キャリア散乱
キャリア散乱
応用物理・応用化学
半導体物理
半導体中でキャリア(電子や正孔)が散乱されるメカニズムは、フォノン散乱、イオン化不純物散乱、衝突イオン化散乱の3種類が主要なものである。これらが伝導率σを決める要素の移動度μを決めている。フォノンとは、結晶格子の熱振動を量子化したもので、つまり格子振動による散乱である。この格子振動による散乱は熱エネルギーによる原子の振動による散乱であるため、低温ではその影響は小さく高温ほど影響が大きい。キャリア移動度への影響は、温度 T の 3/2 乗に比例して大きくなる。イオン化不純物散乱は、ドナーやアクセプターのように、不純物がイオン化したものによる散乱である。これは、電子がイオン化した不純物によるクーロンポテンシャルによって散乱を受けるもので、ラザフォード散乱の問題と同じメカニズムである。温度による影響は、低温では電子は熱エネルギーが小さく移動速度も小さい。速度が小さな電子に対するクーロン力は大きいため大きく散乱される。一方、高温では電子の熱速度は大きいので、クーロンポテンシャル散乱の影響は小さい。イオン化不純物散乱は低温で主要であり高温では影響が少ない。移動度に対するイオン化不純物散乱の温度依存性は T の 3/2 乗に比例して、低温で主要な散乱メカニズムとなる。衝突イオン化による散乱は、電子が電界によって高速に加速され、そのエネルギーが結晶を構成している結合電子のエネルギーを超える場合、結合電子を破りイオン化してしまう現象である。インパクトイオン化という。電子が一個衝突すると、多数の電子とホールのペアを作り出すため増幅効果がある。