N型とP型のどちらになるかは、不純物元素の原子価、その不純物によって置換される半導体の原子価によって決まる。 例えば原子価が4であるケイ素にドーピングする場合、原子価が5であるヒ素やリンをドーピングした場合がN型半導体、原子価が3であるホウ素やアルミニウムをドーピング場合がP型半導体になる。

不整結晶(不完全結晶)
[よみがな] ふせいけっしょう
[英訳] imperfect crystal
格子欠陥や不純物を含む結晶。結晶格子に配列の乱れがない完全結晶は事実上存在しないため、結晶構造の乱れに大きく依存する物理的性質を調べる際に、不完全結晶と呼んで区別する。不整結晶。

フタロシアニン
[よみがな] ふたろしあにん
[英訳] Phthalocyanine
フタロシアニンは、4つのフタル酸イミドが窒素原子で架橋された構造をもつ環状化合物。ポルフィリンに類似した構造を持つ。中心部分は遷移金属をはじめとした様々な元素と錯形成し、安定な錯体を形成する。分子全体にπ電子共役系が広がっているため、平面構造をとり、また強い色を呈する。有機半導体の一般的なキャリアはホールや電子である。ほぼ全ての有機化合物は絶縁体であるが、広い共役系を持つ分子の場合、電子が電子雲を経由して移動することが可能である。多環芳香族炭化水素やフタロシアニンの結晶がこの有機半導体の例である。

プッシュ型系統
[よみがな] ぷっしゅがたけいとう
[英訳] push type system
再生可能エネルギーの大量導入を前提とした系統整備については、電源からの要請に都度対応する「プル型」の系統形成から、電源のポテンシャルを考慮し、計画的に対応する「プッシュ型」の系統形成への転換に向けた検討が進められている。

プッシュバック効果
[よみがな] ぷっしゅばっくこうか
[英訳] pushback effect
電極と有機半導体層の界面において、電極表面から真空側に浸みだした電子を有機半導体層が押し戻すことにより界面に双極子が形成される効果。これに伴い、電極に対して有機半導体層の真空順位が低い側へシフトする。

物理気相成長(PVT)、物理蒸着(PVD)
[よみがな] ぶつりきそうせいちょう
[英訳] Physical Vapor Transport(PVT) / Physical Vapor Deposition (PVD)
物理気相成長(PVT)または物理蒸着(PVD)は、物質の表面に薄膜を形成する蒸着法のひとつで、気相中で物質の表面に物理的手法により目的とする物質の薄膜を堆積する方法である。切削工具や各種金型への表面処理や、半導体素子の製造工程に於て一般的に使用されている。物理蒸着法には、スパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、分子線蒸着法、真空蒸着法などがある。有機半導体材料の薄膜は温和な条件で成膜することが望ましく、真空蒸着法が多用されれている。また、電極については、ITOなどの金属酸化物は融点が高く蒸着法が困難であるため、スパッタ法による成膜が一般的である。

フラーレン
[よみがな] ふらーれん
[英訳] fullerene
フラーレン は、閉殻空洞状の多数の炭素原子のみで構成されるクラスターの総称である。共有結合結晶であるダイヤモンドおよびグラファイトと異なり、数十個の原子からなる構造を単位とする炭素の同素体である。最初に発見されたフラーレンは、炭素原子60個で構成されるサッカーボール状の構造を持ったC60フラーレンである。

フラーレン誘導体
[よみがな] ふらーれんゆうどうたい
[英訳] fullerene derivative
フラーレンに置換基を付加した化学構造を持つ化合物のことを指す。フラーレンは電子受容体として優れているが、フラーレンC60 そのものは電子親和力が高すぎて低い電圧しかとれない点と有機溶媒に対する溶解度が低い点に課題があり、その解決のために様々なフラーレン誘導体が開発されている。

プラットフォーマー
[よみがな] ぷらっとふぉーまー
[英訳] platformer
第三者がビジネスを行うためのプラットフォームとして利用される製品、サービス、システムなどを提供、運営する事業者のことを「プラットフォーマー」と呼ぶことがある。

プランク定数
[よみがな] ぷらんくじょうすう / ぷらんくていすう
[英訳] Planck constant
光子のもつエネルギーと振動数の比例関係をあらわす比例定数のことで、量子論を特徴付ける物理定数である。量子力学の創始者の一人であるマックス・プランクにちなんで命名された。SIにおける単位はジュール秒(記号: Js)である。プランク定数は2019年5月に定義定数となり、正確に6.62607015×10?34 Jsと定義された。

フランク・コンドン状態
[よみがな] ふらんく・こんどんじょうたい
[英訳] Franck-Condon state
古典的に、フランク・コンドンの原理は、電子遷移が分子の核の位置とその環境の変化を伴わずに起こる可能性が最も高いという近似である。得られた状態はフランク・コンドン状態と呼ばれ、関連する遷移は垂直遷移と呼ばれる。この原理の量子力学的定式化は、振電遷移の強度は遷移に関わる2つの状態の振動波動関数の間の重なり積分の二乗に比例する、というものである。

フランク・コンドンの原理
[よみがな] ふらんく・こんどんのげんり
[英訳] Franck-Condon principle
フランク・コンドンの原理とは、分光学および量子化学において、振動電子状態間の遷移確率(振電遷移の強度)を説明する法則である。 振電遷移とは、分子の電子エネルギー準位と振動エネルギー準位が光子の吸収や放出に起因して同時に変化することを指す。 この法則によれば、電子遷移に伴って起こる振動エネルギー準位間の遷移は、電子遷移をまたいだ2つの振動状態の波動関数の重なりが大きい程生じやすい。電子遷移は、原子核の運動の時間スケールと比べれば瞬間的に生じるため、もし分子が電子遷移に伴い新たな振動状態に移行するとすれば、遷移後の新たな振動状態は遷移前の原子核の位置および運動量を再現している必要がある。

フリーキャリア(自由キャリア)
[よみがな] ふりーきゃりあ
[英訳] free carrier
空間または物質中を自由に動くことができるキャリア(正孔と電子)。金属では電気が流れるときにはこの自由電子が物体の中を移動している。半導体物性を説明する場合には、伝導帯または価電子帯内で有効質量をもつ荷電粒子がほぼ自由に運動すると考える自由電子近似が使われる。有機太陽電池においては、光吸収により励起した分子が、近くの分子などに電子を奪われて電子-ホール対になる過程と、電子-ホール対が電界の作用でキャリア分離してフリーキャリアとなる過程の、二つの過程を経て生成される。

ブリッジマン(Bridgman)法
[よみがな] ぶりっじまんほう
[英訳] Bridgman method
大きな単結晶を得るために P.ブリッジマンが考案した結晶製作法。実験・研究用の半導体、金属材料の結晶製作ならびに各種デバイス用の半導体、タービンブレードなどの金属材料の単結晶製品に用いられる。一端のとがった容器中に原材料を入れて全量溶融したのち。温度勾配をもつ垂直型電気炉内を低温側へ降下させ、先端部から徐々に凝固させる。凝固の初期段階では先端部に小さな結晶核がいくつかできるがその数は比較的少く、凝固の進行とともに、そのうちのより早く結晶化する方位の結晶核が他を圧倒し1個の単結晶となる。横型 (水平) ブリッジマン法と呼ばれる水平方向に移動させる方法もある。

プリンテッドエレクトロニクス
[よみがな] ぷりんてっどえれくとろにくす
[英訳] printed electronics
印刷技術を用いてガラスや高分子製の基板上に作製された電子装置。

プル型系統
[よみがな] ぷるがたけいとう
[英訳] pull type system
再生可能エネルギーの大量導入を前提とした系統整備については、電源からの要請に都度対応する「プル型」の系統形成から、電源のポテンシャルを考慮し、計画的に対応する「プッシュ型」の系統形成への転換に向けた検討が進められている。

フレキシブルデバイス
[よみがな] ふれきしぶるでばいす
[英訳] flexible device
有機EL(エレクトロルミネセンス)、有機太陽電池、有機トランジスタなど、有機半導体をベースとしたエレクトロニクス(有機エレクトロニクス)は、薄くて柔らかく、曲げたり巻いたりできる製品が作れるので、フレキシブルエレクトロニクスともいわれる。 また、その製品は、フレキシブルデバイスとも呼ばれる。

フレキソ印刷
[よみがな] ふれきそいんさつ
[英訳] flexography
フレキソ印刷は凸版印刷方式の一種で、版の素材にゴムや合成樹脂を使用し、液状インキ(顔料インキやUVインキ)を用いる印刷方式。ダンボール、フィルム、布などの表面印刷に利用される。最近は、レーザー彫刻と印刷技術の向上により高精度の印刷が可能になり、新たな需要拡大が見られる。フレキソ印刷には水性インキが最適と言われている。このことから、ヨーロッパでは環境にやさしい印刷方式としてフレキソ印刷ののびがめざましい。フレキソ印刷は、印刷における環境問題の一つの解となりうる。

フレンケル励起子
[よみがな] ふれんけるれいきし
[英訳] Frenkel exciton
フレンケル励起子は、励起状態の波動関数の広がりが格子定数に比べてずっと小さいような励起子のことである。この励起状態は格子点の原子・イオンの励起状態に近い。電子と正孔が強いクーロン力で強く束縛されている。有機分子でよく見られる。励起子の典型的な半径は 小さく0.1-1nmである。結合エネルギーが大きく(0.5eV程度)、室温で解離してキャリアを形成するのは容易でない。フレンケル励起子とワニエ励起子は“励起波”の中での極限的なモデルであり、実際の物質における励起子は両者の中間状態となる。

プロシューマー
[よみがな] ぷろしゅーまー
[英訳] prosumer
consumer(消費者)とproducer(生産者)を組み合わせた造語で、未来学者のアルビン・トフラー氏が著書『第三の波』で予見した新しいスタイルの消費者。トフラーのいう第1の波である農業段階では、生産と消費が同時に行なわれていた。その後産業革命が起こり、産業段階である第2の波に移行するにつれて、生産と消費が離れていくことになる。そして現在新しく生じてきている第3の波では、再び生産と消費が同時に行なわれようとしており、これをプロシューマーと名付けている。

ブロッキング層
[よみがな] ぶろっきんぐそう
[英訳] blocking layer
ブロッキング層は、暗電流などの要因となる電極から有機半導体層への電荷の注入を阻止するために設けられる層。正の電圧を印加する電極に対しては正孔ブロッキング層、負の電圧を印加する電極に対しては電子ブロッキング層が必要である。

ブロック共重合体
[よみがな] ぶろっくきょうじゅうごうたい
[英訳] block copolymer
2種類以上の単量体から成る重合体で、それぞれ同種の単量体から成る高分子鎖が1本の鎖の中に結合している重合体をいう。ブロック共重合体を生成する反応をブロック共重合といい、それぞれの高分子鎖を化学的に結合する方法と、一方の高分子鎖の末端に他の単量体を重合させる方法がある。ブロック共重合体は無秩序な共重合体と異なり、両方の高分子鎖の性質をもっている。この性質を利用して作られた新しい重合体の例として、弾性をもつ重合体と硬い重合体をブロックさせて作った弾性糸 (スパンデックス ) がある。

ブロックチェーン
[よみがな] ぶろっくちぇーん
[英訳] blockchain
ブロックチェーンは情報を記録するデータベース技術の一種で、ブロックと呼ばれる単位でデータを管理し、それを鎖(チェーン)のように連結してデータを保管する技術を指す。各々のブロックには、直前のブロックの内容を表すハッシュ値と呼ばれるデータが書き込まれている。仮にデータを改ざんした場合、それによって導き出されるハッシュ値も異なるため、それ以降のすべてのブロックのハッシュ値を変更する必要があり、これは極めて困難であることから、ブロックチェーンで管理されているデータの改ざんは難しいと言われている。ブロックチェーンは、同じデータを複数の場所に分散して管理しており、このためブロックチェーンは分散型台帳とも呼ばれている。また、ブロックチェーンは、仮想通貨(暗号通貨)の1つであるビットコインを実現するための技術として開発された経緯がある。ビットコインをはじめとする仮想通貨(暗号通貨)の多くは、第三者を介さずにユーザー同士で直接取引が行われており、この取引履歴を記録するためにブロックチェーンの技術が使われている。ブロックチェーンは汎用的に利用することが可能であり、現在では契約や取引などを自動化するスマートコントラクトや、食品のトレーサビリティ確保への応用などが考えられている。

ブロッホ(Bloch)関数
[よみがな] ぶろっほかんすう
[英訳] Bloch function
周期構造の格子中を運動する電子についての波動関数は、u(r)exp(ik・r) の形であり、u(r) は格子と同じ周期性をもつ。別名をフローケの定理ともいう。

ブロッホ波
[よみがな] ぶろっほは
[英訳] bloch wave
ブロッホの定理を満たす関数をブロッホ関数(またはブロッホ波、ブロッホ状態)といい、結晶中の電子の一電子状態を表すために用いられる。自由な原子や分子では、電子は特定の原子や分子に束縛されていて、そのエネルギー準位は離散的なとびとびの値をとる。しかし多数の原子や分子が集まって結晶をつくると、電子は特定の原子や分子に所属することなく結晶全体を動きまわる波(ブロッホ波)となり、そのエネルギー準位は帯(バンド)状の構造をつくる。例えば、N個の原子が互いに十分遠く離れている場合には、自由原子の電子のエネルギー準位EnがそれぞれN個ずつ縮退して存在するが、原子間隔が小さくなって互いに近づくと、原子間の相互作用によって縮退がとれて、少しずつ値の異なるエネルギー準位がEnのまわりに連続的に分布して、一つのエネルギー帯(バンド)をつくる。

フロンティア軌道
[よみがな] ふろんてぃあきどう
[英訳] frontier orbital
分子の電子配置は、軌道エネルギーの低い分子軌道から順に電子を2個ずつ詰めていく(フントの規則)。そして、電子に占有されている最もエネルギーの高い分子軌道をHOMO(最高被占軌道)、電子に占有されていない最もエネルギーの低い分子軌道をLUMO(最低空軌道)と呼び、これらをフロンティア軌道と呼ぶ。フロンティア軌道理論では、フロンティア軌道の密度や位相によって分子の反応性が支配されると主張されている。実際には、有機反応論で主張されるように全電子密度によって反応部位が決まる反応と、フロンティア軌道の密度によって反応部位が決まる反応がある。前者は電荷支配の反応、後者は軌道支配の反応と呼ばれる。有機半導体においては、フロンティア軌道すなわちHOMOとLUMOは、電荷を注入、移動させるエネルギー準位として、また、発光や失活、状態間遷移を考える上で最重要となるエネルギー準位である。

分極
[よみがな] ぶんきょく
[英訳] polarization
化学結合を形成する二つの原子が異なる電気陰性度をもつときは、結合電子雲に偏りが生じ,負に帯電した部分と正に帯電した部分が生じる。これを分極と呼ぶ。

分極エネルギー
[よみがな] ぶんきょくえねるぎー
[英訳] polarization energy
有機薄膜中では、多くの場合、電荷は一分子に局在して分子イオンを生成する。このイオンは、電気的に中性な周囲分子と相互作用し、周囲分子が分極することでイオンが安定化するため、孤立分子のときよりもイオン化エネルギーが小さくなる。その安定化エネルギーは 1 eV 程度である。これを分極エネルギーとよぶ。分極エネルギーはイオン化エネルギーや電子親和力に影響を与える。分極エネルギーは気相と固相のイオン化エネルギー差に相当する。

分極率
[よみがな] ぶんきょくりつ
[英訳] polarizability
分極率とは、原子や分子の電子雲などがもつ電荷分布の相対的な偏りを表す物理量である。電荷分布は近くに存在するイオンや双極子の存在などによって引き起こされる外部電場によって歪められる。この歪められた電荷分布の通常の状態からの偏差が分極率である。分極率は、有機分子のイオン化エネルギーと電子親和力に影響を与える。

分光エリプソメトリー
[よみがな] ぶんこうえりぷそめとりー
[英訳] Spectroscopic Ellipsometry
エリプソメトリーは、偏光した光を試料に入射させ、試料での光反射による偏光状態の変化から試料の光学定数(屈折率、消衰係数)や薄膜の膜厚などを評価する方法である。測定プローブとして光を用いるため、非破壊かつ数秒程度の短時間で試料を評価することができる。きわめて高い測定精度をもち、各種材料の膜厚や光学特性の基礎評価に広く用いられている。

分光感度
[よみがな] ぶんこうかんど
[英訳] spectral sensitivity
光の検出系において、光の波長に対して感度がどのように変るかを表わしたもの。相対分光感度と絶対分光感度とがある。

分光スペクトル
[よみがな] ぶんこうすぺくとる
[英訳] optical spectrum
電磁波(光)をプリズムや回折格子といった分光器を通すことにより得られる光の波長ごとの強度の分布を分光スペクトルという。分光スペクトルには、対象物と光との関係により、光源スペクトル(対象物が発する光のスペクトル)、反射スペクトル(標準の光源に対し対象物で反射する光のスペクトル)、透過スペクトル(標準の光源に対し対象物を透過する光のスペクトル)、吸収スペクトル(標準の光源に対し対象物が吸収する光のスペクトル)がある。一般的に吸収しやすい光のエネルギー(波長)は、物質によって異なる。

分光放射輝度計
[よみがな] ぶんこうほうしゃきどけい
[英訳] spectral radiance meter
光源の明るさと色の測定には2種類の方式がある。一つは光を青・緑・赤の三つの成分にカラーフィルターで分けてそれぞれの量を測るフィルター方式のもの、もう一つは光を波長ごとに分解して測定するポリクロメーター方式の分光放射輝度計と呼ばれるもの。分光放射輝度計は、測定する光をレンズで集光し、回折格子(グレーティング)などで波長ごとに分けてセンサで測定する方式で、分光応答度を等色関数に精度良く近似できるため、光を精密に測定することが出来る。

分散型電源
[よみがな] ぶんさんがたでんげん
[英訳] distributed power supply
分散型電源とは、電力供給の一形態であり、比較的小規模な発電装置を消費地近くに分散配置して電力の供給を行う機械そのものや、その方式のことである。 二次送電系統への系統連系を中心とした中小規模の発電施設から、太陽光や風力、燃料電池などの規模の小さい低出力の発電装置まで、各種の多様な電源が含まれる。

分子運動(固体)
[よみがな] ぶんしうんどう(こたい)
[英訳] molecular motion
固体中の分子は,熱(温度)によって絶えず運動しており,通常の固体(結晶)では,分子はある一つの配置(規則的な格子構造)のまわりを“振動”している。 この分子の振動運動は,音波あるいはフォノンとして理解されている。

分子エレクトロニクス
[よみがな] ぶんしえれくとろにくす
[英訳] molecular electronics
「分子エレクトロニクス」の用語には、多くの分子が係わる電子機能を扱う狭義の「分子エレクトロニクス」と1つの分子の電子機能を扱う「単一分子エレクトロニクス」が含まれ、現時点では定義は曖昧である。狭義の「分子エレクトロニクス」は、「有機エレクトルニクス」や「プラスチックエレクトロニクス」とほぼ同義と思われる。

分子拡散
[よみがな] ぶんしかくさん
[英訳] molecular diffusion
物質を構成する分子は絶えず運動していて、衝突を繰り返している。そのため、異なる物質を混ぜると、分子同士が衝突を繰り返すうちに混ざり合い、均一な分布に近づいていく。このような物質の移動の仕方を分子拡散という。分子拡散によって生じる 拡散流束は濃度勾配に比例し、この関係を示したものにフィックの第一法則がある。また、比例係数のことを拡散係数という。

分子間水素結合
[よみがな] ぶんしかんすいそけつごう
[英訳] intermolecular hydrogen bond
異なる分子間に働く水素結合、水素結合参照。

分子間相互作用
[よみがな] ぶんしかんそうごさよう
[英訳] intermolecular interaction
分子と分子の間に働く様々な相互作用を総括した用語。代表的な分子間相互作用には、静電相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、水素結合がある。また、水素原子とπ電子との相互作用、π電子間の相互作用、配位結合を介した相互作用、分子間の電子の移動に伴って生じる電荷移動相互作用も存在する。分子間相互作用は、分子やその集合体である液体や固体の性質を決定する要因となる。

分子間バンド分散
[よみがな] ぶんしかんばんどぶんさん
[英訳] intramolecular band dispersion
多くの有機固体の場合、電子は分子内に局在しているが、一部の材料の結晶においては、無機半導体と同様に波動関数がバンドを形成する。バンド構造においては、波動関数は結晶全体に広がったBloch波となっており、エネルギー準位が電子の運動量の関数として変化する。この関係はエネルギー分散と呼ばれ、移動度などのキャリア輸送特性を決める重要な要因となっている。一方、高分子などの1次元に伸びた分子においては、波動関数は分子の中に広がったBloch波となりバンドを形成する。これを分子内バンド分散と呼ぶ。一方、通常の結晶におけるバンド分散を分子間バンド分散と呼び、分子内バンド分散と区別する。

分子軌道
[よみがな] ぶんしきどう
[英訳] Molecular Orbital (MO)
分子軌道は、分子中の各電子の波の様な振る舞いを記述する電子波動関数のことである。1個の電子の位置ベクトルの関数であり、原子に対する原子軌道に対応するものである。この関数は、特定の領域に電子を見い出す確率といった化学的、物理学的性質を計算するために使うことができる。初歩レベルでは、分子軌道は関数が顕著な振幅を持つ空間の「領域」を描写するために使われる。分子軌道は多くの場合、分子を構成する原子の原子軌道あるいは混成軌道や原子群の分子軌道を結合させて描写させる。代表的なものにLinear combination of atomic orbitals(LCAO)があり、各原子軌道が線形結合によって分子軌道を構成するという仮定に基づく手法である。分子軌道には、単結合に関与するσ起動、共役(多重結合)に関与するπ起動、非共有電子対が収容されるn軌道がある。有機色素において重要なものは、結合性のπ軌道から反結合性のπ*軌道へ電子が励起されるπ-π*遷移と、非共有電子対がπ*軌道へと遷移されるn-π*遷移である。

分子軌道ダイアグラム(MOダイアグラム)
[よみがな] ぶんしきどうだいあぐらむ
[英訳] molecular orbital diagram
分子軌道ダイアグラム(MOダイアグラム)は、一般に分子軌道法、具体的には原子軌道による線形結合法(LCAO法)の観点から、分子中の化学結合を説明するための定性的表現手法である。これらの理論の基本原理は、原子が結合し分子を作る時に、一定数の原子軌道が組み合わさり同数の分子軌道を形成するが、関与する電子は軌道間で再配分できるというものである。この手法は、水素、酸素、一酸化炭素などの単純な二原子分子に非常によく適しているが、メタンといった多原子分子について議論する時はより複雑となる。MOダイアグラムは何故ある分子は存在できるが一方は存在できないのか、結合がどの程度強いのか、そしてどの電子遷移が起こり得るのかを説明する。

分子軌道法
[よみがな] ぶんしきどうほう
[英訳] molecular orbital method
量子化学において、分子軌道法、通称MO法とは、原子に対する原子軌道の考え方を、そのまま分子に対して適用したものである。分子軌道法では、分子中の電子が原子間結合として存在しているのではなく、原子核や他の電子の影響を受けて分子全体を動きまわるとして、分子の構造を決定する。分子軌道法では、分子は分子軌道を持ち、分子軌道波動関数は、既知のn個の原子軌道の線形結合(重ね合わせ)で表せると仮定する。原子軌道に対応して、分子全体に広がる一電子空間軌道関数である分子軌道によって、分子を構成する個々の電子の状態が記述されると考える。この分子軌道を計算して、分子の電子状態を求める方法が分子軌道法である。

分子結晶
[よみがな] ぶんしけっしょう
[英訳] molecular crystal
分子結晶とは結晶の分類の1つで、多数の分子が分子間の相互作用で結びついて形成している結晶のことを指す。一般に、共有結合結晶やイオン結晶に比べて柔らかい。分子結晶にはドライアイス(二酸化炭素)や、ヨウ素がある。分子結晶はさらに分子同士の結合力の種類により分類される。氷やナフタレンの固体が分子結晶の例であり、前者は水分子が水素結合で結びついた水素結合結晶、後者はナフタレン同士がファンデルワールス力で結びついたファンデルワールス結晶(分子性結晶)である。

分子構造
[よみがな] ぶんしこうぞう
[英訳] molecular structure (molecular geometry)
分子構造とは、分子の幾何学的構造をいい、例えば原子間距離や配向などをさす。分子構造を調べるには、主に回折法と分光法が用いられる。分子の構造は構成する原子の電子雲による斥力と、化学結合による引力との均衡により決定づけられる。前者は閉殻電子に起因するので球対称とみなすことができるが、後者は電子軌道はs軌道以外の原子価軌道や混成軌道は方向性をもつ。また、引力の大きさは内殻電子による遮蔽を受けた原子核の有効電荷と分子軌道上の電子分布により決定される為、結合力は構造の位置が変化すると原子間の結合性軌道の重なり具合により連続的に変化する。分子を構成する原子は内部エネルギーにより振動しているので、分子構造の示す位置は平均的な重心位置を意味する。

分子固有振動
[よみがな] ぶんしこゆうしんどう
[英訳] molecular characteristic vibration
分子の中で、原子はバネ(化学結合)でつながれた質点系のように振る舞い、固有の振動数で振動している。このような分子内の振動には、結合の長さが伸び縮みする振動(伸縮振動)、結合角が開いたり閉じたりする振動(変角振動)などがある。振動の周期はバネ定数(結合の種類で決まる)と換算質量(構成原子で決まる)が決まれば一定の値となる。つまり、分子によって一定の振動数(固有振動数)の分子内振動を持つことになる。通常の分子では、多くの場合、分子内振動の周期は 7x10-15秒〜7x10-13秒 程度であり、これは電磁波では赤外線の振動数に相当する。

分子軸
[よみがな] ぶんしじく
[英訳] molecular axis
分子の向きを表す軸のこと。酸素分子のような2原子分子では2個の構成原子を結ぶ直線方向が分子軸になる。

分子集合体
[よみがな] ぶんししゅうごうたい
[英訳] molecular aggregation
分子の集まりである分子集合体は、有機材料の機能発現に大きな影響を及ぼす重要なものである。例えば、有機エレクトロニクスデバイスでは、材料は薄膜や固体状態で用いられる場合が多い、その一方で分子のサイズには限りがあり、バルクでの機能発現は、固体状態でどのように分子が並ぶか、つまり分子がどのように集合体を構成するかに大きく依存する。

分子振動
[よみがな] ぶんししんどう
[英訳] molecular vibration
通常は分子の基準振動をさす。N個の原子からなる分子は、直線形ならば3N-5個、非直線形ならば3N-6個の基準振動をもつ。それぞれ量子化しており、量子数nは0,1,2,3の順に大きくなる。量子数0の状態は零点振動とよばれ、不確定性原理により古典力学的な静止状態とは異なる。

分子ステップ・テラス構造
[よみがな] ぶんしすてっぷてらすこうぞう
[英訳] molecular step-terrace structure
分子長に対応した段差構造(ステップ)と分子層からなるテラス状の構造をいう。結晶薄膜の場合、この構造は、分子スケールで膜が平坦であることを示す。

分子性結晶
[よみがな] ぶんしせいけっしょう
[英訳] molecular crystal
ファンデルワールス力を主とした弱い結合力により、分子が互いに結合してできる結晶。結晶エネルギーが小さく、融点も一般に低い。ナフタレンやその他の有機化合物の結晶はこれに属する。分子性結晶では結晶を構成する分子が規則的な配向および配列状態をとるため、構成分子の電子軌道がバンド構造を形成するものがある。無機結晶との大きな相違点は、伝導電荷に働く局在ポテンシャルである。無機結晶では、内殻電子のみが原子のポテンシャルに強く束縛されるのに対し、分子性結晶では、伝導電子も分子内のポテンシャルに束縛される。これにより、キャリアの移動機構も無機結晶とは異なるものになる。

分子性固体
[よみがな] ぶんしせいこたい
[英訳] molecular solid
分子性固体とは、原子が共有結合によって分子を構成された分子が互いの弱い相互作用で集まって固体となるもの。固体の状態としては、単結晶、多結晶、アモルファスなどの状態がありうる。分子性固体である有機半導体は、分子の性質が固体の中に維持されている。

分子対称性
[よみがな] ぶんしたいしょうせい
[英訳] molecular symmetry
化学における分子の対称性は、分子に存在する対称性およびその対称性に応じた分子の分類を述べる。分子対称性は化学における基本概念であり、双極子モーメントや許容分光遷移(ラポルテの規則といった選択則に基づく)といった分子の化学的性質の多くを予測あるいは説明することができる。分子の対称性の研究には様々な枠組みが存在するが、群論が主要な枠組みである。この枠組みは、ヒュッケル法、配位子場理論、ウッドワード・ホフマン則といった応用に伴って分子軌道の対称性の研究にも有用である。大規模な系では、固体材料の結晶学的対称性を説明するために結晶系が枠組みとして使用されている。分子対称性を実質的に評価するためには、X線結晶構造解析や様々な分光学的手法(例えば金属カルボニルの赤外分光法)などの技術がある。

分子デバイス
[よみがな] ぶんしでばいす
[英訳] molecular devices
分子デバイスとは、高集積度かつ高速演算ができる分子エレクトロニクス、筋肉やべん毛のような分子機械、分子認識をする医薬品など、将来的実現を課題として研究されている機能性分子および機能性分子集合体の総称である。有機分子と電気伝導性樹脂およびカーボンナノチューブなどからつくられたダイオード、トランジスタ、論理回路、また、生体機能を担う分子モーター、さらにはデンドリマー内部に薬品を含んで患部に運びうるもの、特定のDNAや酵素と相互作用して疾患を治療しようとするものなど多様である。多様な形状の分子デバイスの基礎部品となる分子集合体の合成には自己組織化が利用され、合成の基礎は超分子化学とよばれる。また、分子デバイスの開発と応用分野は、そのデバイスの寸法に由来してナノテクノロジーとよばれる。

分子内バンド分散
[よみがな] ぶんしないばんどぶんさん
[英訳] Intramolecular band dispersion
分子間バンド分散を参照

分子配向
[よみがな] ぶんしはいこう
[英訳] molecular orientation
分子配向とは、分子が一定方向に配列すること。分子の配向は有機・高分子系材料の諸物性や機能の発現と密接にかかわっている。たとえば、液晶ディスプレイは液晶分子の分子配向変化を利用して画像表示している。

分子配向性
[よみがな] ぶんしはいこうせい
[英訳] molecular orientation
分子が固体中において配列すること。

分子配列
[よみがな] ぶんしはいれつ
[英訳] molecular orientation
分子配列とは、薄膜や固体中において分子がどのように並んでいるかを指す用語である。分子の集合体の機能発現に影響を及ぼす。例えば、植物などの光合成の反応中心では、様々な分子間の効率的な電子移動反応を利用して光エネルギーから化学合成を実現している。これらの機能で重要なことは、分子が単独で示す機能ではなく、複数の分子が集合体となってはじめてあらわれる機能である。従って、分子と分子の間の様々なやりとりが重要であり、分子同士がどのように配列するかに強い影響を受ける。有機結晶中での分子の並び方は、一つ一つの分子の形状や隣り合う分子との相互作用などで決まる。分子の端(edge)が隣の分子の面(face)と接するような edge-to-face 配列や、隣り合う分子どうしの分子面が重なり合った face-to-face 配列などがある。

分子ファスナー効果
[よみがな] ぶんしふぁすなーこうか
[英訳] molecular fastener effect
長鎖アルキル基の分子ファスナー効果とは、結晶中でアルキル基同士が並ぶように配列し、アルキル基と連結されたコア部位も密に押し集められてパッキングする効果を指す。

分子分極
[よみがな] ぶんしぶんきょく
[英訳] molecular polarization
ベンゼン結晶では、格子点のベンゼン分子は、周囲のベンゼン分子とのC-H伸縮振動などにより、電子に対する分極が発生する(分子分極)。有機半導体中の電荷担体の移動では、電荷担体が一分子中に滞在する時間は分子分極に要する時間と同程度で、電荷移動に分子分極が伴うかどうかは個々の状況に依存すると考えられる。

分子流
[よみがな] ぶんしりゅう
[英訳] molecular flow
気体を構成する分子は熱運動により互いに衝突を繰返しているが、1回の衝突の間に移動する距離が平均自由行程と呼ばれ、それは圧力の低下と共に増大する。このため、気体の圧力を下げるかあるいは流路径を細くすると、分子どうしの衝突よりも管壁と分子間の衝突がしだいに多くなる。この状態の極限では気体と壁との衝突が支配的になり、流れに対する抵抗も粘性流れとは異なる。このような流れ状態を分子流と呼ぶ。

平均演色評価数(Ra)
[よみがな] へいきんえんしょくひょうかすう
[英訳] average of Rendering index
→ Raを参照

平均自由行程
[よみがな] へいきんじゆうこうてい
[英訳] mean free path
平均自由行程とは、物理学や化学のうち、気体分子運動論において、分子や電子などの粒子が、散乱源による散乱で妨害されること無く進むことのできる距離の平均値のことを言う。粒子が平均自由行程だけ運動すると、他の粒子と平均して1回衝突する。 平均自由行程は、その系の特性や粒子により異なってくる。

平均設備利用率
[よみがな] へいきんせつびりようりつ
[英訳] average capacity factor
太陽光発電システムの運転年数の期間を通じた設備利用率(平均設備利用率)は、太陽光発電システムの想定する設備利用期間(運転年数)を仮に20年とすれば、その期間の平均設備利用率は次の式で算出される。平均設備利用率 [%]= 総発電電力量 [kWh] x100 /(定格出力 [kW]×8760[h/y]×20[y])。発電コストの評価には平均設備利用率が必要となる。

平衡吸着量
[よみがな] へいこうきゅうちゃくりょう
[英訳] equilibrium adsorption amount
吸着剤が一定量の吸着質を吸着して安定である状態は、実際には吸着と脱着が等速な動的平衡状態にある。この平衡状態での吸着量(平衡吸着量)は、吸着質の濃度(気体の場合は分圧)と温度に依存する。

平面ヘテロ接合
[よみがな] へいめんへてろせつごう
[英訳] planar heterojunction
異なる2つの材料を接合させる構造をヘテロ接合と呼び、平面状にヘテロ接合を形成したものを平面ヘテロ接合とよぶ。有機太陽電池においては、電子供与(ドナー)性と電子受容(アクセプター)性の有機半導体薄膜を積層することで、平面ヘテロ接合を形成する構造を指す。この構造におけるキャリア分離の駆動力は、ドナー/アクセプター界面のHOMO・LUMO間のエネルギー差であり、キャリア分離に十分な内部電界を供給する。平面ヘテロ接合の有機太陽電池は光吸収と電荷分離の両立が困難であるため、バルクヘテロ接合の方が高い光電変換効率に有利であることが多い。

ベースロード電源
[よみがな] べーすろーどでんげん
[英訳] baseload power source / base load power supply
季節、天候、昼夜を問わず、一定量の電力を安定的に低コストで供給できる電源。ベース電源ともいうが、国際的にはベースロード電源という用語が定着している。原子力発電、石炭火力発電、川の流れをそのまま使う一般水力発電、地熱発電などが該当する。ただし日本では2011年(平成23)の東日本大震災以降、多くの原子力発電所が停止したため、火力発電が原子力発電を代替している。

head-to-tail 結合(頭-尾結合)
[よみがな] へっどつーているけつごう
[英訳] head to tail linkage
高分子を構成している単量体が非対称性ビニル型や共役ジエン、1置換芳香環などにおいては、単量体の付加形式により、head-to-tail 結合(頭-尾結合)と head-to-head 結合(頭-頭結合)をもった重合体が生じる。たとえば、非対称性ビニル型単量体 CH2=CHX からなる重合体において、CH2 を単量体単位の頭とし、CHX を尾とすると、head-to-tail 結合は次のように書ける(-CH2-CHX-CH2-CHX-CH2-CHX-)。 一般のビニル重合では、head-to-tail 結合が主体であるが、たとえばビニルエーテルのラジカル重合などでは、成長反応において head-to-head 結合(頭-頭結合)または tail-to-tail 結合(尾-尾結合)が2〜3物質量%含まれる。また、停止反応が二分子反応で行われる場合には、そこの結合が tail-to-tail 結合(または head-to-head 結合)となる。

ヘテロアレーン
[よみがな] へてろあれーん
[英訳] heteroarenes
アレーン(単環式または多環式の芳香族の炭化水素)に含まれるメチン(-CH=)および/またはビニレン(-CH=CH-)を1個以上、それぞれ二価または三価のヘテロ原子に置き換えることによって形式的に誘導され、芳香族系としての連続したπ電子系の性質と、ヒュッケル則(4n+2)に対応した面外π電子数が保たれているヘテロ環式化合物。例えばチオフェンなどがある。拡張π電子系の縮合環化合物は、ペンタセンに代表されるようにπーπ相互作用が強いため、すぐれたキャリア輸送性を示す材料であり、その類縁体であるヘテロアレーン系材料の数多くの研究報告がある。

ヘテロ環化合物
[よみがな] へてろかんかごうぶつ
[英訳] heterocyclic compound
環式化合物のうち、炭素以外に酸素、窒素、硫黄など異種の原子をも環に含む化合物の総称。フラン、チオフェン、ピリジン、インドールなどがある。

ヘテロ接合
[よみがな] へてろせつごう
[英訳] heterojunction
ヘテロ接合とは、異なる半導体同士の接合である。無機半導体においては、ヘテロ接合は通常は格子整合系または格子定数が近い材料系で作られる。半導体はそれぞれ固有のエネルギーバンドをもつため、一般にヘテロ接合ではバンドギャップの違う半導体を接合することになる。組み合わせによって、p-n,n-n,p-pの接合が形成され、構造によって電子現象が変わってくる。電子のエネルギーバンド構造がなめらかにつながることはほとんどなく、接合部に急峻な変化が生じ、伝導帯と価電子帯のエネルギー障壁の高さの違い、電子と正孔の輸送の仕方の違いから電子電流あるいは正孔電流のみが流れることなどを使い、多彩な電子現象を実現できるのが最大の特徴である。応用例としては、広い波長域にわたって効率よく光を電気に変換できるヘテロ接合型太陽電池(HIT)、発光部分を局所的に集中して効率よく発光させる半導体レーザー、また、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)などがある。

ヘテロ接合型(HIT)太陽電池
[よみがな] へてろせつごうがたたいようでんち
[英訳] Heterojunction with Intrinsic Thin-layer(HIT)
ヘテロ接合とは物性の異なる材料同士の接合のことを言い、ヘテロ接合を用いたシリコン系太陽電池にHIT太陽電池がある。HIT太陽電池は、n型単結晶シリコン半導体の両面にアモルファスシリコン半導体が形成された構造をとり、代表的なものに、p型アモルファスシリコン/i型アモルファスシリコン/n型単結晶シリコン/i型アモルファスシリコン/n型アモルファスシリコンの各層が重なった構造がある。単結晶シリコン太陽電池と比較して変換効率が高く、また、薄膜化されたアモルファスシリコン層を用いるため、結晶シリコン層の使用量を減らすことができる。一方、単結晶シリコン太陽電池よりも製造工程が複雑なためコストは高い。

ヘテロ接合バックコンタクト型太陽電池
[よみがな] へてろせつごうばっくこんたくとがたたいようでんち
[英訳] Heterojunction Back Contact (HBC) structure solar cell
ヘテロ接合バックコンタクト構造(HBC構造)の太陽電池セルは、高い短絡電流(Jsc)が得られるバックコンタクト構造(裏面電極構造)の利点と、高い開放電圧(Voc)が得られるヘテロ接合技術の利点を併せ持つ。バックコンタクト構造では受光面に電極が無く電極の陰によるロス(シャドーロス)が無いことによって高いJscが得られ、また、ヘテロ接合技術では、アモルファスシリコンと結晶シリコンのヘテロ接合界面が、界面でのキャリア再結合を低減できるため、高い不活性化(パッシベーション)性能が得られ、高いVocが得られる。HBC構造のセルは、ヘテロ接合の技術とバックコンタクト構造の技術を融合することで高い変換効率を得ることが可能である。

ペロブスカイト型化合物
[よみがな] ぺろぶすかいとがたかごうぶつ
[英訳] Perovskite type compound
ペロブスカイトはチタン酸カルシウム(CaTiO3)の鉱物名で、ABO3(Aは2価、Bは4価の金属イオン)で表される化合物をペロブスカイト型化合物と総称している。正方晶や斜方晶のペロブスカイトは強誘電性を示し、チタン酸バリウム(BaTiO3)が強誘電体や圧電体としてよく知られている。また、銅酸化物を基本単位とする酸化物高温超伝導体は、すべてペロブスカイト構造を持っている。これらのペロブスカイト型化合物は金属イオンと酸素のみで構成されており、焼結法などの物理的な手法で作成される。焼結の際、金属イオンの種類や比率を変えたり、添加物を加えたりすることで物性が劇的に変化する。また、酸化物だけでなく、金属ハロゲン化物などを成分とするペロブスカイト型化合物も知られている。

ペロブスカイト構造
[よみがな] ぺろぶすかいとこうぞう
[英訳] Perovskite structure
ペロブスカイト(perovskite、灰チタン石)と同じ結晶構造をペロブスカイト構造と呼ぶ。例えば、BaTiO3(チタン酸バリウム)のように、RMO3 という3元系から成る遷移金属酸化物などが、この結晶構造をとる。理想的には、立方晶系の単位格子をもち、立方晶の各頂点に金属Rが、体心に金属Mが、そして金属Mを中心として、酸素Oは立方晶の各面心に配置している。酸素と金属Mから成る MO6 八面体の向きは、金属Rとの相互作用により容易に歪み、これにより、より対称性の低い斜方晶や正方晶に相転移して、この結晶の物性が劇的に変化する。例えば、対称性の低下により、モット転移を起こし、金属Mのサイトに局在していた価電子がバンドとして広がることができるようになり、金属Mのサイト同士のスピン間の相互作用による反強磁性秩序が崩れ、常磁性に転移するなどである。この歪みによる相転移は、温度の上昇による金属Rのイオン半径の増加や、金属Rサイトに不純物原子を導入することなどでコントロールすることができる。

変換効率
[よみがな] へんかんこうりつ
[英訳] power conversion efficiency(PCE)
太陽電池の変換効率は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する割合であり、太陽電池の重要な性能指標の一つである。有機薄膜太陽電池の変換効率向上には、有機材料自体の高性能化と素子構造の最適化が求められる。

偏光顕微鏡
[よみがな] へんこうけんびきょう
[英訳] polarization microscope / polarizing microscope
偏光顕微鏡は光学顕微鏡の一種。試料に偏光を照射し、偏光および複屈折特性を観察するために用いられる。偏光特性は結晶構造や分子構造と密接な関係があるため、鉱物学や結晶学の研究で多く用いられる。他、高分子化学や液晶の研究、細胞の偏光性構造の研究などにも用いられる。

変動電源
[よみがな] へんどうでんげん
[英訳] fluctuating power (generation)
太陽光発電や風力発電は、天候の変化によってその出力量が変化するため、自然変動電源と呼ばれている。

ポアソン方程式
[よみがな] ぽあそんほうていしき
[英訳] Poisson's equation
ポアソン方程式は電磁気学、移動現象論、流体力学といった物理学の諸領域において、系を記述する基礎方程式として用いられる。例えば、電荷分布を与えたときの静電ポテンシャルや質量分布を与えたときの重力ポテンシャルを記述する方程式はその代表的な例である。また、熱の発生源が存在する場合の温度分布や物質の発生・消滅源が存在する場合の物質濃度分布においても、時間に依存しない定常状態を記述する方程式はポアソン方程式となる。

ポイントソース蒸着源
[よみがな] ぽいんとそーすじょうちゃくげん
[英訳] point evaporation source
真空蒸着において、蒸着気体が1点から放出される蒸着方式をポイントソース蒸着源という。対義方式としてリニアソース蒸着源を参照。

防眩型結晶系太陽電池
[よみがな] ぼうげんがたけっしょうけいたいようでんち
[英訳] Anti-glare crystalline solar cell
反射光の眩しさを低減した太陽光パネル。ガラスに当った太陽光の反射を散乱させることにより、一箇所への反射を抑制する。高速道路や空港施設などに多く採用されている。

芳香族化合物
[よみがな] ほうこうぞくかごうぶつ
[英訳] aromatic compound
芳香族化合物は、ベンゼンを代表とする環状不飽和有機化合物の一群である。炭化水素のみで構成されたものを芳香族炭化水素 (aromatic hydrocarbon)、環構造に炭素以外の元素を含むものを複素芳香族化合物 (heteroaromatic compound) と呼ぶ。狭義には芳香族化合物は芳香族炭化水素と同義である。19世紀ごろ知られていた芳香をもつ化合物の共通構造であったことから「芳香族」とよばれるようになったが、このような匂いは芳香族化合物以外の化合物でも感知されることもあるし、芳香族化合物であっても必ずしも芳香が感じられるわけではないので、現在は「芳香」に科学的意味はない。

芳香族炭化水素
[よみがな] ほうこうぞくたんかすいそ
[英訳] aromatic hydrocarbons
芳香族炭化水素は、芳香族性を示す単環あるいは複数の環(縮合環)から構成される炭化水素である。芳香族炭化水素が置換基となった場合の呼称はアリール基 (aryl group) であり、Ar? と略される。具体的にはフェニル基、ナフチル基などがアリール基の代表例である。芳香族化合物 (aromatic compounds) と同義に使用されることがあるが、広義の芳香族化合物には複素芳香族化合物も含まれる。芳香族炭化水素は、一重結合と二重結合が交互に並び、電子が非局在化した6つの炭素原子から成る単環あるいは複数の平面環をユニットとして構成されている。最も構造が単純な芳香族炭化水素はベンゼンであり、ベンゼン環として知られている6つの炭素からなる環状化合物である。その構造が不明であった昔、強烈な臭気を持つものが多くあることから、芳香族炭化水素の名前がつけられた。

放射失活(輻射失活)
[よみがな] ほうしゃしっかつ(ふくしゃしっかつ
[英訳] radiation deactivation
輻射失活に同じ、輻射失活参照

放射遷移
[よみがな] ほうしゃせんい
[英訳] radiative transition
励起状態が光を放出して低エネルギー状態に遷移すること、放射性物質がイオン化放射線を放出して低エネルギー状態になることも、分子の励起状態が蛍光やりん光を放出して基底状態に戻ることも放射遷移である。分子の放射遷移は無放射遷移(熱を放出する)と競合し、ともに励起状態の重要な緩和過程である。

放射速度定数
[よみがな] ほうしゃそくどていすう
[英訳] radiative rate constant
放射速度定数とは、放射寿命(あるいは自然寿命)の逆数である。寿命と速度定数には次の関係がある。 励起状態からの放射速度定数をke、無放射速度定数をknrとし、反応の速度定数をkrとするとき、τ0(自然寿命あるいは放射寿命)=1/ke、τm(測定寿命あるいは平均寿命)=1/(ke + knr + kr)。有機分子の励起一重項S1のように基底状態への遷移がスピン許容のときは、基底状態に速く戻るためにS1の寿命は短く、有機分子の最低三重項T1はスピン禁制遷移であるためにその寿命は長くなる。一般に有機分子でケイ光寿命が短く、リン光寿命が長いのはそのためである。

棒状分子液晶
[よみがな] ぼうじょうぶんしえきしょう
[英訳] rod-like molecular liquid crystal
液晶を形成する化合物の多くは棒状の分子で、分子の並び方の違いにより、スメクチック(S)相とネマチック(N)相とに大別される。スメクチック液晶では、分子配列における方向の規則性と高さ方向の位置の規則性が維持されており、層状の構造をとる。分子の長軸(長さ方向)が層の面に垂直に並んでいるスメクチックA(SA)と、分子長軸が層面に対して傾いているスメクチックC(SC)などがある。ネマチック液晶は分子配列の方向の規則性のみ有し、位置の規則性は失われている。またネマチック液晶には、分子配列の方向が徐々にねじれ、らせんの層状構造となるキラルネマチック液晶がある。このとき、層内の分子の並び方はネマチック液晶の特徴である方向の秩序のみが維持されている。キラルネマチック液晶はコレステロールの誘導体に多く見られたので、コレステリック液晶ともよばれている。コレステリック(Ch)液晶のらせんのピッチは可視光の波長と同程度のものが多く、さまざまな干渉色を呈する。

ボーア磁子
[よみがな] ぼーあじし
[英訳] Bohr magneton
ボーア・マグネトンともいう。磁気モーメントの基本単位で、電子が原子核の周りを軌道運動するときに生ずる最小の磁気モーメントである。ボーア磁子μBは、μB=eh/4πmc(hはプランク定数、e、mはそれぞれ電子の電荷の絶対値と質量)で与えられ、μB=9.27×10-24 J/T という大きさをもつ。ここで、J(ジュール)はエネルギーの単位、T(テスラ) は磁束密度の強さの単位である。この単位を用いると、強磁性ニッケルの磁気モーメントは、0.6 ボーア磁子となる。磁気モーメントを担う電子の角運動量を J とすると、磁気モーメントMは、M=−gJJμBとして与えられる。gJ はランデのg因子とよばれ、磁気モーメントが電子の軌道運動によるならば1、スピンによるならば2となる定数である。Jは絶縁体中の原子では整数か半整数であるが、金属のように電子が物質中を遍歴できる場合は任意の値をとる。

ポーラログラフィー
[よみがな] ぽーらろぐらふぃー
[英訳] polarography
ポーラログラフィーは、電気化学における測定法のひとつ。ボルタンメトリーとして最初に考案された方法で、作用電極として滴下水銀電極を用い、直線的に電極電位を掃引して応答電流を測定する。ポーラログラフィーは、他の多くの電気化学測定法と同様に3極式の電気化学セルで行う。有機半導体薄膜の物性は構成分子の性質を反映するため、分子の電子エネルギー準位を測定することにより薄膜の電子構造の知見を得ることができる。ポーラログラフィーでは、有機半導体分子のLUMOとの電子のやりとりが平衡になる電極電位を還元電位として測定し、HOMOとの正孔のやりとりが平衡になる電極電位を酸化電位として測定する。

ポーラロン
[よみがな] ぽーらろん
[英訳] polaron
ポーラロンとは、凝縮系物理学において、固体中の電子と原子の間の相互作用を記述するために用いられる準粒子を指す。電子が誘電体結晶中を運動すると、周囲の原子は静電相互作用を受け、平衡位置からずれて分極を生じ、電子の電荷をほぼ遮蔽する。この機構はフォノン雲として知られる。ポーラロンとはフォノン雲の衣をまとった電子をひとつの仮想的な粒子とみなしたものである。ポーラロンは元の電子と比べて移動度は低く、有効質量は大きくなる。有機半導体においては周囲の分極(電子、分子、および格子分極)が電荷担体を安定化(束縛)してポーラロンを形成すると考えられている。また、ポーラロンは、electronic polaron, vibronic polaron, lattice polaron などに分別でき、それぞれは、ポーラロン中心分子と周囲の分子の間に起こる電子雲の分極、分子振動周期と結合長の変化、分子配列の歪み、に起因する。ポーラロンに関する議論は、有機固体中の分子配列がある程度規則性を持ち、疑似的な結晶状態であることを前提としてなされる場合が多い。

ホール(正孔)
[よみがな] ほーる
[英訳] electron hole または hole
正孔は別名をホールともいい、シリコン半導体において、真性半導体であれば電子で満たされているべき価電子帯の電子が不足した状態を表す。有機半導体においては、有機分子から電子が1つ出ていき、ラジカルカチオンとなった状態を意味する。

ホール移動層(正孔移動層)
[よみがな] ほーるいどうそう
[英訳] hole transfer layer
ホール輸送層(正孔輸送層)参照

ホール移動度(正孔移動度)
[よみがな] ほーるいどうど
[英訳] hole mobility
ホール移動度とは、固体の物質中でのホールの移動のしやすさを示す量である。[定義] 物質に電場E をかけたとき、電場によってホールが平均速度v で移動したとき、次式で定義される v=μE (μ: 移動度)。

ホール移動度 (Hall 移動度)
[よみがな] ほーるいどうど
[英訳] Hall mobility
ホール効果から求めた物質のホール定数Rと伝導率σの積をホール移動度μhという(μh = |R|・σ)。一般に物質中のキャリヤーの移動度を表すのに、このホール移動度 μh と、通常用いられる伝導移動度 μnとの間には、μh =γ・μn の関係がある。γは散乱係数で、高純度のSiやGeでは 3π/8、金属や金属間化合物では1である。キャリアが実際に移動している時の速度で、トラップなどに捕捉されている間は、この移動度の対象にならない。

ホール効果(Hall効果)
[よみがな] ほーるこうか
[英訳] Hall effect
ホール効果とは、バンド伝導的に物質中を流れている電子に垂直な磁場を印加すると、ローレンツ力によりそれらと直交する方向に電圧が生じる現象。主に半導体素子で応用される。エドウィン・ホールによって発見されたことからこのように呼ばれる。有機トランジスタではゲート電圧を変調しながらホール効果を調べることで、ホッピング伝導とバンド伝導とを区別し、伝導機構を調べることができる。

ホール定数(Hall定数)、ホール係数(Hall係数)
[よみがな] ほーるじょうすう
[英訳] Hall constant, Hall coefficient
半導体試料の x 方向に電流Iを流し、これと直角の z 方向に磁界を印加すると、ホール効果により、両者と直交する y 方向にホール起電力 Vh が発生する。このホール起電力 Vh は、電流Iと磁束密度Bに比例した値をとり、その比例定数 Rh をホール定数(またはホール係数)という。Vh=Rh・IB/d (dは磁界の方向の試料の長さ)

ホール注入(正孔注入)
[よみがな] ほーるちゅうにゅう
[英訳] hole injection
ホールを有機半導体に注入すること。電極からの注入の場合もあるし、別の有機半導体から特定の有機半導体への注入もありうる。

ホール注入材料(正孔注入材料)
[よみがな] ほーるちゅうにゅうざいりょう
[英訳] hole injection material
多層型有機ELにおける役割分担のうち、ホールの注入を担う材料のこと。一般に、ホール輸送層のHOMO 準位と陽極の仕事関数との間にHOMO準位を有し、陽極から有機層へのホール注入障壁を下げる働きをする。

ホール注入障壁
[よみがな] ほーるちゅうにゅうしょうへき
[英訳] hole injection barrier
キャリア注入障壁参照

ホール注入層(正孔注入層)
[よみがな] ほーるちゅうにうにゅうそう
[英訳] hole injection layer
ホール注入層は陽極とホール輸送層の間にあって、陽極とホール輸送層間の電位障壁を下げ、陽極からホール輸送層へのホール注入効率を改善させる役割を担う。

ホールブロック層(正孔ブロック層)
[よみがな] ほーるぶろっくそう
[英訳] hole blocking layer
ホールの移動をブロックする層。例えば、有機EL素子において、ホールが陽極から陰極に貫通してしまうと、ホールは発光に寄与しないため、量子効率を下げる結果となる。これを防ぐために、発光層の界面においてホールが抜け出ないようにブロックすることができれば、ホールの陰極への流出が防がれ、電子と再結合して発光に寄与する確率を上げることができる。

ホール密度(正孔密度)
[よみがな] ほーるみつど
[英訳] hole density
ホール(正孔)が単位体積あたり何個存在するかを表す量。バンド理論では、電子密度は伝導帯での体積当たりの電子の個数であり、正孔密度は価電子帯での体積当たりの正孔の個数である。キャリア密度は半導体で重要であり、ドーピング過程で重要な量である。

ホール輸送(正孔輸送)
[よみがな] ほーるゆそう
[英訳] hole transport
有機半導体中をホールが輸送される現象を指す。

ホール輸送材料(正孔輸送材料)
[よみがな] ほーるゆそうざいりょう
[英訳] hole transporting material
多層型有機ELにおける役割分担のうち、ホールを輸送する働きをする材料のことを指す。

ホール輸送層(正孔輸送層)
[よみがな] ほーるゆそうそう
[英訳] hole transport layer
多層型有機EL素子において、正孔(ホール)を輸送する役割を担う層のことを指す。ホール輸送は、有機分子の観点からは、ホール輸送層を構成する分子が酸化されてラジカルカチオンを形成し移動する過程といえる。有機薄膜太陽電池においては、正孔輸送層は光活性層で発生した正孔をカソード側へ抽出し、電子の流入をブロックする役割を持つ。

保管寿命(保存寿命)
[よみがな] ほかんじゅみょう(ほぞんじゅみょう)
[英訳] shelf life / storage life
信頼性試験参照

ホスト
[よみがな] ほすと
[英訳] host
有機材料に別の有機材料を混合する際、大多量の有機材料の方をホスト、少量混合される有機材料の方をドーパントあるいはゲストと呼ぶことがある。例えば、多層型有機ELの発光層において、主に電荷輸送を担うホスト材料の中に少量のドーパントを発光を担う材料として混合することがある。

ホスト材料
[よみがな] ほすとざいりょう
[英訳] host material
ホストに用いる有機材料のこと。

ホットウォール型化学気相成長法
[よみがな] ほっとうぉーるがたかがくきそうせいちょうほう
[英訳] hot wall type Chemical Vapor Deposition (CVD)
熱反応を利用した熱化学気相成長(熱CVD)法の一つ、基板をあらかじめ所定の成膜温度に熱加熱しておき、原料気体を加熱された基板表面へ導入し,ここで化学反応を起こして基板の表面に成膜する。ホットウォール型は、基板を加熱するヒーターは真空容器の外側に設置され、真空容器を構成する石英ガラスを通して加熱する。加熱機構が真空の外側にあるため、反応容器内の構造を簡略化することが可能で、反応系を高純度に保つことができる。化合物半導体のエピタキシャル成長など、純度を重視した CVD に利用されている。

ホットキャリア
[よみがな] ほっときゃりあ
[英訳] hot carrier
電極近傍の高電界状況下にある高エネルギーのキャリア。

ホッピングサイト
[よみがな] ほっぴんぐさいと
[英訳]hopping site 
電荷がホッピング機構で伝導する際に、電荷がホッピングする場所のことを指す。有機半導体中の電荷の伝導は、電子や正孔が分子と分子の間を飛び移り、分子間をホッピングすることによって電流が流れるホッピング伝導によって支配されている。電荷がホッピングして次のホッピングサイトに移るドライビングフォースは、熱と電場である。

ホッピング伝導
[よみがな] ほっぴんぐでんどう
[英訳] hopping conduction
分子を構成単位とする有機半導体において、半導体内に生成した電荷が分子間をホッピングしながら移動する伝導メカニズムを指す。多くの有機半導体では、電荷は個々の分子に閉じ込められた「粒子」としての性質を強く示すことが知られており、電荷は個々の分子の内部に閉じ込められている時間が長く、移動が断続的になるため、移動速度は遅くなる。

ポテンシャルエネルギー
[よみがな] ぽてんしゃるえねるぎー
[英訳] potential energy
ポテンシャルエネルギーは重力場における“位置エネルギー”など、質点が持つ潜在的エネルギーのこと。原子軌道のポテンシャルエネルギーは核と電子が無限大の距離離れた(静電相互作用が0)時のエネルギーレベルを0とした時の、各原子軌道の安定化の度合いを表すエネルギー(核が造る静電場において原子軌道が獲得するエネルギー)である。

ポテンシャルエネルギー曲線
[よみがな] ぽてんしゃるえねるぎーきょくせん
[英訳] potential energy curve
分子のエネルギーは、ボルン・オッペンハイマー近似を用いてそれぞれの原子核間距離におけるシュレディンガー方程式を解いて求めることができる。原子核間距離に対してエネルギーをプロットしたものを分子のポテンシャルエネルギー曲線という。平衡核間距離のとき、エネルギーは最小値をとり、最も安定な分子となる。電子が原子核から無限遠に離れたときのエネルギーをゼロとする。

ボトムエミッション構造
[よみがな] ぼとむえみっしょんこうぞう
[英訳] bottom emission structure
有機ELパネルのデバイス構造の一種で、基板の下部に向けて光を放射する。製造工程が比較的簡単とされているが、この方式は画素回路と有機ELを平面的に配置するため、発光の開口率(画素面積に対する発光面積の割合)を高くできず、輝度を上げにくいという短所がある。

ボトムゲート型
[よみがな] ぼとむげーとがた
[英訳] bottom gate type
有機トランジスタの代表的な構造の一つで、支持基板上にゲート電極を配し、その上にゲート絶縁膜、有機半導体層を積層させる構造をとる。このようなゲート電極が有機半導体層の“下(ボトム)”にある構造を「ボトムゲート型」と呼ぶ。

ボトムコンタクト型
[よみがな] ぼとむこんたくとがた
[英訳] bottom contact type
有機トランジスタの代表的な構造の一つで、有機半導体層の下面にソース/ ドレイン電極を配する構造を「ボトムコンタクト型」と呼ぶ。

HOMO(最高被占軌道)
[よみがな] ほも
[英訳] Highest Occupied Molecular Orbital
電子に占有されている最もエネルギーの高い分子軌道のこと。有機半導体においては、HOMO準位と真空準位のエネルギー差がイオン化エネルギーとなる。

ホモジニアス配向
[よみがな] ほもじにあすはいこう
[英訳] homogeneous orientation
全ての液晶分子が基板面に対して平行に、かつ同一方向に配列していること。

ポリチオフェン
[よみがな] ぽりちおふぇん
[英訳] polythiophene
含硫黄複素環化合物の一種であるチオフェンの重合体(ポリマー)である。ドーピングにより共役π軌道に対して電子を付与または除去すると、導電性を持つようになる。さまざまなポリチオフェン誘導体が知られており、PEDOT:PSSは導電性薄膜として有機ELや有機太陽電池の正孔注入材料として用いられている。P3HTは、太陽電池用のp型半導体として数多く検討されている。

ポリマー(重合体、多量体)
[よみがな] ぽりまー
[英訳] polymer
重合体、多量体またはポリマーとは、複数のモノマー(単量体)が重合する(結合して鎖状や網状になる)ことによってできた化合物のこと。このため、一般的には高分子の有機化合物である。現在では、高分子と同義で用いられることが多くなっている。化学構造は主として規則的な繰り返しの構造単位(繰り返し単位)からできている。 繰り返し単位で構成されずに単に分子量が大きいだけの分子は高分子とは言わず、巨大分子と言いう。ポリマー(polymer)の poly- は接頭語で「たくさん」を意味する。2種類以上の単量体からなる重合体のことを特に共重合体と言う。

ポリマーアロイ
[よみがな] ぽりまーあろい
[英訳] polymer alloy
ポリマーアロイとは複数のポリマーを混合することで、新しい特性を持たせた高分子のことである。複数の金属から合金(アロイ)を作ることになそらえてポリマーアロイと呼ばれる。新規あるいは改質された特性をもつ樹脂を開発する重要な方法の一つである。通常は複数のポリマーを単純に練合しても相分離してしまうので、相溶化剤を用いたり、二次的にブロック重合やグラフト重合させることで生成する。あるいは一方のポリマーをクラスター状に分散させるなどして均一相にすることで生成する。後者のように物理的なプロセスでポリマーアロイを作る技術をポリマーブレンドと呼ぶ。AS樹脂のようにモノマーの比率を変えて共重合体の特性をかえる場合は、通常はポリマーアロイに含めない。

ボルタンメトリー
[よみがな] ぼるたんめとりー
[英訳] voltammetry
ボルタンメトリーは、電気化学における分析法のうち、測定する系にかける電位を変化させ、それに応答して変化する電流を計測し、それを解析することにより分析を行う方法の総称である。多くの化学反応は、電子のやり取りを伴う酸化還元反応であり、電圧を印加して反応を進行させることができる。電位を反応の駆動力とすれば、反応速度は電流値で見ることができる。物質の種類によって反応する電位が異なるので、その電位は反応物質の定性分析に利用できる。電流は反応物質の濃度に比例するので定量分析も行える。また、電極表面における化学反応の過程の解析などに用いられる。得られる電流-電位曲線をボルタモグラムという。

ボルツマン定数
[よみがな] ぼるつまんていすう
[英訳] Boltzmann constant
分子1個あたりの気体定数。すなわち気体定数をアボガドロ定数で割った普遍定数。記号はk、値は 1.380649×10-23 J/Kである。熱運動の平均の運動エネルギーは、温度が1K増すごとに分子1個の1自由度あたりk/2 ずつ増す。統計的考察から、状態確率Wと熱力学のエントロピーSとの間に、S=k logW という関係式を導びき、統計力学の基礎を築いたルートウィヒ・エドゥアルト・ボルツマンの名にちなむ。

マーカス理論
[よみがな] まーかすりろん
[英訳] Marcus theory
マーカス理論は、ある化合物から別の化合物に電子が移動する反応の速度(電子移動速度)を記述するための理論である。ルドルフ・A・マーカスにより1956年から研究が進められた。電子が移る元となる化合物を電子ドナー、電子が移る先の化合物を電子アクセプターと呼ぶ。元々は、例えば Fe2+/Fe3+ イオンのような電荷のみが異る化学種の間での構造変化を伴わない電子の移動(外圏型電子移動反応)に取り組むために定式化されたものである。後に溶媒和距離や配位数の変化による効果が伴う(Fe(H2O)2+ と Fe(H2O)3+ では Fe-O 距離が異る)内圏型電子移動反応の寄与を取り込めるよう拡張された。有機半導体分野においても、ドナーとアクセプター間の電子移動などに対して本理論を適用することができ、重要である。

マーデルングエネルギー
[よみがな] まーでるんぐえねるぎー
[英訳] Madelung energy
マーデルングエネルギーは、イオン結晶物質における、イオン-イオン間の静電的相互作用によるエネルギーの総和。結晶における最隣接原子間距離をr 、最隣接の陽イオン‐陰イオンのペアの数をN 、イオンの価数をZ 、素電荷をe とすると、マーデルングエネルギーEは、E=−NαZ2 e2/r となる。ここでαはマーデルング定数と言われるもので、結晶構造によって値が変わる定数である。

マイクロエレクトロニクス
[よみがな] まいくろえれくとろにくす
[英訳] microelectronics
マイクロエレクトロニクスは電子工学の一分野で、名前が示すとおり、マイクロメートル単位(常にそうとは限らない)の超小型の電子部品の研究や製造に関連している。一般に半導体を原料とした電子部品である。トランジスタ、コンデンサ、コイル、抵抗器、ダイオードなど通常の電子部品のマイクロレベルの等価物があり、当然ながら絶縁体や電気伝導体も微細な電子部品に使われている。技術の発展と共に、マイクロエレクトロニクスの部品は小型化し続けている。回路が小型化すればするほど、部品同士の相互接続などの本質的な回路の属性が相対的に重要になる傾向があり、それらを寄生効果と呼ぶ。

マイクログリッド
[よみがな] まいくろぐりっど
[英訳] micro grid
マイクログリッドとは、一定の地域においてすべての電力負荷を分散型電源から供給する小規模電力系統のこと。分散型電源は発電機、太陽光・風力・水力・バイオマス発電、蓄電池、EVなどで構成する。需給制御システムが電力需要予測、太陽光・風力発電予測を行い、分散型電源の運転計画作成と制御を行い、電力系統の安定運用を行う。離島・遠隔地や、電力需要密度の大きい地域で導入されている。

マイクロコンタクトプリント(mCP)法
[よみがな] まいくろこんたくとぷりんとほう
[英訳] micro-Contact Printing (mCP) Method
マイクロコンタクトプリント(mCP)法は、ソフトリソグラフィーと呼ばれるナノ構造構築法のひとつである。 ソフトリソグラフィーの由来であるスタンプは、従来法の光リソグラフィーや電子線リソグラフィーによって作製したマイクロメートルの構造の形状パターン(マスター)を、ゴム状プラスチックスに写し取り作製する。マイクロコンタクトプリント法は、このスタンプ凸部表面に分子を塗布し基板に密着(コンタクト)することで、パターン化した分子の膜を基板上に作製する方法である。このスタンプの使用により、マイクロパターンを安価で簡便にコピーすることができる。この際、分子と基板表面との化学反応を利用することにより、安定した単分子厚さの膜(自己組織化膜:SAM)を基板上にパターン化することができる。例えば、チオール分子と金表面(S原子-Au)、シラン分子と酸化物、つまりOH−を持つ絶縁体表面(Si原子-O-)の組み合わせが利用されている。

マイクロ波
[よみがな] まいくろは
[英訳] microwave
マイクロ波は極超短波(UHF)とマイクロ波(SHF)の両方の帯域を合わせた、周波数300MHz〜30GHz(波長1cm〜1m)の電波の総称である。この周波数帯の電波は誘電加熱(いわゆる電子レンジ)や、放送電波、レーダー光源などに活用されている。有機化学分野においては、合成の加熱源としてマイクロ波を用いる研究が行われている。

マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-TOF-MS)
[よみがな] まとりくすしえんれーざーだつりいおんかしつりょうぶんせきほう
[英訳] Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization - Time of Flight Mass Spectrometry
MALDIは質量分析におけるイオン化法の一種で、マトリクスと呼ばれるイオン化促進剤と混合したサンプルに、紫外レーザーを照射することで、マトリクスを介してサンプル分子を昇華・イオン化させる。イオン化時のサンプル分子のフラグメンテーションを抑制できるソフトイオン化の一種であり、ESIやFDなどの他のソフトイオン化法ではイオン化が困難な、分子量数万程度の高分子をイオン化することができる。MALDIと飛行時間型質量分析計(TOF-MS)を組み合わせたMALDI-TOF-MSでは、イオン化されたサンプル分子は、質量分析計内を飛行中に質量に応じて分離され、検出される。マススペクトルの質量分解能は飛行時間が長いほど向上する。m/z=2eVt2/L2 ここで、m:イオンの質量、z:イオンの電荷(通常+1)、t:飛行時間、e:電気素量、V:加速電圧、L:飛行距離。MALDI-TOF-MSは、高分子材料のマススペクトルを測定し、定性分析を行うことができると共に、質量分解能が高いスパイラルモードと、測定可能な質量範囲が広いリニアモードを使い分けることにより、幅広い材料の評価ができる。

マルチプルトラッピングモデル
[よみがな] まるちぷるとらっぴんぐもでる
[英訳] multiple trapping model
不規則系の半導体においてエネルギーの乱れが大きい場合は、エネルギーの異なった多数の局在状態(マルチプルトラッピング)を仮定して、キャリアの緩和状態を記述する。ホッピングによるキャリア伝導が生じている場合も、選択的にキャリア伝導が起こるエネルギー準位(輸送エネルギー)が存在し、このエネルギーがバンド端と同じような働きをする。ホッピング伝導が生じている不規則系有機半導体において、マルチプルトラッピングモデルが適用される場合がある。

マルチフォトンエミッション素子
[よみがな] まるちふぉとんえみっしょんそし
[英訳] multiphoton emission device
スタック型有機EL素子を参照

乱れ
[よみがな] みだれ
[英訳] disorder
分子の集合状態において、特にアモルファス状態にあるときには、各分子間には電子エネルギー準位の分布や分子間距離は一定ではなく分布をもつ。この分布のことをdisorderと呼ぶことがある。例えば、有機半導体からなるアモルファス固体中の電荷輸送のモデルとして、分子のエネルギーや分子間距離の分布を考慮したdisorderモデルが提案され、移動度の電界および温度依存性が記述されている。

密度汎関数理論
[よみがな] みつどはんかんすうりろん
[英訳] density functional theory(DFT)
密度汎関数理論は、電子系のエネルギーなどの物性を電子密度から計算することが可能であるとする理論である。また密度汎関数法は密度汎関数理論に基づく電子状態計算法である。密度汎関数理論は物理や化学の分野で、原子、分子、凝集系などの多体電子系の電子状態を調べるために用いられる量子力学の手法である。この理論では多体系の全ての物理量は空間的に変化する電子密度の汎関数(すなわち関数の関数)として表され、密度汎関数理論という名前はそこから由来している。密度汎関数理論は凝集系物理学や計算物理、計算化学の分野で実際に用いられる手法の中で、もっとも汎用性の高い手法である。

無機固体
[よみがな] むきこたい
[英訳] inorganic solid
無機半導体においては、原子が共有結合によって結合して固体を形成するものが多く、その代表がシリコン単結晶である。無機半導体は個々の原子の性質と固体状態の性質には大きな乖離がある。これは、無機半導体においては、個々の原子が共有結合で結合しているために、電子が非常に数多くの原子上に非局在化しており、それによって元の原子の電子軌道と、共有結合した状態(巨大分子と捉えることもできる)の電子軌道が大きく異なるためである。

無効電力
[よみがな] むこうでんりょく
[英訳] reactive power
負荷と電源とで往復するだけで消費されない電力。 誘導負荷(インダクタンスに由来)と容量負荷(静電 容量に由来)から生じ、誘導負荷に由来する無効電力を「遅れ無効電力」、容量負荷に由来する無効電力を 「進み無効電力」と呼ぶ。 無効電力は、力率の悪化(皮相電力の増加)や電圧変動の要因となる。

無秩序性
[よみがな] むちつじょせい
[英訳] disorder
disorder 参照

無放射失活(無輻射失活、熱失活)
[よみがな] むほうしゃしっかつ
[英訳] non-radiative deactivation
電子励起された分子は、蛍光やりん光の放出を伴う輻射過程、あるいは発光を伴わない無輻射過程により基底状態へと失活する。配位座標において、励起状態と基底状態のポテンシャル曲線が交差する場合、電子励起状態から基底状態へ発光することなく、熱的に緩和が起こる。この過程は熱失活と呼ばれる。無放射失活過程は熱失活によるエネルギー緩和過程である。

無放射失活速度定数
[よみがな] むほうしゃしっかつそくどていすう
[英訳] nonradiative deactivation rate constant / radiationless deactivation rate constant
無放射失活速度定数Knrは次式で表される。Knr=Aexp(-Ea/KbT) ここで、A:頻度因子、Ea:活性化エネルギー(励起状態と、基底状態と励起状態の交点とのエネルギー差)、Kb:Boltzmann定数、T:温度。

無放射遷移
[よみがな] むほうしゃせんい
[英訳] nonradiative transition
量子力学的体系における定常状態間の遷移で、光子の放出・吸収を伴わないものの総称。分子や結晶内の電子準位については、主として分子振動や格子振動との相互作用を介して遷移が起こる。分子の前期解離や蛍光の消光現象のほか、結晶内の電子と正孔の再結合過程や、π電子系の内部転換や項間交差過程として観察され、一般に励起状態の脱活過程の研究で扱われる。

無放射速度定数
[よみがな] むほうしゃそくどていすう
[英訳] non-radiative rate constant
放射速度定数参照

メガソーラー
[よみがな] めがそーらー
[英訳] mega solar
1メガワット(1000キロワット)を超える大規模な太陽光発電システムのこと。主に自治体、民間企業の主導により、遊休地・堤防・埋立地・建物屋根などに設置されている。

MEMS(メムス)
[よみがな] めむす
[英訳] Micro Electro Mechanical Systems(MEMS)
MEMS(メムス、Micro Electro Mechanical Systems)は、機械要素部品、センサ、アクチュエータ、電子回路を一つのシリコン基板・ガラス基板・有機材料などの上に微細加工技術によって集積化したデバイスを指す。プロセス上の制約や材料の違いなどにより、機械構造と電子回路が別なチップになる場合があるが、このようなハイブリッドの場合もMEMSという。例えば、電子顕微鏡の中は高真空で微小な空間だが、MEMSはその小さいサイズと機械的性質により、電子顕微鏡下での実験が可能となる。また、DNAや生体試料などのナノ・マイクロメートルの物質を操作・捕獲・分析するツールとしても活躍している。現在、製品として市販されている物としては、インクジェットプリンタのヘッド、圧力センサ、加速度センサ、ジャイロスコープ、プロジェクタ・写真焼付機等に利用されるDMD、光造形式3Dプリンターやレーザープロジェクタ等に使用されるガルバノメータなどがあり、徐々に応用範囲は拡大しつつある。

面光源
[よみがな] めんこうげん
[英訳] surface light source / surface illuminant
広がりのある面全体から光を発する光源。点光源に対する用語。照明やディスプレーのバックライトなどに用いられる。点光源の無機LED照明と面光源の有機EL照明を比較した場合、同じ照度を得るためには、点光源の無機LEDの場合は各LEDからより強い発光を出す必要があるため、直視したときのまぶしさや多重影の発生の課題があるが、面光源の有機ELの場合はこれらの課題が緩和できる。

面ソース蒸着源
[よみがな] めんそーすじょうちゃくげん
[英訳] plane evaporation source
真空蒸着において、蒸着源を面状に並べた方式を面ソース蒸着源という。線形ソース方式は、基板1枚を蒸着するために、ソースの位置を複数回移動させなければならないが、面ソース方式は一度で基板全体にわたって蒸着できる。

面抵抗率(シート抵抗)
[よみがな] めんていこうりつ
[英訳] sheet resistance
一様の厚さを持つ薄い膜やフィルム状物質の電気抵抗を表す量のひとつ。シート抵抗、表面抵抗率とも呼ばれる。単位(Ω/□ または Ω/sq)。

モーショナル・ナローイング
[よみがな] もーしょなる・なろーいんぐ
[英訳] motional narrowing
共鳴スペクトル線幅が温度の上昇に伴い先鋭化すること。モーショナル・ナローイング(運動による線幅の先鋭化)と呼ばれる。

モジュール変換効率
[よみがな] もじゅーるへんかんこうりつ
[英訳] module conversion efficiency
モジュール変換効率とは、太陽光パネル(太陽電池モジュール)の1平方メートルあたりの変換効率を表す指標で、太陽光パネルの発電能力を表す指標として一般的に使われている。モジュール変換効率=(モジュール公称最大出力(W)×100) ÷ (モジュール面積(m2) × 1000(W/m2))

モノマー(単量体)
[よみがな] ものまー
[英訳] monomer
モノマーとは単位が一個ということを意味し、一般に高分子(ポリマー)の構成単位や重合反応前の原料(基質)のことを指す。モノマーが2つ結合したものはダイマー(二量体)、3つ結合したものはトリマー(三量体)と呼ばれる。

モル吸光係数(分子吸光係数)
[よみがな] もるきゅうこうけいすう
[英訳] molar extinction (absorption) coefficient
物質特有の光を吸収する際の定数で分子吸光係数ともいう。物質溶液はランベルト・ベールの法則に従い光を吸収する。 I=Io×10-dεc、ここでdは溶液層の厚さ、Cは物質のモル濃度、εは物質に特有なその光波長でのモル吸光係数、IoとIは液層透過前と後の光の強さである。物質溶液のモル濃度とスペクトルがわかれば、各波長でのεが決まる。逆に、ある波長でのεの知られている物質溶液の吸光度から濃度Cを決めることができる。

モルフォロジー
[よみがな] もるふぉろじー
[英訳] morphology
モルフォロジーとは、形態や構造のことを指し、形態や構造を扱う学問分野も意味する。有機半導体を薄膜材料として用いる有機ELや有機太陽電池、有機トランジスタ―において、有機半導体薄膜のモルフォロジーは、デバイス性能に大きな影響を持つ重要な要素である。例えば、薄膜の集合状態として、結晶、液晶、アモルファスなどがありうる。結晶は、結晶界面の有無によって単結晶と多結晶に分けられる。また、同じ分子であっても異なる結晶状態を取ることができ、ポリモルフィズムと呼ばれる。アモルファスとは結晶のような長距離秩序はないが、短距離秩序はある物質の状態を指し、短距離秩序として分子間の会合状態があり、その会合状態の違いによっても膜の性質は変化する。多成分系の薄膜のモルフォロジーはさらに複雑である。例えば、有機太陽電池においては、熱アニールや添加剤、溶媒蒸気などによってモルフォロジーを制御して性能を高める研究が多く行われている。

ヤブロンスキー(Jablonski)ダイアグラム
[よみがな] やぶろんすきーだいあぐらむ
[英訳] Jablonski diagram
ヤブロンスキーダイアグラム は、分子と光の相互作用を説明するためのエネルギー状態図。名称はポーランドの物理学者アレクサンデル・ヤブウォニスキ (Aleksander Jab?o?ski) にちなむ。吸光や発光、消光などの過程では、分子のエネルギーやスピン多重度が様々に遷移する。ヤブロンスキー図は、これらの過程を視覚的に表すために用いられる。

有機アモルファス
[よみがな] ゆうきあもるふぁす
[英訳] organic amorphous
有機半導体の中には、安定なアモルファス固体を形成する材料があり、有機アモルファス、有機アモルファス固体、有機アモルファス材料、分子性ガラス、アモルファス分子材料など様々な呼称がある。これらの有機アモルファスは、薄膜にしたときに欠陥点が少なく、大面積にわたって均質という特徴があり、有機ELなどの薄膜大面積デバイス用途に適している。高分子、高分子分散系、低分子いずれでも安定なアモルファス状態を形成しうる。有機アモルファスは、分子配列の規則性は低いため、電荷移動度は一般に低い(10-6 ~ 10-2 cm2/Vs)が、会合体の形成が抑制され、発光量子収率が高いなどの特徴を有する。

有機EL素子
[よみがな] ゆうきいーえるそし
[英訳] organic electroluminescent device / organic light emitting diode
有機EL素子とは、一般に電流を注入することで有機化合物を励起させて発光を得る素子のことを指す。有機EL素子の一般的な構造としては、陽極と陰極およびこれら両電極に挟まれた有機層からなる。有機層は、機能が異なる多層からなることが一般的である。たとえば、正孔を注入する層、正孔を輸送する層、発光する層、電子を輸送する層、電子を注入する層などである。

有機EL素子の動作メカニズム
[よみがな] ゆうきいーえるそしのどうさめかにずむ
[英訳] operating mechanism of organic electroluminescent device
有機EL素子の一般的な構造は、陽極と陰極およびこれら両電極に挟まれた有機層からなる。有機層は、機能が異なる多層からなることが一般的である。たとえば、正孔を注入する層、正孔を輸送する層、発光する層、電子を輸送する層、電子を注入する層などである。有機EL素子の動作メカニズムは、有機EL素子を構成する有機層に対して陰極から電子が、陽極からホールが注入され、それぞれのキャリアが輸送されて発光分子で再結合して励起子を生成する。この励起子が基底状態に戻るときに光によりエネルギーを放出するというのがその概要である。これを有機分子の観点から見ると、ホール輸送はホール輸送層を構成する分子が酸化されてラジカルカチオンを形成し、このラジカルカチオンが分子間の電子授受で移動する過程、電子輸送は電子輸送層を構成する分子が還元されてラジカルアニオンを形成し、このラジカルアニオン状態が分子間の電子授受で移動する過程、発光はラジカルカチオンとラジカルアニオンが接近、再結合して電子・ホール対(励起子)を形成し、この励起子が基底状態に戻る(失活過程)ときにエネルギーを放出する(発光する)過程ということができる。

有機エレクトロニクス
[よみがな] ゆうきえれくとろにくす
[英訳] organic electronics
有機半導体をベースとしたエレクトロニクス。代表的なデバイスとして、有機トランジスタ、有機EL、有機太陽電池などが挙げられる。薄い、軽い、柔軟性に優れるなどの特長を有する。この特長は、@光・電子材料として用いる低分子や高分子系の有機材料そのものが、無機結晶と比べて軽く・柔軟であること、Aデバイス作製温度が無機デバイスよりも低いため、基板としてプラスチックフィルムが適用できることに起因する。また、印刷技術を用いた塗布プロセスを適用できれば、低価格化、大面積化が可能である。有機エレクトロニクスデバイスを用いる従来にない用途として、折り畳みスマートフォンのディスプレイ、照明機能をもつ壁紙、人体にフィットさせたバイオセンサーなどが挙げられる。

有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)
[よみがな] ゆうきえれくとろるみねっせんす
[英訳] organic electroluminescence
有機ELとは、一般に電流を注入することで有機化合物を励起させて得られる発光のことを指す。他方で、その現象を利用したデバイスや製品一般を指すために使われることもある。次世代ディスプレイのほか、LED照明と同様に次世代照明技術として期待されている。

有機感光体
[よみがな] ゆうきかんこうたい
[英訳] Organic Photoconductor(OPC)
有機感光体(OPC)は、感光体表面の電位差を利用して画像を形成する。 原理的には 電位の極性は正極性 ・ 負極性のいずれでも差し支えない。 OPC の画像形成電位が正極性のものは正帯電型 OPC と呼び、負極性のものは負帯電型 OPC と呼ぶ。OPC の層構成は、負帯電積層型 OPCでは、まずアルミニウム管などの導電性基体上に樹脂などからなる下引き層(UCL:UnderCoat Layer)を設ける。下引き層の上に、電荷発生材料(CGM:Charge Generation Material)と樹脂などからなる電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)を設ける。さらに電荷発生層の上に、電荷輸送材料(CTM:Charge Transport Material)の一種である正孔輸送材料(HTM:Hole Transport Material)と樹脂などからなる電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を設けている。このように感光層は機能別積層構造である。

有機金属化合物
[よみがな] ゆうききんぞくかごうぶつ
[英訳] organometallic compound
炭素原子と金属原子の間で共有結合をもつ有機化合物の総称。ヒ素、亜鉛、水銀、マグネシウムを含む有機金属化合物は以前からよく知られていたが、近年、リチウムやアルミニウムを含む有機金属化合物が合成化学上重要な役割を果すことや、ケイ素を含む化合物がきわめて独特で有用な性質を示すことなどが知られ、有機金属化合物の研究が非常に盛んになった。現在では、稀有元素や人工放射性元素などを除き、金、白金はもちろん、ほとんどすべての金属元素の有機金属化合物が知られている。これらのうちには、有機金属化合物以外のものではみられない独特の性質を示すものもあり、医薬品、農薬あるいは化学、化学工業上重要なものも多数見出されている。

有機金属気相成長法(MOCVD)
[よみがな] ゆうききんぞくきそうせいちょうほう
[英訳] Metal Organic Chemical Vapor Deposition(MOCVD)
有機金属気相成長法(MOCVD)は、原料として有機金属やガスを用いた結晶成長方法、及びその装置である。結晶成長という観点を重視してMOVPE (metal-organic vapor phase epitaxy) とも言う。化合物半導体結晶を作製するのに用いられ、MOCVDでは原子層オーダで膜厚を制御することができるため、半導体レーザを初めとするナノテクノロジーといった数nmの設計が必要な分野で用いられる。代表的な半導体結晶成長装置である分子線エピタキシー法 (MBE) と比較し、面内での膜厚の偏差が少なく、高速成長が可能であるほか、超高真空を必要としないために装置の大型化が容易であり、大量生産用の結晶成長装置として、LEDや半導体レーザを初めとした光デバイスの商用製品の作製に多く用いられている。

有機ケイ素化合物
[よみがな] ゆうきけいそかごうぶつ
[英訳] organic silicon compound / organosilicon compound
有機ケイ素化合物は、炭素-ケイ素結合を持つ有機化合物の総称であり、有機ケイ素化学はそれらの物性・反応性などを研究する化学である。炭素と同様、有機ケイ素化合物中のケイ素原子は4価であり、四面体型構造をとる。最初の有機ケイ素化合物はテトラエチルシランで、1863年、四塩化ケイ素とジエチル亜鉛の反応で合成された。炭素とケイ素を含む最も単純な化合物は炭化ケイ素であり、1893年に発見されて以来、多くの工業的用途が見出されている。

有機光導電体(有機光伝導体)
[よみがな] ゆうきこうどうでんたい
[英訳] organic photoconductor (OPC)
有機光導電体とは、光を照射することによって導電性が高まる有機化合物である。 例えば、フタロシアニン誘導体やトリフェニルアミン誘導体が挙げられる。分子構造を変える事により感光する波長域を変えることが出来る。

有機固体の電子構造
[よみがな] ゆうきこたいのでんしこうぞう
[英訳] electronic structure of organic solid
有機固体は一般にファンデルワールス相互作用により分子が凝集した分子性固体である。このため、価電子帯の波動関数は分子内にのみ広がっている。分子と分子の間にはポテンシャルの壁があるため、電子の移動は大きな制限を受ける。分子の軌道のうち、最もエネルギーの高い占有軌道をHOMO、最もエネルギーの低い空軌道をLUMOという。この二つの軌道はフロンティア軌道と呼ばれ、電気特性をはじめ、さまざまな物性を左右する鍵となる軌道である。有機固体のHOMOと真空準位のエネルギー差は、有機固体から電子を1個取り出すのに必要な最低のエネルギーに対応し、イオン化エネルギー(イオン化ポテンシャル)と呼ばれる。一方、LUMOと真空準位のエネルギー差は、有機固体に電子を1個与えたときに放出されるエネルギー(あるいは負イオンのイオン化エネルギー)に対応し、電子親和力と呼ばれる。また、HOMOとLUMOのエネルギー差がバンドギャップである。ただし、バンドギャップには、光学バンドギャップとトランスファーバンドギャップがあり、両者の値は異なる。前者は、吸収スペクトルの吸収端波長、つまり、基底状態と励起状態のエネルギー差となる。一方、後者は、基底状態と、自由なホール(カチオンラジカル)と電子(アニオンラジカル)に分離した状態とのエネルギー差であり、逆光電子分光などで測定される。通常、前者の値を用いることが多いが、その場合は、励起子の結合エネルギーの分だけバンドギャップを小さく評価していることになる。

有機色素
[よみがな] ゆうきしきそ
[英訳] organic dye / organic pigment
色素は可視光の吸収あるいは放出により物体に色を与える物質の総称。色素となる物質は無機化合物と有機化合物の双方に存在するが、有機化合物に存在する色素が有機色素である。染料や顔料の多くは色素である。なお、染料は色素が溶媒に溶解するものを指し、顔料は色素が溶媒に溶解せず、分散しているものを指す。

有機CMOSイメージセンサ
[よみがな] ゆうきしーもすいめーじせんさ
[英訳] Organic-Photoconductive-Film CMOS Image Sensor
光を電気信号に変換する機能を有機薄膜で、信号電荷の蓄積および読み出しを行う機能を下層の回路部で、それぞれ完全独立に行う構成の有機CMOSイメージセンサが実用化されている。

有機太陽電池
[よみがな] ゆうきたいようでんち
[英訳] Organic solar cell
有機太陽電池は、機能性高分子や有機色素などの有機化合物を主たる光電変換材料に用いるによる太陽電池を指す。有機太陽電池には、無機半導体を使用する太陽電池と同様の原理で発電する形式と有機色素を使用した形式がある。無機半導体を用いた太陽電池に対し、有機物では分子設計の自由度が高いため光吸収層(光電変換層)の吸収波長を太陽光に適した分子構造にする事で変換効率を高める事が試みられている。また、材料の精製に多大なエネルギーを必要とする無機半導体と比較して製法が簡便で生産コストが低くでき、着色性や柔軟性などを持たせられるなどの特長を有する。変換効率や寿命に課題があるが、その克服と実用化に向けて開発が進められている。

有機単結晶トランジスタ
[よみがな] ゆうきたんけっしょうとらんじすた
[英訳] organic single-crystal transistor
有機単結晶トランジスタは、有機分子がほぼ完全な周期性をもって配列している有機半導体単結晶を半導体活性層として用いる。そのため、高分子薄膜における構造の 不規則性や低分子多結晶薄膜における結晶粒界の影響が排除された、より理想的なトランジスタ特性が一般に期待される。一方で、特定位置に有機単結晶を成長させることは一般に困難であるため、応用上の課題がある。

有機デバイス
[よみがな] ゆうきでばいす
[英訳] organic device
有機化合物の中には半導体の性質を示すもの(有機半導体)が少なからず存在する。この有機半導体を用いて作られた回路や素子のことを有機デバイスと呼び、これを用いた電子工学を有機エレクトロニクスと呼ぶ。有機デバイスはシリコン半導体を用いたデバイスに比べて、軽い・薄い・曲げられるなどの特徴があり、極薄太陽電池・トランジスタ・照明・極薄ディスプレイなどが有機デバイスによって作製されている。

有機電界効果トランジスタ(OFET)
[よみがな] ゆうきでんかいこうかとらんじすた
[英訳] organic field effect transistor
トランジスタの活性層に有機半導体を用いた電界効果トランジスタのことを指す。電界効果トランジスタとは、ゲート電極に電圧を加えることでチャネル領域に生じる電界によって電子または正孔の密度を制御し、ソース・ドレイン電極間の電流を制御するトランジスタである。

有機電荷移動錯体
[よみがな] ゆうきでんかいどうさくたい
[英訳] organic charge‐transfer complex
電荷移動錯体とは、電荷が分子間で移動できる2つ以上の異なる分子の会合体である。会合により分子が静電気的に引きつけられ、錯体が安定化される力が生まれる。電子を供与する分子は電子供与体、電子を受容する分子は電子受容体と呼ばれる。これに対して、一般的な有機物は中性分子が構成要素となっており、それらがファンデルワールス力で凝集している。有機分子が正又は負イオンの状態になって、無機イオンや他の有機イオンと塩を作る場合もあるが、その場合でも有機分子は閉殻構造となり、不対電子を持たないのが通常普通である。電荷移動錯体の例として、ペリレン/ヨウ素、テトラチアフルバレン (TTF)/テトラシアノキノジメタン (TCNQ) などが挙げられ、高い電気伝導度や超伝導性をもつものがある。

有機電気化学
[よみがな] ゆうきでんきかがく
[英訳] organic electrochemistry
有機電気化学とは、電気化学を組み合わせた有機化学のことを指し、有機電気化学の概念や手法を利用したモノづくりのことを有機電解合成と呼ぶ。

有機電子供与体(有機p型半導体, ドナー)
[よみがな] ゆうきでんしきょうよたい
[英訳] organic electron donor
有機電子供与体とは、自分自身の電子を他の化学物質に転移させる有機半導体のことを指す。電子の授与は電子供与体自身を酸化させ、また、電子受容体を還元させる。電子供与体が電子を与える能力の程度はイオン化エネルギーとして測定できる。イオン化エネルギーとは、最高被占軌道(HOMO)から電子を放出させるのに要するエネルギーの大きさである。

有機電子受容体(有機n型半導体、アクセプター)
[よみがな] ゆうきでんしじゅようたい
[英訳] organic electron acceptor
有機電子受容体とは、電子を他の物質から自分自身へと移動させる有機半導体のことを指す。電子の受け取りは電子受容体自身を還元させ、また、電子供与体を酸化させる。電子受容体が電子を受け取る能力の程度は電子親和力として測定できる。電子親和力とは、最低空軌道(LUMO)を電子で満たしたときに放出されるエネルギーの大きさである。

有機伝導体(有機導電体)
[よみがな] ゆうきでんどうたい
[英訳] organic conductor
電気を比較的よく通す有機化合物のこと。金属に似た電気的特性を持ち、電子の運動が特定の方向に制限される異方性を示すものが多い。有機系の電子伝導体(導電体)は、大きくは結晶型と高分子型に分けられる。前者には電荷移動型分子性結晶およびフラーレン系超伝導体および導電体が含まれ、後者には導電性高分子と呼ばれる一次元π共役高分子が含まれる。無機物に比べ、軽量で柔軟性があり、エレクトロニクス分野への応用が進められている。有機伝導体よりも電導度が低いものは有機半導体と呼ばれるが、その境界やそれぞれの定義は曖昧さが残っている。

有機導体
[よみがな] ゆうきどうたい
[英訳] organic conductor
電気伝導性をもつ有機化合物および有機錯体のうち、とくに電気伝導度の高い物質。電気伝導度特性が半導体特性をもつもの(温度の上昇とともに電気伝導度が増加)と、金属的特性をもつもの(温度の降下とともに電気伝導度が増加)とがある。電気伝導度の発現は電荷移動に基づく。1954年、多環芳香族化合物の一つであるペリレンを電子供与体とし、ハロゲンである臭素、またはヨウ素を電子受容体とした電荷移動錯体が8Ωcmという電気伝導性を示したことによって、有機導体の研究が開始された。

有機導波路型レーザーダイオード
[よみがな] ゆうきどうはろがたれーざーだいおーど
[英訳] organic waveguide type laser diode
レーザーデバイスの構造は、(1)導波路型、(2)面発光型に分けられる。導波型は利得長が長く共振器一往復あたりの増幅率を大きくすることがで きる。面発光型は面発光デバイスである有機ELとのデバイス構造面でのマッチングがよく、また並列集積化が可能であることから、単独光源だけでなく光情報処理光源として期待され、研究段階にある。

有機トランジスタ
[よみがな] ゆうきとらんじすた
[英訳] organic transistor
トランジスタは一般に、電極・ゲート絶縁層・半導体層(MIS構造)からなり、半導体材料に有機物を用いたトランジスタを有機トランジスタとよぶ。特に半導体層を薄膜形成したトランジスタは、有機薄膜トランジスタ(Organic Thin Film Transistor: OTFT)とよばれる。また、一般に有機トランジスタという場合、有機電界効果トランジスタ(有機FET)を指していることが多く、有機FETの中でも有機薄膜トランジスタ(有機TFT)を指す。トランジスタとしての動作は、MIS構造の半導体層にソース電極からキャリアを供給し、蓄積されたキャリアをドレイン電極から取り出す。

有機トランジスタ材料
[よみがな] ゆうきとらんじすたざいりょう
[英訳] organic transistor material
有機半導体では、無機半導体の価電子帯に相当するHOMOと伝導帯に相当するLUMOのエネルギー準位が電子物性のキーパラメーターとなる。一般に、有機トランジスタ材料では、HOMOまたはLUMOに電極からキャリアを注入することで動作するとされており、電極に用いる金属の仕事関数とHOMO準位、LUMO準位のマッチングが重要となる。キャリアの注入と大気中での材料の安定性に関して、p型有機半導体材料、n型有機半導体材料のそれぞれについて望ましいHOMO準位、LUMO準位が分かっている。電極として金を用いる場合、有機半導体材料のHOMO準位にして約5.7eVから円滑なホール注入が起こり、大気中で安定なp型有機半導体材料としてふるまう。一方、LUMO準位にして約3.3eV程度から電子注入が起こるようになり、高真空下または不活性ガス雰囲気下ではn型有機半導体材料としてふるまう。更に低いLUMO準位(〜3.8eV以下)の材料では、大気中でのn型の有機トランジスタとしての動作が可能となることが報告されている。

有機薄膜
[よみがな] ゆうきはくまく
[英訳] organic thin film
導電性高分子などの有機半導体からなる薄膜。有機薄膜トランジスタ、有機EL、有機薄膜型太陽電池や有機薄膜CMOS(シーモス)イメージセンサーなどに用いられる。

有機薄膜太陽電池
[よみがな] ゆうきはくまくたいようでんち
[英訳] organic thin film solar cell /organic photovoltaic (OPV)
有機半導体を光電変換層に用いる太陽電池のこと。有機薄膜太陽電池の基本構成は、電子供与体(ドナー)、電子受容体(アクセプター)、陽極、陰極から成る。有機薄膜太陽電池に光を当てると、電子供与体 and/or 電子受容体が光を吸収して励起され励起子を生成する。その励起子が電子供与体と電子受容体の界面に移動し、電子供与体から電子受容体に電子が流れて電荷分離状態を形成する。すなわち、電子供与体は電子を電子受容体に渡して自身はカチオン(ホール)となり、電子受容体は電子を受け取ってアニオンとなる。次に、ホールが陽極側に、電子が陰極に流れることにより、外部回路に電流が流れて太陽電池となる。

有機薄膜太陽電池の評価方法
[よみがな] ゆうきはくまくたいようでんちのひょうかほうほう
[英訳] evaluation method of organic thin film solar cell
太陽電池の評価には、基準太陽光スペクトルなどの標準試験条件が規定されている。実際には、疑似太陽光を照射するソーラーシミュレータを用いて太陽電池セルの特性を測定するが、基準太陽光スペクトルを忠実に再現することは困難である。そこで、太陽光スペクトルに近い光源に対して、AM(エアマス)1.5Gのフィルターなどを介することで、極力基準太陽光スペクトルに近づける操作を行う。一方、受光側については、評価する太陽電池と同様の分光感度特性を有する基準太陽電池セルを用い、ソーラーシミュレータを校正した後で、評価する太陽電池の特性を測定する。有機薄膜太陽電池では、特性は電流-電圧曲線で表わされる。評価の指標としては、短絡電流、短絡電流密度、開放電圧、形状因子、変換効率などがある。

有機薄膜トランジスタ(OTFT)
[よみがな] ゆうきはくまくとらんじすた
[英訳] organic thin film transistor
トランジスタの活性層に有機半導体を用いた薄膜トランジスタ。一般に有機トランジスタという場合、有機電界効果トランジスタ(有機FET)を指していることが多く、有機FETの中でも有機薄膜トランジスタ(有機TFT)を指す。

有機発光材料
[よみがな] ゆうきはっこうざいりょう
[英訳] organic light emitting material
有機発光材料とは、ある種のエネルギー刺激を与えられたとき、それに対する応答として光を放出する機能を有する有機材料を言う。有機材料の発光過程は一種のエネルギー変換プロセスとしてとらえることが出来る。刺激源である入力エネルギー種としては、機械エネルギー、光エネルギー、電気エネルギー、化学エネルギー等多種多様である。それぞれの刺激に対応してメカノルミネッセンス、フォトルミネッセンス、エレクトロルミネッセンス、ケミルミネッセンスと呼ばれている。

有機発光トランジスタ(発光性有機トランジスタ)
[よみがな] ゆうきはっこうとらんじすた
[英訳] organic light emitting transistor(light-emitting organic field effect transistor)
有機EL(OLED)の発光機能と有機電界効果トランジスタ(OFET)のスイッチング機能を両方担ったデバイスとして、発光性有機トランジスタがある。トランジスタの活性層に有機発光材料が用いられ、有機レーザダイオードへつながるものとして期待されている。

有機半導体
[よみがな] ゆうきはんどうたい
[英訳] organic semiconductor
有機半導体とは、半導体としての性質を示す有機物のことである。無機の半導体はその導電率が金属と絶縁体の中間的な物質と定義されており、狭義の有機半導体は同じく導電率で定義され、電荷移動錯体などが該当する。一方、広義の有機半導体と呼ばれるものの中には、導電率の定義によると絶縁体に分類されてしまうものも多い。そのような材料でも、電荷注入電極の選択などにより、無機半導体並みの電流密度を達成しうる。広義の有機半導体とは、バンドギャップ(HOMO-LUMOエネルギーギャップ)が比較的小さく、電荷輸送特性や発光特性などの光・電子特性を示す有機化合物全般を指していると考えられるが、あまり明確な定義はない。有機半導体の化学構造としては、π電子をもつ芳香族系の化合物が多い。

有機半導体材料
[よみがな] ゆうきはんどうたいざいりょう
[英訳] organic semiconductor material
有機半導体の性質を示す材料を指す。大きく分けて低分子系と高分子系がある。

有機半導体レーザー
[よみがな] ゆうきはんどうたいれーざー
[英訳] organic semiconductor laser
電流励起により発振する有機固体レーザー。有機半導体レーザーは、可視光全域にわたる広波長帯域をカバ ーしうることと、コンパ クトで低コストな光源として期待されている。一方、レーザー発振の必要条件である反転分布を作り出すためには、高密度の電流密度と励起状態を必要とすることから、耐久性などに課題がある。

有機フォトダイオード
[よみがな] ゆうきふぉとだいおーど
[英訳] Organic Photodiode (OPD)
有機フォトダイオードは、有機半導体材料を電極で挟み込んだサンドイッチ構造のダイオードで、電子供与性(ドナー型)、電子受容性(アクセプター型)の2種の有機分子を含んでいる。それらの分子が光を吸収して励起されると、ドナー - アクセプター分子界面に励起状態が移動して電荷分離が誘起される。その後、生成したホールと電子がそれぞれの電極に捕集されて電流が発生する。

有機無機ペロブスカイト化合物
[よみがな] ゆうきむきぺろぶすかいとかごうぶつ
[英訳] organic inorganic Perovskite compound
ペロブスカイト型化合物の陽イオンの成分を有機アンモニウムに替えることも可能である。このペロブスカイト型化合物には有機成分が含まれていることから、有機無機ペロブスカイト化合物と呼ばれており、金属イオンは主に錫や鉛が用いられる。一般式で[(RNH3)mMXn]などで表され、金属イオンMやハロゲンX、有機基Rを変えることで、その構造や物性を緻密に制御できる。錫の有機無機ペロブスカイト化合物は電気伝導性に優れ、鉛のそれは光物性などに優れている。また、ハロゲンを変えるだけでバンドギャップの制御が可能である。有機基Rは、メチル基や長鎖アルキル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基などが利用され、有機物の骨格の多様性が構造の制御に活かされている。例えば、R = メチルの場合は[(MeNH3)MX3]の化学組成を持つ3次元の立方晶ペロブスカイト構造を形成する。R = CnH2n+1 (n = 2以上)の場合は、2次元ペロブスカイト層を形成し、アルキル鎖の長さに応じて層間の距離が変化する。応用例としてペロブスカイト太陽電池(PSC)がある。

有機メモリ
[よみがな] ゆうきめもりー
[英訳] organic memory
有機メモリは、その活性層の少なくとも主成分が有機物であるものを示し、揮発性・不揮発性の情報保持機能をもつものを言う。有機トランジスタや有機エレクトロルミネッセンス(EL)が実用化され,印刷技術の応用によるプリンタブルエレクトロニクスも現実のものとなりつつある中、有機メモリにも注目が集まっている。安価な不揮発性メモリとして大きな市場性が期待されている。また、有機デバイスの特徴を活かした低コスト無線タグやコンピュータを展望したとき、有機トランジスタと同様のプロセスでデバイスに組み込むことのできる不揮発性メモリ、ランダムアクセスメモリは必須のものとなる。有機メモリはその構造から分類すると、三端子形(トランジスタ構造)と二端子形(サンドイッチ構造)とに大別される。

有効質量
[よみがな] ゆうこうしつりょう
[英訳] effective mass
有効質量とは、何らかの物理現象を古典力学における質量を含む物理法則(比較的簡単な現象の場合が多い)と類比することで、現象論的に理解しようとしたときに出てくる質量相当の物理量の総称である。結晶中の電子の物性で用いられることがほとんどだが、それ以外の物理現象にもこの概念を用いることがある。半導体中の電子の移動における有効質量は、電子に電圧を与えたときに動く速度から換算すると、真空中の電子の質量と異なると考える概念である。物質のバンド構造に関係し、半導体中の電子は電圧をかけると実質的にこの質量で動く。一般的な半導体では、有効質量は真空中の電子の質量(9.11×10-31kg)より軽く、半導体中では早く動くことが出来る。

有効状態密度
[よみがな] ゆうこうじょうたいみつど
[英訳] effective density of state
半導体において、有効状態密度とは、伝導帯の電子密度や価電子帯の正孔密度を表すときに用いられる状態密度である。状態密度参照。

誘電異方性(誘電率異方性)
[よみがな] ゆうでんいほうせい
[英訳] dielectric anisotropy
分極のしやすさに異方性があること。例えば液晶分子は細長い形状をしている場合が多く、長軸方向に分極しやすい。誘電率は方向の関数で、分子のダイレクターの向きは電場によって制御される。したがって誘電率は電場の関数となる。

誘電緩和
[よみがな] ゆうでんかんわ
[英訳] dielectric relaxation
誘電緩和とは、物質の誘電率の瞬間的な遅れのこと。 通常これは誘電媒質(コンデンサ内部や2つの大きな導体表面間など)の変動電場による分子分極の遅れによって起こる。

誘電率
[よみがな] ゆうでんりつ
[英訳] permittivity
誘電率は物質内で電荷とそれによって与えられる力との関係を示す係数である。電媒定数ともいう。各物質は固有の誘電率をもち、この値は外部から電場を与えたとき物質中の原子(あるいは分子)がどのように応答するか(誘電分極の仕方)によって定まる。誘電率は有機半導体薄膜の電子構造に影響を与え、分子周辺の誘電率は、電極上、バルク、表面の順で高くなり、電子親和力もこの順で大きくなる。反対に、イオン化エネルギーはこの順で小さくなる。

誘導体
[よみがな] ゆうどうたい
[英訳] derivative
有機化学用語で、ある化合物Aを化学反応によって部分構造を変換して化合物Bに導いたとき、BをAの誘導体という。通常、ある化合物中の水素原子あるいは特定の原子団が、ほかの原子あるいは原子団によって置換された化合物をいう。たとえば、酢酸エチルCH3COOC2H5は酢酸CH3COOHの誘導体であり、クロロベンゼンC6H5ClはベンゼンC6H6の誘導体である。広義には、必ずしも元の分子から化学反応で誘導された分子でなくても、分子の主骨格が同じで、置換基、部分構造、側鎖が異なる分子(類縁体)を誘導体と呼ぶこともある。

UPS
[よみがな] ゆーぴーえす
[英訳] Ultraviolet Photoelectron Spectroscopy (UPS)
紫外光電子分光法参照

UV/オゾン洗浄
[よみがな] ゆーぶいおぞんせんじょう
[英訳] UV/ozone cleaning
UVオゾン洗浄法は、UV(紫外)光を利用した光酸化の工程や処理を指す。基板表面等を汚染している有機物質はUV光を吸収し分解しうる。また、空気中の酸素分子は184.9nmでオゾンになり、オゾンは253.7nmの波長で分解され、同時に活性酸素を生成する。有機物質の分解生成物は活性酸素と反応し、水や二酸化炭素などの揮発性分子(ex.CO2,H2O etc.)となり、基板表面から脱離する。このメカニズムから、184.9nmと253.7nmの両波長と酸素分子の存在が必要である。

UV-VIS吸収スペクトル
[よみがな] ゆーぶいびじぶるきゅうしゅうすぺくとる
[英訳] UV-VIS absorption spectrum
UV-VISスペクトルは、紫外線(UV)・可視光線(VIS)領域における対象物質の各波長の光の吸収を測定することにより得られるスペクトルである。UV-VISスペクトルは、その他のスペクトル同様、測定物質の同定や不純物の存在推定に用いられる。また、その領域の短い波長の吸収は、比較的高いエネルギーを必要とする分子内の電子遷移に起因することから、分子の電子的性質を特徴付けるのにも非常に役立つ。

輸送エネルギー
[よみがな] ゆそうえねるぎー
[英訳] transportation energy
ホッピングによって、キャリア伝導が生じている場合でも、選択的にキャリア伝導が起こるエネルギー準位が存在し、輸送エネルギーと呼ばれる。このエネルギーがバンド端と同じような働きをしていると考え、伝導機構を考えることがある。

ユニット
[よみがな] ゆにっと
[英訳] unit
ポリマー(高分子)におけるユニットとは、ポリマーの構成単位(モノマーユニット)のこと、モノマーユニットの合成反応によって繰り返し結合した重合体がポリマーとされている。この繰り返し結合の数を重合度といい、分子量はモノマーユニットの分子量と重合度の積である。一般的に分子量 10,000 以上(重合度100 以上)のものを「ポリマー」、10,000 以下(重合度 2〜100)のものを「オリゴマー(低重合体)」と称している。ただし、ポリマーには分子量分布があるので、実際には平均分子量として表現する。

ゆらぎ
[よみがな] ゆらぎ
[英訳] fluctuation
物理学において、ゆらぎとは、広がりまたは強度を持つ量(エネルギー・密度・電圧など)の空間的または時間的な平均値からの変動を指す。 ゆらぎの大きさを表すのに用いられる二乗平均ゆらぎは、統計学における分散と同じものである。すなわち、Xの測定を多数回行ったとき、測定値の平均値を?X?、i 番目の測定値をXi とすると、二乗平均ゆらぎ(分散)は、(X2)ー(Xi)2 と表される。

溶液キャスト法
[よみがな] ようえききゃすとほう
[英訳] solution casting (method)
液晶ポリマーフィルムなどの成膜法で、原料の樹脂ペレットを有機溶媒で溶かし、溶液を平らなベルト上に流し、フィルムに成形し乾燥する方法である。

溶液プロセス
[よみがな] ようえきぷろせす
[英訳] solution process
有機 EL などの有機デバイスは、通常、数 nm 〜 数十 nm の有機半導体膜を積層して作製される。その薄膜の作製方法は真空プロセスを用いる方法と溶液プロセスを用いる方法に大きくわけられる。一般に、真空プロセスとしては蒸着法、溶液プロセスとしてはインクジェット法やスピンコート法といった溶液塗布法が用いられる。

陽極(アノード)
[よみがな] ようきょく
[英訳] anode
ダイオードでは、陽極 (アノード) は、外部回路から電流が流れ込む電極のことを指す。外部回路へ電子が流れ出す電極とも言える。電気分解や電池においては、アノードは電気化学的に酸化が起こる電極である。有機EL素子の場合、陽極から有機物のHOMO準位にホールを注入する。

横型構造
[よみがな] よこがたこうぞう
[英訳] horizontal structure
有機トランジスタにおいて、基板面方向に(横方向に)ソース電極とドレイン電極を配した構造。

四端子測定法(四端子法)
[よみがな] よんたんしそくていほう(よんたんしほう)
[英訳] Four-terminal sensing
四端子測定法は、4端子を用いる抵抗(導電率)測定法で、小さな抵抗値を確実に測定することができる。一般のテスタは2端子測定であり、測定リード線自身の抵抗値が、被測定抵抗値に加算されて誤差の原因となる。一方、4端子測定は、定電流を供給する電流源2端子と電圧降下を検出する電圧検出2端子から構成され、被測定抵抗に接続された電圧検出端子側のリード線には電圧計の入力インピーダンスが高いため、ほとんど電流が流れず、測定リード線の抵抗や接触抵抗の影響を受けずに正確に測定することができる。

ラーモア(Larmor)歳差運動
[よみがな] らーもあさいさうんどう
[英訳] Larmor's precession
ラーモア歳差運動は、電子・原子核・原子などの粒子の持つ磁気モーメントが外部磁場によって歳差運動(自転している物体の回転軸が、円をえがくように振れる現象)を起こす現象である。電子などの荷電粒子が円運動を行っている系に磁場 H を加えると、もとの運動に系全体の共通な回転が重畳される。つまり円運動の形を変えることなく、回転の軸が外部磁場に対して特定の傾きをもつ運動をするようになる。これがラーモア歳差運動と呼ばれるもので、この歳差運動の角速度 ω は次式で表される。ω=eH/2mc ここで、H は外部磁場、e、m は電子の電荷と質量、c は光速度である。他の荷電粒子に対しても磁場中におかれた場合には同じような歳差運動が起きるが,その周波数はそれぞれ異なる(ラーモア周波数)。これが電子スピン共鳴や核磁気共鳴の原理でもある。

ライトトラッピング(光トラッピング)
[よみがな] らいととらっぴんぐ
[英訳] light trapping
光マネジメントを参照

ライフサイクルカーボンマイナス住宅
[よみがな] らいふさいくるかーぼんまいなすじゅうたく
[英訳] Life Cycle Carbon Minus hause(LCCM hause)
長寿命で且つ一層の CO2削減を目標とし、住宅の建設時、運用(居住)時、廃棄までの一生涯のライフサイクルトータルで CO2の収支をマイナスにする住宅。

ラジカルアニオン
[よみがな] らじかるあにおん
[英訳] radical anion
不対電子を持つ化学種をラジカルと呼ぶ。ラジカルには電荷を持たない中性ラジカル、正電荷を持つカチオンラジカル、負電荷を持つアニオンラジカルがある。有機EL素子においては、ラジカルカチオンとラジカルアニオンは、それぞれ有機薄膜中の電荷移動の担い手(キャリア)となる。有機EL素子のキャリアの移動に関しては、注入されたホールと電子は電界勾配を駆動力にしてそれぞれ対極方向に向かって移動していくが、陽極界面では分子は酸化され(電子を失う)ラジカルカチオンとなる。一方、陰極界面では分子は還元され(電子を受け取る)ラジカルアニオンとなる。これらのラジカルカチオンおよびラジカルアニオンがそれぞれ隣接分子間での酸化還元反応を繰り返し、有機薄膜中を移動していくと考えることができる。

ラジカルカチオン
[よみがな] らじかるかちおん
[英訳] radical cation
不対電子を持つ化学種をラジカルと呼ぶ。ラジカルには電荷を持たない中性ラジカル、正電荷を持つカチオンラジカル、負電荷を持つアニオンラジカルがある。有機EL素子においては、ラジカルカチオンとラジカルアニオンは、それぞれ有機薄膜中の電荷移動の担い手(キャリア)となる。有機EL素子のキャリアの移動に関しては、注入されたホールと電子は電界勾配を駆動力にしてそれぞれ対極方向に向かって移動していくが、陽極界面では分子は酸化され(電子を失う)ラジカルカチオンとなる。一方、陰極界面では分子は還元され(電子を受け取る)ラジカルアニオンとなる。これらのラジカルカチオンおよびラジカルアニオンがそれぞれ隣接分子間での酸化還元反応を繰り返し、有機薄膜中を移動していくと考えることができる。

ラジカル対
[よみがな] らじかるつい
[英訳] radical pair
化学反応により化合物が分解したり、電子が移動したり、水素原子が移動したりする際、不対電子をもったラジカルが対となって生成する。これをラジカル対とよぶ。ラジカル対には電子スピンの組み合わせにより一重項状態と三重項状態の2つの電子スピン状態がある。この電子スピン状態間の行き来(項間交差)は、原子核の核スピンによる内部磁場や外部磁場により引き起こされ、磁場の印加によりその速度が変化する。

ラジカル反応
[よみがな] らじかるはんのう
[英訳] radical reaction
有機反応の1つで,その過程においてラジカル (遊離基 ) が関与する反応。化学反応は結合の切断とそれに伴う原子の再配列であるので、結合が非イオン的に切断して生じる遊離基の関与する反応は非常に多い。有機化合物の気相における熱反応はほとんどラジカル反応である。ラジカル反応には、光、熱などによって安定な結合が切れてラジカルを生じる反応、ラジカルと安定分子との結合によって新しいラジカルができる反応、ラジカルが分解して新しいラジカルと安定分子になる反応、ラジカル同士が反応して安定分子を生じる反応などがある。

ラビング法
[よみがな] らびんぐほう
[英訳] rubbing method
液晶配向膜の処理方法で、液晶配向膜を塗布した基盤に対して、ナイロンなどの布を巻いたローラーを一定圧力で押し込みながら回転させることにより、配向膜表面を一定方向に擦る(ラビングする)方法である。

ラポルテ( Laporte)の規則
[よみがな] らぽるてのきそく
[英訳] Laporte rule
ラポルテ( Laporte)の規則は、中心対称の分子(反転中心を持つもの)および原子にのみ適用される分光学的選択則である。ラポルテの規則は、パリティが保存される電子遷移(反転中心に対して対称であっても反対称であっても、すなわちg〔偶〕→ g〔偶〕、あるいはu〔奇〕→ u〔奇〕)は禁制である、と述べる。こういった分子における許容遷移は、(g → uあるいはu → gの)パリティの変化を含まなければならない。結果として、分子が中心対称であるとすれば任意のp軌道内あるいはd軌道内での遷移(すなわち、任意の亜殻内での電子の再分配のみを含む遷移)は禁制である。

ランベルト・ベールの法則
[よみがな] らんべると・べーるのほうそく
[英訳] Lambert-Beer law
光の物質による吸収を定式化した法則である。媒質に入射する前の光の強度(放射照度)をI0、長さLの媒質を透過した後の光の強度をIとしたとき、吸光度Aは次のようになる。A=ーlog10(I/I0)=ECL=εcL ここでEは比吸光度、Cは媒質の質量対容量パーセント濃度、εはモル吸光係数、c は媒質のモル濃度。

乱流
[よみがな] らんりゅう
[英訳] turbulent flow
流体の速度や圧力などが不規則に変動する流れをいう。また,このような不規則な変動を乱れという。これに対して、乱れを含まない流れを層流という。流れのレイノルズ数が低い場合には、粘性の減衰作用が大きいため、流れは安定で、層流状態に保たれるが、レイノルズ数がある臨界値以上になると、流れは不安定になり、乱流状態に移行しやすくなる。層流から乱流への遷移過程では、撹乱の線形成長に続いて非線形成長が起り、完全な乱流へと推移することが知られている。乱流の特徴はさまざまなスケールの渦運動と、それに伴う強い攪拌効果および小さなスケールの渦の粘性によるエネルギー散逸にある。

リガンド
[よみがな] りがんど
[英訳] ligand
特定の受容体(レセプタ)に特異的に結合する物質。金属と有機物との間に形成される錯体においては、金属が受容体、有機物がリガンドとなり、リガンドは配位子と呼ばれることもある。生体のタンパク質においては、リガンドは、受容体の中のある決まった部位(リガンド結合サイト)に特異的に結合する。

力率
[よみがな] りきりつ
[英訳] power factor
力率は、交流電力の効率に関して定義された値であり、皮相電力に対する有効電力の割合である。つまり、電源から送り出される電力に対して、実際どれくらいの電力が消費されたかを表すもの。消費されなかった電力は無効電力として、電源と機器の間を行ったり来たりしている。

離散準位
[よみがな] りさんじゅんい
[英訳] discrete level
離散的なエネルギー準位のこと。離散的エネルギーを持つ原子の電子状態はエネルギー準位と呼ばれる。通常原子は最低のエネルギー状態である基底状態にあるが、より高いエネルギー状態である励起状態への遷移に際し、離散的なエネルギー差 僞 だけの励起エネルギーが必要となる。

理想的最大出力
[よみがな] りそうてきさいだいしゅつりょく
[英訳] ideal maximum power
理想的最大出力(mW/cm2) = 短絡電流密度(mA/cm2)x開放電圧(V) で定義される。ある太陽電池の理想的な最大出力であるが、実際の太陽電池では、0~1の間の値をもつFill Factor (FF) が掛け合わされた最大出力となる。

リニアソース蒸着源
[よみがな] りにあそーすじょうちゃくげん
[英訳] linear evaporation source
真空蒸着において、蒸着源を線状に並べた方式をリニアソース蒸着源という。例えば、薄い長方形の坩堝に複数のノズルを並べて配置した後、熱を加えて有機物を蒸発させて、天板の基板に成膜する。リニアソース方式は、基板1枚を蒸着するのにソースの位置を複数回移動させて行う。

裏面反射による因子
[よみがな] りめんはんしゃによるいんし
[英訳] factor due to backside reflection
光取り出し面と反対側の裏面に等量放出された光が有機層/金属電極界面で反射し、光取り出し面から空気中に放出される裏面反射効果と、光取り出し面で反射した光がさらに裏面反射して、同様にして空気中に放出されるという多重反射効果が生じる。これは、有機層が発生する光に対して透明なために効果的に生じる。

粒界(結晶粒界)
[よみがな] りゅうかい
[英訳] grain boundary
金属、セラミックスなどの固体材料は、一般的に、数多くの結晶の粒の集合体である。隣接する結晶粒の相が同じときには、両者の界面を結晶粒界(粒界、結晶境界ともいう)といい、両者の相が異なるときには異相界面または異相境界という。一つの結晶粒から別の結晶粒へ電荷やエネルギーが移動する場合には、結晶粒界において障壁が存在するため、結晶粒の内部における電荷移動やエネルギー移動の速度に比べて遅くなるのが一般的である。したがって、結晶粒界を含む膜やバルク全体で見た場合、電荷やエネルギーの移動は、結晶粒界が律速となることが多い。結晶粒界の隙間を減らし結晶粒同士の距離を近づけ、障壁を減らすために、アニーリングや焼結といった処理が有効である。

両極性有機発光トランジスタ
[よみがな] りょうきょくせいゆうきはっこうとらんじすた
[英訳] ambipolar organic light emitting transistor
トランジスタのチャネル中にホール・電子の両キャリアの蓄積が可能で、この蓄積された両キャリアの疑似的なpn接合界面において、キャリア再結合が生じて発光する方式の有機発光トランジスタ。キャリア再結合は理想的なキャリアバランスにおいて生じる。

量子
[よみがな] りょうし
[英訳] quantum
量子とは、粒子と波の性質をあわせ持った、非常に小さな物質やエネルギーの単位のこと。物質を形作っている原子や、原子を形作っている電子・中性子・陽子などが代表的なものである。光を粒子としてみたときの光子やニュートリノやクォーク、ミュオンなどといった素粒子も量子に含まれる。量子の世界は、原子や分子といったナノサイズ(1メートルの10億分の1)あるいはそれよりも小さな世界で、このような極めて小さな世界では、私たちの身の回りにある物理法則(ニュートン力学や電磁気学)は通用せず、量子力学に従っている。

量子効率
[よみがな] りょうしこうりつ
[英訳] quantum efficiency
量子収率と同義、量子収率参照

量子収率
[よみがな] りょうししゅうりつ
[英訳] quantum yield
出力された光子あるいは電子の数(m)と、その出力の元となる入力された光子や電子の数(n)との比(m/n)を量子収率(または量子収量)という。蛍光・リン光や光電子放出の場合には、放出された光子や光電子の個数がmとなり、吸収された励起光の光子数がnとなる。光化学反応の場合は、反応を起こした原子または分子の個数がmとなり、吸収された励起光の光子数がnとなる。太陽電池の場合は、外部回路に放出された電子数がmとなり、吸収された光子数がnとなる。有機ELの場合は、放出された光の光子数がnとなり、入力された電子の数がmとなる。さらに、量子収率は外部量子効率と内部量子効率に分けて考えられることがある。有機ELを例に挙げると、デバイス内部で放出された光をnとする場合は内部量子収率、デバイス外部に放出(取り出された)光をnとする場合が外部量子収率となる。この場合、外部量子収率は、内部量子収率に光取り出し効率を掛け算したものとして定義できる。有機薄膜太陽電池では、その発電プロセスの効率面から量子収率(η)を表わすと、η=η1xη2xη3xη4 となる。ここで、η1は光活性層での光吸収効率、η2は励起子のドナー/アクセプター界面への拡散効率、η3はドナー/アクセプター界面でのキャリア分離効率、η4はフリーキャリアの電極への輸送効率である。

量子ドット
[よみがな] りょうしどっと
[英訳] Quantum Dot (QD)
コロイド状量子ドットは、量子力学に従う独特な光学特性を持つナノスケールの半導体結晶のことを指す。通常、2-10 nmの直径で、10-50個ほどの原子で構成される。一般的には、コロイドナノ結晶のサイズによってバンドギャップを調節することが可能であるため、粒径に依存した特徴的な発光特性を持つ(粒径が小さくなるにつれてバンドギャップが広がり、発光波長が短波長側に移動する)。量子ドットは、単に発光波長が調整可能でスペクトルの半値幅が狭いというだけでなく、高い量子効率を持ち、また、幅広い波長を吸収することができる。コロイド状量子ドットは溶液(多くの場合有機溶媒)に分散させることができ、低コストのプリント技術やコーティング技術を用いることができる。量子ドットの発色が明るく鮮やかであることに加えて、広範囲の波長の光が発光可能であり、高効率、長寿命、高い減衰係数であるために、その用途は生体イメージングや、照明、ディスプレイから太陽電池やセキュリティタグまで幅広く、さまざまな用途を目的とした研究開発が進められている。

量子ドット型太陽電池
[よみがな] りょうしどっとがたたいようでんち
[英訳] quantum dot solar cells
量子ドット型太陽電池は通常の GaAs 系太陽電池セルの内部に量子ドットを形成することにより中間バンドを形成し、この中間バンドを経由してキャリアを取り出すことで複数の波長の光を吸収しようとするものである。量子ドット型太陽電池は集光を行うことによりさらに高効率化が可能であり、高倍集光下で変換効率 50%程度を得ることができると見積もられている。

臨界角による因子
[よみがな] りんかいかくによるいんし
[英訳] factor due to critical angle
有機ELの内部から光を取り出すということは、屈折率の高い有機層から屈折率の低い空気中に光を取り出さなければならない。このとき、有機層外部に放射される光は、入射角が臨界角に対応する立体角以内のものに限られる。

りん光
[よみがな] りんこう
[英訳] phosphorescence
有機EL材料が電流により励起されると、25 %が一重項状態、75 %が三重項状態となる。一般に三重項状態のエネルギーは一重項状態のエネルギーより低い。一重項状態から基底状態へ戻る際に発する光を蛍光、三重項状態から基底状態へ戻る際に発する光をりん光と言う。

りん光材料
[よみがな] りんこうざいりょう
[英訳] phosphorescent material
りん光を発する材料。有機化合物の場合、三重項励起状態から基底状態(一重項)に発光を伴う遷移をする化合物が該当する。三重項励起状態から基底状態(一重項)への遷移は一般に禁制であるが、イリジウムや白金などの重原子を導入した錯体がりん光材料として機能することが知られている。これらは有機EL素子の発光材料として用いることができる。

類縁体
[よみがな] るいえんたい
[英訳] analog / analogue
化学におけるアナログ (英: analogue, 米: analog) は、ある化合物と受容体結合特性などの分子生物学的な性質や構造が類似しているが、ある化合物の原子または原子団が別の原子または原子団と置換された組成を持つ別の化合物のことをいう。類似体、類縁体、類似化合物、類縁化合物などと表現されることもある。また、アナログは、化合物に限らず、ある物質や原子団に性質や構造が類似している別の物質や原子団を指すなどより広い意味で用いられることもある。

LUMO(最低空軌道)
[よみがな] るも
[英訳] Lowest Unoccupied Molecular Orbital
電子に占有されていない最もエネルギーの低い分子軌道のこと。有機半導体においては、LUMO準位と真空準位のエネルギー差が電子親和力となる。

励起
[よみがな] れいき
[英訳] excitation
量子力学で、原子や分子が外からエネルギーを与えられ、もとのエネルギーの低い安定した状態からエネルギーの高い状態へと移ること。励起は、光、熱、電場、磁場などの外場によって引き起こされる。また、電子や陽子、中性子、分子、イオンの入射、衝突や、フォノンなどによる励起もある。

励起一重項状態
[よみがな] れいきいちじゅうこうじょうたい
[英訳] excited singlet state
一重項励起状態を参照

励起エネルギー
[よみがな] れいきえねるぎー
[英訳] excitation energy
励起とは、原子や分子が外からエネルギーを与えられ、もとのエネルギーの低い安定した状態からエネルギーの高い状態へと移ることであるが、この励起に必要なエネルギーが励起エネルギーである。

励起エネルギー移動
[よみがな] れいきえねるぎーいどう
[英訳] excitation energy transfer
励起エネルギー移動は、励起分子が起こす二分子過程の一つであり、一方の分子(ドナー)の励起エネルギーを他方の分子(アクセプター)にエネルギー移動して電子励起状態が移動する現象である。2つの過程がある。1つは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、またはフェルスター共鳴エネルギー移動(RET)であり、近接した2個の色素分子(または発色団)の間で励起エネルギーが、電磁波にならず電子の共鳴により直接移動する現象である。供与体の発光スペクトルと受容体の吸収スペクトルの重なり積分が大きいほどフェルスター距離が大きくなり、エネルギー移動が起こりやすくなる。FRET効率は、両分子間の距離の6乗の関数として距離とともに急速に減少する。もう一つは、デクスター機構であり、ドナーとアクセプターの間の波動関数の重なりが必要であるので、一般には15-20A(オングストローム)オーダーの近距離でのみ起こる。

励起錯体
[よみがな] れいきさくたい
[英訳] excited complex
エキサイプレックス(エキシプレックス)参照

励起三重項状態
[よみがな] れいきさんじゅうこうじょうたい
[英訳] excited triplet state
三重項状態/三重項励起状態を参照

励起子
[よみがな] れいきし
[英訳] exciton
半導体又は絶縁体中で電子と正孔の対がクーロン力によって束縛状態となったもの。エキシトンとも呼ばれる。励起子は、光励起や電気的励起などによる電子-正孔の対生成によって生じる。

励起子解離
[よみがな] れいきしかいり
[英訳] exciton dissociation
励起子がその結合エネルギーを断ち切って電荷担体(電子と正孔)となること。結合エネルギーが大きい有機半導体の励起子解離を促進するためには、電圧をかける方法とヘテロ接合界面での電子エネルギー準位差利用する方法がある。ドナーとアクセプターによるヘテロ接合の有機半導体中では、ドナーの励起電子がアクセプターの伝導電子より高いエネルギー準位にある場合に、アクセプターに移動することができ、ドナーの励起子は解離して、ドナーに正孔が、アクセプターに伝導電子が生成する。また、励起子がヘテロ接合界面で解離するには、励起子は界面まで拡散しなければならない。しかし、励起の拡散距離(拡散長)は代表的な測定値で数nm〜数十nm程度と非常に短いため、励起子を効率よく解離するためにはドナーとアクセプターがバルクにわたって入り組んだバルクヘテロ接合が有効である。

励起子拡散
[よみがな] れいきしかくさん
[英訳] exciton diffusion
有機半導体中における分子の励起状態では、励起子は主にフレンケル型であるが、フレンケル型励起子は、有機半導体分子が吸収した光のエネルギーを個々の分子内に閉じ込めた状態であるため、電荷を持たず、電場で移動を促進することはできない。励起子の移動は拡散によるものである。拡散は吸収した光のエネルギーの移動の過程であり、エネルギー移動の機構には、フォレスターが提案した双極子ー双極子相互作用によるエネルギー移動と、デクスターが提案した電子の交換を伴うエネルギー移動がある。前者は一重項励起子(S1)の移動に、後者は三重項励起子(T1)の移動に適合する。

励起子拡散距離
[よみがな] れいきしかくさんきょり
[英訳] exciton diffusion length
励起子拡散長を参照

励起子拡散長
[よみがな] れいきしかくさんちょう
[英訳] exciton diffusion length
励起子は生成してから失活するまでの間、有機分子間を移動することができる。この移動を励起子拡散といい、励起状態が伝播出来る平均的な距離が励起子拡散長である。

励起子結合エネルギー
[よみがな] れいきしけつごうえねるぎー
[英訳] exciton binding energy
励起子を電荷担体(正孔と電子)に解離するのに必要なエネルギーのことを指す。無機半導体中ではその値は小さく励起子は容易に解離するが、有機半導体中では大きく解離が困難である。有機半導体中において、励起子が解離した状態での電子と真空準位のエネルギー差が電子親和力であるので、励起子の結合エネルギーは、イオン化エネルギーと電子親和力の差から光学的遷移エネルギーを差し引いた値になる。有機半導体中の励起子の結合エネルギーは0.4eV程度が一つの目安と言われている。

励起子生成
[よみがな] れいきしせいせい
[英訳] exciton formation
ある物質の励起子の生成は、多くの場合、光励起などによって電子-正孔の対が生成することで起こる。 光励起による励起子は以下のように生成される。@光などの励起によって、絶縁体又は半導体の価電子帯の電子が伝導帯に遷移し、価電子帯に正孔が、伝導帯に電子が形成される。A正孔は正の電荷を持つため、負の電荷を持つ電子との間にクーロン引力が生じる。B陽子と電子がペアを組んだ状態が水素原子であるように、電子と正孔がペアを組んだ状態を一つの粒子として取り扱うことができ、この状態を励起子という。励起子は非金属結晶中における代表的な電子励起状態であり、光学特性に大きく影響する。有機EL素子では、励起子の生成は、陽極と陰極からキャリアが注入され、そのキャリアが輸送され、発光中心上で再結合することで励起子が生成する。

励起子生成確率
[よみがな] れいきしせいせいかくりつ
[英訳] exciton generation probability
電流励起によるキャリア(電子と正孔)の再結合において、一重項励起子と三重項励起子の生成確率は、スピン統計則に基づき、25%:75%となる。

励起子生成効率
[よみがな] れいきしせいせいこうりつ
[英訳] exciton generation efficiency
有機EL素子において、電子と正孔の再結合による励起子生成過程では、スピン統計則に従うと、一重項励起子が25%の確率で生成され、三重項励起子が75%の確率で生成される。その後、S1からT1への系間交差、T1からS1への逆系間交差、T1とT1との相互作用(三重項-三重項消滅)などの過程を経て、定常状態の励起子の生成効率が決定されると考えられる。発光に寄与する励起子の生成効率を発光性励起子生成効率と定義づけることができる。

励起子阻止層
[よみがな] れいきしそしそう
[英訳] exciton blocking layer
有機ELにおいて、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層である。本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となる。素子の発光効率を向上させることができる。

励起子の閉じ込め
[よみがな] れいきしのとじこめ
[英訳] exciton confinement
励起子阻止層を参照

励起状態
[よみがな] れいきじょうたい
[英訳] excited state
励起状態とは、量子力学において系の固有状態のうち、基底状態でない状態のこと。励起は、光、熱、電場、磁場などの外場によって引き起こされる。励起により、基底状態にあった固有状態は励起状態へ、励起状態にあった固有状態はより高いエネルギーを持った励起状態へ移る。

励起状態緩和
[よみがな] れいきじょうたいかんわ
[英訳] excited‐state relaxation
励起状態の分子は、分子内緩和や無輻射遷移、自然発光などの多くの緩和過程によって基底状態に戻る。また、励起1重項状態から励起3重項状態へ移行(項間交差)し、その後、発光を伴って基底状態に戻る緩和もある。

励起電子
[よみがな] れいきでんし
[英訳] Electron excitation
励起電子とは、高いエネルギーで運動している状態の電子である。このような状態は電子の光励起、電気的励起、あるいは熱励起によって作られる。ここで、励起した電子はいずれ低エネルギー状態(基底状態)へと戻るが、これは電子の緩和と呼ばれる。これは光の放射または 第三の粒子にエネルギーを与えることによって終わる。

励起二量体
[よみがな] れいきにりょうたい
[英訳] excimer
エキシマを参照

レイノルズ数
[よみがな] れいのるずすう
[英訳] Reynolds number
流体力学において、粘性をもつ流体のふるまいを特徴づける値。典型的な流速U、流体中の物体の大きさL、粘性率η、密度ρを用いると、無次元量の数R=ρUL/ηが導かれる。このRをレイノルズ数といい、Rを同じくする流体は物体周囲で同じような(相似関係にある)流れとなる。これをレイノルズの相似則、または流れの相似則といい、飛行機や自動車の小さな模型を用いた風洞実験などに利用される。

レーザー色素
[よみがな] れーざーしきそ
[英訳] laser dye
レーザー色素とは、色素レーザー(窒素レーザ等の短波長の光源によって蛍光色素を励起することによる誘導放出を利用したレーザー)で使用される蛍光色素の一種である。

レーザー色素材料
[よみがな] れーざーしきそざいりょう
[英訳] laser dye
有機色素レーザーは、レーザー媒質として蛍光色素の一種であるクマリン、DCM、ピロメテン、ローダミン等のレーザー色素を使用する。アクリル樹脂にレーザー色素を分散させた固体色素レーザーもある。

レーザー転写法
[よみがな] れーざーてんしゃほう
[英訳] laser transfer method
有機ELなどの薄膜形成法には、真空蒸着法、インクジェット法、レーザー転写法(LITI)等があるが、レーザー転写法は、レーザーの光エネルギーを熱エネルギーに変換し、その熱エネルギーで有機材料を基板へ転写する方法である。高解像度のパターン形成、膜厚の均一さの確保などに適した方法である。

レジリエンス
[よみがな] れじりえんす
[英訳] resilience
弾力や復元力、回復力を意味する。元々物理学の用語で、心理学に使われることもある。防災分野や環境分野では、想定外の事態に対し社会や組織が機能を速やかに回復する強靭さを意味する用語として用いられる。

劣化
[よみがな] れっか
[英訳] degradation / deterioration
有機EL素子の劣化には、そのメカニズムで分類すると、機械的劣化、熱的劣化、電気的劣化、化学的劣化が考えられる。機械的劣化には陰極の剥離、機械的ストレスによる破壊などがある。熱的劣化には、周囲の温度やジュール熱、発光過程で生じた発熱による分子結合の破壊などが含まれる。電気的劣化には、電流がITOなどの高抵抗部を通過する際に生じるジュール熱やキャリアバランスがとれていないこと、あるいはキャリアのリークによる分子結合の破壊などが含まれる、化学的劣化とは、励起された材料が不安定であったり、酸素や水との反応で劣化する場合が相当する。

ロールオフ特性
[よみがな] ろーるおふとくせい
[英訳] roll-off characteristics
有機EL素子は、高電流密度駆動時に発光効率が低下するロールオフ特性を示すことが知られている。その一因として、有機ヘテロ接合界面の蓄積電荷による励起子消滅(Singlet-Polaron Annihilation,SPA)が報告されている。

ローレンツ力
[よみがな] ろーれんつりょく
[英訳] Lorentz force
荷電粒子が磁場中を運動するとき磁場により受ける力。電荷 q の粒子が磁束密度 B の磁場中を速度 v で動くとき,ローレンツ力は q(v×B) で表され,磁場と速度の両方に垂直である。このため粒子は磁場に垂直な方向に曲るが,仕事は受けない。また、粒子が電磁場中を運動するとき,電場 E による力をも含めて qE+q(v×B) をローレンツ力ということもあり,これは電磁場中の荷電粒子の運動を論じる基礎式としてよく用いられる。

ワイドギャップ半導体
[よみがな] わいどぎゃっぷはんどうたい
[英訳] wide - gap semiconductor
ワイドギャップ半導体とは、バンドギャップの大きい半導体を指す。ここでいう「大きい」は相対的なものではっきりとはしないが、シリコンのバンドギャップが1.12eVであることから、その2倍程度の2.2eV程度以上のバンドギャップを持つ場合にワイドギャップと呼ぶことが多い。主に、III-V族半導体、特に窒化物半導体は大きなバンドギャップを持ち、ワイドギャップ半導体となる。例えば窒化ガリウムでは、バンドギャップは3.39eVである。また、炭化ケイ素(2.20〜3.02eV)、ダイヤモンド(5.47eV)などもワイドギャップ半導体である。用途としては、発光ダイオードなどの光半導体、液晶ディスプレーに使われる透明電極のほかに低損失のパワーデバイスなどがある。

ワニエ励起子
[よみがな] わにえれいきし
[英訳] Mott Wannier exciton
ワニエ励起子は、励起状態の波動関数の広がりが格子定数に比べてずっと大きいような励起子のことである。この励起状態は1つの格子点の周りに空間的に広がった状態で、電子と正孔が弱いクーロン力で緩く束縛されている。無機物半導体でよく見られる。励起子の典型的な半径は 1~10nmである。結合エネルギーは10meVより小さく、室温で容易に解離して電子と正孔を生成する。励起子束縛エネルギーは水素原子モデルと同じように見積ることができる。なお、フレンケル励起子とワニエ励起子は“励起波”の中での極限的なモデルであり、実際の物質における励起子は両者の中間状態となる。