内部磁場

基礎化学・基礎物理
量子力学
原子核の核磁気モーメントに作用する磁場をいう。内部磁場は原子核のまわりの電子がスピン角運動量または軌道角運動量をもつ場合につくられる。すなわち、内部磁場は、電子の軌道がs状態であるときは電子のスピンによるフェルミ相互作用によるが、p、dなどの状態のときはスピンに伴う磁気モーメントの古典的な双極子相互作用によって生じる。しかし、鉄属などのようにd電子をもつ磁気的原子では、元来はスピンが打ち消し合って閉殻をつくっていた内殻電子が、d電子によって磁気分極を起こし、d電子の磁気モーメントとは反対の向きの内部磁場をつくる。希土類金属の原子では、電子の軌道運動からの寄与も重要である。さらに、金属の場合は、伝導電子からの寄与もある。内部磁場の値はその原子核が含まれている物質によって異なるが、一般には非常に大きい。たとえば、Feではほぼ 2.5×107 A m-1 である。内部磁場は核磁気共鳴吸収やメスバウアー効果によって直接測定され、また、極低温における比熱容量の解析からも求めることができる。内部磁場の測定によって、原子核の知識が得られるだけでなく、物質の電子構造の情報も与えられる。

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